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総裁記者会見要旨 ( 9月25日)

2001年 9月26日
日本銀行

―平成13年 9月25日(火)
午後 3時から約50分

【問】

テロの影響でアメリカ経済、特に個人消費等への悪影響を懸念する声が出ていると思う。アメリカ経済の減速感が強まれば、世界同時不況突入だという悲観的な見方もある。海外情勢は非常に流動的で、不透明な要素が大きいと思うが、そういったことを踏まえて、日本の景気動向に関する現状認識、あるいは先行きを見ていく場合留意すべき点について、総裁の見解をまず伺いたい。

【答】

ついこの間(政策委員会議長記者会見の場で)お会いしたばかりであるが、その間に色々あったし、ここへ来て3つほど大きな山があったと思う。

ひとつは、中間決算が非常に気になっていた。時価評価も始まるし、破綻の懸念もあったし、上手く乗り越えてもらえるかなと思っていた。今日の市場は、まだまだまったく安心が出来るわけではないが、株価の方も為替の方もやや落着いて、(期末まで)あと3営業日であるから、大体期末越えは問題なく出来そうだという感じがしている。

それからもうひとつは、先週末の経済財政諮問会議で構造改革の工程表と先行プログラムが決まり、これで漸く形が整って、動き始めたというところかと思う。構造改革が動き始めると、それなりに色んな事が起こってくると思うが、やはり「構造改革なくして景気は良くならない」ということを総理も言っておられるし、私も中期的にはそうだと思う。

もうひとつは、毎日毎日、私どもも耳を傾けて聞いている米国の同時多発テロが、経済面の方には今のところそんなに大きな影響、波紋を起こしてはいないが、報復措置を始めとして、どういうふうに落着いていくかということは、まだ全く読めない。何が起こるか分らない、何が起こってもおかしくない、というか起こり得るという感じがしている。そういうものに備えて、日本銀行でも色々な情報を集め、手を打ってきているわけで、今後もそうしていきたいと思っている。

以上三つのことが、当面、私どもにとっては非常に大きな峠であると思っている。金融面については、思い切った私どもの金融緩和措置も、こういう不良貸出問題の目処がつかないとなかなか効果を持たないと思っていたが、こういう形で少し早めに解決していくということが出てきたということは、良かったと思っている。金融システムについても、不良債権のバランス・シートからの切り離しを早くやっていくとか、厳正な自己査定で適切に引当金を積んでいくといったこと、そしてまた、企業再生への積極的な取組みに、例えばRCC(整理回収機構)の機能を強化していくとか、要注意先に対する引当金の積み増しを行っていくとか、そういったことが方向としてはっきり出てきたということは、私どもにとっては、望ましい方向に動き始めてきたと思っている。この1週間でも、そういう大きな動きがあった。

今、ご質問の、当面の景気、それから日本の経済動向については、先般、私どもの金融経済月報が発表され、説明をさせて頂いたと思うが、景気の現状についてはやはり、「輸出の落ち込みを起点とした生産の大幅減少の影響が雇用・所得面にも拡がり始めるなど、調整は厳しさを増している」とみており、前月に比べ、判断をさらに慎重化させたと申して良いかと思う。

先行きの景気を展望する上では、やはり、海外経済の動向が大きな鍵であるし、この点、世界的なIT関連分野の調整が続いていることに加えて、先日のテロ事件もあり、米国を始めとする海外経済の先行きには、不透明感がさらに強まってきているということかと思う。また、内外資本市場の動きが企業や家計の心理面などを通じて、実体経済に悪影響を及ぼすリスクについても、一段と注意が必要になってきているように思う。

私どもは、去る18日に、金融市場調節方針の変更、そして公定歩合の引き下げといった措置を発表した。今後とも日本銀行は、物価の継続的な下落を防止し、経済の安定的かつ持続的な成長の基盤を整備するために、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針と申し上げたいと思う。

景気の本格的な回復が実現していくためには、先程も申したように、不良債権問題の解決を初めとして、金融システム面や経済・産業面での構造改革の進展が、必要不可欠であるということを前々から申し続けてきている。

日本銀行としては、今回の事件の影響や構造改革に伴う様々な痛みを乗り越えて、各方面における改革への取り組みがたゆまず進められていくことを、強く期待している次第である。

先程、ご質問の中に「先行きをどう見るか?」とあったが、当面、先行きはなかなか読み難いが、日本銀行はこれからどういうことを考えているかということは、もし時間があれば、後でまた説明させて頂く。

【問】

今、総裁は「株式市場あるいは為替市場はやや落着いた動きだ」と説明されたが、G7(日・米・欧)の金融当局が協調的な対応をとったことが非常に功を奏した形になっているという認識か。

【答】

今回、日本が一番早かったわけであるが、12日の朝から2兆円の手形買いオペを実施したことを始めとして、主要国は、同様のオペレーションで資金の流動性、決済の円滑ということに非常に気を使って手を打っていた。それと同時に、金利も下げていった。こういったことが、同一方向で、時を同じくして進んでいったということは、確かに効果としては有効であったと思っている。

ただ、これからまた何が起こるか分らないので、実体経済にどのような影響を与えていくのか、引き続き細心の注意をもって見守っていきたいと思っている。

本来ならば、明日あたりIMF総会、G7へ出かけるところであったが、そちらの方も、片や中止、片や──まだはっきり決まっていないが──先延ばしといったことで、これもどういうことになるか分らない。ことほど左様に、非常に先が読めない情勢下にあると言えると思う。

【問】

日程がはっきり決まっていないG7だが、一部には10月6日とか、10月上旬を軸に調整されているという報道もある。今度のG7では、テロを受けて、G7の協調が改めて問われるのではないかと思うが、どのような位置付けの会合になるとお考えか。その中で、日銀総裁としては、どういった姿勢で臨むつもりか、伺いたい。

【答】

まだ全く、いつ、どこで、何を議論するようになるのか分からないので、全然用意もしていないが、ある人がグローバライゼイションが進んできて、これからは、今までとは違って、国家と民間とNGOそれに国際機関、この4者に良く留意しなければいけないよとアドバイスをしてくれた。全くその通りで、いつ何が起こるか分からないし、誰がどうやって決めているのかも分からないので、G7では、恐らく各国の現状と情報交換を行い、協力し合うということになると思うが、これは私の予想であり、どうなるかまだ全然議論は進んでいない。

【問】

政府の改革工程表に関する件だが、工程表の中に、RCCの機能を強化して、不良債権の処理を促進するというスキームが盛り込まれた。RCCの機能強化による不良債権処理を行う必要性について、総裁はどのように考えているのかという点と、その中には日銀が資金を出すというアイディアもあるようだが、それについての考えを伺いたい。

【答】

今回の機能強化ということで、RCCには企業再生の役割が与えられることになったわけである。私どもとしても、このRCCの企業再生機能というものが、市場規律に基づいて発揮されて、幅広い民間投資資金の呼び水となることを期待したい。

日本銀行に何が出来るかという質問だが、RCCはその業務遂行上必要とする資金については、現行制度でも、仮に民間金融機関などからの調達だけで足りない場合には、預金保険機構経由で日本銀行から借入れが出来る。直接借入れでなくて、預金保険機構に日本銀行が貸して、その資金を、子会社であるRCCが受けるということは今でも出来る。この点は新しく日銀が金を出すとかいうような話ではない。こうしたことも踏まえて、日本銀行としては今後各方面における不良債権問題への取り組みが具体的に進められて行く過程で、中央銀行の立場からなし得る貢献をしていきたいと思っている。市場には資金がかなり潤沢に出ているし、金融機関でも貸出先を求めているから、資金の調達は私は比較的容易に出来るのではないかというふうに思っている。

【問】

工程表によれば、金融庁の特別検査が行われ、資産査定をより厳格にするということだが、金融庁はこういうふうにしても公的資金の再注入は不要だという説明をしている。一方で、不良債権処理を加速させていくと、金融機関の体力強化のためには、どうしても公的資金を注入した方が良いのではないかという議論もある。総裁は、再注入論について、どう考えているか。

【答】

公的資本を入れる時は、私はもう日本銀行に来ていたが、あれも預金保険機構に日本銀行が貸して、それを最初は入れたのである。今、金融機関の体力という面から言うと、各行とも公的資本の投入などで、資本基盤はかなり補強されている。これは数字をご覧になってもお分かりの通りである。業務純益の方は、これからの問題だが、まずまずの水準を確保していると思う。従って、現時点でただちに資本ストックの面で困るところが出てくるとは考えていない。ただ、私どもとしても、現在の厳しい金融経済情勢を踏まえて、今後の不良債権処理の動向とか株価変動の影響を含めて、わが国金融機関の収益、それから体力面の動向を引き続き注視していきたいと思っている。

【問】

総裁は、冒頭の発言で、なんとか無事に期末を迎えられるのではないかという見方を示されたが、株は今日も多少上がったとは言え、なお平均株価は1万円を割った状況である。こういった中で減損会計が導入されて、金融機関への収益の影響が懸念されると思うが、それらを含めて総裁はどのように見ているのか。

【答】

株価は確かに安いわけで、特に米国の同時多発テロ事件の発生以降、かなり不安定な動きを示しているが、私どもとしては、それが金融機関経営に与える影響も含めて、株式市場の動向を更に注視していかなければならないと思っている。

ただ、金融機関の経営体力は、先程も申し上げたように、まずまずの現状であるから、こうした状況に照らすと、私どもとしてはこのところの株価動向でわが国金融システムが直ちに不安定化するとは考えていない。

【問】

先週18日の決定会合について伺いたい。一部で2日間の日程を1日に変更したのは、政府からの働きかけによる面が強く、元々日銀の危機感というのは乏しかったという報道があったが、その事実関係を伺いたい。

【答】

それは全くとんでもない話である。勝手に新聞がそう書いているのであって、何を根拠にそうおっしゃっているのか知らないが、ただ一部の記者の方には申し訳なかったが、私自身は当日の朝には1日で決定する腹を固めていた。出勤後、委員方の意向を確認して、前夜の海外市場や当日の東京市場の動向を踏まえた上で、最終的には、決定会合の冒頭で議長である私の提案によって、1日開催をいうことに決めて、直ちにそれを公表したわけである。

何もモタモタしたわけでは全くない。それは皆様のご理解の間違いであると思っているから、どうぞ訂正して頂きたいと思う。どなたに聞いてもそうおっしゃると思う。

【問】

重ねての質問だが、折角2日間の日程を1日にしたのだから、スタート時間を午後ではなく朝の早い時期に繰り上げるという選択肢もあったと思うが、それについてはどうか。

【答】

朝にならないと海外市場の状況は入らない。それに、金利を下げたのも朝になって入ってくる。

1日で朝から晩まで行っていたのを、初めの日は各部局からの金融情勢の報告を午後2時から行って、決定は翌日の午前中に行うことにより、市場が開いている間に発表ができるであろうということで、半年ぐらいまえにこのように切り替えたわけであるが、今度の場合は、ニューヨークの情勢も翌日の朝にならなければ分からないし、各国の動きもそうであった。行内各局室の情勢報告を聞いた上で、各委員にご意見を言って頂いて、それで討議をして決めたわけで、私としてはその日の午前中には色々やるべきことが沢山あった。であるから、とても会議を朝から行うわけにはいかなかった。それで、午後から始めてその日の6時半頃に終わったわけで、その中には、勿論20日に発表した月報なども入っているし、かなり多くのことを決めた決定会合であったから、議論だけでも相当意見交換を行ったし、政府からは、竹中大臣と財務省の村上副大臣が初めから終わりまで出席された。そういうわけで、朝からやりますから出てきて下さいというわけには行かなかったと思っている。

【問】

今後必要に応じて、2日間の日程を1日にするというケースもあり得るということか。

【答】

それはあり得る。必要な時に開催することは日銀法の中にも書かれているから、それはできる。

【問】

相次ぐ金融緩和が資金を潤沢に供給できるという意味で、銀行、企業のモラル・ハザードを生んで、その結果構造改革を妨げているのではないかという指摘が一部にあるが、金融緩和に伴う副作用についてどのように考えているのか伺いたい。

【答】

金融緩和がモラル・ハザードを銀行に与えているという一つの見方もあるかもしれないが、銀行の方は今、どうやって業績を伸ばすか、利益を増やすかということに夢中になっている。そのやり方としては、一つは貸出先を増やして、良い貸出先に対して貸していくこと。さらに、新しい仕事も加えていきたいということ、それは恐らく直接金融への──証券会社と組んで投資の中継ぎをやるとか──新しい仕事を既に始めている。そういうようなことをやっていきたいという気持ちは非常に強い。

二つ目は、やはりリストラである。ご承知のように、今までは預金集めのために随分人を使って、支店も多くして、競争しあってきた。しかも、それらも護送船団方式と称する政府の手取り足取りの指示を受けながら、同じようなことをやってきたわけである。それではもう競争にならないわけであるから、これからは、リストラをやって人数も減らし、能率を上げて生産性を高めていくということを皆懸命になってやっているわけである。

もう一つは、やはり何といっても、不良貸出をまだかなり抱えているし、所謂予備軍と称する不良貸出に、いつなるか分からないといったようなものがたくさんある。そういうものをどうやって整理していくか。この三つのことを懸命にやって収益を先行き増やしていきたいと努力をしている。その上に、再編をもうやったところもあるし、これからやることを決めて、今一生懸命再編の準備を進めているところもある。そういう中において、私はモラル・ハザードだとは必ずしも思わない。ただ、財界その他には、銀行がこれだけの不良貸出を作って、その責任者が責任を取らないのはおかしいではないか、という意見があるのは承知している。それをモラル・ハザードというのかどうか、私もその辺は判断ができないところである。しかし、今お金がふんだんにあるのに、貸さないのはおかしいではないかということは、私は少し厳しいのではないかと思う。

【問】

金融緩和は銀行、企業に対してモラル・ハザードを生む副作用があるのか、ないのか端的にお答え願いたい。

【答】

企業まで回っていないのであるから、問題はそこのところである。

【問】

それでは銀行だけで結構である。

【答】

銀行はかなり資金がだぶついて、それで国債を買っているわけである。貸出は前年よりも減っているが、国債は残高で14〜15%増えている。それはそれなりの投資である。リスクはいっぱいある。

【問】

そうすると金融緩和によって、資金調達がやり易くなることが続くことによるモラル・ハザードなどの副作用はないとお考えなのか。

【答】

市場というものはやはり競争であるから、強いものが勝って伸びていくということがあって、初めて資本主義経済というものが成り立つわけであるから、そういう意味では量的緩和というのは、いささか異常な金融調節の仕方であることは間違いのないところである。従って、金利も超低金利であるが、これで構造改革が出来て、企業が皆競争し合って、新しい産業、新しい技術を使って、収益を増やしていくような状態になってくれば、自ずと金利は上がっていくと思う。そういうふうになって初めて、市場経済というものは、正常な姿で動き出すのであると思う。こういう情勢に早く持っていく、そのためにはどうしても構造改革を早くやらなければだめなのだということがあって、今回漸く動き出したわけであるから、もうしばらく、これを後ろから後押ししながら構造改革の発展、進展を期待していくしかないと思っている。何もモラル・ハザードで余計なお金をくれてやっているわけではない。こうやって、市場がまがりなりにも動いているわけであるから、市場に飛び込んでみれば分かるはずである。

【問】

ブッシュ大統領は各国に対してタリバーンあるいはテロ組織の、関係する資産の凍結を呼びかけており、塩川財務大臣も、財務省としてそのリストを今作りながらその資産の凍結に向けて準備をしているという発言をしているが、中央銀行として日銀がこれに対して何か準備していることはあるか。

【答】

わが国の政府は、外務省と財務省と経済産業省であるが、国連安全保障理事会決議1267号──これは1999年10月にやったものであるが──これと1333号、──2000年12月にやったものであるが──これに基づいてタリバーン関係者に対する支払規制と資本取引規制の措置を9月22日から講ずることになっている。この資産凍結措置によって関係する取引は、外国為替及び外国貿易法に基づく許可を要することになったため、この許可申請の書類は日本銀行の本支店を経由して、財務省に提出されることになっている。この面で、日本銀行は事務体制を敷いているわけである。その他の対応については、現時点では決定していないが、政府から何らかの要請があれば当然、協力してやって参りたいと思っている。

【問】

先程、あと3日で期末越えとなり、株・為替については落ち着いているとの発言があったが、ここのところ為替はドル/円が海外で116円台になり、介入で117円台に戻るようなことが繰り返されている。昨日は欧州でECBが委託介入を実施したようだが、米国は協調介入に消極的な模様であり、日本単独の介入には限界があると思われる。今後うまく日米欧で為替の安定を図ることは可能か。

【答】

為替の問題は政府・財務省が行うことだから、私が口を出すのはおかしいと思うが、長年私も国際通貨問題のど真ん中で色々と苦労してきた経験があるので、そういう立場で、強いて私個人の意見を言わせてもらうと、円安の維持というのは、国内の輸出関係の業界、財界その他からの強い要請があって、円安にしようという動きがあるのと同時に、もう一つは、やはり国際通貨を安定させていくということが、円、ユーロ、ドルとこうした国々にとっては大事なことであるという動きがあると思う。そういう意味で、今、米国がああいう打撃を受けてドルが売られているというのは一つの事実である。そういう中で、円売りドル買いをやるというのはアメリカにとっても決して反対ではないと思うし、むしろ国際通貨を安定化させていく一つの方法ではないかというように思う。

そういう意味で、タイミングとしては非常に適切なタイミングで介入が始まっていると思う。

この間、連銀とECBとの間でスワップ協定ができたということで、何故日本は入らないのかという意見や質問があったが、あれは、ECB側が流動性を獲得する──ドイツやフランスなどは十分なドルがなくなり、ドル建ての決済ができなくなれば困る──ということで、スワップ──両中央銀行が相手通貨を同額持ち合うこと──を行い、ECBにドルを増やして、それが加盟国に回るようにするために行った措置である。為替の介入という意味もあるのかもしれないが、私の知っている限りではそういったものではなかったと思う。

私どものほうでは、ご承知の様にドルは世界一たくさん持っているわけだから、いつでも使えるし、流動性の点については十分注意を払ってやっている。

その意味では、今回の措置は私どもはむしろ最先端を行って、流動性と決済を進めてきたと思っている。金利政策もそうである。何もモタモタしたことは一切なかったと思っている。こんなに早く手が打てたのは、我々は誇りとすべきだと思っている。

【問】

大量の流動性供給という状態をどういった時点まで続けるのかという点だが、明確な目印は難しいとしても、こういった状態になるまでというイメージを持っているのか。

【答】

先はなかなか読み難い。特に今回のテロ事件が今後どういうように展開されるのか、これが経済にどういう影響を及ぼしていくのか、その辺は非常に難しいところだと思う。

10月になれば、──年度後半に入っていけば──今のように流動性についての金融機関や市場のナーバスな気持ちというのがもう少し楽になっていくと思う。そういうふうになれば、今のような沢山の(当座)預金を積まなくても済む事態になることも十分あり得ると思う。それは、毎日毎日の資金需給を金融市場局で、一生懸命一日の動きをみたうえで資金の操作をやっているわけであり、今のところはかなりナーバスに金利も動いており、そういうことだから9兆円を超えるような(当座)預金が置かれているとご理解頂きたい。まだ、もう少し増える可能性すらあると思うが。

【問】

期末を越えて10月に入ったところが、ひとつのポイントなのか。

【答】

そうだ。

【問】

今市場では、日米の実質金利の拡大が円高バイアスにつながっていると聞くが、一生懸命緩和しても日本は金利がゼロであるから、米国との実質金利は、米国が利下げするほど縮まってしまうとのジレンマがあると思うが、それについての総裁のお考えをお伺いしたい。もう一点は、積極果敢な金融政策を行っているなかで、先日の金融政策決定会合が終わった直後、竹中大臣は、これまでの枠組みの政策はやり尽くしたので、これからはもっと新しいことをやる必要があるといった趣旨の発言をされたが、この発言をどう受け止めておられるのか。

【答】

実質金利差というのは、これは理論的にはそうなのかもしれないが、運用する人達は、そんな計算をやって、一々決めていない場合の方が多いのではないかと思う。この前の先週の金曜日あたり、わっとドル売りが出て、米国の株もよくなかったわけだが、日本はご承知のとおり、1兆2千億ドルの対外債権超過がある。これは世界一である。これには外貨準備も入っているが、民間でもドルの資産をかなり持っているわけで、そういう人達、あるいは会社が——保険会社などは——たまたま期末と一緒になったものだからドルの債券を売ろうとしてドル売りにもなったし、債券や株の売却になったと思う。そういう、市場で実際に資金を運用している人達の判断で、金利や為替というものは、少なくとも短期に動くわけである。ここ1週間というのは、最初に申し上げたように、期末であり、そして構造改革の中で金融システムの問題についての色々な議論があり、株についてもあり、更に米国でのテロの及ぼす影響とか、これからこれがどういうふうに展開していくのかといった不安があったし、そのようなものが重なりあって取引を動かしていたと考えて頂きたい。

第二の質問だが、竹中大臣は「もう手は尽くした」とおっしゃっているのかもしれないが、私は直接聞いていないので、それについて意見をいうことは控えさせて頂く。中央銀行として、私どもが発行している銀行券の価値を維持し、物価を安定させ、これを通じて経済の安定成長をもたらすということが日本銀行の責任である。そのことは日銀法のなかにはっきり書いてある。よく、「目的の独立性と手段の独立性は別だ」などとおっしゃる方もおられるが、確かに、目的は法律にはっきり書いてある。「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。」。これが第1条の「目的」である。それから「理念」として「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と、ここにはっきりと目的、理念が書かれているわけで、私どもはそれに沿ってやっている。手段については、金融政策決定会合において、その都度情勢を判断して、皆で意見を言い合って、決を採るというかたちで決めている。そのことは、はっきり法律にも書かれているし、その通り私どももやっているわけで、目的は政府が決めて、手段は日銀に任せるということを今更おっしゃるのは、いささかおかしいと思う。

以上