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総裁記者会見要旨 ( 4月17日)

2001年 4月18日
日本銀行

―平成13年 4月17日(火)
午後 4時から20分間

【問】

日銀は、2月、3月と立て続けに政策変更に踏み切った訳だが、その後の短観、支店長会議、金融経済月報を踏まえた景気の現状認識と当面の金融政策の運営スタンスについて伺いたい。

【答】

先週決定会合があり、皆さんも月報をご覧になったと思うが、「わが国の景気は、輸出の落ち込みを主因に生産が減少するなど、調整局面にある」と、景気についての現状判断を一段下方修正した。

ただし、こうした姿は、先月思い切った金融緩和措置を採った時に、既にある程度想定していたものであった。

まず、需要面の動きについてそれぞれの項目で説明させて頂くと、設備投資は増加を続けている。個人消費も、全体としては回復感に乏しい状態が続いているが、一部の指標──例えば家電とかコンビニ等──を見るとかなり明るさが窺われる面もある。

しかし、やはりアメリカや東アジアなど海外経済の急速な減速を背景にして、輸出や生産は明確に減少しているし、当面このような動きが続く可能性が強いと思う。このために、企業収益の改善テンポも、足許では大幅に鈍化しているとみられる。

先日公表した短観でみても、企業の業況感が製造業を中心に悪化しているほか、設備投資スタンスも慎重になっていることが窺われる。

この間、家計の所得環境はなお底固さを維持しているが、企業収益の改善テンポの鈍化を踏まえると、今後は、家計の所得や消費の改善も滞りがちになるのではないかと懸念される。

先週初めに行った春の支店長会議における各支店長の報告を見ても、業種や地域によってかなり違いはあるけれども、全体としてみると、只今申し述べたような「調整局面」という判断と、概ね整合的であったと思う。

こうした景気情勢のもとで、国内需給バランスの面からは、物価に対する低下圧力が働きやすい状況にあると思う。また、技術進歩や流通の合理化、規制緩和といったいわゆる供給サイドのコストダウンの要因も引き続き物価下落方向に働いていくと思われる。このために、物価は、当面弱含みで推移するのではないかと考えられる。

こういった景気・物価情勢の認識に立って、当面の金融政策運営としては、先月決定した思い切った緩和措置──リザーブ・ターゲティング──を継続していくことが適当であると判断している。その上で、日本銀行としては、こうした緩和措置の浸透状況や構造改革の進展度合いとその経済への影響などを、注意深くみて参りたいと考えている。

【問】

卸売物価が6ヶ月連続で前年比マイナスになり、物価下落傾向が明確化している。今月末に「将来展望とリスク評価」が発表されるが、今回の政策の解除条件となっている「消費者物価の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで」とは、いったいどの程度の期間がかかるとお考えか。

【答】

物価を巡る環境をみると、景気の調整が続いていく中で、国内需給バランス面からは、物価に対する低下圧力が働きやすい状況にある。また、技術革新、流通合理化、規制緩和といったような供給サイドの要因も、引き続き物価下落方向に作用するものとみられる。このため、物価は、当面、弱含みで推移するものとみられる。

「消費者物価指数が安定的にゼロ%以上となる」という時間軸というか、条件をつけたが、それがいつかを現時点で予想することは難しい。やや長い目で見た物価情勢の先行き見通しについては、今月26日、次回の決定会合で公表する「経済・物価の将来展望とリスク評価」で、政策委員会メンバーの考え方が明らかになると思うので、私の数字をここで申し上げることは出来ない。今度の政策決定会合の後の数字を見て頂きたい。

【問】

マーケットでは、大体2年ぐらいはかかるだろうと見ている方が多いようだが、それについてはどう評価するか。

【答】

期間については非常に難しいが、2年間かかるか、もっと早くいくかというのは、もう少し内外情勢の変化を見ていかないといけないと思っている。2年といったようなことを言うつもりは全くない。

【問】

先日纏められた緊急経済対策には、株式の保有制限等も盛り込まれ、これは市場原理に反するのではないかという意見もあるが、緊急経済対策全体についての評価如何。

【答】

緊急経済対策は4月6日に発表されたが、私どもは「金融緩和措置の持つ効果が十分に発揮されて、日本経済が持続的な成長軌道に乗っていくためには不良債権問題の解決を始めとして、金融システム面、経済・産業面での構造改革の進展が不可欠の条件である」ということを、3月19日のステートメントの最後でもかなり強く申した次第である。

今回の対策には、構造改革を支援するための各種の施策が盛り込まれている。問題解決に向けた政府の積極的な取り組み姿勢が示された点は高く評価したいと思っている。同時に、日本銀行としては、構造改革はやはり民間部門の自助努力による、民間主導のものでないと効果が発揮できないから、そのことを考えて各方面での抜本的取り組みが速やかに進展することを強く期待している次第である。

【問】

緊急経済対策には銀行保有株式の取得機構の設置も盛り込まれており、株式の買い取り資金の融資を日銀に協力要請するというような案も浮上しているが、要請があった場合は日銀はどのように対応していくつもりか。

【答】

4月2日の経済財政諮問会議では、「株価対策としての買上機構については、どうやって出資をするのか、またロスが出た場合にどこがどうして埋め合わせるのか、その辺のところが非常に大きな問題でもあるし、市場の健全な成長のためにもあまり無理して作らない方がいい」というようなことを申したことを、議事要旨でご覧になった方もおられると思う。

それと同時に、銀行の株式保有というものは、本体で多く持っているのは、主要国では日本とドイツの2カ国ぐらいであるが、やはりかなり無理がある。日本の場合は、メインバンク主義といったようなことがある程度影響して、株式の持ち合いをしたりして、かなりの株式を資産として持っていることによって、株価が大きく変動した場合にバランスシートの面でかなり大きな波乱が起こるということを、この10年、どこの銀行も一様に経験されてきたと思う。

こういうものの対策として、政府の緊急経済対策の中では、株式買い取りスキームについて、今申し上げた2つのことを1つにして、銀行の株式保有制限に関する制度整備と併せて、今後具体案を策定していくということが書かれていて、その過程で様々な検討が行われていくと考えている。

いずれにしても、私どもとしては、こうした問題の他に不良債権の抜本的処理とか、市場の活性化対策といったようなことも検討されていかなければならないと思う。こういうことが、わが国経済の構造改革に向けての取り組みなのであって、速やかに進展することを期待している。

先程おっしゃった、「日本銀行に何か要請があった時にどうするのか」というご質問であるが、銀行の株式保有を制限すると銀行経営が株価変動の影響を受け難くなるという効果は確かにあると思う。ただ、この問題に関して、現在政府から銀行保有株式取得機構に対して融資とかその他の協力要請を受けてはいない。株式買い取りスキームについては、今後その前提となる銀行の株式保有制限に関する制度整備と併せて、具体策が策定されていくものと承知している。従って、今そういったご質問に答えることは出来ないと申すしかない。

【問】

来週、自民党の総裁選が予定されている。一般論で結構だが、どのような方が今の日本に必要であると思われるか、また、経済政策面での論点として、財政再建の問題や、減税措置であるとか様々挙げられているが、これらについて総裁はどう考えておられるか。

【答】

総裁選挙について中央銀行総裁としてコメントすることは差し控えさせて頂きたい。それしか申しようがない。ここまで迫ってきて、候補者が4人で競争しておられる訳ですから。

【問】

個人名を挙げないとしても、どのような・・・。

【答】

そこも、言えばすぐわかるようなことは、ちょっと申し上げられない。

【問】

前回の量的緩和決定以降のマーケットの動きだが、最近長期金利が上昇してきているが、時間軸設定の際に効果として謳ったイールド・カーブ全体の低下と矛盾していないか。また、最近の長期金利の上昇について総裁はどう評価しているのか。

【答】

今日のところは1.45%だが、以前が少し低すぎたのではないか、株式から国債へかなりのシフトがあったのではないか、と思う。国債に対する需要が非常にあって、それで国債の金利がかなり下がっていたが、1.45%というのは比較的落ち着いた所で動いていると言える。短期金利は0.02%、(日銀当座預金残高が)5兆円というのもだいたい落ち着いてきたように思うし、ターム物金利もかなり低くなってきているから、量的緩和の効果は十分出てきたと思っている。

【問】

対策のなかに、保有制限と並んで、不良債権の抜本処理を2年で行うというのがあるが、これについてはどうみておられるか。

【答】

今朝の新聞で書かれていたことについては、私どもとしては、改めて何らかの具体的なアクションを検討しているわけではない。ただ、不良債権問題に関する私どもの考え方を繰り返せば、各金融機関が不良債権問題を克服していく上では、不良債権のオフバランス化とともに、刻々と変わっていく金融経済情勢を踏まえ、要注意先の債務者の業況悪化とか不良債権の新規発生を常時ウォッチしながら適切に対応していく必要があるということは、ここに来てかなり強く感じている次第である。こうした点について、金融機関経営者に対し、種々の機会を捉え、繰り返し申し入れていきたいと考えている。こういうことをしていかないと、なかなか不良貸出の減少というところに行かないのではないかと思っている。

【問】

今月末に予定されているG7では、どのような点に力点を置いて、わが国の経済動向、金融政策運営を説明されるおつもりか。

【答】

G7の議題など具体的な内容について、私の立場からあれこれ申し上げることは適当でないと思うので、コメントは差し控えるが、私としては、中央銀行の立場から、わが国の経済の現状とか、先月決定した金融緩和措置、量的緩和、リザーブ・ターゲティングといったものを含めた金融政策運営の考え方について、これまでの決定会合での議論を踏まえて十分説明し、分かって頂く機会ではないかと思っている。

以上