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総裁記者会見(5月19日)要旨

2006年5月22日
日本銀行

——2006年5月19日(金)
午後3時半から約35分

【問】

本日の金融政策決定会合の結果と、その背景となった「金融経済月報・基本的見解」を踏まえた景気見通しについて説明をお願いします。

【答】

本日の金融政策決定会合では、現在の金融市場調節方針を維持することを決定しました。現在の金融市場調節方針は「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、概ねゼロ%で推移するよう促す」であり、この現状の方針をそのまま維持することを決定しました。

背景となる経済・物価情勢については、前回会合以降それほど多くの指標が出ていませんが、本日公表のGDP統計を含めてみても、わが国経済は、内外需、企業部門と家計部門のバランスが良くとれたかたちで、着実に回復を続けていると、前回申し上げたことが改めて確認されました。

海外経済の拡大を背景に輸出が引き続き順調に増加しています。国内民間需要についても、一部に昨年末にかけての高めの伸びの反動がみられましたが、均してみれば着実な増加を続けている状況です。

ご承知の通り、企業収益が高水準で推移しており、設備投資が引き続き増加しています。そして、企業部門の好調ぶりが家計部門にも良い影響として波及しており、雇用・賃金の改善を反映して、雇用者所得は緩やかな増加を続けている状況です。そのもとで個人消費も増加基調にあります。このような内外需の増加を背景に、供給面では生産も増加を続けている状況です。

先行きについても、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いと考えています。生産・所得・支出の好循環が働きながら、息の長い成長が続く可能性が高いという判断です。今回の基本的見解では、景気の先行きについて、従来の「着実に回復を続けていく」から「緩やかに拡大していく」に表現を改めています。これは展望レポートで示した時に既に説明済みですが、経済活動の水準が高まり、マクロ的な需給ギャップ面で、供給超過状態が解消したとみられることを受けたものです。すなわち、「拡大」という表現を使った場合、これは経済活動の「水準」に関する判断を明確にしたということであり、成長率自体は、景気が成熟段階に入っていくもとで、むしろ潜在成長率に向けて徐々に減速していくことを想定しています。本日、2006年1~3月期のGDP統計が出て、2005年度の実績は実質3.0%成長ということです。それとの比較でみると、私どもの展望レポートで示した2006年度、2007年度の実質成長率は、中央値で2.4%、2.0%と下がっていきます。このように、「拡大」という言葉を使いましたが、ますます成長率が上がるという意味ではなく、成長率自体は成熟段階に入ったので徐々に減速していくことを想定しています。

物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に引き続き上昇を続けており、先行きについてもこの傾向が続きます。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1月、2月に続き3月も+0.5%とプラス基調で推移しています。先行きについては、マクロ的な需給ギャップが、今後緩やかに需要超過方向に向かっていく、すなわち供給超過の状況がほぼ終わってこれから先は需要超過方向に向かっていくとみられるので、その中でプラス基調を続けていくと予想しています。こうした判断に基づいて、次回の金融政策決定会合までの調節方針は不変であると決定しました。

【問】

ゼロ金利の解除時期を巡って、先般市場の一部で、6月解除説などかなり早い時期に実施されるとの見方も浮上していましたが、総裁は、先日の講演や国会において、あくまで経済・物価情勢を判断しながら行うとおっしゃり、市場ではあまりに早期な解除をけん制したと受け止められていると思います。改めてゼロ金利解除の時期と、その判断を行うもとになる経済・物価情勢について、どのような状態になればそのようなことを考えるのかをお聞かせ下さい。講演では、過剰流動性の吸収とゼロ金利の解除時期のタイミングは別問題とおっしゃっていましたが、吸収が終わった後もしばらくゼロ金利が続く可能性があるということについて、総裁の発言は微妙に変わっているようにも感じられるので、できればわかりやすくお話頂きたい。

【答】

一言一句同じであるかどうか、そこまではよく覚えていませんが、私としてはずっと同じことを申し上げているつもりです。本日も、ゼロ金利解除の時期について具体的な議論をしたわけではありません。そういう意味では、先行きの金融政策の運営方針については、展望レポートでお示したもの以上でも、それ以下でもありません。つまり、無担保コールレート(オーバーナイト物)を概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いということです。そうしたプロセスを経ながら、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に金利水準の調整を行うこととなる、それ以上でもそれ以下でもないということです。要するに、ゼロ金利水準からの脱却の具体的なタイミングについては、現時点で何らの予断も持っていないということです。

つまり、今申し上げたことは、この先やや長い間の金融政策をどう考えるかということですが、展望レポートで先行き2年間の経済・物価見通し、つまりややロングランな見通しを示し、幸いにしてその標準的なシナリオを望ましいシナリオとしてお示しすることができました。今後はこうした見通しに沿って経済・物価情勢が本当に展開していくかどうかをきちんと点検していくことが非常に重要です。この情勢見通しに沿って展開するようであれば、物価安定のもとでの持続的な成長を達成することが可能になり、それにふさわしい適切な政策運営に努めていく径路も見い出しやすくなります。展望レポート発表以降、市場あるいは世間一般において、日本銀行がややロングランなシナリオを軸に政策判断に正確を期していこうという姿勢にあることは、少しずつご理解の度を増して頂いていると受け止めています。従って、今後出てくる何か具体的な指標に特に焦点をあてて政策のタイミングを推し量ろうとしても、それは必ずしもあたらないということです。先行きの政策判断は、あくまで展望レポートでお示しした2つの「柱」による経済・物価情勢の点検をきちんと踏まえながら、考え続けていくものです。市場における判断と私どもの判断は、できる限りその軸に沿って擦り合わせを継続的にさせて頂きたいと思っています。

【問】

本日、株価が一時1万6千円台を割り込みました。最近の株価の調整局面についてどのようにお考えかということと、最近円高基調で推移していますが、これが実体経済に与える影響をどのようにお考えかお聞かせ下さい。

【答】

債券市場についてお尋ねがないのも非常に不思議な気がしますが、私どもは債券市場、株式市場、そして為替市場など、それぞれの市場は、新しい材料を自ら消化しながら、市場相互間でけん制作用を働かせ、常に新しい均衡点を求めてダイナミックに動く、というようにあるべき姿で動いていると思っています。従って、日々の株式市場、為替市場、あるいは債券市場の上下動・レベルについて、ピンセットでつまみ上げるようにいちいちコメントをするということは、あまり生産的でないと思っています。

【問】

展望レポートにおいて、上振れ・下振れ要因の中で触れられていると思いますが、外需の影響として、最近米国経済について一部で住宅の過熱感が若干薄らいでいるという話と、一方で国際商品市況の上昇に応じて依然インフレ懸念があるという見方が相まって、米国の金融政策の見方が割れているかと思います。今の米国経済の現状について、まだ堅調な状態を続けていると見られているのかどうか、先行きも含めてお聞かせ下さい。

【答】

世界経済全体と米国経済とは、二重写しに見えるような状況で動いていると思います。世界経済全体ということでは、米国も中国も含めて、引き続き堅調な経済の拡大が続いています。その一方、まだあまり目立つということではないが、じわじわと物価上昇圧力の高まりが感じられる状況になっていると思います。

世界経済全体はご承知の通り、2004年以降かなり高い成長を続けており、それに伴って、原油価格のみならず、国際商品市況が幅広く高騰する局面が続いています。その一方で、グローバル経済の中で、なかなか末端の消費者物価が上がりにくい状況が基本的には続いているものの、それでもやはり物価上昇圧力の高まりがじわじわと感じられる状況になってきています。

従って、主要国の中央銀行の金利政策が、極めて慎重ながら金融緩和の度合いを若干調整するという方向で動いており、その中で、インフレ・リスクが本当に最後まで抑制され続けるのかどうかという不確定要因と、インフレ・リスクが抑制され続けるとしても、一方で景気減速はどの程度進むのか、誰の目から見ても、政策当局者から見ても望ましいソフト・ランディング・シナリオに沿って動くのか、あるいは減速が行き過ぎる心配もあるのか、この面でも若干の不確定要因を孕みながら、経済が動く局面に入ってきているということだと思います。

世界経済全体の中で重要な位置を占める米国経済については、物価上昇率が非常に顕著になっているわけではないものの、FRB自身が感じている通り、やはり物価上昇圧力はじわじわ高まっており、多くの人々もまたそう感じています。それ故に先般の米国の消費者物価指数には、市場も多少過敏な反応をしたという現象があると思います。しかし一方で、ご指摘の通り、やはり色々な指標が、住宅投資に少し減速傾向があることを明確に示すようになっています。これが、米国の個人消費にどのような影響を与え、ひいては米国経済全体の成長スピードにどのような影響を与えるか、まだ十分明確には測定できていません。米国経済も潜在成長能力を上回るペースで動いていますので、住宅投資の減速を含みながら、全体では潜在成長能力に向かって緩やかに減速するほうが、むしろ景気が長持ちする可能性が高いと、多くの人々が見ています。しかし、減速そのものを嫌うわけではないとしても、本当に望ましい方向に沿ってソフト・ランディングするのかどうか、いくばくかの不確定要因を持って、人々は観察しています。ただし、インフレについても、景気が減速し過ぎないかということについても、ともに目先大きなリスクを感じているわけではないという状況で推移していると思います。

【問】

先日の講演において、市場との対話について触れている部分があって、3月の量的緩和政策解除の前からかなり粘り強く市場──メディアも含めて──と対話を続けていたが、そういうフェーズはもう終って、総裁自身の言葉では、スプーンでそういう材料・ヒントを市場に差し上げるようなことはしないという趣旨の発言があったかと思います。これは市場との対話戦略について何か変化があるということですか。関連して、例えばマーケットの期待があまりにも高まってしまうと、中央銀行がそういった罠に陥って政策の機動性が奪われるという研究が米国でもなされているかと思いますが、そういった期待の罠のようなものを念頭に置かれて、今後コミュニケーション戦略を変えていこうとしているのかを伺います。

【答】

講演で申し上げたのは、米国でも、at a measured paceというように、次のステップが具体的に読めるようなかたちで情報提供をしてコミュニケーションを図ってきました。日本でも、量的緩和政策の枠組みのもとでは、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまでこれを続けるというように、先々のことが具体的に読めるような情報提供を続けましたが、これは経済環境がそれを許す状況にあったということです。コミュニケーションの基本ポリシーを変えるというわけではありませんが、米国も日本も、そういうやり方でのコミュニケーションを許す経済環境ではなくなった、そういう意味では局面が変わったと申し上げました。むしろ金融政策のあり方として、普通の状況に戻ったということです。普通の状況とは、一歩先の金融政策そのものについて、具体的な示唆を中央銀行が明確にスプーンに乗せて差し上げ、それをそのまま鵜呑みにして下さいというやり方ではなく、オーソドックスだが新しく工夫を凝らして透明性の高い措置で対処するということです。国によってやり方は異なるでしょうが、日本銀行について言えば、やや長い先々までの標準的な経済のシナリオを明確に示し、かつそれについての価値判断も示し、実際の動きがそれに沿っているかどうか互いに知見を持ち寄って判断し、その情報をコミュニケートしながら、市場においては正しい市場金利の形成に努めてもらい、私どもとしては適正な政策措置および時期を懸命になって究明します。市場金利、現物や先物の金利を挟みながら──丁度魚釣りの浮きのように常にピクピク動くが、浮きの真下に必ず魚がいるというわけではないので──、私どもは適正な政策の在り処をきちんと探るし、市場では、自らの経済情勢判断、金利感にピタッと合うところに浮きの位置をいつでも調整して下さい、というのがこれからのやり方です。このように、コミュニケーションの仕方を変えただけで、透明性を意図的に後退させようというものの考え方でやっているわけではありません。これまでに比べ、かなりオーソドックスなかたちに戻りましたが、この枠組みの中で今後とも透明性を高める努力を続けていきたい、という基本姿勢には変わりはありません。

【問】

日銀当座預金残高の削減ペースと無担保コールレート(オーバーナイト物)の関係について伺います。先般、総裁はあと数週間で日銀当座預金残高の削減プロセスが終了するとおっしゃっていましたが、その過程でどのレートまで無担保コールレート(オーバーナイト物)が上昇すれば削減ペースを緩める必要性が生じてくるのですか。また0.1%のロンバート金利の範囲内で中心的なレートが取引されているのであれば問題ないとお考えか、という点についてお聞かせください。

【答】

日銀当座預金残高の削減プロセスは順調に進んでおり、昨日現在では14兆3千億円くらいかと思いますが、おそらく今日締めてみれば13兆円台に下がっているかもしれません。このように順調に削減が進んでいて、市場に格別の混乱を起こさず、むしろ市場参加者相互間の資金取引が順調に増えるというかたちで円滑に進むようであれば、あと数週間で過剰な日銀当座預金残高の吸収過程はほぼ終結するだろう、といった意味のことを申し上げました。

今、市場金利の誘導目標を概ねゼロ%にすることを基本に運営しているが、短期金融市場の構成メンバーやその資金繰り行動がかつてとはかなり変わっているので、金利目標を維持しながら最終的に日銀当座預金残高をどこまで下げられるかは、実際に進めていかなければわかりません。10兆円というラインを下回っていくことは確実だが、ある水準を下回ったところで、それ以上減らすと無担保コールレート(オーバーナイト物)をゼロ%近傍に持っていくという目標との両立がしにくくなれば、その辺りがとりあえずの下限ということになると思います。ただし、市場の個々のプレーヤーの資金繰り行動は、この先もどんどん変わります。個々の市場参加者は、これからも経営上の必要から資金の効率化に腕を磨いていくと思われますので、究極的には所要準備額にほど近いところへ収斂するでしょう。ただ、一挙にそこまでいかなくても、今の過大な日銀当座預金残高の吸収過程が一応終了する時期があと数週間で来て、とりあえず10兆円をある程度下回る額の辺りで落ち着いていくだろうと思っています。

【問】

先日の講演で、潜在成長率の上昇について、供給面から見ると物価への低下圧力、需要面から見ると物価への上昇圧力をもたらす、つまり物価の上下両方向に影響するというお話をされたと思います。しかし、4月の展望レポートにも記述されているように、需給ギャップやユニット・レーバー・コスト(単位当たり労働コスト)等物価を巡る環境が変わってきている中で、経済活動に対する物価の感応度が以前と比べると若干速めになる可能性もあるかと思います。物価は経済活動において最後に現れる数字であるということからすると、その前に色々な経済データを見て先行きの物価を展望をされると思います。金融政策運営において、どのようなデータやどのような点を重視しているか伺います。

【答】

私どものシナリオでは、経済は成熟段階に入り、成長率自体は緩やかに減速していきますが、それでもマクロの需給ギャップは緩やかに需要超過の方向に進んでいくことを想定しています。成長率がどんどん上がって、物価を引き上げるということではありませんが、需給ギャップが需要超過の状況に入っている場合は、成長率が減速しても、物価を押し上げる力はそれなりにじわじわと高まっていくだろうというのが基本的な見方です。しかし、その場合、同じ需要超過であっても、過去の経済に比べれば物価への反応係数は低くなっている可能性があります。そのことも考慮に入れながら、慌てず正確に判断するということを申し上げたつもりです。

もう一つは、生産性の上昇です。これも需給ギャップが解消し需要超過の状況になってくると、余剰設備を有効に使って生産性を伸ばすという部分がなくなるので、生産性の伸びは低下してくると思いますが、生産性そのものは、技術革新の能力に優れた日本企業のもとで、いわゆる全要素生産性のベースでみる限り、引き続き上昇します。この生産性が上昇する部分は物価を押し下げる方向で考えてもいいのではないかという議論があります。これについても、私は追加的にコメントを申し上げました。生産性の上昇は、供給面からみれば効率よく供給できる体制が進むということなので、供給能力が増えて物価を押し下げる要因になります。しかし、全要素生産性が上がるような状況では、企業が需要創出型で新しい投資をするケース、つまり、企業が新しい需要を呼び起こすということを積極的に狙い投資をしていくケースが多く、かつそれを実際に実現するために販売流通体制まで常に見直しながら臨んでいくということですから、需要を呼び起こす面がかなりあります。従って、生産性が上昇すれば供給能力が増えて単純に物価押し下げ圧力が加わってくるという議論に対しては、そうでない面もあるということを申し上げました。

また、念のために申し上げたのは、それらが両方同時に起きるのかといえば、供給面からの物価押し下げ圧力のほうが先に出てきて、時間的経過としては少し遅れて需要創出効果、物価押し上げ効果が出てくる可能性があります。そのように分解して申し上げました。実際の経済は複雑ですから、そのように理屈どおりはいかないと思いますが、そのような構図を頭に置いて、需給の変化に対する物価の反応度、生産性の物価への影響を分けて考え、それぞれに縦軸、横軸の複雑な構図を頭に置きながら、正確に分析をしていきたいと申し上げました。

【問】

先日の参議院財政金融委員会での答弁で、超過準備の吸収を「6、7兆円程度まで」ということで数字を出しておられましたが、先程のお話だと「10兆円を下回ったところで様子を見る」ということでした。将来、情勢が許してゼロ金利政策を解除した時の所要準備額は、やはり6兆円程度ということが当然だと考えてよろしいですか。教科書的に、利上げ過程においても超過準備があるということはない、という捉え方で良いのかどうか教えて頂きたい。

また、日銀当座預金残高が10兆円を下回ってきた時には、今の千分の5%とか百分の1%程度の無担保コールレート(オーバーナイト物)が上がってきて、ロンバート金利の0.1%近辺にいくということも念頭にあると考えてよろしいのですか。

【答】

いずれも違うと申し上げざるを得ないと思います。「日銀当座預金残高が何兆円になったら」というように数字にこだわられるのであれば、数字は全部お忘れ下さい。要するに、将来時間をかければ限りなく所要準備額に近づいていくであろうということは言えますが、それ以前の段階では、過剰な流動性供給の吸収プロセスが概ね終わったと思える段階について、「何兆円になったら」というのは前もってはわからないと思います。10兆円を割り込んでも、金利を安定的にゼロ%近くに収斂させようとしているわけですから、その操作が滞りなく円滑に行われるギリギリの線というのは、個々のプレーヤーが流動性水準が低くなった時にどういう態度をとるかにかかっており、そこまでは事前にはわからない、これから実際に流動性削減が進んでいかないとわかりません。

従って、「6、7兆円」とか「10兆円をかなり下回っていけば」と申し上げましたが、共に「例えば」という程度の話であって、そこに何らかの数字をターゲットとして意識しているということは全くありません。2番目のご質問も同じであって、私どものターゲットはあくまで無担保コールレート(オーバーナイト物)でゼロ%近傍ということですので、それがどんどん上がっても日銀当座預金残高の数字を低くすれば良い、という調節はしないということです。

【問】

先程、「本日の会合ではゼロ金利政策解除について具体的な議論をしたわけではない」との発言がありましたが、現在正しいタイミングを究明する、探るという段階にあるのかどうか、それとも先程の魚釣りの例えで言うと、ゆったり針を落として構えているという余裕のある段階なのかどうか、各政策委員あるいは総裁ご自身の感じをお答え頂ければと思います。

【答】

毎回の金融政策決定会合では、次回会合までの最適な金利を責任持って判断しています。今回もゼロ金利が最適と判断したわけで、金利判断をさぼっているわけではありません。金利判断は、毎回の金融政策決定会合であらゆる材料を点検して真剣に行っており、結論を持ち越している部分はありません。先々どうするかということを今の段階で先取りして事前に判断をするということもない、ということもまた確かです。ただ、今回の議論をするに当たって、先程も申し上げた通り、私どもは長い展望を出して、それに沿って経済が動いているかどうかを常に点検し、足許の状況だけではなく先々の状況がどうなるかということも各委員の判断を交換し、議論しながら毎回金利を決めるという作業になっています。先々の話を全くしなかったというわけではないのですが、先々の政策金利の水準を何か想定しようというような議論はせず、常に次回金融政策決定会合までの金利を正確に突き止めるという仕方で議論しています。

以上