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政策委員会議長記者会見要旨 ( 2月28日)

2001年 3月 1日
日本銀行

―平成13年 2月28日(水)
午後 5時30分から35分

【議長】

公表文をご覧になったと思う。要するに公定歩合と政策金利である無担保コールの翌日物を0.1%下げて、それぞれ0.25%と0.15%にしたということである。ここに書かれている主旨の中で、私としても一番強調したいのが、4番と5番であるので、読ませて頂く(趣旨文4.と5.を読上げ)。この辺のところを私としては強く申し上げたいと思っている。

【問】

今日、日経平均株価がバブル後の安値を一時更新したり、あるいは最近のボードメンバーの方々の発言を聞いても、かなり足許の景気判断、物価の見方について慎重な見方を強めているという感じがする。今回の決定に至った政策委員会の判断の背景や、理由について伺いたい。

【答】

今日は9時から4時近くまで随分議論を重ねたわけであるが、景気判断について大体一致したところは、前回の会合以降公表された経済指標を見ると、輸出の減少傾向が更にはっきりしている中で、生産も足踏み状態で──今日1月の鉱工業生産指数が発表になったのをご覧になったと思うが──、設備投資の先行きについてもやや懸念される材料が出始めている。金融資本市場の動きを見ると、株価は低迷して、今日も非常に低いところで終わっている。こうした材料を踏まえると、景気の回復テンポは一段と鈍化しているものとみられる。また、先行きの景気下振れリスクについても、前回会合の時と比べて高まっているのではないかと思う。この間、物価は弱含みの動きを続けているが、今後需要の弱さを反映した物価低下圧力が再び強まる懸念がないではないという感じがする。

今回の措置は、こうした情勢を踏まえて金融面から景気回復を支援する力を更に強化し、物価の安定に資することが適当ではないかと判断して決定した次第である。

【問】

昨日の総裁の国会答弁でもそうであったが、不良債権の最終処理を進めていく際に、デフレ圧力が高まる可能性があることについては、金融政策でその痛みを和らげるべきではないかという議論があると思う。今回の措置とそういった不良債権の最終処理に向けた金融庁などの動きの関係如何。

【答】

最近柳沢大臣のご発言があって、皆さんも注目されたと思うけれども、このご発言についての具体的なコメントは差し控えさせて頂くが、金融システム問題の解決が日本経済にとって喫緊の課題であるということでは、私どもも全く同感であり、一段の取り組みが進められることを強く期待している次第である。

今回の私どもの措置は、不良債権処理を巡る最近の動きと直接に結びついたものではないが、私どもとしては、昨年10月末の「経済・物価の将来展望とリスク評価」でも指摘したように、従来より企業や金融機関のバランスシート調整、リストラの影響、こういうものも織り込んで、適切な情勢判断に努めてきているつもりである。また金融システムの強化は、私どもの金融政策が十分な効果を発揮するためにも、極めて重要な前提条件である。私どもとしては、こうした金融システム面での動きや影響を念頭に置いて、適切な政策運営に努めて参りたいと思っている。

【問】

ここにきて、アメリカのFRBが次回のFOMCを待たずに緊急利下げをするのではないかという見方が強まっているが、そのことと今回の日銀の判断の関係について伺いたい。

【答】

直接アメリカのことを心配したわけではないけれども、今日行われるであろう米国の議会での証言でグリーンスパンがどういうことをおっしゃるか、非常に関心を持っている。アメリカの見方や今後の動きについても、何分新しい政権で、まだ政策についての大統領声明(の実現)もこれからであるし、どういうふうに出ていかれるのか、私どもとしては注目したいと思っている。いずれにしても、生産性の面では引続き強いわけであるから、株価が一時軟化したり、生産が一時的に落ちるようなことがあっても、私はやはりアメリカの経済というのは強いと思って間違いないのではないかと思っている。

(米国の動きと)今回の措置とは直接の関係はないが、外的な要因として非常に大きなファクターであったことは間違いない。日本の株価についてもそうだし、アメリカ向けだけではなくアジア向け等の輸出についても伸びが落ちているというのは、やはりそういう米国経済の影響が間接的に出ていると考えて間違いないと思う。

【問】

政策金利の変更というのは、これまで大体0.25%刻みだったと思うが、今回何故0.1%という幅なのか。また、ゼロ金利に戻すという選択肢はなかったのか。

【答】

今まで0.25%刻みであったかどうか、それは私も判らないが、0.25%からゼロ金利に移行した99年の2月にかけて、0.25%より低くてもいいんだということを言ったうえで、ゼロ金利を事実上達成したわけである。

今回の場合は、あの頃の情勢と比較すると全く違うし、あの頃はデフレ・スパイラルの一歩手前ということで、金融システムの混乱・崩壊というようなことが目の前に見えてくるような破綻もあった。そういう中で、公的な措置、あるいは財政面でも今とは全く違う状況に対応するということで、ゼロ金利政策をとったわけである。

今回は市場もかなり0.25%という金利水準に慣れて、活発に市場活動が進んでいる、市場や企業が金利を中心にして動いているわけであるから、そういう中では、0.1%の引下げであっても、かなり大きな影響を及ぼすと思う。そうかといって、それ以上下げていくということは、やはりこれから構造改革その他もあるわけだし、金利というのはやはりリスクをカバーするためにあるのであるから、そういう意味で、10ベーシス・ポイント政策金利を下げたわけである。また、それに伴って公定歩合も10ベーシス下げたということである。その結果として、政策金利が0.15%、公定歩合が0.25%ということになった。

2月9日の決定からまだ2週間余りであるが、その間に、あの時とった措置がかなり市場にも浸透し、市場の安定にも繋がってきていることは、皆さんも認識しておられると思う。

例えば、3か月物の市場金利が、昨年の暮れで0.6%、9日に下げた時は0.5%くらいだったと思うが、今は期末越えの金利も0.38〜0.39%くらいになっており、それだけ下がってきているわけである。これは長期金利にも影響を与えているし、短期国債の買切りオペも、2週間の間に2回、1,000億円と2,000億円の合計3,000億円実施している。これも5倍程度の応募があって、その中で1,000億円と2,000億円の2回買切りをやっているわけである。こういうことを見ても、市場が如何に金利で動いているかということを、痛切に知らされたという感じを私は持っている。

ロンバート型貸出──今回、名称を日本的な名前(「補完貸付制度」)に変えたが──の詳細については、既に説明があったかと思うが、これも近く動き出す。これから何が起こっても、金融機関に不安が生じない、市場に金利の上限──今度は0.25%が上限であるわけだが──がはっきり示されることになる。市場が如何に金利にセンシティブであるかということを知って、私どもも金利政策、あるいは市場機能というものの大きさ、強さを痛感している次第である。

そういう観点に立って、わずかに10ベーシス・ポイントであるけれども、これはそれなりの効果があるのではないかと期待している。

【問】

本日公表されたコメントには、「(日本経済が)自律的な回復軌道に復することを目指して、今後とも、機動的・弾力的な金融政策運営に努めていく方針である」と書いてある。これは、この先の経済物価情勢によっては、更に金利の引下げがあり得ると読めるが、そういう理解でいいのか。今日の会合では、ゼロ金利に戻したらどうかという議論は、出なかったのかどうか。

【答】

そういう意見を持っている方もいると思うが、この次は下げるだけでなく、上げることだってあり得るわけであるから、その時その時の情勢に対応して金融政策というのは決められていくものだと思っている。ゼロ金利を解除したのが去年の8月11日で、あれから半年以上経っているわけである。あの時はあの時でゼロ金利解除で株価も、むしろ下がらないで上がっていった。8月の末から9月初めにかけてアメリカで株価が下がり始め、その辺から日本の株も下がり始めたということは記憶に新しい。私どもが10月の「経済・物価の将来展望とリスク評価」の「標準シナリオ」で申し上げたように、景気は緩やかな上昇を続けていくだろうが、アメリカなど海外からの下振れのリスクが起ってくるかもしれない、また、内外の資本市場で株が下がることがあるのではないか、その場合は景気にとって下振れリスクとして機能するのではないか、ということが、こういう形でかなり現実化してきたと思う。それに対応して今回の措置も採られたというふうに理解して頂きたい。

【問】

関連してもう一問伺いたい。先程、物価に対する考え方で、需要の弱さに起因する物価下落の圧力が高まってきているとおっしゃられたかと思うが、これは突き詰めていくと、いわゆるデフレ・スパイラルに陥るリスクが高まってきているという見方をされているということか。

【答】

そういう可能性があるかも知れない。今までの、特に昨年の夏以降の物価の下がり方というのは、主として供給サイドでコスト・ダウンがあったり、規制緩和があったり、流通改革が起こったり、また新しい技術の取り入れ等によるもので、加えて繊維輸入も増加するなど、そうした供給サイドの値下がりが非常に大きかったと思っている。

そのこと自体、これまで日本の消費者にとって常にコンプレイン(不満)の対象であった内外価格差を、ある程度消しつつあったように思うが、そういう供給サイドだけでなく、需要が弱くなって、それが物価低下に響いていくということになっていくと──というのは、所得があまり伸びないし、消費もあまり伸びないというようなことから──デフレ・スパイラルになる可能性があり得るわけで、そういうものが出てこないように、前もって金利を下げて、資金の潤沢な供給をしていきたいと思って実施した次第である。

【問】

もし、デフレスパイラル的な状況になった場合は、ゼロ金利復帰も排除しないということか。

【答】

それはまだ、ゼロ金利まで行くのかどうか、ちょっとこの段階では何とも申し上げかねる。従来から、私ども中央銀行としては、採り得る様々な政策運営の選択肢というものを幅広く検討しているわけで、ゼロ金利政策を含めて通常は行なわれないような政策についても、効果や副作用について十分慎重な検討をしていく必要があると思っている。いずれにしても、経済や物価の情勢判断がどういうふうに変わっていくかということに帰着するものだと思う。

日本経済は回復の動きが一段と鈍化してきているが、先行きの不透明要因が随分ここへきて重なってきているのではないかと思う。一つはアメリカの景気動向がどうなるか、あるいは日本でも政局自体がどういうふうに変わっていくのか、それから先程の質問にもあった不良資産の直接償却といったものがどういうスピードでこれから起こっていくか──それは本来デフレの圧力をある程度持っているものだと思うが──。直接償却ということはバランスシートから落ちていくわけだから、落とされた方、借り手の企業にとっては、やはり大きなダメージ、影響が強いものだから、そういうものをどうやって拡がらないように収めていくかということは、私ども金融サイドも──銀行の不良資産はまだ30兆円余りあると言われているが──、非常に注目している。銀行もかなり償却を進めてきたわけで、今年度の上期も2兆3,000億円、下期はそれを更に上回るものが償却できるかもしれないというように聞いているが、そういうものが今後も続いていくのかどうか。償却をすればやはり銀行の収益には大きく響いてくるわけだし、それだけではなく、企業の破綻というか、そういうものが必ず生まれてくるわけであるから、そういった動きに対して金融サイドでその時その時にどういった対応ができるのか、そういうことも考えながら今回の措置が採られたというようにご理解頂きたいと思う。

また、そうした先行き不透明なことがいくつか重なってきているように思うが、そういう先行きの不透明なものが先行きどうなって行くかを今この段階で言うことは非常に難しい。そういう状況の中で株価が下がり、物価も少し下がってきたのをみて、今日の措置が採られたというようにご理解頂きたい。

一方で、「日本を救うのは民間主導の構造改革だ」、「民間主導の構造改革が起こらなければ日本経済は取り残されて行く」ということを皆が理解し始めている。昨日の経済財政諮問会議でも、景気対策と民間主導の構造改革というものは、二つのものではなく、むしろ一つのものであり、一つの目標だというようなことを皆さんおっしゃるようになってきており、「構造改革なくして、中期的な安定した景気の回復はない」という理解が育ってきていると思う。私もそうした見解を持っているが、既に産業界では起こりつつある。銀行界でも、銀行だけでなくて、金融市場そのものが、これからまだまだ金融システムの構造改革を行っていかなければいけないと思っている。

1,380兆円ある家計の金融資産のうち54%が銀行に──郵便局を含むが──、現金・預金として預けられて不況の真っ最中でも増え続けてきている。そういうものがもう少し資本市場──株や国債・債券の市場──に流れて行くことが必要と思うが、今まだ14%しか残高がない。アメリカは全く逆で、現金・預金が10%、市場に流れているのが56%という状況であるが、そのように預金者というか、お金を持った投資家が直接市場へ出て、自らのリスクで高い利回りのもので運用していくということが起こっていかないと、資本主義経済は育っていかないのではないかという感じすらしている。そういう意味でも、金融システムの構造改革というものは、銀行の不良債権の償却と同時に、そうした流れが起こっていってしかるべきではないかと思う。

【問】

日銀は、政府と比較して景気認識が楽観的だと言われてきたが、今回の措置を採ることになったのは、日銀として、あるいは速水総裁としても、日本の景気回復が「正念場を迎えている」あるいは、「もう待ったなしの状況にきている」という認識からか。

【答】

「待ったなし」という意味がどういう意味か良く分からないが、とにかく、先行き不透明なことが非常に多い中で、緩やかな景気回復が、下手をすると止まってしまう、止まってしまうだけでなく、また下がっていく可能性すらないわけではないので、そういうものに備えて今回の措置が採られたというふうに理解して頂いて良いと思う。

【問】

去年ゼロ金利を解除した時の日銀あるいは総裁の将来のリスクに対する見方が甘かったのではないかという見方があるが、それに対して総裁は何らかの責任をとるつもりはあるのか。

【答】

金融政策というものは、経済や物価の情勢を注意深く点検しながら、その時その時において最も適切な対応を採っていくものであり、機動的、弾力的である必要があると思う。ゼロ金利を解除してから既に半年経っているわけであるから、その間にどういうことが起こったかは皆さん十分ご承知だと思う。そういう現状を踏まえて、あるいは先行きを見ながら、今回の措置を採ったというふうにご理解頂きたいと思う。

【問】

昨年8月にゼロ金利政策を解除した時、僅かながらも年金生活者の方々に恩恵が及ぶとおっしゃったが、今回の引下げについて、そういった方々にどのようにコメントするのか。

【答】

それについては、これで預金金利その他がどれだけ下がるのか、私も何とも言えない。10ベーシス・ポイント下がっただけで、預金金利はそんなに下がらないのではないかと思っている。少なくとも機動的に、下げるときは下げる、上げるときは上げるというふうに動いているつもりであるので、預金者の方々もこれがいつまでも続くとは思っておられないと思うし、構造改革が成功して、日本の民間主導の経済成長が実現できれば——既に動き始めているが——そういう、捨てるものは捨て、需要にミートしたもの、競争力あるものがどんどん育っていくということがあれば、また、金利は上がっていくと思う。

【問】

前回8月の時は、低金利が続くと企業の構造改革を遅らせる懸念もあるとおっしゃったと思う。今回は構造改革を進めるために金利を下げるわけであるが、その辺の整合性をもう一度説明して欲しい。

【答】

構造改革のために、金利は一般的に低い方がいいのかもしれない。使う方の立場からすれば。ただ、それがゼロになったのでは競争原理、市場原理というものが死んでしまう。今、0.15%でも市場は十分機能すると思う。

【問】

通常は行われないような政策についても慎重に検討する必要があると述べられたが、「通常は行われない政策」には量的緩和も含まれると考えてよいか。

【答】

今の段階では、長期国債を日銀が買うのは、毎回2,000億円づつ、月2回である。銀行券と見合った金額はこれくらいだ、ということでずっと続けているが、これは続けていく。ただ、長期の国債の買入れを今後増やすかどうかということは、先行きの情勢の変化に応じて考えればよいのであって、今のこの段階で、先の具体的な政策についてはコメントできない。

【問】

先行き景気不透明感が強い中で、緩やかな回復が止まる可能性がないわけではなく、それに備えて今回の措置が採られた、とおっしゃったが、この0.10%の利下げで景気が下がることを止めることが出来るのか。先程、預金金利がそれほど下がらないかもしれないとおっしゃったが、その程度のインパクトしかないということではないか。

【答】

0.1%ということは、10ベーシス・ポイント下がるということで、市場にとっては、かなり大きな変化になると思う。末端の段階でどういうふうに変わるかということについては、今のところ何とも言えない。

【問】

今回の公定歩合とオーバーナイトの誘導目標の引下げは議長提案か。

【答】

議長提案である。

【問】

全会一致であるか。賛成多数であるか。

【答】

賛成多数である。

【問】

かなりの多数であったのか。大多数であったのか。

【答】

まあ、大多数といって良いと思う。

以上