ホーム > 日本銀行について > 講演・記者会見・談話 > 講演・記者会見(2010年以前の過去資料) > 記者会見 2005年 > 総裁記者会見要旨 (2005年 4月16日)―― G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨 ――

総裁記者会見要旨(2005年4月16日)

G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨

2005年4月17日
日本銀行

―於・ワシントンDC
2005年 4月16日(土)
午前11時55分から約30分(現地時間)

冒頭発言

 今回の会合では、世界経済が全体として拡大を続けており、先行きについても、原油価格の上昇といったリスクはあるが、当面拡大を続けていくという認識が共有された。世界経済全体については、エマージング・エコノミーを含めたひとつの大きな循環メカニズムとして、リスク要因等いろいろな問題が議論されるようになったと、改めて強く思ったところである。

 私からは、世界の物価動向について、世界的にみるとエマージング諸国の市場化が、生産能力の増強による最終財価格の下落と、資源制約による素材価格の上昇を同時にもたらした。これまでは、この両者を企業の生産性向上がバランスしてきた訳であるが、最近では、原油価格の継続的な上昇等の最終財価格に及ぼすインフレ方向のリスクが、幾ばくかより強く認識されるようになってきていると説明した。

 日本経済と金融政策については、日本の物価情勢は、消費者物価指数がまだマイナスの領域で推移しているように、今申し上げた世界の物価情勢とは少し異なっているが、日本もペイオフ全面解禁を非常に落ちついた雰囲気の中で実行に移すことができ、これからは企業と金融機関の前向きの姿勢が揃っていく。日本銀行としては、現在の金融緩和を続けることを通じてこれを支援していきたい。現在の金融緩和とは、所要準備額を大幅に上回る流動性を供給し続け、これを消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで続けるというコミットメントを、引き続きしっかりと守るということを説明した。

以下質疑

【問】

 成長促進のための日本の構造改革の中で、財政健全化が最重要であるという認識をもっているが、国民の将来不安をなくし成長力を上げていくためには、例えば、少子高齢化に対する取り組みとか、本当はもう少しメンションしなければならない課題もあるように思うが、その点についてどのようにお考えか。

【答】

 ご承知のとおり、民間部門の構造改革については、企業も金融機関も過去の過剰の処理あるいは不良債権の処理という局面を終えて、これからは、金融機関と企業が、呼吸を合わせてより強い競争力を築いていけるようにビジネスモデルを開発するといった前向きの努力を行う局面に移ったが、日本経済全体としては、公的部門の構造改革が大きな課題として後ろに積み残されていると思っている。

 私としては、最大は財政再建、さらに人々が安心して前向きに活力を出していくためには、社会保障制度の持続可能な制度への抜本的な組み立て直しが欠かせないと思っている。

 さらに人口が減っていくというケースについては、日本経済の潜在成長能力を上げていくというテーマに取り組んでいくときに、人口が減るということは、ものすごいハンディキャップである。人材投入によって潜在成長能力を上げられないということであれば、もっぱら資本集約的な投資で潜在成長能力を築いていくということになるが、資本集約的投資だけでは不十分で、そこには十分にイノベーションが施され、全要素生産性が上がるような投資にさらに絞り込みながらやっていく必要がある。これは主として民間部門の努力であり、日本の民間企業の活力を考えれば十分やっていけることではないかと思っているが、政府部門がスリム化して、こうした民間部門の動きを間接的に支援する体制ができれば、より望ましいと思っている。

以上