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総裁記者会見要旨(4月24日)

G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨

2004年4月25日
日本銀行

於・ワシントンDC
平成16年4月24日(土)
午後0時15分から約45分(現地時間)

冒頭発言

G7において、私は、日本経済の持続的回復へのパスをより確実にするとともに、物価の安定を確立する、このために現在の量的緩和の枠組みに基づく金融緩和政策を推進していくということを申し上げました。今回のG7では、各国の金融政策が格別大きな主要議題になったわけではないですが、世界経済がこれから好循環に乗っていくために、金融政策が果たすべき役割はますます大きくなっている、マーケットの期待の安定化を図りながら十分その効果を出していく必要がある、といった点が共通の認識であったと感じました。

以下質疑

【問】

これだけ経済が拡大している傾向にあることを確認すると、マーケット的にも、メディア的にも、金利の引き上げについて、特に米国について関心を集めていますが、その辺についてどのような議論があったのか。グリーンスパン議長とお会いになっているのでしたら、その辺の議論を出来る範囲で教えていただきたい。

【答】

金融政策そのものの具体的な方向性については、各国の中央銀行が責任をもって情勢判断し実施していくべきことなので、G7の場では、そういう形の議論はないわけです。経済および市場の動向全般を点検する議論の中で、世界的に経済がより良い方向に向かっていく、広がりをもって景気の足取りが良くなっていくということであれば、当然マーケットの中で、様々な金融指標なかんずく金利について、先行きの金利感を修正していく可能性は当然読めるということです。現在および将来の状況を考えますと、大変難しいことですが、マーケットの金利に対する期待の安定化に十分配慮しながら金融政策を行っていくことが、より大きな成果を生むであろうという認識が背後にあった意見交流を行えたということであります。特に米国の動向について強くご関心があるということですが、G7の会議の場でグリーンスパン議長がどうおっしゃったとか、あるいは私との個別会談でグリーンスパン議長がどうおっしゃたかということは、残念ながら申し上げることは出来ません。私が受けている印象としては、直前の議会証言やその他で発言しておられますが、米国においても、物価の情勢は少しずつ変化してきている、しかしインフレが差し迫った危険というところまではきていないと、グリーンスパン議長の率直なお気持ちもそのようなところでないかと受け止めています。

【問】

日銀は、物価の展望レポートの公表を月末に控えているわけですが、今回のG7では、物価の展望、デフレ脱却の見通しについて、具体的にどのような表現で説明されたのか。また、それに対する各国の反応について、教えていただきたい。

【答】

物価についてですが、ご指摘の通り、日本銀行では、次回の政策決定会合で展望レポートを新しく発表申し上げるということです。従って、今回のG7におきまして、数字のイメージを交えながら物価の展望をお話したわけではございません。しかし、物価全体のトレンドとしては、やはり日本経済が着実に良い方向に進んでいるなかで、既に企業物価の段階では、わずかに物価が上昇し始めている。その一方で、消費者物価指数の段階では、表面の指数の前年比上昇率はほぼゼロという状況が続いており、「消費者物価指数が安定的にゼロ%以上」という今の金融緩和政策の目標としている状況が実現するまでには、まだ必ずしも先行きの道程は容易でないという話をしました。従って、先ほど冒頭で説明した通り、今の量的緩和の枠組みの下で、緩和政策を維持していくという政策論と結びつけてお話をしたわけです。
私の説明振りに対する各国の方々の受け止め方ですが、必ずしも具体的にコメントを頂いたわけではありません。世界的にこれだけ原油価格が堅調に推移し、国際商品価格がかなりの勢いで上がり、海上運賃も急速に上昇している中で、それぞれの国において、末端の物価指数への波及が過去の経験と比べるとかなり遅れているという状況が、共通の認識になっているわけですので、日本の物価情勢に関する私の説明についても、理解度は非常に進んだ形で受け止めて頂いているのではないかと感じております。

【問】

世界的な金融緩和が世界経済を過熱させている、あるいは過熱させることへの懸念をどなたか表明されたのか。米国を中心に金利引上げ局面を迎えるにあたり、金利引上げがせっかく良くなった経済を腰折れさせる懸念をどなたか表明されたか、教えていただきたい。

【答】

世界経済全体としては、漸く持続的な回復の軌道に乗りつつあるという段階でありますので、全体としてオーバーヒーティングということを、近い将来の問題として意識するという雰囲気ではなかったと思います。中国経済について、少しそういう感じがないではないという議論もありうるわけですが、中国当局では、それをいち早く察知し調整に手をつけ始めているということでありますので、その点について特にクローズアップされたわけではなかったと思います。逆に、先行き景気の腰折れという議論は全く出ませんでした。それよりもっと手前の段階で、やはり金融市場の期待の安定化を図りながら、より望ましい世界経済の好循環を実現するか、そちらの方に視野が定まっているということではないかと思います。