公表資料・広報活動

ホーム > 公表資料・広報活動 > 講演・記者会見 > 記者会見 2001年 > 総裁記者会見要旨 ( 3月22日)

総裁記者会見要旨 ( 3月22日)

2001年 3月23日
日本銀行

―平成13年 3月22日(木)
午後 3時から35分

【問】

19日に追加金融緩和をされ、その後長短金利が下がり、株価は昨日大きく上がって、その後下がっている。市場の動きについてどうみておられるか。

【答】

19日の金融政策決定会合の後、まだ営業日としては2日目である。これからの動きは分からないが、とにかくかなり思い切った、通常では行われないような金融緩和に踏み切った。その効果は、金融市場を通じて、徐々に実体経済に波及していくものではないかと期待している。

とりあえずの市場の反応という意味では、オーバーナイト金利は、昨日が0.06%、今日が0.04%のところにきている。ターム物金利や長期金利は、いずれも大きく低下していたが、さらに幾分低下してきているように思う。また、株式市場も、今回の措置を前向きに受け止めたものと思う。取引量も、昨日が10億株を超え、今日も10億株を超えているので、市場は非常に活況を呈し、元気が出てきたので、これが続いていけばよいと思う。

今後とも、市場動向については、注意深く点検して参りたい。今のところ、そのくらいの変化だと思う。

【問】

日米首脳会談があり、日本の金融機関の不良債権最終処理を進めようという話であったが、首脳会談全般の評価をお願いしたい。

【答】

共同声明をみると、日本については、適切な経済政策運営と金融システムの強化を含めた構造改革と規制緩和の推進、米国については、持続的な成長に向けた政策運営が確認されたと認識している。

日本の経済を再生するうえで構造改革が不可欠であるという認識は、国の内外で広く共有されているが、こうしたことが両国首脳の間で再確認されたということは意義の深いことだと思う。また、米国経済の動向は、昨年末から経験しているように、わが国や世界経済の先行きに大きな影響を与えるものであるだけに、米国経済の持続的な成長に向けた適切な対応が図られることを期待してやまない。今のところ、そういう感じである。

【問】

FOMCだが、米国も日銀の決定の翌日0.5%下げたが、市場の見方によると、少し小さいのではとか色々評価があるが、総裁の見方如何。

【答】

年初来これで3回目だと思うが、米国も昨年末から予想を上回る急激な経済の減速が起こっており、FRBとしても、こうした状況を踏まえて、適切に対応されているのではないかと思う。

米国経済の動向は、わが国の景気の先行きに大きな影響をもたらすものであるので、引き続き重大な関心を持って見ていきたいと思っている。

【問】

総裁は、ゼロ金利政策の時に、年金生活者の方にはもうしばらく辛抱して欲しいということをおっしゃっていたので敢えて伺うが、都銀各行は本日以降普通預金金利を引き下げる。前回のゼロ金利の時は0.05%だったが今回は0.02%である。普通預金金利が横並びのような感じで設定されているうえ、今回は、日によってはゼロ金利にならない日が出てくるにもかかわらず、前回よりも低い金利になっている。短プラも下げるわけだから、同じだといえばそうだが、預金者にとっては解せないところがあると思う。それについてはどうお考えか。

【答】

日本の家計の金融資産は、ご承知のように今54%以上が預貯金と現金になっているから、利回りが低いということは非常にお気の毒なことだと思う。物価が下がっているから、インフレの時と違って、預金が減価するということはないので、その心配はないと思うが・・・。

銀行の預金金利が下げられたということは、確かにお気の毒なことだと思う。しかし、これで企業などが前向きにどんどん創造的な破壊をやって、新しい需要を創り出していくような展開を示していかない限り、日本の経済は世界の動きに取り残されていくことは明らかだと思う。

ご承知のように、米英は既に10年前から構造改革というか、「セルフヘルプ」と彼らは言っているが、自助努力で、民間主導で競争しながら成長していくという経済に切り替えて、──アメリカもイギリスも非常に苦しい時があったわけだが──今やどちらもここ10年の間にかなり構造改革が行われて、競争力がついてきているわけである。

日本もこのままではだめで、生産性を伸ばしていく努力を民間がしていかないと追いつけないわけである。今、物価が下がっているのは、必ずしも需要サイドの要因だけではないけれども、需要面で弱くなっているということがあれば、企業としては、売上高も収益も下がってくることになる。そのことがいずれは家計に──雇用の面でもそうだし、所得の面でもそうだし──、非常に大きなマイナス要因になっていく懸念があるわけである。そこのところを今ここで立ち上がらなければだめだということで、民間でも政府の中でもそういう声がかなり強くなってきていることは、私は良い方向に動き出しているというふうに思っている。そういうものがこれから起こってくる時に、金融サイドでも支援していく体制を整えていきたいという思いから、こういうことを行ったわけである。

ただ、その代わり野放図な金融緩和──金利は市場に任せて、資金を必要なだけどんどん出すと同時に、それによって物価が上がってきて、消費者物価がゼロを超えてさらに上がっていくということ──がないように、ゼロになって安定したら今の政策は止めるということを──時間軸というか──はっきりコミットしている。それと同時に、これからどうやって量を増やしていくかという場合に、色々手段はあるが、長期国債の買いオペを、今までは月4千億円、──これは銀行券の伸びが大体それくらいだということで月2回買いオペをやっていたわけだが──今後は必要に応じて買いオペ量を増やすことがあるが、フローでなくて残高、銀行券の残高より日本銀行の保有長期国債が増えないようにそこではっきり止めて、行き過ぎて逆効果──インフレ効果──が出てくることにならないようにチェックしていくつもりである。その辺の金融調節は、私どもにお任せ頂いて、うまく調節していきたいと思っている。日銀法第2条に書かれているような、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という日銀の使命は、そういうことをやることで果たされると考えている。

【問】

先程総裁が19日の決定によって、金融市場を通じて徐々に実体経済の方に波及していくことが期待されるとおっしゃったが、具体的にどういったルートを通じて実体経済に資金が流れていくことを期待しているのか。そのルートをどうみているのか伺いたい。

【答】

ルートとしては色々あると思うが、市場を通じて金融機関は必要な資金を調達してそれを貸出に使うだろうし、それによって企業が必要な資金を調達することができる。こうやって株価が回復してくれば、企業にとっても資金調達の道が広がっていくことになると思う。

取り敢えず金融機関について申し上げると、皆さんおっしゃっているように、第1に必要なことは、金融システムの安定化、不良資産の償却である。その場合も、銀行決算における株式の時価評価は来年度からであるが、この間UFJがやったように、少し早めに手を打っていくということが望ましい。

その場合に、色々な債権の償却方法があると思う。この間も申し上げたが、企業を分割して、良い部分はそのまま伸ばしていく、悪い部分は売却して処理していくということ、あるいは償却していくということが行われていかなくてはならないわけで、そういう過程で色々な形で資金の新しい需要が出るだろうと思う。そういうものをこういった金融緩和で賄っていくことが出来れば、私どもの責任は果たされると思っている。

【問】

日銀が金融緩和し、政府の方も経済対策等々で構造改革の枠組みのとば口くらいまで来ていると思う。今の話にあった銀行の方であるが、UFJが前倒しの不良債権処理で赤字決算ということになった。銀行業界では色々と考えていると思うが、次に続くようなところ、あるいは軒並みといったことには今のところなっていない。この辺について、総裁はどのようにお考えか、所感を伺いたい。

【答】

それぞれの銀行が再編の途中にあるわけで、そういうこととも関連して決断をするのは非常に難しい時期かもしれないが、やはり不良債権というのはバランス・シートから切り離していかなければいけない。これまで68兆円というかなりの額の償却をやってきており、バランス・シートからもそれに近い金額が引き落とされているわけであるが、新たな不良資産が生じてきているということも、また確かである。その結果として、残っている不良資産の残高があまり減っていない。そういうものも含めて、なるべく早く償却をする──できることならバランス・シートから引き落としていくのが一番良いと思うが──必要な額を引当てに積んでいくということもやっていかなくてはならない。そういうことはそれぞれの銀行が先を見ながら決めていくことだと思う。

今度のUFJの判断というのは、私はかなり高く評価したい。適切かつ適宜なやり方を採られたと思う。いずれにしても、金融システムを活力のあるものにして、更に喫緊の課題である産業構造改革を進めていくためには、不良債権の最終処理に向けての対応を含めて、残されている課題に積極的に取組んでいく必要があると思う。

今後も、個々の金融機関が自らの経営課題に前向きに対応していかれるとともに、産業再生とか証券市場等の活性化など、日本経済の構造改革に向けた関係方面の取組みが、着実に進展していくことを強く期待していると申し上げたいと思う。

【問】

自民党で郵貯の問題が大きな論争になりかけているが、以前から、郵貯は資金の流れを歪めるとか、政府系の特殊法人の肥大化の根源になっているなどと言われている。総裁はこの問題に関して、どのように改革を進めていくべきとお考えか。

【答】

郵貯というのは資金運用部の資金ソースの中心であったし、それが公共投資に使われるというようなことで、非常に大きな機能を果たしてきたことは確かである。しかし、そういうものが段々、政府や中央団体の手から民間の手へ移っていくのが、これからの進むべき方向だと思う。郵貯の民営化というのは、長く議論されてきているが、これは大きな政治問題でもあるから、とりあえずは公社化ということで今話が進められているのだと思う。そのこと自体も、私は方向としては結構だと思うが、そういう過程を通じながらやはり民営化していく、同じ預金を集めそれを使うということは、民間企業と同じレベルで同じ条件で戦う、争うべきことではないかなという感じは持っている。それが一遍にやれるかどうかは政治問題なので、私からこれ以上のことは申しかねるということである。

【問】

金融機関の不良資産をバランス・シートから落としていくということが望ましいということで、金融庁を中心に3省庁でこれを協議をしている最中かと思うが、これに対して具体的にどのような方策で進めたらいいのか、日銀の方も知恵を出す局面があろうかと思うが、現時点の総裁の考え如何。

【答】

かなり大きな作業であるから、やはり基本的には金融機関がそれぞれ貸出を増やし、あるいは手数料もうまく増やしていくとともに、経費率というか、人件費、物件費をセーブしてリストラをやって、特に再編を通じてそういうことが行われていって、収益を増やしていく、それによって、その資金を使って償却をしていくのが最も望ましいやり方であると思う。(不良債権の)金額が非常に大きいと一遍にそれが出来ないかもしれない。その辺のところは、それぞれの銀行によって立場は違うであろうが、まだまだ株もたくさん持っておられるだろうし、そういうものをうまく処理しながら(やっていく)。不動産の担保など、土地の売却というのは非常に難しいと思うが、段々二極化現象が起こってきているから、うまく売れる物もあれば、売れない物は流動化して、証券化していくということが広く行われるように変わりつつあるように思う。バブルで上がり過ぎたことも事実であるから、地価が一遍に上がることは難しいと思うが、担保に使っている土地をどうやって処分し、どうやって活かしていくかということが、金融機関がこれから知恵を絞ってやっていかなければならない一つの問題だと思う。そういうことを通じて償却を増やしていくとしても、1〜2年ではなかなか片がつく問題ではないと思うが、これもまた景気が良くなっていけば、そういうものも段々やり易くなっていくものだと思うし、悪くなっていく時はそれこそデフレ・スパイラルになっていくので、そういうことにならないように、前向きに進んでいくことを期待している。いずれにしても、今ひっかかっているのは、まだ不良貸出を銀行も持っているし、企業の中にもかなりバランス・シートを整理しなければならないところがあることである。やはり自由競争の世界の中では、勝つ者もいれば負ける者も出てくるわけで、負ける者がただ負けただけでなくて、これでだめだと思ったら早く仕事を変えて、新しい仕事を探していくということが、企業経営者にとっても、また雇用者にとっても必要であると思う。労働市場なども、もっともっと流動化していって構造改革が行われていくことを期待したい。皆、「構造改革」、「構造改革」と言っているが、中味はかなり広いのではないかと思う。

【問】

最終処理の問題に絡めお伺いしたい。UFJの赤字決算も、最終処理を進めるうえで間接償却を進めるという意味で、引当金をかなり積み増したと思う。金融庁なり各金融機関は、引当ては適切に行われていると言うが、内外の色々なところから、いや邦銀は引当金不足だ、まだ引当金を積む必要があるのではないか、もっと努力をする必要があるのではないかという指摘があることについてどう思われるか。また、これから最終処理を一気に進めていく段階で、自己資本が目減りしていき、金融機関によっては公的資金の再注入の可能性も排除できないとの指摘もあるが、それについてどう思われるか。

【答】

金融庁が、要注意貸出については引当金を積まなければいけないということを、規則を作ってウォッチしておられるはずであるから、それがそのとおり行われていけば良いと思う。ただ、要注意貸出といっても、非常に親しい取引先——銀行がこれは何とか生かしたいと思っている取引先——をどう扱っているかということは、色々と銀行との取引関係によって、あるいは長い歴史の中で出来てくるものであって、その辺に難しさがあると思う。要注意貸出に対して引当てを積んでしまえばそれで終わりだということではないのではないかと推測する。同じ取引先、同じ企業であっても、銀行によって扱いが違っているのではないかと思う。不良貸出の残高が消しても消してもなかなか減っていかないというのは、そういうことも含まれているのではないかと思う。その辺のところは、金融機関がやはり厳しい目で取引先の扱いを考えて——自行の将来がかかっているわけであるから——処理していくことが必要だと思う。これは金融庁の仕事であるし、私どもも考査の立場で、色々取引先に注意を喚起している。

【問】

そういったことで引当てなり最終処理を進めていくと、公的資金注入により底上げされている邦銀の自己資本比率が目減りしていくのではないか。3月末で健全行への資本注入は終わることになっているが、更に必要になるのではないかとの指摘が根強く聞かれるが、どうか。

【答】

自己資本比率は、今までのBIS規制でいくと、かなり高い水準にあると思う。BIS規制も、2004年から(新基準に)切り替えようとしているし、ただ数字が大きければ良いというものではないと思う。その辺のところは銀行によって違うので、一概にどうすべきだとはいえない。今、思い切って償却を行う、あるいは、貸出の内容を審査して引当てを要するものは間違いなく引当てを行っていくということを、各行が、金融庁のルールに従いながら行っていくことが必要ではないかと思う。

【問】

要するに、資本不足になることは今考えられないということか。

【答】

銀行によっては出てくるところもあるかもしれないが、すぐ出てくるのはここだ、ということは感じていない。

以上