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総裁記者会見要旨(12月3日)

G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨

2005年12月4日
日本銀行

―於・ロンドン
2005年12月3日(土)
午後 1時45分から約30分(現地時間)

冒頭発言

 谷垣大臣からご説明があったとおり、今回のG7では、原油高、保護主義的な動き、インフレ圧力の台頭といったリスク要因はあるが、世界経済は引き続き堅調な拡大を続けており、そうした傾向が来年も続いていくことが期待されるという点で認識が共有されたことが、最大の特徴であった。

 私からも、各国における金融緩和の緩やかな修正によってインフレ圧力は抑制され、世界経済は物価安定のもとで持続的な成長を続けていく可能性が高いが、そうした過程で金融市場にどのような影響が及ぶかなどについては、中央銀行として注意していくことになるのではないか、と申し上げた。

 また、わが国経済の状況や日本銀行の金融政策運営について、次のような説明を行った。第一に、わが国の景気は回復を続けており、先行きも海外経済の拡大や堅調な国内民間需要を背景に、緩やかながら息の長い景気回復が続くとの判断を示した。第二に、物価面では、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は年末にかけてプラスになり、その後も割り合いはっきりとしたプラスになっていくとの予想を述べた。第三に、日本銀行は、消費者物価指数に基づく明確な約束に従って量的緩和政策を継続している。この政策はデフレ・スパイラルが懸念された状況で導入されたものであり、経済・物価情勢の変化に応じていずれは枠組みを変更していくことになるが、その際には、この約束に従って、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるかどうかを、しっかり判断していくと述べた。第四に、将来、政策の枠組みを変更したとしても、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していくことができると考えている旨を述べた。そして第五に、こうした緩和的な政策運営は、物価情勢の好転と相まって、経済・物価に対して強い刺激効果を持ち、わが国経済が物価安定のもとでの持続的な成長を実現し続けていくことに貢献するであろうと考えていると述べた。

以下質疑

【問】

 谷垣大臣と福井総裁に伺いたい。先ほど福井総裁が金融政策について述べているが、以前から2006年度にかけて量的緩和政策の解除の可能性が高まるとしているが、その量的緩和政策の解除の決断が下される際に、政府として2000年8月のゼロ金利解除時のように、議決延期請求権を出す考えがあるのか。そのようなことがあった場合に、福井総裁はどのような対応をされるのか、それぞれ伺いたい。

【答・谷垣大臣】

 それではまず私からお答えする。今おっしゃったような請求権が法律上認められているのはその通りであるが、それは言ってみればギリギリの手段であって、その前にやることが沢山ある。日銀法の4条にあるように、いろいろな見方を、やはり大きな意味で日本国の政策であるから、日銀と政府があさっての方向を向いて足を引っ張り合っているようなことではしょうがないので、色々な形で認識をすり合わせるということがなければならないということだろうと思う。

 もうひとつ付け加えると、これはもちろん金融政策において日銀の独立性が法律上保証されているということを前提として申し上げているわけである。

【答・福井総裁】

 私のほうから申し上げることは多くはないが、まず、日本の経済・物価情勢についての情勢判断について、政府と日本銀行の間で意見の不一致があるとは考えられない状況である。政府の月例経済報告に毎回出席させて頂いているが、情勢判断にどこか齟齬があると感じたことはない。それから政策運営についても、谷垣大臣からお話があったように、政府と十分意思の疎通を図りながらやるということに、私としては最大限努力しているつもりである。また、大臣からもそのようにご協力頂いていると認識している。また、大きな方向性については、国内での記者会見等でも申し上げているし、先ほどのようにG7の会合でも報告したところであるが、具体的に何時といったことについて予断を持って臨んでいるわけでない。従って、まだまだこれからも、情勢判断のすり合わせ、金融政策の方向性についての意思の疎通を引き続き努力してやっていく過程である。

 従って、議決延期請求権というものが頭の片隅にもちらつくということは、私にはないわけである。日銀法で予定していることも、政府、日銀双方が意思の疎通を万全に尽くしても、なおどうしてもというギリギリの場合を想定した規定であり、常々それを想定して何か物事を考えていくということは、そもそも日銀法の趣旨に反すると思っている。余程の場合のこととご理解頂きたい。

【問】

 今回のG7は、グリーンスパン議長の最後の出席ということであるが、お二人で言葉を交わされた機会があったのか。また、議長の最後の出席に関する総裁自身の感想と、今後のG7にどのように影響するのかご意見を伺いたい。

【答】

 確かに、今回はグリーンスパン議長のG7への最後の出席の機会であったが、お互いに時間が非常に短くて、二人だけで十分お話する機会は余りなかった。会議の合間に少し立ち話する程度であった。むしろグリーンスパン議長には先般東京にお越し頂いたし、BISでの前回の会合でゆっくり話をさせて頂いた。やはり私からみれば、18年間の大変なご努力にねぎらいの言葉を重ね重ね差し上げた。グリーンスパン議長は冷静な方なので、あまりねぎらわれたりすることをお好きでないかもしれないが、今日は少しホッとした顔をされていたように思う。本当にご苦労様であったと思う。

【問】

 コミュニケの中では、為替について過度な変動は望ましくないとあるが、円相場が足許1ドル120円を突破してかなり円安になっているが、日本経済に与える影響についてどのようにお考えか。

【答】

 今回のG7の会合あるいは場外で、円相場について格別の議論があったとは認識していない。従って、円相場の動きを見てコミュニケが何かを反映しているということもないと、大臣のご説明のとおりであると思う。

 円相場の動きそのものについて、私の立場から格別コメントを申し上げるべき状況にはないが、大きく言えば、物価安定の下で持続的な成長をしっかりと実現していくという政策の大きな方向性とコンシステントでない動きをしているとは考えていない。

以上