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政策委員会議長記者会見要旨 (12月19日)

2001年12月20日
日本銀行

―平成13年12月19日(水)
午後 4時から約50分

【議長】

今日の決定会合で決めた政策変更について、ステートメントは既にご覧になったと思うが、念のため、強調したい点をピックアップしてお話ししたい。

「主たる操作目標である日本銀行当座預金残高を増額する」ということと同時に、「金融市場調節手段を拡充する」という措置を決定した訳である。

「わが国の景気は広範に悪化しており、先行きについても、当面、厳しい調整が続くものとみられる。こうしたなかで、金融市場では、株価やCP、社債の発行金利について信用度の違いを反映した格差が拡がるなど、金融機関や投資家の姿勢が慎重化している。

このような動きは、経済・産業面での構造改革や金融システム健全化の途上で避けられない面がある。しかし、そうした動きが行き過ぎ、健全な企業の資金調達環境が厳しくなると、実体経済や物価をさらに下押しすることが懸念される。

本日の措置は、こうした点を念頭において、金融市場の安定的な機能を確保し、金融面から景気回復を支援する効果を確実なものとするために講じたものである。

日本銀行は、物価の継続的な下落を防止するとともに、日本経済の安定的かつ持続的な成長の基盤を整備するため、今後とも実体経済面の動向や金融市場の状況を注視しつつ、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針である。」

内容については、ご覧頂いたと思うので、ご質問にお答えしたい。

【問】

今回の決定に当たり、特にポイントとなった最近の経済情勢の変化について伺いたい。今日の発表文の中では、特に企業金融を巡る懸念が強調されているが、最近の大型企業倒産とか株価の下落といった状況の中で、今後の信用リスクの拡大懸念について、総裁ご自身はどのような見方を持たれているのか、改めてもう少し詳しく伺いたい。

【答】

景気の現状については、輸出や設備投資の減少に加えて、個人消費も弱まるなど、かなり広範に悪化しているのは認めざるを得ないと思う。

金融市場では、株価やCP、社債の発行金利について、信用度の違いを反映した格差が拡がっているなど、金融機関や投資家の姿勢が慎重化していると言えると思う。

現段階では、97〜98年にみられたように、広い範囲で企業金融の引締まりがみられている訳ではない。しかし、先ほど申し上げたように景気情勢が悪化しているだけに、金融面の動きが実体経済や物価をさらに下押しするような事態は回避する必要がある。

10月末の「展望レポート」との対比でみると、実体経済の足取りの方は、これまでのところ「厳しい調整過程を辿ることは避けられない」とした展望レポートの見通しを大きく外れてはいないと思う。しかしながら、リスク要因の面では、とりわけ金融面に由来するダウンサイド・リスクに、より一層注意していくべき局面となっていると思う。

今回の措置は、こうした経済金融情勢について、その判断を踏まえて、討議の上決定したものである。

【問】

今回決められた措置に、どのような効果を期待できるのか。大枠としての今回の決定は、これまでの量的緩和策の枠組みをそのまま維持・強化する内容だと受け止めているが、量的緩和策については、既にそれ自体が実体経済にもたらす効果はかなり限界に来ているという見方も強くなっている。特に9月以降は既に総裁ご自身「青天井」と表現されて、無制限の潤沢な資金供給を続けている中で、今回当預残高を引き上げたということで、どの程度実際の効果が期待できるのか、お考えを伺いたい。

【答】

効果がどのくらいあるのかを数字で示すのは難しいが、当座預金残高の増額の効果としては、理論的に言えば、(1)金利の低下、(2)ポートフォリオ・リバランス効果、(3)期待形成に与える影響、などが言えようかと思う。

また、現在、企業金融に一部厳しさを増す動きがみられている時であるだけに、今回の当座預金残高の増額が、年末、期末を控えた金融機関の資金繰りの安心感につながっていくのではないか、ひいては、緩和的な企業金融環境の維持に資することを期待している。

私どもが特に心配しているのは、ここへきて銀行の株が非常に下がってきていることである。市場が金融機関に対して今一つ信頼を示していないように思う。金融機関は、あれだけ一生懸命──ここ1か月くらいをみてもお感じになる方が多いと思うが──不良債権の早期整理、当初予定の3倍近い6兆4千億円といったような大きな金額のものを大手行だけで3月までに整理すると言っているのをみてもそうであるし、自己資本の充実に懸命な努力をして、法定準備金等を崩しても配当を維持していこうといったような動きしていることもご覧の通りである。

大銀行の再編が推進されつつあって、その効果が出てくるまでに、兎に角、収益を増やすといったことが起こっていかない限り、銀行は信頼を取り戻せないと思う。

そういう中でも、貸出を効率化していこう──良いところには、金利が低くても貸していくけれども、先行き競争力が持てないというようなところには、金利を高くし、また場合によっては貸出を止めて、貸出の効率化を図っていく──といったことに取り組み始めている訳である。

そういう努力を市場の方ももう少し認めてよいのではないかと思うし、私どもも出来るだけそれに力を貸して、できるだけのことをしていきたいと思っている次第である。

【問】

今回の決定の中にある長期国債の買い切り増額については、財政規律の喪失に繋がり長期金利上昇を招くのではないかと懸念する声もある。日銀としては、そういった見方についてどのような見解をとっているのか。

【答】

長期国債の金利は比較的安定して1.3%台を続けている。長期国債の買い切り額は8月に6千億円にしたのを、今回8千億円に引き上げた。これは、日銀当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断した場合に国債の買い入れをやるという考え方であって、その上に銀行券発行残高という「歯止め」が掛かっている。現在、銀行券発行残高は61兆円くらい、長期国債保有額が49兆円くらいであると思うが、まだ余裕もあるし、「歯止め」は一応掛かっている訳で、そういうことを活かしながら日銀当座預金を10〜15兆円程度に増額していきたいと思っている。

【問】

本日の会合が通常の会合に比べて多少時間的に長いものになり、中では色々と激しい議論があったのではないかと思う。10〜15兆円という当座預金残高引き上げについては賛成多数ということで決定された訳だが、それに対する反対意見はどのようなものがあったのか、一部でも決定までの議論の内容をご紹介頂ければと思う。

【答】

会議の内容を言うのはまだ早いが。年末であるし年度末も近く、1〜3月が特に金融システムにとっても非常に課題を抱えた時であるから何が起るかわからない。企業の方でもかなり整理が行われていくことが見えており、どれくらい増やすのがいいのかということが一番の議論になったところだと思う。皆さんも10兆円を下限にして上が15兆円というのは幅が広いじゃないかとお思いになるだろうが、そこのところはかなり議論した。しかし、1〜3月にはっきり先が読めない中で、方向としては、何が起っても資金供給が潤沢に行われていくということが何よりの安心感を与えることになるだろうと思う。現在は9兆円前後のところまで来ているが、一応10〜15兆円ということにして、しかもなお書きを付けて、何か起ってもっと資金が必要な時にはこれを超えても差し支えないというように決めた訳である。そこのところは多少議論もあったが、増やすことについてはほとんど皆さん賛成であったし、最後には10〜15兆円になお書きを付けるということで多数決で決まった。

【問】

決定会合前に一部では結構論議が出たが、外債購入論とかCPや社債の買い切りといった問題については、今日の会合の中では議論があったのか。

【答】

外債も言った委員の方はいたが、この間から新聞でも随分お書き下さっており、私も国会でも何回か答えたけれども、外債購入というのは、為替の円安を狙うのか、あるいはそれによって資金供給を増やすというようなことを狙っての提案だと思うが、市場から日本銀行が外貨を買うということは、やはり需要を増やすことだから、ドルが高くなっていくということは間違いないと思う。そういうことは、日銀法にかなりはっきり書いてある訳で、相手を、例えば政府とかあるいはどこかの特定の中央銀行とかいうようなことに決めてやったとしても、それによって円資金の供給が増えるというものではない。それは今この時期にやる必要もないし、法的にも問題があるということで、これは議論をもうほとんどしていない。そういう意見は出たけれども。

それからCP、社債を買ったらどうかというのは、これもまた中央銀行の銀行券として──私どもが出している円のお札というのは、これは日本銀行の負債になる訳だが──日本銀行が国民に手形を出しているようなものだから、これで価値が下がるようなことがあってはいけない。これに見合った日本銀行の資産というのは、どこへ出しても恥ずかしくない、どこでも流動性のあるものでなくては困る訳で、そういう意味で、社債とかCPをそのまま市場あるいは企業から買うというようなことは、とても出来るようなものではない。今やっている現先のCP買オペというのは、取引先の銀行からCPを買っているのだから、それは発行している企業がどうなるかということは、むしろ我々が取引している銀行が担保のようなかたちで現先の保証として置いているものであって、そのCPを市場から買うということ、あるいは引受けるとか、買い取るとか、買い切るとかいうようなことではない。今日銀が買っている現先のCP、長くて1、2か月位のものだから、そういうものとCPの買いは、全然違う。

それから社債についても同じだが、社債はいろいろなかたちで、担保として多少入っているかもしれない。適格なものが根担保などになって入っていることはあり得ると思うけれども、社債を直接買うことは、中央銀行の銀行券に見合う資産としては危ないものである。そういうことをやっている中央銀行は主要国には全くなく、中央銀行として当たり前のことである。取引先の銀行とはいろいろ取引があるにしても、市場からそういうものを買って持っているというのは、これは中央銀行のやるべきことではないと思っている。国債になれば別だけれども。こういうことは少し誤解があるのではないかと思う。日本銀行はかつて99年にも、現先のCPの買いを10兆円近くやって、それが市場を非常に元気づけて、効果があったということを記憶しているが、今度もそういうかたちでCPそのものを買うのではなく、現先の対象として取引先との取引にそれを使うことによって、CPの市場を刺激することができる、あるいは拡大させることができる。それが狙いなのだから、直接金融を助けていく効果はあると思う。今CPは20兆円位残高があると思うけれども、そのうち日本銀行が持っているのは、3兆円位であり、それは全て現先で持っている訳であるから、担保と同じである。その辺のことは、良くご理解頂きたいと思う。CP、社債を買うということではなく、担保として入れることはあっても、直接買うことはないと思う。

【問】

先ほど銀行株の下落に関して、市場が金融機関に信頼を寄せていないのではないかという見方をされたが……。

【答】

寄せていないと書かれるのは何だが、冷たいという感じはする。株の下がり方にしても、他の株価が上がっている時でも銀行株はここの所ずっと下がっていたから。

【問】

市場が金融機関をなかなか信頼できない原因はどこにあると見ているか。また、銀行株の下落が銀行経営あるいは金融システムにどのような影響を及ぼすと見ているのか、伺いたい。

【答】

銀行に対する信認がなくなったら、経済取引は止まってしまうのものである。銀行は信頼されてお金を預かって、それを貸したり、国債を買ったり、運用して稼いでいる訳だから、そういう取引をする金融機関というものは、やはりしっかり市場から信用してもらうということが大事なことだと思う。銀行株価が急激に下がっているが、このままで良いのかと。銀行が一生懸命再生を期して、不良債権の償却を思い切ってやったり、資本を充実して将来に備えたり、収益を増やそうとしていろいろな手を使って立ち直ろうとしている訳だから。

特に、銀行の貸出の効率化は、是非この機会に進めてもらいたい。これにより、収益が上がり、市場からの信認も高まってくるのではないか。それを私どもとしては、いろいろな機会で後押ししていきたいと思っている。

金融システムの現状について、この機会に私なりの見方を少し言わせてもらうと、確かに市場でのわが国金融システムに対する評価は厳しいが、主要行は、中間決算発表時に期初の見通しを大きく上回る不良債権処理を行ったし、更なるコストの削減等を実施し、思い切った方針を打ち出している訳で、その内容は評価に値するものというふうに考えている。日本銀行としても、こうした金融機関の自助努力の成果に強く期待している訳である。また、セーフティネットも、金融システムが動揺した98年当時と比べると、格段に充実していると思う。日本銀行でもロンバート貸出とか、特融とか、あるいは非常事態に備えた考え方なり訓練なり、手段というものが充実してきていると思う。また、金融危機対応会議が何か起こった時には開かれて、そこで公的資本注入が可能な仕組みにもなっている訳である。各金融機関が自助努力を続けていく過程で、中央銀行として流動性供給の面でサポートすべき事態が生じた時には、先ほど申し上げたように、セーフティネットの活用と併せて、金融システムの安定を確保していくために、適切に対応していきたいと思っている。

銀行株を見ていると、随分株価の下がり方が急速であったという感じがする。

【問】

金融機関が自助努力していることは評価されてもいいという話だが、総裁はかねて日本の大手金融機関の自己資本比率について、繰延税金資産などを差し引くと国際基準に満たない8%未満ではないかとおっしゃられていたし、正に市場が心配しているのも、金融機関がこの先不良債権処理を進めれば自己資本不足になるのではないかという点である。この問題について、総裁はどのように解決していけばよいと考えているか。

【答】

それはやはり銀行が収益を増やしていかなければならない。収益を増やすことによって自己資本も増えていくし、株価も上がっていくはずだし、不良債権の償却もできるし、配当もできるということだから、そこのところは、どうやって収益を増やすかということ──リストラはかなりもう進んでやっていることだろうから、これからどういう方向に貸出を伸ばしていくのか、単に量を増やすというのではなくて良い貸出先、そしてまた貸出を効率化することによって収益の源泉をしっかり持っていくということ──が必要だと思う。

ご指摘の自己資本をどうやって増やすかということについても──今の自己資本には、公的資本も税金の先払い分もカウントできるということもあるとは思うが、──やはり自助努力で銀行が収益を増やしていくということが、何より大切なことだと思う。

【問】

マーケットでは銀行の株価が2桁、100円を割るところもあるという状況の中で、やはり公的資金を入れなければ銀行の資本は回復しないのではないか、あるいは先ほど総裁が触れた金融危機宣言に近いようなかたちで信用回復することが必要ではないかという声も非常に強い訳だが、金融システムの現状についてどういう認識か。

【答】

銀行の不良債権がなかなか減らなかったというのが、ここ数年の経緯だが、それを減らすべく銀行は今一生懸命努力を始めている訳で、この間の6兆4千億円の償却というのも、かなり思い切った決定だったと思う。それだけでもちろん解決するものではないが、これからもそういうことを続けてやっていくためには、自己資本も増やさなければならないし、その基になる収益を増やしていくということが一番大事なことだと思う。そういう方向にかなり動き出してきている。銀行の利鞘がどの位あるか、皆さんご存知だと思うが、表面利鞘でなくてコストを差し引いた利鞘は日本の銀行は今0.5%程度しかない。米国などは2〜3%であり、日本もかつてはそれ位あった。そういったことを貸出の効率化でやっていくと同時に、もう少し多角的な運用・取引を行って儲けを増やしていくということがこれからの課題であり、今彼らが一生懸命考えて動いているのはそういうことではないかと思う。

【問】

今回、手段の拡充として、新たに、ABCPとか、住宅ローン債権、不動産を裏付けとするABSなどを導入されるとのことだか、その狙いは何か。そのようなマーケットを育てるという狙いがあるのか。それによってどういう効果を期待し、それはいつ頃得られると考えているのか。また、不動産については、これまでやってこなかったのには理由があるのか。ここで変えられるのはどういう意味なのか、伺いたい。

【答】

CP現先オペについては、今までやってきた通りである。それをなるべく活発化していくために、増やしていくということはご理解頂けると思う。資産担保CP──“asset backed CP”と呼ばれている訳だが──は、CP現先オペの対象ともなるし、適格担保に加えるための実務的な検討も、もう少ししていかなければならないが、最近、このマーケットがかなり大きくなりつつある。例えば、日本の大メーカーが自分の所の部品メーカーから部品を買う訳であるが、部品メーカーにとっては、大メーカーに売ってすぐにそれは金にならない訳で、金が入るまでの間の債権がある訳である。そういうものを証券化して、それを市場に渡せば、それは市場で売買できるようになってくる訳である。そのようなものは、かなり確実なものである──トヨタにしても日産にしてもそうだと思うが。そういうものをまとめて、市場に出していくという取引が既に始まっている。そういうものは、これからどんどん拡大していくのだろうと思う。いわゆる売掛債権を証券化して、それを市場でさばくと。さばく仕事をやるのは証券会社などの専門家で、そういうものを市場で作っていくということになるのだと思う。そういうものは、かなり確実な売掛債権の証券化だと思う。そのようなものが市場として出回っていくことは、企業の段階にかなり資金がうまく入っていく、一つの道ではないかと思う。ご承知のように、すべて銀行経由で、間接金融主体であったのが、そういったものを通じて資金が企業に入っていくということができていけば、市場の活性化、あるいは拡大につながっていくと思う。そういうものを、私どもの取引先から、私どもが必要に応じて担保でとっていく。手形の買いや貸付をやる時に、担保にそういうものをとっていくということは、これからの一つの玉と考えてよいのだと思う。これは、もう少しディテールを固めた上で、なるべく早く決定会合でもう一度議論をした上で、詳細を決めていくことにしているが、期ならずして、これは実現していきたいと思っている。

それから、ABSであるが、これはかなり市場があり、私どもも既に担保でとっている訳であるが、今までは、「リース料債権、クレジット債権、社債、企業向け貸出債権を裏付け資産とする」ものに限られていた訳で、住宅ローン債権とか、不動産──不動産といってもかなり広いであろうが──そういうものをよく見た上で、これは確実だと思われるものは適格担保として扱ってもよいのではないかと思っている。これについても、もう少し詰めた上で決定会合の議を経て動きだすことになる。今残高が約1兆5千億円、そのうち既に日本銀行が担保でとっているものがある。それに住宅ローン債権と不動産を新たに加えるということである。

それから、もう一つ。これも技術的なことかもしれないが、金融市場調節の運営面での改善ということで、手形オペの全店買入れのオファー頻度を上げていくことを今考えており、それは必要なことだと思っている。それから、国債の買い入れオペ、国債のレポオペ、CP現先オペ、あるいは手形売出についても、輪番制といって30社ぐらいを取引先の中から選んでやってきたが、そういうものをもう少し増やしていくことができれば、道が開けていくだろう。発表文の3(2)に書いてあることはそういうことである。

【問】

「日銀が土地を買え」とか「株を買え」とかの議論もないことはないが、今回日銀は「住宅ローン債権、不動産を裏付けとするABSを扱う」ということを決定した。これは、日銀として、不動産関連の資産を買うぎりぎりの線という、日銀としての一つの答えなのか。また、CP、社債の適格性について、社債の場合は、「シングルA」と我々にも分かり易い基準となっている一方、CPの適格性の基準は日銀の判断となっているため、この局面で見直して、ある程度裁量的に緩和されるということは有り得ないのか。

【答】

今、CPの格付けについて、不適格なものを、質を少し落としても、取るようにするということは考えていない。むしろ、CP自体の取引が増えていけば、おのずから私どもの方に入ってくるものも増えていくであろうと思う。また、そういうことができるように、CP現先買いを積極化していきたいと思っている。それが玉の一つであるから、それで供給できる訳であるから。そういうことを本日決めた訳である。従って、量的にCP現先買いというものは、増えていくと思うが、質が落ちていくとは思わない。

不動産については、不動産を買って、それが私どもの銀行券の見合い資産になったりすることは、やはり危険だと思う。不動産をなるべく証券化して、そういうものが担保になって入っていけば、それこそ“asset backed”で、不動産や住宅金融の債権などがバックにある証券が、担保として、銀行を通じて私どもの所に入ってくるというのは、自然な動きではないかと思う。そのような証券化というものについては、日本の金融市場というものが、かなり今まで偏っていたというか、そういうものに遅れていたということが言えるのだと思うが、ここにきて、もう少しそういった市場を大きくしたいと私どもは願っている。そのきっかけになればよいがと思う。

【問】

当座預金残高目標は今回10〜15兆円ということで幅があるという話があったが、素朴な疑問ではあるが、上限が設定されたり、されなかったりするのが良くわからないので、ご説明頂きたい。

【答】

9月までは6兆円ということでやってきたが、9月にあのようなことが起こったので、9月18日の決定会合で6兆円以上ということを決めた。これは特別で、何兆円以上というのは、どこまでやっていいのか担当部署としても迷うだろうが、先が読み難かったということで、ここまでずっと泳いできた訳である。実際問題として、11月終わりに年越し(の資金需要)とエンロンの破綻が重なった時には14兆円に達したし、9月末にも12兆円に上った。

現在は9兆円を割るくらいとなり、一応年越しの準備はかなり進んでいると思うが、年度末もすぐ近づいてくるから、ここで一応10〜15兆円というレンジを決定会合として執行部に指示し、その線で調整してくれということになった。

私はこういう年末を控えた時期であるので、資金はかなり10兆円を超えて動くだろうと思っている。

【問】

総裁は17日の国会で「流動性は潤沢に出しているので国債買い切りオペの増額が必要な状況だとは思わない」ということをおっしゃったが、それから数日後のこの決定である。中央銀行総裁として国会での発言というものは、それ程軽いものなのか。

【答】

毎月の買い入れ限度を据え置く話などはしていない。国債保有額には銀行券発行残高という枠があるということを言ったつもりである。毎月の量を増やすか増やさないかという話ではなかったと思う。それは、恐らく聞き違いだろう。

いずれにしても、金融機関の信認をあまり叩かないで欲しい。必要以上に。悪いところは叩いていただいても良いが、やはり一生懸命、再生、立ち直りに向けた努力をしているところだから、一つ頑張ってくれという感じで記事を書いて頂きたい。私どももそういうつもりで銀行をサポートしていきたいと思っている。銀行が信認を無くしたら、経済はおかしくなってしまう。そんなにおかしなことは私はないと思うが、その辺は一つよろしく。皆様の筆先に懸っているところが非常に多いと思うから。

以上