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政策委員会議長記者会見要旨 ( 3月19日)

2001年 3月20日
日本銀行

―平成13年 3月19日(月)
午後 7時00分から60分

【議長】

対外公表文3.〜5.を読上げ>
以上、私どもの今回の措置の決意と趣旨を申し上げた次第である。細かい点はなんなりとご質問頂きたい。

【問】

今回の決定は、ゼロ金利政策の事実上の復帰ではないかという解釈もあり得るが、それについての総裁の考え方はどうか。政策目標を当座預金残高という量に切り替えるということであるが、もしゼロ金利とは意味が違うということであるならば、何故ゼロ金利という手段を採らず今回の手段を採ったのかについて伺いたい。

【答】

今回の措置は、金融市場調節の主たる操作目標を、これまでは無担保コールレート(オーバーナイト物)ということで行ってきたのを、0.15%とぎりぎりの所まできているから、それでなくて、日銀当座預金残高という量に変更するものである。この結果、コールレートの変動は、日本銀行による潤沢な資金供給とロンバート型貸出制度による金利上限が決められているから、金利の方は市場に任せることになり、ゼロ近辺に固定しようとするゼロ金利政策とは性格が異なっている。しかし、これを実行していけば、恐らく金利はゼロ近辺に行くだろうと思っている。

日銀当座預金5兆円程度という潤沢な資金供給のもとで、コールレートがゼロ近辺になる日が恐らく多くなると予想はしている。しかし、資金需給が逼迫する際には、これがある程度上昇したり、信用リスクの差が金利に反映される余地もあると思う。また、ゼロになってしまったら、これ以上金利は下がっていかないわけだから、必要な時には資金を私どもの手許からもっと供給していくことが出来る。

そのように金利を市場に任せ、その元にある資金の供給を当座預金残高を見ながら調節していくというのが、今回の趣旨で、──質から量へと言っても良いかもしれないが──量的緩和の一種というふうにお考え頂いても良いと思う。

【問】

量的緩和に関して、3.(4) に長期国債の買い入れ増額という話が載っている。現在は月4千億円ペースでやっている買い入れについて、銀行券発行残高を上限とするということになっているが、具体的に大体どのくらいの数字的な目処があるのか良く分からない。日銀の保有する長期国債の残高は銀行券発行残高を上限とするというが、一体どのくらいの広がりになるのか具体的に伺いたい。

【答】

それはこれからの市場の推移によって変わってくると思うが、今数字だけ申し上げれば、銀行券の発行残高は約57兆円であるが、長期国債の日銀保有残高は46兆円で、11兆円くらいはまだ余裕がある。それは全部買うというものではないので、今まで毎月4千億円とフローで決めていたのを、ストックの限度を決めて、必要に応じて長期国債の買い切りオペを実行していくことを決めたわけである。

【問】

昨年8月のゼロ金利政策の解除の時に立ち戻って考えてみるに、今次局面でもゼロ金利に早く戻すようにといった議論があった。そういう中で日銀の政策判断があのタイミングで適切だったのかどうかということも含めて色々な議論がされているが、今回こういうかたちで実質的にゼロに持っていくような方法を考えたということで、その時の判断というのはどうだったのか。それから今回こういうかたちで改めて金融緩和を採るといったことに対しての総裁の率直な所感を伺いたい。

【答】

ゼロ金利の解除が失敗だったかというのは、何回もここでお答えしたことがあるが、昨年の8月11日に、ゼロ金利政策を解除した。市場において極めて冷静に受け止められたし、株価はむしろその翌日にも上がっていくということで、8月一杯は上昇していったわけである。長短金利も安定して推移した。現実に日本経済の回復テンポがその後鈍化し始めたが、それは昨年末以降であり、生産やGDPの動きなどをご覧になってもお分かりのように、年内はわが国経済のモメンタムは維持されていたと言っても良いと思う。昨年末以降、景気回復テンポが鈍化した最大の要因は、なんといっても内外の予想を上回る米国経済の急激な落ち込み、──減速(スピードダウン)と言っているが──であったと思う。この点は、米国も11月のFOMC──日本の金融政策決定会合に当たるものだが──までは、将来のリスク・バランスの評価として、「インフレ警戒」ということを採用していたわけである。米国民間機関の成長率の予想も比較的高めであったことを記憶している。

日本銀行は、そうした景気情勢の変化に対応して、2月以降、相次いで金融緩和措置を講じてきたわけであるが、その時々の材料に基づいて、最も適切な対応を機動的・弾力的に行っていくということは、中央銀行としての当然の責務であると思う。

こういう点から、私どもとしては、「昨年8月時点の情勢判断が甘かった」とか「ゼロ金利政策解除は失敗であった」とは考えていない。

【議長】

当座預金を目標にするということを、リザーブ・ターゲティングと米国などでは言っている。もう20年前になるが、ボルカー議長の時に、米国がインフレ的になって、金利がどんどん上がっていくという時に、──金利は二桁以上になったわけだが──たまたまIMFの総会の時で、ユーゴで行われたのだが、ボルカー議長が途中帰国していったということで、何が起こったのかと思ったら、帰国してすぐ発表したのが、リザーブ・ターゲティングであった。二桁以上の金利を動かしてみても、とてもだめだと思われたのだと思う。当座預金残高をうんと引き締めることによって、金融をぎゅっと締めた。それが3年くらい続いたのだが、レーガノミックスがちょうどその頃スタートして、今の構造改革といったものが成功して、3年くらいでこれを止めたことを記憶している。日本銀行としては当座預金で金融調節を行っていくというのは、初めての経験だが、海外ではこういう例がある──逆のケースではあるけれども。

0.15%まで下げて来たわけで、無担保コールレート(オーバーナイト物)を 0.0%まで下げるというふうに見ても、そう大きな効果があるものでもないが、実質上こうして4兆円から5兆円に1兆円当座預金を増やすと、こちらはどんどん金を出すわけだから、色々なオペを使ったり、市場は緩んで、恐らくゼロ金利の日は多いというふうに思う。

しかし、ゼロ金利だったら、それ以上出すということは出来ないが、今度のやり方で行けば、これは必要だという時にはもっと金が出せる。それから市場がゼロ金利で段々小さくなってきたことはご記憶に新しいと思うが、そういうことになってくると、市場としての機能が発揮できなくなるわけで、良い者には安い金利で貸す、そうでない者には金利を高くしていくという市場機能を残していきながら、良い者が伸びていって、競争に負けた者が借りにくくなるというのは、自然の成行きだから、そういう機能を市場に残しながら、その時々の情勢を見て、必要な資金を出していくと。それで当座預金が5兆円くらいになっていくことを、日本銀行の金融市場局の一つのターゲットにして調節してもらおうということが、今回の変化である。

【問】

3月初に、総裁ご自身行われた講演で、日銀がマネタリーベースを出してもM2+CDが増えない、あるいはGDPに繋がらないというようなこと、つまり日銀がお金を出しても景気の回復にはなかなか繋がらないということを説明されたかと思う。今回こういう措置をとって、どういう波及効果を想定しているのか。結局のところ景気が良くならないということであれば、この5兆円というのは6兆円、7兆円、8兆円とどんどん増やしていくことになるのか。

【答】

講演で私が申したのは、ベースマネーでいくと過去5年で毎年 7.3%ぐらい伸びているが、マネーサプライとなると、M2+CDで 3.3%くらいしか伸びていない。また、名目GDPはその間、5年間で年平均 0.4%しか伸びていない。ということは、やはりいくら金を出しても実体経済は民間主導で動き出さないと駄目だということである。構造改革が如何に必要であるかということを、そういうかたちで説明したつもりである。

その後、ご承知のように、与党三党の緊急経済対策も出たし、構造改革が今まさに必要なんだということが、政府は勿論のこと、国民の隅々にまで行き渡りつつあるように思う。

こういう情勢変化の下で、私どもが必要と思われる資金を出して行くというのは、タイミングとしては間違っていないと思う。5兆円が今後どうなっていくかということは、もう少し見ていないと、これを増やすとか減らすとかは言えない。少なくとも4月の次の会合までは5兆円ということで、期末を越すわけであるが、目的を達していきたいと思っている。

【問】

波及効果ははっきり判らないけれども、政府の構造改革への動きに対して、日銀側が誠意を見せたということか。

【答】

「誠意を見せた」というのが適当な表現かどうかは判らないが、日銀としては、これ以上オーバーナイトのコールレートを目標にして金利操作をしても限界が知れているので、そうではなくて、根本の量そのものを調節のターゲットとして、当座預金残高を5兆円になるように金融を緩和していってくれという指示をしたということである。

【問】

インフレ・ターゲティングの関係であるが、(発表資料の)参考資料の2の最後に、「採用はしていない」と言いながらも、「物価が継続的に下落することを防止し…」と、そういう方向性を否定していないように見える。もっと進んで言えば、こういった次から次へ新しい方式を持ってくるということは、この後にはインフレ・ターゲティングがあり、あるいは新発債の日銀引受けがあり、次から次へと出てくるのではないかとさえ、感じさせられた。まず第1点は、インフレ・ターゲティングについてどう考えているか。2点目は更に新たな方式をこういうかたちで漸次採用していく考えなのか。

【答】

インフレ・ターゲティングについては、私どもも随分研究してきたつもりである。インフレ・ターゲティングという手法は、中長期的に望ましい物価上昇率を目標に設定する、先行きの物価上昇率が望ましい上昇率から乖離すると懸念される場合には政策変更を行う、こういう方法だと思う。

日本銀行としては、現在の日本では中長期的に望ましい物価上昇率を数値で示すことは、難しいと考えている。こういうかたちでのインフレーション・ターゲティングは引続き検討はしていくが、現在これを採用するつもりはない。

今回の措置は、あくまでも通常は行われないような政策を、現実の消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ以上となるまで、継続的することをコミットしたものである。従って、いわゆるインフレーション・ターゲティングとは異なるものであるが、物価が継続的に下落することを防ぐ、それから持続的な経済成長のための基盤を整備する、こういった決意、意志を示したものである。

もう一つの長期国債についてであるが、勿論、長期国債の引受けなどは絶対にするつもりはない。これは、法律でも認められていない。国債価格の買い支えとか、財政ファイナンスを目的として長期国債の買い切りオペを増額するというようなことも考えていない。

今回は、新しい金融市場調節方式の実施に当たってあくまでも資金供給オペの未達、いわゆる札割れといったようなことが起こるかもしれない。そういうことがないように、所要の資金供給を円滑に実施する上で必要と判断される場合に、買いオペを増やしていくということである。それも限度なしでは困るので、今まで限度はフローで4千億──これは銀行券の発行増加がそれくらいだったわけであるから──それに合わせていたわけであるが、今度はストックにして銀行券の発行残高──今57兆円くらいであるが──を限度とした。まだ10兆円ぐらい余裕があると思うが、ここまで買うと言っているわけではない。どんなに買ってもこれ以上は買わないということである。

【問】

前回の会合から更に一段緩和に踏み切ったわけであるが、もう一度前回と今回で景気認識を含めて一段の金融緩和を進めた理由を、つまり政策のどこが変わったのかという点を説明頂きたい。

【答】

2月に無担保コールレート(オーバーナイト物)の金利を0.15%まで下げたが、これを更にゼロ金利にしろと言われたわけである。それをやっても良いが、それだったらそれで終わりになってしまう。

ところが今度の政策では、ゼロ金利になってもいいし、0.15%がどう動いていくのか判らないが、4兆円を5兆円にすれば、翌日物のコールはおそらく多くの場合殆どゼロに近い金利になっていくだろうと思う。しかし、ゼロ金利になってしまえば、市場が段々小さくなっていく。これはやはり良くないことであるし、今後の景気動向を見てもっと出さなくてはならない場合には、ゼロでも資金を出さなければいけないと思うし、それは当座預金を見ながら必要に応じて買いオペ等をやって資金を出していく。それと同時に、やはりリスクというものが金利には伴うわけであるから、金融市場というのは質が問題になって良いものと悪いものがある。良い取引先は安く金が借りられる、悪いところは金利が高くなるというリスクをどうやってカバーするのかというのが金利の機能であるから、金利の持つ市場機能というものを活かしていくシステムとして、こういう量的な(目標を設定して)、金利は市場に任せるという制度に切り替えたわけである。

今度の新しい方法の方が幅が広くなると思うし、構造改革等でこれから質が問題になる時には、市場機能を利用してもっと使っていいものにはお金が出ていくというような制度に切り替えておいた方が良い、というのがひとつの判断である。

【問】

政府の方は、改めてデフレを定義し直し、景気判断を下方修正したが、総裁の景気認識について伺いたい。

【答】

昨年10月に公表した「経済・物価の将来展望とリスク評価」では、標準的なシナリオとして、緩やかな景気回復を想定する一方、海外経済の減速や内外資本市場の動向などいくつかのリスクを指摘していた。

最近の経済指標をみると、わが国の景気は、輸出の減少を背景に、このところ足踏み状態になっている。政府もこの間の月例経済報告で言われたし、私どもの判断もそれに近い。また、先行きについても、ここ暫くの間、停滞色の強い展開を続けるものと予想される。

このような景気展開をみると、リスク要因が顕現化し、標準シナリオを想定することが難しくなったと判断している。これが今回の措置の理由である。

景気判断が変わったかという質問については、そういう意味で、多少変わったと言えるかもしれない。

【問】

新しい措置について、市場の金利機能を活かして量的な緩和もやると言ったが、過去にやったゼロ金利政策は、市場機能を活かすという意味では不十分だったように聞こえるが、その反省のもとに今回やるということか。

【答】

そうではない。ゼロ金利政策は、99年2月に、金融システムの不安が迫ってくる、大銀行の破綻が起りつつある、しかも、現在と違って、所要の法律等が出来ていなかった。公的資金を導入するということを決めていたが、まだ実行はされていなかった。一方で、景気はデフレスパイラルになりそうだという危機を感じたわけで、そういう中で、私どもができることは、ここでこの危機を回避していくためには、ゼロ金利しかないと思ってやったわけである。

それはそれなりに効果があったと思っている。企業には資金が流れたし、そういうものが他の政府の財政措置、公共投資の増加とか、あるいは金融システムの健全化のための法案が通って、公的資金の導入も行われ、そういう金融財政が同時に動き始めて、あの危機をどうにか回避できたと思っている。

それが1年半続いたが、昨年の8月になって景気の上昇が見えてきたので、元に戻すという意味で解除した。その後のことは、先程質問に答えたとおりである。

【問】

日銀の金融政策決定会合を前に、森総理がさらなる量的緩和とゼロ金利復帰に対する期待を口にされ、これはこれで極めて異例なことだと思うが、森総理の発言について総裁はどのような感想を持ったか。また数時間後に開かれる日米首脳会談にあたって、世界同時株安も懸念されるなかで、この会談に総裁自身が逆にどのような期待を持っているか伺いたい。

【答】

今回の措置は、政府のプレッシャーがあってやったわけではない。それから、FOMCも明日開かれるが、それを考えてやったわけでもない。日本経済の中で、今私どもがやるべきことは、こうだと思って決断したわけである。そこのところは、政治的なものと結びつけて、お考え頂かない方がいいと思う。

【問】

日米両当局に為替をかなりの円安水準で容認して、日本の景気回復を後押ししようという考えが一部にあるが、総裁自身はこの考えについて、どう考えているか。

【答】

為替については、これは市場に任せるべきものである。この段階で介入するかどうかは、財務省が決めることだが、円安が急速に進むようなことになると、日本に対する輸出が多いアジア諸国にとっては非常に困ったことになるだろうと思う。そういうことを考えると、副作用が起こることは間違いないし、今どうしても、もっと円安を進めなければならないとは思わない。市場に任せて、行き過ぎだと思えば戻すであろう。

【問】

昨年8月のゼロ金利解除は失敗ではないとのことであるが、大きな見通しはやはり間違っていたという立場から、今回実質ゼロ金利に戻るのをきっかけに、総裁に責任をとったらどうかという声も出てくるかもしれないが、それについてどう思うか。

【答】

私は間違っていたとは思っていない。解除したこともあの時点で良かったと思っているし、半年経って、ここでまた多少緩和していくということは、その後の海外情勢、資本市場の変化によって動いているわけで、その辺のところは内外の情勢変化に応じて政策は変わっていく、それが出来るのはまた、金融の一つの特色ではないかと、やるべきことではないかと思っている。

【問】

責任をとるつもりはないということか。

【答】

やっていることには責任を持ってやっているつもりである。

【問】

本日の決定は賛成多数であったのか、それとも全会一致であったのか。今回の決定は、金利を目標にした政策から量的なものを目標に据えた、政策の大転換であるという見方もあるが、一方で、公定歩合はロンバートの適用金利として残る。そういう意味では量的目標と金利目標の併存という理解でいいのか。

【答】

公定歩合は残る。ロンバート型貸出の金利になるわけであるから、0.25%というのは上限になる。決定は、全員一致というわけではないが、大多数が賛成した。

【問】

政策波及のトランスミッションをもう一度説明してもらいたい。金利が下がるとターム物も下がるが、そういう金利からいく景気下支え効果を主に考えているのか、あるいは一般的に量的緩和というと、ポートフォリオ・リバランスというか、金融機関の資産の内容が変わることによって金融機関が貸出を増やすという効果も考えられると思うが、そういうトランスミッションをどう考えているのか。

【答】

今回の措置の下で、無担保翌日物コール・レートがゼロ近辺になる日が多くなるという予測はしている。明確なコミットメントで強力な時間軸の効果というものを入れてある。全国のCPIが前年比ゼロを安定的に越えていくような時までは、今の政策を続けていくということを入れてある。デフレ対策という狙いはあるわけである。

【問】

仮に何年か後にインフレが生じた場合に、インフレの局面でも同じように金利よりも量的なコントロールで金融政策を動かしていくのか。

【答】

それは今申し上げたように、インフレ率、CPIが前年比ゼロを上回って、安定的になっていった場合にはこの政策は止める。アメリカの場合も確か3年ぐらい続いたと思う。逆の政策であるが。

【問】

決定会合では、政府側からの提案はあったのか。仮にあったならば、日銀はそれに対してどういう判断をしたのか。

【答】

決定会合では他の案はあった。政府からの提案は全くない。

【問】

「消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで」というが、そうなるにはどれくらいの期間を要するのか。

【答】

(当座預金残高を)5兆円にすると申し上げたが、これはその都度、5兆円がよいのかどうかを決定会合で決めていく。しかし、制度自体は、消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまでこの水準を継続するということを本日決めたわけである。

【問】

つまり、どのくらいの期間で判断するのか。

【答】

それはわからない。これからどのようになって行くか。「安定的に」という判断は、機械的にどういうもので決めるという基準を設けているわけではない。総合的な判断で、「これなら大丈夫だ」となった時には、このデフレ対策はやめることになると思う。

【問】

政府からの提案はなかったということだが、他の案が出たのであれば、それは、総裁から出たものか、それとも議論の中で(委員から)出たものか。

【答】

委員の提案はあった。議論も随分したが、採決の時に、議長案が多数で決まったということである。他の提案は否決された。

【問】

今回の提案は議長提案か、確認したい。

【答】

議長提案である。

【問】

総裁の認識として、99年2月のゼロ金利に入った時と比べて、今の状況というのは、それに匹敵する危機だと考えているのか。

【答】

99年2月の時とは違った意味での危機感といったほうがよいと思う。今、日本はこれから構造改革をやろうと言っているが、それができない限り、日本経済は今の状態が続いてしまうという懸念があるわけで、そういう意味での、これから前へ進んでいくことへの危機感というものを、私たちも持っている。それを、金融サイドからできるだけサポートしていこうという判断で、今回の措置を決めたと考えてほしい。

【問】

現在の金融システムの状況について、どうみているのか。

【答】

金融システムについては、バランスシートを早く良くしていくという考えは私も賛成で、先日の講演でもそのことは強調したが、あまり強引にやれるものでもない。それぞれの銀行が今、金融の再編を考えながら色々手を打っているわけで、先般のUFJグループ(三和・東海・東洋信託)が、この3月に赤字を出してでも不良資産の償却をやると決めたことは、私は高く評価したいと思う。

それぞれの銀行は事情があるから、全てこうやりなさいと言えるものではないと思うが、方向としては、なるべく早くバランスシートから要償却債権を落としていくことが望ましいと思っている。

【問】

今回の決定は、かなり思い切った手段を採ったように見受けられるが、今後、更なる金融緩和の必要性に迫られた場合、どのような措置を採っていこうと考えているのか。

【答】

それは、これからどのように展開していくかに拠るものなので、この段階で次は何かということは、ちょっと申し上げるわけにはいかないし、そういう立場にもない。

【問】

総裁はその都度、的確な対応をしてきたという立場だが、株価はこれだけ下がり、デフレ状態になってしまった。先を読めなかったという点では、広い意味で責任の一部はあるのではないか。

【答】

責任の一部というのは、どういう意味かわからないが、金融情勢が世界的に影響を受けて変わって行き、特に最近はそれが速くなっていることは、私どもも今回の経験で知ったわけだが、そういう情勢の変化を考えながら、その時その時にタイムリーな手を打っていくというのが、私どもができる全てだと思っている。

【問】

海外の変化が速すぎたということは、それを読み切れない部分もあったかもしれないということか。

【答】

先程申し上げたとおり、連銀でもそうだった。11月はインフレ懸念だと言っていたわけだから。それが12月になって変わってきた。それで金利を下げたわけである。世界全体の情勢変化はずいぶん速いものだと知ったという意味においては、ひとつの経験をさせて頂いたと思う。今後は、そういう観点を持ちながら、政策を決めて行きたいと思う。

【問】

通常では行われない思い切った金融緩和を行うとのことであるが、日銀の判断としては、デフレスパイラルに陥るような危機だと認識しているのか。また、かなり思い切ったという表現を使っているが、当座預金残高の5兆円というのは、前回のゼロ金利当時の水準と同じである。前回のゼロ金利と比べても非常に強力だと考える理由は。

【答】

それは、目標を変えたわけであるから。0.15%にまで下がってきた無担保コールレート(オーバーナイト物)の金利を目標とするのではなく、金利は市場に任せて、元になる資金を当座預金の残高をみながら調節するというふうに切り変えたわけである。

【問】

デフレスパイラルに陥るような危機だと判断されているのか。

【答】

その可能性は全くないというわけではない。ただ、99年2月のような危機感とは違った危機感だと思う。今回のは、むしろ、前向きの危機感だと思う。どうやって構造改革を支えていくかという考え方である。あの時と市場金利の低さを比較されると分かると思うが、中期の金利にしても長期金利にしても、この間の2月の引き下げでも、非常に良く効いたといってよいと思う。3ヶ月物の金利も昨年末 0.6%ぐらいだったものが今 0.2%くらいになっている。だからずいぶん下がっていると思うし、長期金利もここに来て非常に低くなってきた。そういう低い金利のなかでこれからの政策をどう考えていくかということも考えながら、政策のターゲットを変えたと。この方が広範に、あるいは流動性の高い政策が決められるというふうに考えたわけである。

【問】

現状は、構造改革に伴う本格的な痛みが現れている局面ではないと思うが、これから不良債権の最終処理が起きてきた場合、日銀としてはどういう後押しをするのか。今回の措置で十分なものが用意されているとみるのか、構造改革を進めていく上で、そこは柔軟に対応する余地があるとみるのか、総裁はどうお考えか。

【答】

現状で判断すれば、4兆円を5兆円に緩和するというこの金融緩和で、適当ではないかと思っている。これから先、構造改革の過程でどのような痛みが出てくるかは、まだ読めない段階ではないか。そういう変化をみながら、今後の政策を変えていくことになると思う。現状はこれで良いと思っている。

【問】

4兆円から5兆円に増額するというのは、今起きていることに対するひとつの対症療法であり、これから先起きることについては、また改めて柔軟に考えていくということでよいのか。

【答】

毎回の決定会合で、当座預金の目標をどうすべきかということが、検討されていくと思う。その他の物価動向、構造改革の進展状況等をみながら、制度自体を変えるようなことも起こってくるかもしれない。当面、今回の新しい制度で、金融政策をタイムリーに調節していきたいということで、こういう政策の転換を決めたわけである。

【問】

長期国債の買い切り額についての考え方を今回変更したわけだが、今回変更しなければならなかった理由が今ひとつ分からないので、教えて欲しい。

【答】

この前のゼロ金利の時も、手形を想定した金額どおりに買えなかった時もあるし、国債の方も種類も増えているし、量も増えているわけであるから、そういうものを考えて、新たな買い切りオペの範囲を広くしていくということに変わっていったということだと思う。短期国債の買い切り増額も2月の決定会合で決めたわけだが、短期国債の買い切りオペも活発にやっていくが、同時に(長期)国債の買い切りについても、従来は銀行券が増えた分は長期国債を買うということで毎月4千億円買ってきたわけだが、まだ、銀行券の方が多いわけである。その銀行券の発行残高を限度にして、必要に応じて買っていくというのが今回決めた措置である。

以上