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植田審議委員記者会見要旨(9月16日)

2004年9月17日
日本銀行

―平成16年9月16日(木)
午後2時から約30分
於 ホテルセンチュリー静岡(静岡)

【問】

 現在の静岡県の経済をどのようにみているか。

【答】

 皆さんからお話を伺ったが、当地が製造業、ものづくり中心の県であるということ、そして先程の基調説明でもお話したように、製造業を中心に景気が良い、ということが日本全体としてあるので、非常に明るい話が多かったという印象である。

【問】

 懇談会の出席者からは、どのような意見・要望等が出たのか。

【答】

 今お話したように、製造業の方が多かったが、当地の製造業は、県内だけでなく、日本全体にかなり活動基盤を広げているとか、あるいは世界各国に進出しているところが多い。従って、静岡県だけの情報というよりは、日本経済全体、あるいは世界全体について意見を交わすことができ、ちょうど基調説明でお話した色々な論点についても、面白い情報を頂いたと思う。その中からいくつかピックアップしてお話してみたいと思う。

 懇談会における基調説明では、海外経済の減速傾向がなきにしもあらず、という話をさせて頂いた。懇談会出席者の平均的な感触だが、中国経済については、部分的にはっきりとした減速はみえるけれども、経済全体としてみれば、まだまだ非常に強い、という印象をお持ちの方が多かった。また、アメリカ、そしてハイテク関連のところは、私が申し上げたように、踊り場に入ったようにもみえるが、あまり心配する必要のない程度のものではないか、とおっしゃる方が多かったように思う。国内の設備投資についても、7月の機械受注がマイナスだったわけだが、9月くらいにかけて持ち直してくるのではないか、というお話もあった。

 以上が明るい話だが、これに対して雇用の問題については、これも基調説明で、雇用の中でも非正規雇用が伸びている、これが賃金に下押し圧力として働いている、という話をしたわけだが、この点については、かなり多くの方がお触れになり、現場の感覚ではこの動きはまだまだ続くであろう、ということであった。その意味で、物価はそう簡単に上がってこない、という結論をサポートするような材料の話を皆さんから伺った。

【問】

 中国、アメリカなどで一部みられる厳しさの具体例というのは、どういうものか。

【答】

 中国関連ではっきり減速しているケースとして話が出たのは、建設機械である。中国が建設投資を抑えているので、それに関連している日本企業の中国での売上げが落ちているという話だった。

【問】

 そのうち持ち直すだろうというシナリオを描いているのか。

【答】

 持ち直すというか、中国自体はそんなにスローダウンしていないというお話だった。

【問】

  1.  まず第一に、基調説明では、潜在成長率をやや上回るという今後の見通しであったが、潜在成長率について、大体何%くらいでみているのか。

  2.  第二に、日本経済について減速していると判断しているのか、減速しているかもしれないとみているのか。

  3.  第三に、政策運営に関連して、基調説明要旨をみるとインフレ率の通常の予測の視野について、1~2年となっているが、実際の基調説明の中では、2~3年先のインフレ率の上昇も考えていくことが重要だ、と述べていたと思う。この点について確認したい。

  4.  第四に、以前テーラールールに基づいて、翌日物金利は−2%くらいと言っていたと思うが、現在の計測では、テーラールールでは金利は何%くらいになるのか。

【答】

  1.  皆難しい質問である。まず、潜在成長率だが、最近計算し直してみたわけではないので、漠然と頭の中にあることで申し上げれば、2%前後くらいに思っている。

  2.  第二に、減速しているのか、減速の兆候がみえているのか、ということについては、どのデータをみるかということ次第だが、やはりどのデータをみても、ある程度の期間均したトレンドをみなければならないと思っているので、ここまでに出たデータだけからは、「減速の兆候がある」くらいしか言えないかと思っている。

  3.  第三に、出口との関係で、インフレ予想が1年前後先だけでなく、その先も、という話について、もう少し詳しく解説して欲しいということだと思うが、これは、我々がこれまで出してきた1年とか18か月先くらいの見通しをみるだけで十分なケースもあるだろうし、それだけではちょっと不安だ、というケースもある、そういう程度の話で申し上げた。

  4.  最後に、テーラールールに基づいた金利はどのくらいのレベルかという点だが、前提の置き方次第であり、まだまだマイナスという数字も出せると思うし、かなり無理をすれば、若干プラスという数字も出せなくもない、という程度かと思う。

【問】

 基調説明において、中央銀行の物価見通しが上下に外れるリスクがあることに関して、政策運営のリスク管理という概念に言及されたと思う。それを今後応用していくと、委員の指摘だと、仮に物価予想が将来下振れた方がコストが大きい、ということを念頭におくのであれば、寧ろ予想を外した場合の保険として、CPIが0%以上という条件を、例えば0.5%まで引き上げることも必要だと考えられるか。

【答】

 それは、今のような話に対応する一つのオプションだと思う。ただ、具体例でお話すると、インフレ予想が0.3%とか0.4%になったとして、それで解除できるかどうか。0.3%や0.4%という予想にかなり確信があり、従ってもう一回デフレに戻ってしまうリスクが非常に小さい場合。そうした場合と、3つくらいシナリオがあって、ひとつは0.3%くらいである、ひとつはデフレに戻る可能性がある、ひとつは0.3%よりちょっと高いインフレ率が出るかもしれない、そういう中での平均0.3%とでは違うと思う。あるいは更に言えば、来年は0.3%だけれども、その辺がピークであって、その後は下がっていきそうだ、というようなケース、同じ0.3%であっても、色々考えられると思う。従って、ある種ののりしろ、保険料みたいなものであるXパーセントという数字を前もって出しておいて、そこを上回れば自動的に解除というような、はっきりと定量化した機械的なルールで対応した方が透明性が高いわけであるが、現実問題としてはそうようなものは難しく、裁量的な判断の余地を残しておかざるを得ないと、今、私は考えている。

【問】

 景気と物価の関係で伺いたい。今まで景気が回復してくる中で、需給ギャップが縮小傾向にあった。しかし生産性の上昇によって、需給ギャップの縮小を上回るようなものがあったということで、賃金と物価がなかなか上がらなかった。先行き景気が減速する中、物価は実際の経済に遅れると言われるし、また、生産性の上昇が、非製造業か製造業か、循環的なものか構造的なものかでどれくらい続くかわからないという面もあると思う。こうした点を踏まえ、今、委員が思っている景気の循環面からみた物価の先行きについて伺いたい。というのは、これだけ景気が回復している、企業収益も強い、しかし労働市場がなかなか締まっていなくて企業経営者の中期的な成長率の期待も低い、またパートの比率が高まっている、そのような中で、生産性の上昇を今後どうみるかによって、物価に対する見方も変わると思う。仮に生産性の上昇が循環的なものであればそれがずっと続くわけではないだろう。その辺の見通しを伺いたい。

【答】

 生産性の上昇率の今後の推移そのものについては、先程もお話したように、よくわからないというか、循環的に高まっている部分と、根っこの技術進歩その他で高まっている部分と、両方あるのだと思う。それがどれくらいであって、従って循環的な部分がなくなればどの辺に落ち着くのか。これは、ちょっと今読めない状況であると、残念だがお答えせざるを得ないと思う。

 最初のほうにおっしゃっていたのは、景気が減速した時にインフレ率がどうなるか、というご質問かと思う。基調説明では、減速に2通りある、という話をしたと思う。不況になるというのではなくて、潜在成長率より少し上くらいの所へ成長率が段々下がり、その辺で暫く安定するというような意味での減速と、景気が一旦後退局面に入るという減速と、両方あることを話した。その場合のインフレ率の予想ということであるが、前者においては、潜在成長率を一応上回る姿を想定しているので、普通に考えれば、どこかで物価は上昇し始めるということだと思う。但し、前者においても、生産性の上昇が高い水準で続いたり、あるいは非正規雇用へのシフトがまだまだ続いたり、という場合は、成長率がそこそこ高くてもなかなか物価は上がり始めないというケースが考えられる。

 一方、景気循環的な意味で、ちょっと調整、という局面に行く可能性もゼロではないと思っている。ただ、先程来お話しているように、その場合でも現在見渡せる範囲では、非常に深刻な調整になるという可能性は少ないのではないか、従って、インフレ率はその調整局面で大幅にマイナス幅を拡大するというのも想定し難い、という感じでみている。

【問】

 本日の基調説明の中で、将来の出口政策のイメージとして、日銀がどのように静かに出口政策を行うかということについて説明があり、オーバーナイト・レートを上げるという話があった。現在の量的緩和はオーバナイト・レートが0%近傍に位置しているのと同時に、リザーブ・ターゲットをかなり積み上げているという2つの側面があると思う。出口政策を実際に行う際、積み上がったリザーブ・ターゲットがどのようになっていくというイメージを持っているか。また、現在、日銀が購入している国債の扱いはどのようになるとイメージしているか。

【答】

 出口の際に金利が上昇するのは、出口全体を広く捉えれば、結局どこかの時点でオーバーナイト・レートは上がることになるだろうという意味である。

 出口に至るプロセスとして、金利が上昇するということが起るし、同時に、リザーブを現在のように高い水準から格段に低い水準に下げていくことも起る。これが、どれくらいの時間的な長さで起るか、あるいは起こすのか、ということはいろいろなやり方があって、長く時間を掛けてリザーブを回収するやり方もあるし、極端に言えば1日で回収することも理屈上は考えられなくもない。ある程度まで回収しないと、オーバーナイト・レートも上昇しないということだと思う。

 その際、どのやり方を選ぶのが適切かというのは、今、こうだとはやはり言い難く、その近くになった時の経済・金融情勢に対応して一番良いと思われるものを選びたいという趣旨で申し上げた。

 量的緩和の施策の一環である、長期国債買いオペの扱いについても、出口の技術的側面をどうするかということの一環として考えたい。いろいろなやり方があると思うが、それもその時の状況に合わせて、ほかに出口でやらなければならないことと併せて決めていきたい。

【問】

 量的緩和政策解除の技術論は、それはそれで良いと思うが、その前に、量的緩和政策の効果と、量を出したことの物価と経済に対する効果が果たしてあったのかどうか、ということを一度検証しないと、解除する際の政策ロジックとして難しいのではないか。本当にデフレを払拭する効果があったのであれば、ゆっくりとしか解除できないかも知れないし、もし殆ど効果がないのであれば、技術的に簡単に解除する方法にいくと思うが、この点はどのように思われるか。

【答】

 難しい点だが、解除する前にきちんとした分析をして、「これまでの緩和局面でこれだけの効果があった」、「効果の大きさがこれくらいだから、解除のスピードはこれくらいが望ましい」というような綺麗な議論、ないし分析が出来る種類の問題ではないと思っている。従って、解除の時も、ある程度そこに色々なリスクがあるということを頭に置いたうえで、やや試行錯誤的なやり方になる。出口を出て締めてみると、今よりはもう少しはっきり、量の経済への影響はどれくらいのものであったかということが分かる面もあると思っている。

【問】

 出口について金利と量の話が出たが、基調説明の趣旨は、世の中がビックリするように、ある日突然、無担オーバーナイト・レートを上げるのではない、ということであったと思う。要するに、ビハインド・ザ・カーブにしていくということか。世の中の物価が上がってきて、それに併せて中・長期国債の金利も上がってきて、世の中がそういうムードになった時にオーバーナイト・レートだけ上げるから、静かに出口に入っていくという理解で良いか。

【答】

 ビハインド・ザ・カーブかどうかという論点は、別にあると思う。私が申し上げたのは、出口に至る際には、裁量的な部分が残る面はあるが、基本的には既に出口に至るプロセス、あるいは出口の条件をきちんと示しているので、マーケットは出口がいつくらいになるかということを予想する手立てを持っているということである。従って、出口が近くなってくれば、現実問題としてまだ出口ではなくても、将来における短期金利の予想値が上がってくる。これが、中期や長期の金利を先に上げることになる。もっと出口が近くなれば、もっと短めの金利が先に上がって、従って日銀が出口について何もしない間に、ターム・ストラクチャーのかなりの部分は、出口後の姿に修正されてしまうであろう。

 出口の周辺で起ることは、非常に短いところの金利調整の部分である。極端にいえば、金利変動というところだけに着目していれば、オーバーナイトの金利だけが上がることになる。現実にはそう綺麗にはいかないと思うが、ひとつの姿として、一番綺麗にいった場合は、そういうことであろうという話をしたつもりである。出口を出る前から、出口を出た後の金利の姿がどうなるかということが、オーバーナイトを除けば、織り込まれてしまうということである。

【問】

 先程、景気が減速する兆候がみえていて、減速するとしても2つのパターンがあるということだったが、いずれの場合にしても減速する、今まで回復していたスピードが鈍る、もしかしたら成長率も少し下がるかもしれない、そういう時に景気回復を支える追加的な金融緩和は必要ないのか。仮に、そのような状況になった時に、どういう手段があるのか。

【答】

 先程、減速には2種類あって、潜在成長率をやや上回る程度のところへ成長率が減速していくケースと、もう少し景気循環的に調整局面に入るケース、両方のケースが可能性としてあるという話をした。

 前者の場合には、基本的にGDPギャップが縮小を続けるわけなので、追加緩和策は必要ないと思う。ただ、それでも物価が上昇に転じるというタイミングが非常に後ずれするという時に、どう考えるかというのは悩ましい問題として残ると思う。

 後者の、景気がややはっきりと減速、調整局面に至るというケースになった場合には、やはり、追加緩和策を打てるのかどうか、どういう策があるのか、ということは真剣な検討の対象になると思う。その際に、どういう政策手段があるかということは、これまで色々議論されてきた中からみつけるということになると思うが、今、どれを使うことになるかということをお話するのは適当でないかと思うし、また新しいやり方がみつかる可能性も残されていると思う。

【問】

 先程、インフレ率の予想が下に外れるコストの方が、上に外れるコストよりも大きいとおっしゃったが、これは量的緩和政策解除に関するCPIの二つの条件が満たされても、なおかつ慎重に判断するという可能性について触れられたのかと思う。仮にそういう状況になって、量的緩和政策を解除するのかしないのか、市場が神経質になっている時に、「もっとやるよ」というように市場に働き掛けるよりも、基調説明で例にあげたグリーンスパン議長のように、「当面は量的緩和を解除しない」というような言い方、あるいは「1年、2年は解除しない」という言い方を今の段階からする方が、長期金利を引き下げる効果があるのではないか。景気が減速しようとしている今についても、景気を刺激する、支援する効果があるのではないかと思う。グリーンスパン議長が言ったように「当面量的緩和は解除しない」なり、「量的緩和は長期化させる」と明言した方が良いと思うがどうか。

【答】

 Fedは「FFレート1%を相当期間続ける」という言い方をした訳である。これに対し、日本銀行はその点についてはもっと明快なことをずっと言ってきた。すなわち、「インフレ率の現実値と予想値の両方がプラスになるまで、現在の量的緩和を続ける」というスタンスにある。「かなりの期間」という非常に曖昧な表現に比べると、非常に明快な形で量的緩和、従って低金利を続ける期間を表明してきたということだと思う。

 そのうえで、私が先程申し上げたような保険的な意味で、あるいはリスク管理的な意味での考慮も必要であるという話だが、これをさらに長期金利を下げる手段として使うということになると、先程質問があったとおり、もう少しはっきりと定量化させて、例えば「0.5%に予測値がなるまで解除しない」とか「1%になるまで解除しない」— あるいは他の言い方もあるかと思うが — そういう定量的にはっきりとしたルールを示すということでないと、なかなか長期金利への強い働き掛けということにならないと思う。

 しかし、先程お話したとおり、はっきりとした定量化が出来難い部分について配慮が必要であるという話であるので、定量化して期待にはっきり働き掛けるという所まではいき難いように思う。

【問】

 基調説明の中で、インフレ率が持続的に上昇するのは、今後、景気が一旦減速した後、上昇局面になった時という話があったが、今は景気と物価の連動にやや時間差があるので、やや景気が不安定な状況で物価が上がるというケースもあると思う。そういった時に、出口に入っていくのは望ましくないと考えるか。

【答】

 インフレ率の今後については、景気が一旦下がって、その後の上昇局面でインフレ率がはっきりプラスになるというケースも考えられるが、単調にこのまま景気が良くなり、インフレ率がプラスに転じるというケースも十分あり得ると話したつもりである。そのうえで、インフレ率、あるいはインフレ予想はプラスになったけれども、景気はピーク、ないしはピークを過ぎつつあって、先行き心配であるという時に、出口を出られるかというご質問であったかと思う。

 先程来お話している保険とか、リスク管理的な考え方の適用例のひとつだと思うが、機械的に、例えばこれまでのパターンどおり来年度のインフレ予測を出してみたらプラスになった、しかし、どうも来年度のいずれかの時点が景気のピークである、それにちょっと遅れて来年度の平均のインフレ率がプラスである、その次の年を考えてみると、もう少し下にいってしまうリスク、場合によってはデフレに戻ってしまうリスクもありそうである、という場合は、そういう点に配慮して慎重に行動すべきではないか、という趣旨で申し上げた。

 繰り返しになるが、保険の部分を定量化して、例えば「0.5%まで我慢する」とか、「1%まで我慢する」というオプションを、私として完全に否定している訳ではない。先程申し上げたように、そのようにすれば、ぼんやり言っているよりも期待に対する効果は強いと思う。ただ、保険を掛けるというような考え方の根本は、先程来申し上げているように、定量化し難いケースへの対応という面がかなりあるので、今のところは、そういうオプションに直ちにいくというようには踏み切り難いという立場である。

【問】

 確認であるが、保険の部分の定量化が難しいということは、総合判断の中で織り込みたいということか。

【答】

 やり方としては、総合判断になるということはそのとおりである。

【問】

 長期国債の買い切りの話が出たが、オプションとしては、毎月の買入額の規模を維持したまま出口に入っていって、そのまま暫くいって、プライマリーバランス等の状況をみながら変えていくこともあり得るし、あるいは、出口の時に今の毎月の買入額1.2兆円を減らすというどちらもあり得るということか。

【答】

 出口のところでは、いずれにせよペースとか金額は別にして、資金の供給量は減らしていかざるを得ない訳であるが、それを、どの手段でどのように行うかというところにはかなりの自由度がある。極端な話、長期国債を売って資金を回収するという手段もあるし、逆に長期国債の買いオペの量を全く減らさずに、短期のところのオペだけで資金を回収していくというやり方もある。どれを選ぶかは、その時の状況をみて決めていきたい。

【問】

 基調説明の中での「下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいとみられる」というのは、簡単に言うと、ぴったりのタイミングよりも早く解除してしまうリスクの方が、やや遅く解除するリスクよりも大きいという理解で良いか。2点目は、なぜ下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいとみているのか。

【答】

 下に外れるコストの方が大きいということと、早く解除するリスクの方が遅く解除するリスクの方よりも大きいということが同じかというのは、大体同じだと思うが、完全に同じかどうかは自信がない。

 なぜ下側のリスクの方が高いのか、ということについては、現在のスタンスにもインプリシットに入っていると思うが、望ましいインフレ率のようなものをイメージしてみると、少しプラスであるということだと思う。従って、現在の状態からインフレ予測を出して、そこから下に外れるということは、上に外れるという場合に比べると、望ましいインフレ率とのギャップがより大きく拡大するということだと思う。

【問】

 最近、審議委員の出張が多いが、その理由として市場の中では、「最近またイールド・カーブがフラット化しており、カーブが寝過ぎるとその反動が大きいため、何か織り込ませようとしているのではないか」との見方もあるがどうか。

【答】

 審議委員の出張のタイミングは、何か月も前に決められているので、足許数週間とか1~2か月くらいのターム・ストラクチャーの変動に反応して日程が決められているということでは全くない。

以上