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植田審議委員記者会見要旨 ( 4月18日)

平成13年 4月18日・青森県金融経済懇談会終了後の記者会見要旨

2001年 4月19日
日本銀行

―平成13年 4月18日(水)
午後 2時30分から30分間
於 ホテル青森

【問】

青森県経済界の方々との金融経済懇談会の具体的な中身と、審議委員が感じられた本県経済の情勢を率直に伺いたい。

【答】

非常に活発なご意見や厳しいご指摘を頂戴した。全部は紹介できないが、一つは青森県地域の経済が全国と同じように厳しさを増しているというお話を色々な側面から頂戴した。その中で特に印象に残った点として、今年の年明けから景況感が急速に悪くなっているとの声が多かった。また、先行きの見通しが不透明である点が問題となっている、デフレ──物価の下落傾向──が続いている点が企業にとって苦しさの要因になっているというご指摘等を頂いた。全国について我々が気にしていることと、その辺りが一致していると感じた。二つ目は、構造改革の問題に非常に多くの方々の関心が集まっており、お題目はいいが、どういうものがあるか具体案をきちんと検討して、政策を示して欲しいとの声が聞かれた。関連して、会計制度変更の動きが色々とあるけれども、現場の企業では非常に戸惑っている面もあるといった声が聞かれた。構造改革の一つのポイントである不良債権問題についても、中小企業融資において金融機関が非常に苦慮している側面があるとの指摘も受けた。

その他、青森県の話題として、新幹線の問題について早めにきちんとした形で解決をみたいといった声が強く聞かれた。また、県としては中長期的に戦略をもって産業振興を考えているといった意見を知事から頂いた。具体的には、文化的な側面──観光、スポーツあるいはファッション──を起点としたいという御意見であり、印象に残った。最後に、日本銀行にはもっと存在感を示して欲しいというお叱り、激励を頂戴した。色々な場所で経済界等の方々と積極的に接触して、現場の意見・情報をきちんと吸い上げて欲しいという意見であった。

【問】

青森県経済についても全国と一致するところがあったとのことであるが、逆に全国と青森県経済との違いを伺いたい。青森県経済は、IT関連産業や電気機械産業の比率が東北の中でもかなり低く、一次産業が中心の県であるということで、全国の景気情勢とずれが生じている面があるとみているが、如何か。

【答】

全国との共通の話題が中心となったが、一つはご指摘頂いたように、──県知事がおっしゃったことであるが──中長期的な視点から県経済の産業振興を戦略的に考えており、そうした中で農林水産資源を色々な形で活かしていきたい、という点が他県では余り聞かれない点であると感じた。

【問】

3月19日の金融政策措置におけるリスクについてどうみているか。例えば、長期国債の買い切り増額については、財政規律の失墜に繋がる懸念があるが、前回のゼロ金利政策と比べた今回の措置におけるリスクの違い、あるいは新たに発生するリスクについて伺いたい。

【答】

一つは、今ご指摘頂いたように、長期国債買い切りの増額に踏み出すことに伴うリスクがあると考えている。この点に関しては、3月19日に発表したとおり、買いオペ増額にいろいろな形で制限を設けている。最終的には、日銀券の残高を上限とすることで、マイナスの方向の影響をミニマイズできるのではないかと思っている。また、個人的には、時間軸の効果が強いということは、反面リスクがあるということと思う。つまり、強力な時間軸であるため、強い金融緩和が思った以上に長期化するリスクがあるのではないかと思う。

【問】

インフレ・ターゲティングとの関係についてご説明願いたい。

【答】

簡単に説明すると、今回の措置の時間軸はかなり具体的になっており、見る人が見ればインフレーション・ターゲティング的な側面があるという風に読めるだろう。ただ、私どもの意図としては、厳密なインフレーション・ターゲティングに乗り出したということではない。ポイントの一つは、CPIでみたインフレ率がゼロ%以上になるまで強力な金融緩和を維持するということであるが、インフレ率ゼロ%以上を何がなんでも達成するということを約束している訳ではない。また、インフレ率ゼロ%以上というのは、日銀当預を目標として、強い金融緩和をするという政策の続く期間に関する条件であって、これが直ちに、将来仮に我々がインフレ・ターゲティングに乗り出すとして、ゼロ%辺りを(目標値とすることと)決めている訳ではない。中長期的に適当と思われる目標インフレ率がどうなるか、という話と、今回の決定の中のゼロ%前後あるいは若干ゼロ%以上という部分とは別の問題だ。

【問】

前回のゼロ金利政策と今回の量的緩和が類似している一方で、買い切りオペを増額するということが違うと思うが、本日の説明の中で「国債買い切りオペが、リスクプレミアムに働きかけることが出来るなら、若干の追加効果が生まれる可能性がある」と述べられた。国債買い切りオペを実施することで、リスクプレミアムに働きかけることが出来るという場合、考えられるリスクプレミアムは、例えば、財政に対するリスクプレミアムだと思われるが、財政に対するリスクプレミアムを減らすことが出来るという意味なのか。仮にそうだとすれば、国が国債をどんどん発行しても、いずれ日銀が買い支えてくれるのではないか、というモラルハザードにも繋がりかねないと思う。そうしたモラルハザードを引き起こすことで、市場の不安感を抑えることが出来るという効果を狙っているのか。

【答】

第一に、長期国債の利回りを決めるリスクプレミアム発生の要因は、極めて多様であることを申し上げたい。そのうえで、どのようなリスクプレミアムであれば、我々の買いオペ増額が、それを小さくする方向に有効かという点については、答えを差し控えさせて頂きたい。それは、今後の金融政策決定会合で議論されるべき論点だと思う。ただ、付け加えると、——最初の方の質問への回答とも重なるが——財政赤字のマネタイゼーションのリスクに対する認識から発生し始めたようなリスクプレミアムについて、我々が出て行くことが反ってそれを拡大してしまうというリスクがあるという点は、これまで何度も色々なところで日本銀行として申し上げてきたと思う。従って、その点については非常に注意を払わないといけない、あるいは慎重でなければならないということは申し上げられると思う。

【問】

完全なゼロ金利政策と量的緩和の比較を説明されたが、その違いとして、局面によって量的緩和は完全なゼロ金利を達成できる保障はないということを述べていたと思う。その関連で、金融政策として、完全なゼロ金利を達成し続けることが必要であると考えているのか、お伺いしたい。

【答】

色々なプラス、マイナスの側面があると思うが、程度は別として、金利が完全にゼロになった方が低金利である訳だから、ある種の追加的な緩和効果はあると思う。ただ、その影響の程度がどれだけ大きいかということは別問題だと思う。また、逆方向では、我々が公式に申し上げているとおり、無担のオーバーナイト・コール・レートを完全にゼロの水準に貼り付かせるということが、市場の緊張感をなくしてしまうというデメリットがあるかも知れない。ただ、それもどれくらい大きい問題かは難しい問題かと思う。そうした様々な要素の綱引きの中で、どのくらいの水準が適当かということが決まってくる訳であるが、取りあえず、5兆円という当預目標、それと対応したコール・レート水準、ないし期末日等の変動を選択したということだと思う。

【問】

完全なゼロ金利+時間軸政策の方が強力であるが、量的緩和の弱い部分は、当預残高を増やして補うことができるということであるが、仮に、その弱い点を補うために当預残高を5兆から6兆あるいは7兆にせざるを得ない状況がきた時、長期国債の買い切りオペというものが行われる可能性は今よりも高まると思う。しかし、長期金利が財政プレミアムなどというものが加わって上昇局面にある時に、日銀が買い切りオペをやると、植田委員が言われたように、マネタイゼーションを高める可能性があり、これは大きなリスクであると思うが、どうお考えか。

【答】

そもそも、(日銀当預を)5兆円、6兆円、7兆円とかに増やすことがあるとして、それがオーバーナイト・コール・レートがすこし跳ねるような傾向を強めたからだとすると、必ずしも長期国債オペを多用することなしに、増やせるのではないかなと思う。断言できる訳ではないが。長期国債市場に難しい動きが起こっている時には、非常に悩ましい判断を迫られると思うが、どういう場合に、それでもやる、どういう場合にはやらない、ということを申し上げる訳にはいかないので、それは決定会合で十分議論することになると思う。

【問】

量的緩和が3月21日から開始された訳だが、それの効果をどう受け止めているか。

【答】

マーケット回りでは、かなりの程度予想した効果がでていると思う。具体的には、短期金融市場では、──もちろんオーバーナイト・コール・レートは期末日にはちょっと跳ね上がることがあるが──ターム物については、過去のゼロ金利時代と同じような水準にまで、一部はそれ以下にまで低下している。それから、株式市場でもある程度好感されている。株価の反転の何割が3月の措置の結果であるかは誰も分からない訳だが。唯一、長期国債市場では、3月の決定会合前後の方が長期金利が低い時期がみられた点は、我々のやっていることと合わないとの見方はできるかもしれない。しかし、事前に長期国債市場では、我々の決定を先んじて強く織り込んでいた。その後、利食いがでて、今落ち着きどころを探しているような局面だと理解している。

【問】

インフレ・ターゲットであるが、先程の説明の中で「今回の時間軸の設定に関して、CPIインフレ率がゼロを上回ったところで、時間軸効果はとりあえず切れる訳だが、その時点で強い金融緩和効果が続いていることに変りなく、インフレ率はゼロを超えて上昇を続けるだろう」と述べられたが、それは、前提として、日銀が政策変更をしなければということだと思う。インフレ率がゼロを超えて上昇し続けるというが、どんどん超えていっていいのか、安定的にゼロ%以上を上回る時の安定的とは1%なのか2%なのか分かり難い。ゼロを超えて上昇を続けるだろう、ということであれば、2%、3%になってもよいとお考えなのか。それと、前回の時間軸よりもかなり強力なので、ゼロに持っていくには、かなり時間がかかるとおっしゃたが、前回のゼロ金利は1年半続いた訳だが、これをかなり上回る時間軸を想定しているのか。

【答】

テクニカルな答えになるが、現在の政策が厳密なゼロ金利政策と同じでない部分、あるいは、少し弱い部分と申し上げた点だが、例えば、当預目標を5兆円に置いたままだと、インフレ率が下からゼロを切ってくるところで、金利が本当にゼロかどうか分からない。景気が非常によければ、その前から自然体でオーバーナイト・コール・レートが上がり始めるかもしれない。ただ、そういう部分を無くそうとすれば、当預目標の5兆をどこかで6兆とか7兆に上げることによって、その可能性を大きく減らすことができると思う。そのうえで、その前後、あるいは、特に時間軸効果が終了した直後、どういう政策対応になるかは、──もちろん、そういう議論ができる事態になれば望ましいが──個人的な意見だが、やはりインフレ率がゼロあるいはちょっとプラスになるときの加速度と関連しているかと思う。例えば、インフレ率がゼロになってくる時まで金利ゼロが続いているとして、ゼロを安定的に超えたと判断されれば、例えば(金利を)ゼロから0.25%に上げるということになると思う。その後、どういうペースで上げていくのかは、ひとつには、その時のインフレ率が加速している強さに依存してくると思うし、もう一つ、現在、明らかにしていない(決めていない)と申し上げたが、中長期的にどの位のインフレ率が望ましいと我々が考えるのか、ということにも依存するのだと思う。その辺は、オープンなままで残っている。

最後に、時間軸の質問については、これも当然ながら、現時点では、長そうだとしか申し上げられない。半年なのか、1年なのか2年なのかあるいは3年なのかは誰にも分からないことではあるが、我々としてはそこまで頑張るとの強い意志を示させていただいた。付け加えれば、そういう強い意志表明、今回の政策全体の強さが、期待に働きかける──期待の内容は先程説明したが──ことによって、もしも前回よりも緩和効果が強ければ、その分、(今の金融政策を)続ける期間が短くて済むとの効果もでてくると思う。

【問】

今後の政府や産業界にもう一段の構造改革を期待するといわれたが、政府は緊急経済対策の中で不良債権処理方針を打ち出している。今後、構造改革を進めるに当って要注意先債権の処理に踏み込んでいった場合、かなり大きな構造改革に繋がっていくことになると思うが、その場合、日銀の金融政策で対応できるのか。また、そういう構造改革を日銀が望んでいるのか、お伺いしたい。

【答】

不良債権処理問題については、緊急経済対策で打ち出された方向感は、個人的には評価できる。ただ、大量の不良債権の中のかなりの部分の処理が速やかに進む訳ではなく、残った部分についても何らかの手が打たれるという感じがでてくるのが望ましい。ただ、やはりそこには、それを進めていくための戦略や知恵が必要だと思う。政府の方から、そういうものが今後近いうちにでてくることを期待している。そのうえで、そのような対策、あるいは、今回の緊急経済対策に含まれている不良債権対策が、デフレ効果を生み出すかもしれないが、それを金融政策としてどう考えるかとの質問があった。答えとしては、まずマクロ的に強いデフレ効果に繋がるかどうかは必ずしもハッキリしない。例えば、整理される企業、一部の金融機関が、ものすごく苦しい面を迎えることは間違いないと思う。ただ、一方で、マーケットはそういう動きを評価するということになる。例えば、株価が上昇することが起こらないとも限らない。両方併せて、マクロ的なデフレ効果がどれくらいかという点は、今の時点では即断できない。そう申し上げたうえで、3月に思いきった措置をとった時には、このようなデフレ圧力に対しては、ある程度予想して強い金融政策を打っておかなければならないことは頭にあった。もちろん、現実にやってみたら、もっと強いデフレ効果が現れたということもあり得ることであるし、そういう場合には、我々の経済判断の中に加えて政策対応が必要かどうか、当然、政策決定会合で議論することになろうかと思う。

以上