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武富審議委員記者会見要旨 ( 5月24日)

平成13年 5月24日・秋田県金融経済懇談会終了後の記者会見要旨

2001年 5月25日
日本銀行

―平成13年 5月24日(木)
午後 2時30分から30分間
於:秋田ビューホテル

【問】

先ほど行われた秋田県の経済人との懇談の内容および感想をお聞かせ頂きたい。

【答】

最近地方で懇談会を開催させて頂くと、昔と随分変ったとつくづく思う点がある。それは、構造改革や需要構造のシフト、あるいは日本の経営、経済、政策を含めてそれらを取り巻くパラダイムシフトが何の違和感もなく、日本の隅々にまで浸透していることであり、時代の雰囲気が着実に変っている印象を強く感じている。

各県固有の問題というより日本の地域経済に共通する問題に対する認識が深まっており、それに対応するための方向性も様々な模索の中から出つつあるというのが懇談会を通じた全般的な印象である。

各県固有の問題というより日本の地域経済に共通する問題に対する認識が深まっており、それに対応するための方向性も様々な模索の中から出つつあるというのが懇談会を通じた全般的な印象である。

当地では林産業、農業やその加工段階である食品産業、鉱山業等がそのようなご苦労に直面されているが、その中で前向きの力を発揮するような形で一部に努力の成果が上がっている例もある。例えば、鉱業では産業としてはなくなっている訳だが、そこに従事していた方々やその方々が持っている技術力というものは残っている。その技術力を活かして今の時代に合うように企業努力・事業努力を行うということも起こっている。本日聞かれたのは、製錬業の選別技術がリサイクルなどのエコ関連に利用されているほか、自動車排ガスの触媒へ技術が応用されているといったことであったが、いろいろな形で産業が持っていた技術系譜が新しい時代に見合った格好で転換されている。農業・食品分野でも、本日懇談会に先立って県総合食品研究所を訪問させて頂き色々なご努力をされている様をつぶさに拝見したが、酵母やバイオの技術を活かしながら、同じお酒であっても時代の嗜好に合うようなものへの転換や、新しい食材の開発が行われつつある。

このように、地域経済においては、伝統産業が徐々にウエイトを落としていることとパラレルな現象でもあるが、総じて言えば「民力の低下」という構造問題が起きている。また、人口が社会減していること、あるいは都市部でのドーナツ化現象が起きているということもある。郊外に大型リテイラーが進出し、旧来型の商店街は2軒に1軒が後継者不足や採算性の悪化から撤退するなど、所謂歯抜け現象が私が常日頃見ている東京のほか当地でも起きている。東京等ではそうした個別の店に大資本がアンテナ店を造る形で入り、歯抜け現象を少し歯止めすることもあるが、恐らく地方圏では直ちにそのようなことは可能ではないかもしれない。そういう中、構造的な問題が地域経済に大きい調整圧力を掛けているのが事実であり展望もしにくいが、秋田市もそういうことを受けて市中心部の再開発的な動きをされているやに窺っている。

以上のように、個別では転換能力を示す幾つかの動きも具体的に出てきている。そういう動きを十分後押ししていくような雰囲気づくり、意識づくりについて、政策面でのケアをなるべく少額の予算で講じられるような形で知恵を絞った支援を模索するのが良いのではないかという印象を持った。

【問】

追加的な措置を講じる前に「量」と「金利」のいずれが効果をもつのかを見極めないといけないといった点について二点ほど窺いたい。仮に「金利」が政策の効果を持っている結論となった場合、再び「金利」をターゲットに戻すのか。また、仮に「金利」をターゲットに戻した場合、現在の事実上のゼロ金利下で、追加的な措置の余地はあるのか。

【答】

先行きに関わる質問であるが、先行きについては政策の前提となる景況そのものも十分変っている可能性もあるため、この時点で仮の質問に断定的に答えるのは必ずしも適当ではないと思う。今回の懇談会における金融政策の説明で申し上げたかったことは、場合によっては金融政策も二兎を追っているということで、その中で、単純に「金利」か「量」かどちらが最終的に実体経済に働きかけていくのかは、今の段階では明確な形で表にでてきていないので中々分かりにくい。また、将来も明確に答えうるかはこの時点では不確かだと思う。したがって、金利の効果が強いとみられるような事態になるかも含め、正直なところ今の段階では分からない。完全に金利の効果だけとか、量の効果だけときれいに截然と分けることは生身の経済のことであるので、難しいと思うし、金利に戻すのかとこの時点で問われても、残念ながら状況次第と答えざるを得ない。

金利であるとした場合、もうゼロなのだから追加的な措置とはなにかという質問については、ゼロ金利時代にも同種の質問があったと思う。先行き仮にそういう事態になった場合、その時点でどういうことがあるか虚心坦懐に考えるという弾力性を持っていたいと思うが、一般論としては追加的なものはかなり難しいと思う。しかし、質問に関する点について、既に今の政策レジームは追加的な分を取り込んでいる側面がある。即ち、時間軸効果というものをある条件付で設定しており、金利であろうと量であろうと、時間軸そのものに市場の先行きの期待について極めて伸縮性を持たせているということである。つまり、もし仮に金利でいえばゼロ金利に戻さなければいけないというような追加的措置が必要な状況になるという見込みが立てば、市場そのものの期待が時間軸をさらに先に伸ばし、自動的な追加緩和措置となる。今回のレジームは、自分の口から言うのもはばかれるが、その点で巧みな政策である。そのようなビルト・イン・イージング・メジャーとでもいう多面的な性格とか機能の側面を、今回の政策の枠組み全体が持っているということを報告で言いたかった。そのひとつとして、質問に出た追加的なというところについて、この枠組みそのものが自動的に対応できる部分もあると認識しているということである。

【問】

市場は、長期国債の買い切りに注目している。日銀は、先般、手形買入オペの期間延長や国債買入対象の拡大などを決定したが、それでも札割れが相次ぎ、当座預金残高5兆円の確保が難しいといったときには、国債買入の増額を行うのか。

【答】

先のことは先程も述べたように先行きの状況次第のため、ここでなにかを予め申し上げるのは適当ではないし、必要でもないと思う。仮に一般的なことで申し上げるとすれば、今次政策は量に目標値を設定したわけだが、将来の状況が今回の措置を採ったときに想定していた幅をもさらに越えた場合に、追加的措置としてさらなる緩和、あるいは逆に今より少し緩和度が低いものに変更することはあるのか、──質問ではさらなる緩和の方であるが──その可能性については、潜在的な可能性としては、目標値の量を増やすことはそのときの事情が許し、量的効果があると確認できれば頭から否定するものではない。ただ、現在行っているのは、当座預金残高5兆円という目標を達成できるように、現実論として環境整備をさらに行っているということである。手形オペの期間延長、オペ先の対象数の拡大、入札の刻み幅をきめ細かくすること、中期の国債も対象にすることで、5兆円を維持するために円滑さを確保する環境整備を図っているということである。即ち、今回の措置は、将来追加の必要があるから環境整備を図ることではなく、常日頃の当たり前の努力として万全を期すということである。

なお、長期国債の買いオペもオペ手段の多様化の一環であり、そのことが5兆円の量的目標を十分達成できるという安心感や期待形成を市場に持ってもらうためのよすがになるという意味合いで、可能性として政策に盛り込んでいるものである。したがって、直ちに出動させるとかさせないとかは環境次第、オペをやってみて、そのときの容易さや困難さ次第で、当方としては柔軟かつ弾力的に対応していく方針にあり、この姿勢は、以前も今も将来も、おそらく変らないと思う。

【問】

仮に金利が量よりも効果があると判ったとして、そのとき金利に戻る見込みがでた場合、以前のゼロ金利時におけるデフレ懸念払拭の時間軸と同じように、時間軸が伸びるというような自動的なメカニズムが今の施策にあるということか。

【答】

条件付で前回に比べもっと具体的になっていると思う。

【問】

仮に、金融市場の安定が崩れた場合に、やれることがあるとすれば、今のところ量的緩和しかないのか。

【答】

どの段階を臨界点とするか分からないが、ある段階までの追加的措置は量的なものであると申し上げていいと思う。ただ、その先のどの段階で量、金利のそれぞれで想定している波及効果や経路、因果関係、あるいはマイナス作用が表面化してくるかは現時点ではわからない。私の知っている限り、量と金利に関して理論的な学説で明確に統一された見解はないと思う。

本来の論理的道筋として不確かなところは残るが、経済はかつて経験したことのない厳しい状況にあり、それに対応して政策もかつて採ったことのないような政策を採っているわけで、通常のときのように、定着している論理を説明しすぎることは逆に判断を間違える可能性もある。謙虚にかつ弾力的に現実を見据えながら、その都度判断していくのが一番良いと個人的には思う。

【問】

先週金曜日に国債の買入対象として中期国債を買い入れの対象にすると公表したが、中期金利がより低位で安定することによるプラス効果があるのか。中長期的観点から、日銀の中期国債買いオペで中長期金利が上昇するリスクが指摘されているが、その点に対する見解を伺いたい。

【答】

今次中期国債の買い入れ対象化は、基本的に、オペ手段の多様化の一つであり、5兆円という目標達成の蓋然性を高めることであって、常時環境を円滑にするという努力をしなければならないという一般的責務の範囲内の措置であると申し上げて良いと思う。ただ、結果として、マーケットで良い期待形成がもたらされれば、中期ゾーンの金利がさらに落ち着き、そのことが場合によっては長期ゾーンにも波及するという、全般的な金利の低下が経済に対してもプラスの効果をもたらすものと期待してもおかしくないと思う。

以上