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政策委員会議長記者会見要旨 ( 9月18日)

2001年 9月19日
日本銀行

―平成13年 9月18日(火)
午後 7時45分から約35分

【議長】

今日の公表文はお手許にあると思うし、やったことはこの3つである。この中で特に強調したいと思う、(公表文の)2、3、4番だけ読ませて頂く。

まず、2.であるが、「日本銀行は、さる9月11日の米国における同時多発テロ事件発生後の流動性需要の高まりを受けて、日本銀行当座預金残高を8兆円を上回る水準にまで大幅に拡大させるなど、資金決済の円滑と金融市場の安定の確保に向けて、万全の措置を講じてきた。」

「3.内外の金融市場をみると、主要中央銀行による潤沢な流動性供給や、市場参加者による適切な対応の結果、これまでのところ、取引や決済の混乱は回避し得ている。しかし、今回の事件が内外の金融資本市場やひいては実体経済活動にどのような影響を与えていくのか、引続き細心の注意をもって見守っていく必要がある。また、今後、万が一にも資金決済の円滑や金融市場の安定が損なわれるような事態になると、これまでの思い切った金融緩和措置の効果浸透に支障をきたすおそれがある。」

「4.日本銀行では、以上のような状況に鑑み、金融市場の安定を確保するとともに、金融緩和のより強力な効果浸透を図る観点から、今回の措置を実施することが適当と判断した。」

(公表文の)5.と6.については、8月の(政策変更時の)ステートメントにも、3月の時のステートメントにも同様の趣旨が書かれている。

本当は、明日が政策決定を行う日であったが、ご覧のようにアメリカに対して各国が手を差し伸べている。私どもは、ご承知のように9月11日の夜、ニューヨークから情報が入って、これはえらいことだという感じがした。銀行の中で主要局の幹部が集まって、夜を徹して、ニューヨークその他と連絡を取りながら、翌日の日本の市場、あるいは邦銀のアメリカとの円決済あるいはドル決済が順調に行われるように色々考え、また案を練って、「危機対策本部」を作り藤原副総裁が本部長となり、7時半に日銀総裁のステートメントを出させて頂いた。9時に市場が開かれる前後になって、これはかなり資金の需要が出てくるという見通しに立って金融市場局中心に対策を打ち出して、1兆円の手形買い入れのオペレーションを行ったわけである。それで、1兆円ではまだ足りないということで、1時間後の10時5分に、もう1兆円、同じような方法で資金を供給したわけである。それがかなり市場には広く行き渡って、これがお蔭を持って、大変な出来事ではあったが、今までのところ比較的順調に、円滑に、決済や流動性の供給が行われてきている。

8月の金融政策決定会合で、「日本銀行当座預金残高が6兆円程度となるよう金融市場調節を行う」ということを決めた時に、「なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」という尚書きを決定し、今回これに基づいて、決定会合を経ずして執行部で決定して実施したものである。こういう事態が起こるとは予想していなかったが、この尚書きがあったことで、比較的早く手が打てたということは言えようかと思う。

今回の決定会合では、これを尚書きとしてではなくて、今後の方針として決めてもらい、当面、日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として潤沢な資金供給を行うということがひとつと、それから同時に、期末を控えて決済が順調に進んでいくように公定歩合を0.15%引き下げて、0.10%とした。これは、9月12日の朝、翌日物金利がかなり上がり0.11%というところまで行ったわけで、そのようなことが今後も起こる可能性は十分あるという判断から、この期末を控えて何が起こっても、日本銀行がこの2月に作ったロンバート型の貸付制度──担保さえ持っていれば、駆け付けてくれば、公定歩合で貸出を行う制度──を使ってもらえるように決めた。

もうひとつ、ロンバート貸付というのはこれまで5日間が限度であったが、期末までを考えて10日間を限度とした。(準備預金の)積み期間は9月16日から10月15日までであるが、この間の限度を5営業日から10営業日に引き上げることを決めた。この3つを決めたわけである。

アメリカも今週から市場が開かれて、証券市場等も1週間休んでいただけにその間クール・オフ(冷却期間)があって、あれぐらいの下がり方で済んだのだろうと思うが、まだまだこれからどうなるか判らない。あの時にドカンと下がったりしていたら、えらいことになっていたという感じがする。そういう意味でも、ニューヨークが休みになったということは、結果としては良かったと思っている。

そういうことで、今日、早く決めた方が良いと思ったので、今日から明日の決定会合を今日1日とした。先程7時くらいまで皆さんに残って頂いて、かなり激しい議論が色々あったが、大体多数決──1.と2.が賛成多数、3.は全員一致──で決定をした次第である。記者の皆様には遅くまで残って頂いて恐縮であるが、ひとつ良くご理解頂いた上で報道して頂きたいと思っている。

【問】

この公表文にも「今回の事件が内外の金融資本市場やひいては実体経済活動にどのような影響を与えていくのか、引続き細心の注意をもって見守っていく」と書いてあるが、今日の決定をするに当たって、現時点で今回のテロ事件がアメリカの実体経済──消費への影響があるという見方もあるが──にどのような影響を及ぼすとみているのか。また、それが日本経済に及ぼす影響をどのようにみているのか、伺いたい。

【答】

アメリカにどのようなことが起こっていくかということは、まだ生々しい突然の事件であるだけに、11日に起こったことの後、特に金融サイドへの影響が全部出尽くしたわけでもないし、これから色々な事が起きるに違いないと思っている。

これからアメリカが愛国心を国民の皆さんに訴えて、テロ団──国でもなければ民族でもないのだろうが──を相手にしてどういう反攻をしていくのか判らないので、影響がどれくらい続くのか、どんなことが起こるのか、というのは今の段階で言えと言われても非常に難しいと思う。何が起こっても耐えられるという意味で、この3つのことを当面決めた次第である。

【問】

FRBやECBが緊急の利下げを決定した中での、今回の日銀の決定ということで、テロが及ぼす危機的な状況を日米欧がスクラムを組んで阻止するのだという強い政策協調の表れと市場は受け止めていると思う。今回の決定にあたって、各国の政策協調ということ──先程アメリカに手を差し伸べる必要という表現をされたが──に、どの程度考慮がなされたのか。

【答】

国際的な協調行動と言う前に、先程も申し上げたように、日本の市場が一番先に、12日に開いたので、結果としては私どもがやった手形の買いオペレーションが、他国よりも先に行われたことになる。ECBもFRBも同じような買いオペをやっている。我々よりも多少金額が多かったようだか、時間的には私どもが先行したかたちであった。同時に、昨日、財務省の方でも為替介入を行い、これも為替市場にはかなりの影響を与えることになったと思っている。

これからも何が起ってくるか分からないが、国際的な協調行動の必要性ということも十分意識して決定した措置である、とご理解頂きたいと思う。

【問】

当座預金残高の目標については、「6兆円を上回る」ことを目標としているが、これを明確に、例えば7兆円とか8兆円とかに、目標額を上積みするという判断はなかったのか。それが必要ないとされた理由は何か。

【答】

テロ事件の発生に端を発して、内外の不安定な情勢が起ったわけで、予め具体的な水準を特定すると、かえって、機動的かつ潤沢な資金供給が困難になると判断した。

日本銀行としては、引続き資金決済の円滑と金融市場の安定を確保するために、必要な資金を金融市場に対し潤沢に、かつ機動的に供給していくということを考えた。

現在のような流動性需要が続いていく限り、当座預金の残高が8兆円、あるいはそれを上回る数字になるような資金供給を続ける方針である。

【問】

先程、財務省が行った為替介入の話があったが、総裁の持論として市場のことは市場に任せるということを度々おっしゃっていたが、このタイミングでの介入について、総裁はそれが必要だったとお考えか。

【答】

急激に円高になりそうだという意味で、確かに急激な動きであったと思うし、それを滑らかにしていく意味で、この円売りドル買い介入を行ったタイミングは、私は良かったと思っている。このことを、連銀サイドでどのように取っているか、今朝ニューヨーク連銀などとも話し合ったが、彼らも市場はかなり安定化しつつあると見ている。彼らが今一番考えていることは、流動性を十分に供給していくということだと思うが、その点についても、今回のドル買い円売りというのは、それぐらいのことは十分こなせると言っているから、それは良かったと私は思っている。

【問】

今後も必要に応じて介入するのか。

【答】

それは市場の動きを見て、財務省でお決めになることである。

一つだけ付け加えさせて頂くと、ドル買いで円をかなり市場に供給したわけであるが、その供給された円については、一般の資金供給と同じように扱って──これは当座預金に跳ね返ってくるものだと思うが──調整して参りたいと思う。

【問】

今回のアメリカに対する同時テロ事件のアメリカ経済に対する影響、翻って日本経済に対する影響ということについて現時点でどのような認識を持っているか。

【答】

先行きを読むのは難しいが、アメリカ経済がここにきて、かなり暗くなってきていることは、色々な数字をご覧になってお分かりの通りである。特に、これから心配なのは消費者などがかなり暗い気持ちになって、金を借りてまで消費するということがなくなってくるようなことになると、経済自体もさらに悪化して行く可能性がある。その辺のところは、今後十分ウォッチして参りたいと思っている。

先程の介入資金について、付け加えさせて頂く。日本銀行は為替介入資金も利用して、潤沢な資金供給を行っていく方針であるというのが正確であるので、そのように訂正させて頂く。

【問】

日本経済への影響についても伺いたい。

【答】

日本経済への影響については、日本経済がここまで悪くなっていったのは、やはり輸出が減って、生産が減って、それが家計にまで影響しつつあるというのが今の状況だと思う。そういう意味では、この傾向というのは世界全体にかなり暗い、経済の減退をもたらすような動きがあるわけであるから、それに対応して、それぞれの国が協力して盛り上げようと、下がるのを何とか持ち上げようとしている。今後も、こういう動きを良く見て私どもも動いていきたいと思う。やはり、プラスのファクターであるかどうかということになると、必ずしもそうではないのではないかという感じはする 。

【問】

市場調節について、「当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として」という表現となっているが、実際には8兆円程度でやっているところに、「6兆円を上回る」という表現をすると、市場では「8兆円レベル以下の供給もあり得るんじゃないか」と予測して、メッセージとしては弱いのではないかと思うが、どうか。

【答】

そうかと言って、何兆円という数字を今出すのは非常に難しいだろう。おそらく、明日などは介入の資金なども入ってくるから、かなり膨らむだろう。それは、何が起こるかわからないから、「6兆円以上で、機動的かつ潤沢な資金供給を行っていく」というのが正確だと思う。今、8兆円近くあるのが、急激に減っていくということはまずないだろうと思っている。

【問】

協調ということで、コーディネーションのようなものがFRB、ECB、日銀を含めて事前にあったのか。また、今回の会合を1日だけにして今日決定するということを、いつ決めたのか。

【答】

FRBとECBとのスワップ協定は、彼ら同士で話し合ったものだと思う。私どもも、70年代や、80年代、アメリカが非常に弱い時には、FRBとは同じようなスワップ協定を結び、使ったこともある。今回は、その前に、私どもの方でまず資金の供与を行う、国内の邦銀の決済を円滑化していくという方向でやって、それがかなり効果を発揮している。これから米国がどういうふうになっていくのか、その辺は今後の問題であるが、今のところ具体的な対策としては、買いオペレーションで資金を供給し、かつ為替の介入を行い、市場があまり乱れないようにしていくということで精一杯だと思っている。今後どういうふうに日米関係、特にアメリカの経済が変わっていくかによって、今後の措置が決まっていくのではないかと思っている。

【問】

そうすると、利下げについては事前に何らかの話し合いがあったというわけではない、協調でみんなでやろうという話があったというわけではないということか。

【答】

協調の必要性は十分意識してやっているつもりである。話し合い云々については、コメントを差し控えさせて頂きたい。それから、決定会合を今日1日にするのはいつ決めたかという質問があったが、実際には、今日銀行へ来てから決断した次第である。

【問】

銀行の不良債権処理がなかなか進まないと、総裁も相当苛立ちを覚えられていると思う。最近、RCC(整理回収機構)を使った不良債権処理を促すといった案も出ているが、これに対して日銀として今後どのように関わっていくのか、現時点でのお考えを聞かせ頂きたい。

【答】

不良債権処理問題が真っ先に取り上げられるべき問題であるということは、私も申し上げているし、経済財政諮問会議でもこの点は大方のメンバーの皆さんがおっしゃっていることだと思う。その方向で今、工程表などが作られていると思うし、こちらの方については、いろんな方法があり得ると思う。RCCの問題については、私どもとして、今はまだ特にどういう考えというものは持っていない。

【問】

昔は非不胎化介入──介入資金を放置すること──について、日銀は「そういうのは効果がない」と言っていたと思うが、今回、総裁がわざわざそうしたコメントをおっしゃるというのは、日銀として考えが変わったと受け止めてよいのか。

【答】

不胎化であるのか、非不胎化であるのか、その辺は資金に色を付けることは非常に難しいと思う。そういう意味では、全体を見て調整していくということでいいのだろうと思う。

【問】

ロンバート型貸付制度の金利でもある公定歩合の金利を引き下げて、ロンバート型貸付制度の営業日を増やすという狙いを分かりやすく教えてほしい。

【答】

先程少し触れたつもりだが、ロンバート型貸付というのは、やはり思わぬ資金ショートを起こして、このままでは過ごせないといった銀行の取引先が出てきた時に、「担保を持って日本銀行に飛び込めば公定歩合でお貸ししますよ」という制度である。それを、今この金利を下げ、且つ期間を延ばしたというのは、特に私どもでは期末越えということを意識した。

金利については、主要国が皆、FRBの引き下げにフォローして下げている時期であるし、私どもも極力金利を低くしていくという方針は協調体制に沿うものだと思う。それから先程申し上げたように、0.11%といった資金需要が現に12日の朝、出てきているわけだから、そういうのが出てきた時にいつでも貸していく体制としては、0.10%程度に下げるのが適当だと思った次第である。

【問】

今の点についてだが、期末にかけて株価も下がり、いわゆる9月危機のような情勢が金融界に来る可能性に備えたもの、と理解しても良いか。

【答】

まあ、そういうことも起こり得ることであるかもしれないし、この時期にもう一段金利を下げておくということが良いと思った次第である。

【問】

今日、日銀に来て、「今日決めよう」と思ったそうだが、何がそのきっかけとなったのか。

【答】

それは、ECBをはじめとして諸外国一斉に金利を下げているわけだから、我々としても早く対応を決めなくてはならない。ちょうど一週間が事件発生から経っているわけだが、ここでアメリカの方も止めていた市場が動き出しているし、流動性がかなり潤沢に供給されているようである。そういう動きをみて私どもも対応してできるだけの金利の引き下げ、金融の緩和をやると同時に、9月末の決済期末をうまく越えていく対策を打っておいたほうが良いという判断を本日行った次第である。

【問】

先程RCCについての日銀融資については、お考えが無いとのお話であったが、なかなか構造改革の柱である不良債権処理が進んでいない状況の中で、日銀自身が今後何らかのかたちで積極的に関与していく、または解決に向けて知恵を出していくということは重要な検討課題だと思うが、総裁はどう思われるか。

【答】

不良債権問題の解決を通じて、金融システムの健全化を図って行くということが喫緊の課題であることは先程も申し上げたが、日本銀行としては、今後、各方面における不良債権問題への取り組みが抜本的に進められていく過程のなかで、中央銀行の立場から、成し得る貢献を行っていくという考え方でいくつもりである。日本経済が安定的かつ持続的な成長軌道に復帰するためには、やはり金融システム面や経済産業面での構造改革の進展が不可欠であるということは、私どもが前から言い続けてきたことである。そういう意味で、その障害となる不良債権問題の解決には出来る限りの貢献を行っていくつもりである。

【問】

今日、長期国債の買い切りオペを増やそうといった意見はなかったのか。

【答】

今回は、長国の問題は議題には出てこなかった。長期国債の買い切りオペについては、3月に導入した新しい金融調節の枠組みとして、「日銀当座預金を円滑に供給する上で必要と判断された場合に増額する」という基本方針が決められており、今回の金融市場調節の方針の変更にあたっては、米国のテロ事件発生後の金融機関の資金需要の高まりとか、これを背景とした短期オペへの堅調な応募ニーズ等を勘案してやったものであって、長期国債の買い切りオペの増額は、ここでは必要ないと判断した。

【問】

先程、総裁はかなり激しい議論があったとおっしゃったが、それはどの辺りの議論だったのか。

【答】

それは、先程もご説明した当座預金の枠の増額をどうするかという議論はかなりした。

【問】

6兆円を上回るということは、今8兆円をやっていることからすると、事実上、天井が無くなったとの理解で良いのか。

【答】

今のところ何が起こるか分からないし、今の6兆円を特に変えて金額を決めることは非常に難しいし、また、その必要はないと判断した次第である。

以上