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三木審議委員記者会見要旨 (12月 6日)

平成13年12月 6日・札幌市における金融経済懇談会終了後の記者会見要旨

2001年12月 7日
日本銀行

―平成13年12月 6日(木)
午後2時から約45分
於 札幌グランドホテル

【問】

本日の金融経済懇談会の話を踏まえて、今の北海道経済をどのようにみているのか、また、金融政策運営等についてどのような意見交換があったのかをお聞きしたい。

【答】

本日、私が日銀に来てから初めて北海道に参った訳ですが、非常に有意義なご意見等を伺ったと思っております。その中で、北海道経済の問題について非常に印象に残った話を申し上げますと、ひとつは本日の基調説明の中で、日本経済はデフレの真っ只中にある中で、一極集中によって首都圏以外は非常に悪いということを申し上げましたが、地方の中でも特に北海道が悪いという話が出ました。公共投資依存型で公共投資に支えられて北海道経済が今日まで来たということが理由のひとつにある訳ですが、1割以上の公共事業費切り下げという今の動きの中で受けるダメージは、北海道経済の場合、大きいということだと思う。もう一つは、やや予想外でしたが、狂牛病の影響が非常に大きいという話がありました。午前中に訪問した堀知事からもそのような趣旨の話が出ました。やはり北海道の中での農業と畜産、特に畜産のウェイトの大きさ、逆に言えば、影響の波及効果の大きさが、この狂牛病で如実に表われたということだと思います。

その他にも産業界や金融界から様々なお話を伺いましたが、二、三、申し上げますと、一番大事なのは乗数効果のある財政出動が必要だと申し上げたましたが、では乗数効果のある財政出動というのは一体何を考えているのかというと、やはり何といっても都市再生、それから環境、福祉ということです。北海道の立場からみると、この問題は首都圏の一極集中、都市再生ということになると地方は切り捨てになるのではないか、地方切り捨ての問題をどう考えるのかという非常に真剣なご意見だったと思います。21世紀の新しい社会に相応しいインフラ、──首都圏の再生ということを念頭に置くのではなく──そういう意味での社会インフラの整備に乗数効果のある財政出動をおいてもらえないかという強いご要望がありました。その前提として、何と言っても北海道の「自主・自律」を念頭において考えられないだろうかということ、これが産業界の一番真摯なお気持ちだと思います。その中でも特に物流が大事であり、物流があって初めて経済が網の目のように繋がっていくという意味で考えると、ひとつは高速道路網の必要性を強く言っておられた。ご存知のように特殊法人改革で道路公団を中心にして一斉にその結果が待たれている訳でありますが、残念ながら北海道の場合は、高速道路がこれだけの広いエリアで、帯広等の遠い方から作られてしまい、その遠い方の道路は出来たが、道央とその間がまだこれからという時に今度の道路公団の再生問題にぶつかって止まってしまっている、これが困るということでした。もうひとつは、整備新幹線で、折角、青函トンネルが新幹線規格で作られており、これが札幌まで繋がった場合の経済効果、特に時間軸、──例えば、埼玉県から札幌に向かうには、羽田まで行って千歳まで来て、それから札幌に向かう時間と、新幹線がもし札幌まで繋がった時の時間を考えると──その効果は非常に大きいということでした。

もうひとつの産業界からの要望は、為替政策であり、日本の国際競争力ということを考えた場合、今の為替レートではまだまだ戦えない中で、円高の問題は産業界の立場としては放っておけないとのことでした。為替の問題は、当然、財務省がおやりになる問題で、日本銀行はその代理人として動くという立場でありますが、こういったことがひとつです。それから、金融政策の問題については、日本銀行が名目金利を実質ゼロにして、量もジャブジャブに出しているため、日銀と金融機関の間では、全く言うことはなく、金融機関のお立場としては、日銀の金融政策はこれで十分ということでしたが、問題は、金融システムの外にある企業・家計と銀行との関係で、デフレの真っ只中にあって、しかもデフレスパイラルの懸念がある中で、一番最初に問題になってくるのは、──北海道の場合が特にそうですが──商工業者を中心とする中小企業向け金融の問題だと思います。これは下手をすると貸し渋りの問題に繋がりかねない問題ですから、この点について、日本銀行としてこれが金融システム不安に繋がらないような対応を是非考えてもらわなければ困る、ということでした。これは基調説明でも申し上げた金融システムの信認回復に繋がる問題だと思います。

【問】

講演の最後の方で、──いずれと言うことでおっしゃっているのですが──「財政出動と国債購入、それと為替介入と外債購入など経済政策の範疇に金融政策が自然と重なっていくという局面も念頭に置く必要がある」と、その後に、「社債、CP、ABSなどの購入についても検討する意味がある」ということをおっしゃったが、1か月程前の山口副総裁の講演では、「こういった資産を買う効果を狙うとすると、やはり大量に買わないと効果がないのではないか」というようなことをおっしゃっている訳ですが、それについて、委員ご自身も、これで何らかの効果を狙うとすれば、やはり大量に買わなければならないのではないかとお考えになっているのか、あるいはどういう効果を狙うとお考えなのか。つまり価格の買い支えということをお考えなのか、であるならば長期金利というのは、例えばペッグするとか、そういう発想はお持ちなのか。もうひとつは、社債などの購入についてはそれこそ市場があまり大きくない訳で、大量に買うことが可能かどうか。大量に買うとするとそれこそ質の悪いといいますか、潰れかかっているような企業の社債なども買わなければならないようになるかもしれない。そうなると先程おっしゃっていた死にかかっている企業による価格競争というものをまた助長させてしまうかもしれないという、そういった矛盾点も数多いと思うのですが、その辺について具体的にどのようなイメージをお持ちなのか、なるべく具体的に言って頂ければと思うのですが。

【答】

まず、「今の健全な金融政策がほぼ限界に近付きつつある」ということを申し上げましたが、「健全な」と言うのは、やはりセントラルバンクとしての信認と、銀行券の信認、それから円の信認、───ということは、要するに国の信認です───これを念頭に置くというのが日本銀行の基本的な政策スタンスだと思う。そういう前提の中で、今まで健全な金融スキームというのをここまでやってきた訳ですが、それがいよいよここにきて限界に近付きつつある、こういうことだと思います。基調説明の中でいろいろお話しましたが、やはり今の状況は合わせ技でやっていかざるを得ない、すなわち、金融、財政、それから民間の銀行、企業の自助努力です。その目的は何かというと、やはり物価の下落を止めて、デフレを脱却して景気の回復にもっていく、今はこういう局面だと思います。その中で、金融政策単独で考えた場合、健全な政策というのはほぼ限界に来ているのではないか、限界に近付きつつあると、今は把握しています。一方、デフレスパイラルの懸念があるというのがもうひとつの大きな問題ですが、これは何としても止めなければならないということですから、そういった場合、その合わせ技の中で、──政府の方でいろいろとお考えになっており、二次補正予算から始まる需要喚起策もありますが──金融としてどうなのかということを考えた時に、名目金利が実質殆どゼロになっているという大きな前提の中では、あとは量しか手段がなく、今の状況は量は十分に出ているのですが、残念ながら銀行と日銀の間をくるくると国債を中心にして回っているだけで空回りしている訳です。そして、金融システムの外の企業・家計に効果が殆ど流れないというのが、今置かれている状況です。だから、そういう問題に対して効果が出るような金融調節手段というのが今、日銀に求められていることだと思います。基調説明の中で申し上げたように、インフレターゲットだとか物価目標だという議論がありますが、数値化は私は必要だと思っています。しかし、今の日本の置かれているこの構造調整、これを乗り切るという過程の中で、そういう目標を作っても手段がなければ全然出来ないのですから、その手段を考えていくのが日銀の役目な訳です。そこに問題があるので、だからこそ一遍こういう過程を経て、デフレを脱却して、平時、──普通の経済──になった時に数値化を考えればいいということを申し上げている訳です。では、手段ということを考えた時に、所詮、民間の持っている健全な資産を我々が買い取って流動性を供給する、あるいは担保でそれをもらって流動性を供給する訳ですから、そういう中で手段ということになれば、どのような資産を買うのかということしかない訳です。一部に言われているような「ヘリコプター・マネー」、───お金をどんどん印刷してぱぁーっとばら撒いて、ただで持って行ってくれ──というのは、誰が考えてもおかしな話で、こんなのは金融政策の範疇外の話です。資産を買うという時に、健全という形で考えた場合、今は国債、それからFB・TB、こういうものを中心にして買っている訳ですが、担保でとる方には社債やCPも入っております。健全な適格担保は皆入っていますが、今求められているのは、やはり金融システムの外にそういうお金が流れるようにするための手段、これが一番効く訳ですが、これが何だと言ったら、やはり担保にとっただけでは全然駄目なんです。担保は今50兆円以上入っており、もうあり余っている訳です。だから、アウトライト、──要するに買い切り──でいかなければいけない訳ですから、そういう形で買うということを考えた時に、一体どういう資産を買ったらいいんだというのが、一番の問題だと思う。健全なスキームということを念頭に置くと、国債等はここまできてしまっていますから、あとは健全なスキームから外れる、──日銀流に言えば、非正統的な金融調節手段ということになりますが──そういうことにならざるを得ないだろうと思う。非正統的ということになると、やはり自ずからそこに程度の差があると思います。非正統的な中でも、割と健全な方に近いものから一番遠いものもある。本日申し上げたのは一番遠いものが土地と株で、そこから先は金融システムから外れた形でただでお金をばら撒くというものがある訳ですが、こんなのは論外ですから、一番遠いところにある株とか土地を買う、──そういう意味では、程度の差の中で一番遠いという訳ですから──こんなことをやる時は国が滅びるか滅びないかの時であり、国が滅びてセントラルバンクの信認があるのか、ということになる訳ですから、そこまでいった時には出るかも知れません。そういう意味で遠いと申し上げたので、そういう中で程度の差ということになってくると、やはり国の財政政策と絡んでくる、というか、重なり合ってくるという表現をしたのですが、そういう形で出てくるのは国債の問題だろうと思う。今、国債の買い切り、長国の買い切りは2千億円ずつ月3回ということでやっているのですが、これを増やすということは可能性があるかもしれない、手段としてはまだ出来る可能性もある。それからもうひとつ、国債の買い切りの場合には銀行券の残高の範囲内に残高を抑えておりますが、財政政策として補正予算を組む中ではどうしても国債の問題、──それはある意味では、国債の価格が下がって長期金利が上がっていくという大きなリスクとなり──その場合には、あれだけの国債を抱えている金融機関が非常にダメージを受けるのは目に見えている訳ですから、そういったことを考えた時には、我々が国債をさらに買いお金を出すということは、ある意味では財政政策とポリシーミックス的に重なってくる場面があるということをひとつ申し上げておきます。

それからもうひとつ、為替の問題もあると思います。為替の問題もやはり介入ということと、外債の購入ということは、為替政策とのポリシーミックスという意味で重なり合っていく部分が出てくるのではないかということを申し上げた。為替相場の安定というのは日銀法40条の2項にあるように、これは財務省の仕事になり、日銀は代理人として動くことになっている。金融調節の手段として外債を買うことがどうかということになると思うが、先程から話をしているように何を買うかについてはいろいろな手段が考えられ、外債購入というのはワン・オブ・ゼム、──幾つかの中のひとつ──であると。その中で今申し上げた非正統的な手段の中での程度の差がどうかということを考えた時に、やはり為替政策と重なり合う部分がある問題ではないかという感じがしています。つまり、外債購入と言っても、まずドルを買うということから始まり、ドルを買って円を出し、そして買ったドルを例えば米国債に換えるということですから、円売り介入と形だけみれば全く同じになってしまう。そういう意味で、為替政策と重なり合う部分というのはどうしても否めない事実として出てくると思う。そう考えた時に、やはり手段としてのワン・オブ・ゼムということで考えればいいし、非正統的な手段というものにも程度の差があるということは、財政政策と重なり合うとか為替政策と重なり合うとか、また、それが必要だと求められる局面が来れば、金融政策だけ考えた場合には、健全な金融スキームから外れると言わざる得ない局面も、経済政策の中ではこれは健全な政策ということで捉えられることになるのではないだろうかというように、──私の解釈ですが──理解をしております。ですから、そういう意味での選択肢ということを考えた時に、CPとか社債とかABSとかいわゆる完全な民間企業の金融資産を本行が直接買う、──逆に言えば、銀行の外、つまり金融システムの外にお金が流れない状況をどうするのかということになると、間が切れてしまっているのだから本行が直接やればいいじゃないか──ということに繋がる話。ただし、これは資本主義経済、市場原理の経済の中では、その市場原理の経済に歪みを与えてはいけませんから、こういった問題は相当慎重に考えなければいけないと思います。そして、今現在のポジションがどうだというと、申し上げましたように日銀と金融機関の間では名目金利がほぼゼロになって、しかもジャブジャブの流動性が供給されていて、金融機関からみたらもうこれ以上は要りませんという状態にあり、また、流動性が不安定になった時でも、いつでも日銀から出してもらえるということで、彼らとしても十分に安心してやっておられるという局面であり、このポジションを続けておいて下さいということですから、今はその選択肢として、これ以上のことを考える必要はないと思っております。しかし、今申し上げたように経済は流れている訳ですから、いつどういう形になるか、つまりデフレスパイラルだけは絶対に防がなければいけない、それから日本銀行として物価の下落を絶対に防ぐと、デフレファイターとして機能するというのは本行の最大の役割ですから、それを考えた時に経済が流れている中で、次のそういう局面があったときにどうするんだということだけはしょっちゅう考えておかなければならないと思っています。本来、こういう話は日本銀行の中で考えておけばいい話ですが、世の中ではいろんな形で学者先生も申されてますし、外国の機関からもそういう話も出て来ているので、本来は銀行の中で十分検討していることであるし、それでいいとは思うのですが、今日は敢えてそのところに触れさせていただいたということです。従って、そういう検討はきちっとしておかなければならないし、大事なのは、今は必要ないということは、逆に言うと必要となるときはなきにしもあらずということでしょうから、その判断のタイミングが日銀として非常に大きな課題になると思います。

この問題は、我々9人のボードメンバーと政府からの出席者を入れて金融政策決定会合できちっと議論して、ボードメンバーの1人1票で過半数という形で議決する性質のものであって、その中身についてこれ以上申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

【問】

今のお話に絡んで、「経済政策の範疇に金融政策が自然と重なり合っていく局面」というのは、具体的にデフレスパイラルに陥った時ということなのか、それとも今のいわゆる正統的な金融政策では銀行から家計や企業にお金が回らないということが問題なのか。それから、不健全なもののうち、遠い方は土地や株というお話がありましたが、逆に近い方というのは本日挙げられた外債購入、国債の買い増し、社債やCPの購入という中では、どの辺が一番近いのか。

【答】

後で言われたことは、金融政策決定会合で我々が議論して決めなければならない性質のものなので、どれが近いかとか遠いかとかいうことについてはコメントしにくい問題です。これは、金融政策決定会合の中で皆さんがそれぞれの立場で議論して、そしてそれを日本銀行としてのひとつの総意という形で過半数で議決するという形になる性質のものですから、どれがどれだというのはお答えできない。

最初のデフレスパイラル云々というのは、これはタイミングの問題です。だから最後に判断のタイミングということを申し上げた。今はデフレスパイラルのある意味では入口に来ており、デフレスパイラルの中に入ったら日本経済の回復というのは相当延びると覚悟せざるを得ませんから、この問題だけはタイミングが非常に大切なことだと思います。だから、我々は、決定会合で毎回毎回判断している訳です。それから、金融システムの外の企業・家計に量的緩和をやってもなかなか効果が及んでいないが、そこにまで影響を及ぼさないと物価下落は止まりません。物価はモノとサービスとの交換価値だと申し上げましたが、実際にモノとサービスは購入されて初めて実体経済に影響が出る訳ですから、そこのところが止まっているものだから、なかなか物価下落が止まらないという形になる訳です。ですから、そこにまでいくような調節の手段を考えることが今日銀に求められている。これは決定会合で決めるべき問題ですが、世の中で随分いろいろなことを言われているので、選択肢のワン・オブ・ゼムのゼムの方にはどういうものがあるのかということを申し上げたというようにご理解下さい。

【問】

先程の基調説明の中で、デフレ脱却には合わせ技でいかないといけないと、それで、政府に求められるものの第二として家計、企業の先行き不安を解消するために、将来不安を消し去る"期待形成に働きかける政策"が必要とされ、次に企業に求めるものとして、経営資源の選択と集中を図る姿勢を一層明確にすることが必要だとおっしゃられました。消費をする時に、今は取り敢えずお金は持っているけれどもいつ職を失うか分からない、失業するか分からないから、取り敢えず買うのはやめようというのが今は非常に大きく働いていると思います。その中で、企業がますますリストラをしていくと将来に対する不安というのが、個人のレベルでどんどん膨らんでいくと思います。政府が為すべきことと、企業が為すべきことを同時にしていこうとすると、個人の消費に影響を及ぼすという意味でコンフリクトするような状況が出てくるんではないかと思うんですが、今はセイフティー・ネットをもっと充実すべきと言われていますが、個人の段階では将来に対する不安を消し去るような強烈なものには感じられないのですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。

【答】

今、ある意味では、八方塞がりの閉塞感に陥っています。だから、この閉塞感を何としてでも打開しないと景気の回復に繋がらないということだと思います。その閉塞感の要因については、本日、私なりに分析してみましたが、そういう中での政府の役割というのは、環境整備が第一だと思いますが、それだけではなくて、我々はまだ21世紀をこれから生きていく訳ですから、先のスケッチをはっきり明示してもらうということが、企業と家計のマインド不安を防ぐことになると思います。ですから、そういう期待形成に働きかけるということも非常に必要ではないかということを申し上げた。年金と医療、この2つが一番大きな問題だと思います。もうひとつの問題は、やはり民間の自助努力であることは、間違いありません。今までみたいに政府におんぶしてもらって税金で全部負担してもらうといったことは許されません。これからは、民間は民間としてやるべき自助努力はきちんとやり、それがやりやすいような環境を作っていくのが政府の役割です。1、2年のことだけを考えるのではなくて、21世紀を見据えたところまである程度スケッチが出てくると、個人は安心すると思う。そうすると、1,400兆円の金融資産を個人は持っており、その半分は60歳以上ですが、この人たちが金を使うようになると思われます。我々が最初に想定していた景気回復シナリオは、企業収益が上がると、それによって所得という形で家計に還元される。そうすると、必ず家計はそれによってお金を使うだろう、そして個人消費が増えていく。個人消費が増えれば生産が増えて、上手く回ると考えていたのですが、残念ながら、本日申し上げたようにその道筋が切れているというか、上手くいかない形になったものですから、そういう中で、次に民需、特に6割は個人消費ですから、個人消費はどうするんだと。いつまでも国債30兆円ではないが、財政投資、財政投資なんて言ってはいられないのですから、そういう意味でGDPを上げていくというのは、やはり個人消費なんですね。そうすると、今言ったように個人消費が雇用・所得の改善を通じて回復する可能性が非常に小さくなっていることを考えると、1,400兆円のストックの1%を使っても14兆円になる訳ですから、これを使わせるということを考えなければならないと思います。先行きに不安があったら絶対お金なんて使いません。本日申し上げたように、本来は名目金利がゼロで、モノを買おうと思ったら今は最も安いので、こんなときに買わない人はいない筈だが、何故出来ないかというと、やはり先行きに対する不安があるから、皆ガードしてしまうからで、家計を考えた場合、先行きの不安をまずなくすということも大きなひとつのルートとしてあるということで、申し上げた訳です。

【問】

ポリシーミックスのところで為替介入と外債購入という部分に触れて、ドルを買って円を出すということは介入と形式的には全く同じになると先程お話がありましたが、そうしますと他の国々との関係を考えた時に、意図的な円安であるとか、円安誘導というのは非常に非難の的になりますけれども、その辺の整合性をどのようにお考えでしょうか。

【答】

意図的な円安誘導は為替介入でやるということですから、これは為替政策の範疇です、これは財務省ですということになってしまうので、そうではない、我々はあくまで金融調節の手段として民間資産の何を買うのか、そのワン・オブ・ゼムで外債を買うということであれば、これは為替政策とは違うというのが、OECDや新聞に出ている学者の意見であり、形だけみれば確かにそうかも知れません。だけど、これは、我々はこれからまだまだ慎重に検討しなければならないということを申し上げている訳で、しかも、今そういことをやる、そこまでスキームを変える状況ではありませんとかねがね申し上げています。そういう前提の中の話ですが、もしそういう局面になったときには、そういうことを念頭において慎重に考えなければならないということを申し上げた訳で、それは要するに、今も申し上げたように、形だけみれば確かにこのように分けられるのではないかということですが、では、どういうルートでやるかとなると、まずドルを買うというところから始まり、ドルを買うというのは介入と全く同じになる。だから、目的は違うが手段は一緒になってしまう。為替は必ず相手国のある話ですから、アメリカからみて一体どうその辺を考えるのか、それから東南アジアの近隣諸国に対しては、これを非常に窮乏させることにも繋がりますから、その辺を一体どう考えたらいいのかと、こういった問題を常に念頭において考えなければならない。これは為替政策の範疇に相当入ってくる話になるから重なり合うということを申し上げたので、そういことも念頭におかないと単純に金融調節の手段としてワン・オブ・ゼムですよというだけでは、私は済まないのではないかなと思って、本日は申し上げた。

【問】

先程、国債の買入れの上限についてこういう問題があるということを指摘されたのですが、これは、いずれこういう上限も取っ払われることも念頭に置く必要があるということなのか。もうひとつ、判断のタイミングということを強調されていましたが、デフレスパイラルの入口に来ているということは、そういう状況というのはかなり差し迫っているとの認識でよろしいのでしょうか。

【答】

今の第一の問題は、ちょっと口が滑ってしまったので…。これは、いずれ議事要旨が出るまでは中身のことは言えないんですが、そういう話を、まあ何て言うか、そういうシチュエーションがない訳ではないと…。今の長国を買うスキームでは、ひとつの縛りをどうしても置いておかなければいかんということで銀行券の残高という縛りを作った訳で、その時も当然議論になっています。そういう縛りについてもう一遍議論しなければならないという局面はひょっとしたらあるかもしれない、また、そういうことを言われる人もあるのではないかと。事実、代議士のある先生なんかは声高に言われているものですから少し申し上げたのであって、これは今、日本銀行として正式にそんなことを金融決定会合の場で一生懸命議論しているということは一切ありません。それから、タイミングの問題とは、判断のタイミングですから、ゼロ金利を解除する時もそうでしたし、今年の3月19日に今のスキームを作った時もそうですが、一番大事なのは判断のタイミングということです。今、判断のタイミングの大きな問題として残っているのは、デフレスパイラルのリスク、これをどうしても防がなければならないという問題と、ペイオフを控えての金融システムの信認回復、この2つです。今の健全なスキームの中で、銀行と日銀の間だけを空回りしてしまっているものが、何らかのかたちでこれが企業と家計の方にずっと流れていくという形になって来た時にはその必要はありませんし、また、それが一番望ましいことだろうと思います。何らかの事由で総需要がどんどん出てくるというような局面になった時は、今のこのスキームの量的緩和というのは物凄く経済に効いてきます。そういう意味での判断のタイミングという点をご理解下さい。

以上