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総裁記者会見要旨 2019年9月19日(木)
午後3時半から約55分

2019年9月20日
日本銀行

(問)今日の政策決定会合の決定内容についてまずご説明をお願いします。

(答)本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとで、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。その際、長期金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得るものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施します。

また、長期国債以外の資産買入れに関しては、これまでの買入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITの買入れについては、年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動し得るとしています。

次に、経済・物価動向について、説明します。わが国の景気の現状については、「輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している」と判断しました。

やや詳しく申し上げますと、海外経済の減速の動きが続くもとで、輸出は弱めの動きとなっているほか、企業のマインドも製造業を中心にやや弱含んでいます。一方、企業収益が総じて高水準を維持する中で、設備投資は増加傾向を続けており、個人消費も、振れを伴いつつも、緩やかに増加するなど、家計・企業の両部門において、引き続き、所得から支出への前向きの循環が働いています。この間、住宅投資や公共投資は横ばい圏内で推移しています。このように、輸出は弱めの動きとなる一方、国内需要が増加していることから、鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっており、労働需給は引き締まった状況が続いています。また、金融環境については、極めて緩和した状態にあります。

先行きについては、わが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられます。国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿ると考えられます。輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられます。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%台半ばとなっています。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しています。先行きについては、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。

リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、中東情勢をはじめとする地政学的リスクなどが挙げられます。こうした海外経済を巡る下振れリスクは高まりつつあるとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要があります。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。政策金利については、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも、金融政策の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じます。

以上が、経済・物価情勢の判断と、先行きの金融政策運営方針です。そのうえで、日本銀行は、このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れにより注意が必要な情勢になりつつあると判断しました。展望レポートを取りまとめる次回の会合では、こうした情勢にあることを念頭に置きながら、経済・物価動向を改めて点検していく考えであり、その旨を公表文に示したところです。

(問)ECBとFRBが続いて金融緩和の方向に政策変更を行いました。この欧米の中央銀行の政策変更というのが、金融市場などを通じて日本経済に与える影響についてどうお考えでしょうか。

また、欧米の中央銀行が追加緩和を図る中で、今回決定会合で現状維持という判断をされた理由についてもお願いします。

(答)どの国の中央銀行も、あくまでも自国の経済・物価の安定を実現することを目的に、それぞれの置かれた状況に応じて、金融政策を運営しておられるということだと思います。

もちろん、主要国の金融政策運営は、国際金融市場や世界経済に及ぼす影響というものがあり得るわけでして、その大きさは、その時々の経済情勢や市場環境によって異なり得ると思います。日本銀行としては、こうした点も注意深く確認しつつ、経済・物価・金融情勢を踏まえ、毎回の金融政策決定会合において、適切な金融政策運営に努めているわけです。今回の会合では、景気が基調としては緩やかに拡大するもとで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されており、現在の金融政策運営方針を維持することが適当であると判断したわけですが、海外経済の減速が続いて、その下振れリスクも高まりつつあるとみられるもとで、物価のモメンタムが損なわれる惧れについては、より注意が必要な情勢になりつつあると判断しています。

展望レポートを公表する次回の会合では、こうした情勢を念頭に置きながら、経済・物価動向を改めてしっかり点検していく考えです。

(問)今回、公表文の6.が新たに追加されたと思うのですが、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると、そのうえで、次回の金融政策決定会合では経済・物価動向について、改めて点検されるということを書かれたわけですけれども、これについてマーケットでは追加緩和の予告ではないかというような見方もありますけれども、次回の会合ではより踏み込んで追加緩和についての是非をご検討されるという意味合いはあるのでしょうか。

(答)前回の会合の後の公表文でも、「先行き、『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と、はっきり申し上げていたわけです。今回、特に、海外経済の減速の動きが続いており、よりしっかり経済・物価動向を改めて点検する必要があると日本銀行として判断したわけです。次回は展望レポートを公表する決定会合でもありますので、そういった下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、物価のモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあるということを踏まえ、これまでの政策運営の基本的な考え方を、より明確にお示ししたということです。

(問)日本の直近の指標をみてみましても、あまり冴えないものが続いているわけですけれども、そうした中でも今回、政策を据え置いた理由というのを改めて教えて頂けますでしょうか。やはり、10月に消費増税を控えているということもあって、それを考慮してここでは打つ手を温存したということなのでしょうか。

(答)海外経済の減速が続いており、まだ回復の兆しがみえてこないということで、この影響が輸出や生産にあらわれているということは事実です。一方、消費は比較的底堅く推移していますし、設備投資は色々なアンケート調査等をみても、かなりしっかりした計画になっており、様々な指標でも、先行きしっかり設備投資が伸びるということが示されています。

そういうことを全体として現状の経済・物価動向をみますと、海外経済の減速が続いているということで、それを通じて輸出や生産、更には製造業の業況判断が悪化する状況がみられる一方、消費や設備投資あるいは住宅投資、公共投資を含めて内需は比較的堅調に推移しており、今の時点で、経済の先行きが後退、あるいは「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われるという状況にはない、と判断しました。

しかしながら、海外経済を中心に下振れリスクが高まっていることは事実ですので、次回の決定会合は展望レポートを議論する会合でもありますので、そうした海外経済の動向も踏まえて国内経済の動向、経済・物価動向を十分点検していきたいということです。

(問)今回、公表文の6.が追加されて、先程、「より注意が必要な情勢になりつつある」とおっしゃる時にかなり強めに発声されたなというような印象もあったのですけれども、7月以降、何かあったら躊躇なく手を打つよというアグレッシブな姿勢を示しているわけですが、姿勢を示すだけの状況が続いてしまいますと、オオカミ少年じゃないですが、何となく市場が信用しなくなるといいますか、市場との対話がうまくいかなくなるというような懸念はないでしょうか。

(答)そこは、前回の会合でも、また今回の会合でもはっきりと申し上げているように、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、金融緩和措置を実施すると、申し上げていることに全く変わりありません。

そのうえで、現状、外需あるいは製造業中心に弱めの動きがある一方で、内需に支えられた非製造業は、堅調な状況が続いています。ご案内の通り、GDPに占める非製造業の割合は非常に大きなものになっており、今の時点では、所得から支出への前向きな循環メカニズムも働いていますし、「物価安定の目標」に向けたモメンタムも失われていないと判断したわけです。最近、確かに海外経済の動向になかなか回復の兆しがみえてきませんが、中心的な見通しとしては、IMF等がいっているように、今年後半から来年にかけて緩やかに成長率が戻っていくというメインシナリオを、国際的にも私どもとしても、今の時点で変えなくてはいけないとは思っていません。

しかしながら、海外経済のリスクが高まっている、特に、保護主義の話や地政学的リスクが前回より高まっていることは事実ですので、より注意していく必要があるということで、6.を皆で一致して追加したということです。

(問)特にFRBと比べて、だいぶ日銀と金利の差があって、市場ではFRBに比べて日銀は緩和余地に乏しいのではないかという見方が多いですが、それについてどうお考えでしょうか。

また、現状のイールドカーブの状況、一時的に長期金利が-0.3%近くまで下がったりしているのですが、この現状のイールドカーブの水準をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

(答)単純に名目金利を比較すると、FRBはかなり正常化を進めてきて、このところ2回金利の引き下げをしたわけですが、まだ2%程度のプラスの政策金利の状況にあります。日本銀行の場合は-0.1%という政策金利になっているわけですので、そういう意味では緩和の余地がFRBに比べると少ないだろうということなのかもしれませんが、他方でECBは政策金利を-0.5%に、この間更に引き下げており、ECBと比較すると、まだ日本銀行の方が政策金利の緩和余地があるということになるのかもしれません。いずれにせよ、日本銀行としては常に申し上げているように4つのオプションとその組み合わせで、金融緩和の余地は十分あると考えています。

それからイールドカーブの点については、「総括的な検証」で、実体経済に大きな影響があるのは短期から中期の金利であり、他方で超長期の金利が下がり過ぎると年金とか生保の運用利回りが下がるのではないかということで消費者のマインドに影響があり得るということを申し上げています。それはその通りだと思いますので、イールドカーブはもう少し立った方が好ましいと思っています。ただ、いずれにせよ、現在のイールドカーブ・コントロールのもとで適切なイールドカーブになるように、国債買入れについて必要な調整は行っていくということになると思います。

(問)総裁は7月下旬の会見で、かなり金融緩和に向けて前向きになったと言える、と発言されているのですが、今回、公表文の6.を付けたことで、この総裁の姿勢が、やや金融緩和に一歩進んだのか、その立ち位置を確認させてください。

2点目として、財政政策についてですが、今回の公表文にも、片岡委員が2%の「物価安定の目標」の達成には財政・金融政策の更なる連携が重要であると指摘されたとありますが、先般のECBのドラギ総裁の会見でも、やや従来よりも財政政策の必要性を強調されていたかと思います。10月に消費税増税を控えて、経済が変調する可能性もある中、金融効果を高めるうえでの金融・財政政策の重要性をいかに考えているか教えてください。

(答)金融緩和について、前回の会合の時よりも前向きになっているかと言われれば、その通りだと思います。というのは、繰り返し申し上げている通り、海外経済の減速の動きが続いていて、下振れリスクが高まりつつあるとみていますので、金融緩和についても、次回の展望レポートをまとめる会合で、十分、経済・物価情勢をよく点検していくということを申し上げているわけです。

それから、財政政策との関係ですが、財政政策そのものについては、政府の所管ですので申し上げることはありませんけれども、一般論として、中央銀行が物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している状況において、政府が財政支出を拡大する場合には、相乗効果があって景気刺激効果がより強力なものになる、これがいわゆるポリシーミックスだということは前から申し上げているわけです。なお、今回の消費税率引き上げについては、食料品については増税しない、あるいは幼児教育の無償化、その他様々な措置が講じられておりまして、その数字だけをみると殆んどマイナス効果がないくらいになっています。また、いわゆる駆け込みと反動減という需要の変動を均すような措置も講じられていますので、現時点で消費税率引き上げで何か大きく経済が影響を受けるとはみておりませんが、消費者のマインドは色々なことで影響されますので、その辺りは今後とも十分注視していきたいと思っています。

(問)公表文の6.の次回展望レポート会合における点検ということなのですが、展望レポートは通常、経済・物価情勢を点検していると思うのですが、これは通常とは異なって、ということなのかの確認と、何かこれは金融政策の枠組みの見直しを企図されているのかどうかをお願いします。

(答)展望レポートは、年に4回、そのときまでの経済指標等を分析して今後の経済・物価の動向を予測し、それらを踏まえて金融政策の決定を行っていくものであり、そうした点は、特に違うことはないと思います。ただ、これから次の決定会合までの間には、色々な指標が出てきますので、その分析を行い、更には短観や支店長会議といったものも十分総合して点検作業を行い、展望レポートに反映することになると思います。

金融政策の枠組みについては、追加緩和を仮に議論する場合でも、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という全体の枠組みを変更する必要があるとは思っていません。金融緩和効果を出すためには、実質金利の引き下げやリスク・プレミアムの抑制といったことを通じて、実体経済に影響を与えていくことになります。そのための枠組みとして、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中で、国債の買入れやETFの買入れなど、様々な手段を講じているわけです。

(問)今後追加緩和をされる際に、4つの中に入っていると思うのですが、マイナス金利の深掘りは有力な選択肢になり得ると考えていらっしゃるのでしょうか。

(答)4つのオプション、またその組み合わせや改善など色々なことがあり得るということは前から申し上げており、その4つのオプションの中に、マイナス金利の更なる引き下げということも入っているということだと思います。ただ、具体的に何をどうするかということは、そのときの金融政策決定会合において議論して、プラスの効果とマイナスの副作用等を十分勘案して、適切な緩和措置を行うということになると思います。

(問)先程の4つのオプションとも絡むのですけれども、今の枠組みが基本的に金利のターゲットを主眼としたものであるということを考えると、やはりその4つの中でも最初に考え得るより有力な手段は、金利操作目標の変更ということなのでしょうか。

その場合、どうしても副作用が最近意識されて、日銀としても金融情勢も踏まえて政策を検討するということであれば、組み合わせといった場合には、そういう緩和的な手段と併せてその副作用を軽減する措置もセットでやるという理解でよいのか、必ずしもそういうことではないのか、その辺りをお願いします。

(答)4つのオプションとして常に申し上げているのは、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、色々な対応があり得るということです。また、それらの組み合わせや応用ということも考えられるということであり、現時点で何かを優先的に選択するとかそういうことはありません。あくまでも、緩和措置を講じるときに、経済・物価・金融情勢を踏まえて最適なものを選択するということになると思います。

なお、金融緩和を更に行った場合のいわゆる副作用ということで、色々な対策があるではないかということが市場関係者の間で議論されていることはよく承知していますが、具体的なコメントは差し控えたいと思います。いずれにせよ、私どもとしては、常に政策のベネフィットとコストをしっかり比較衡量したうえで、適切な措置を考えていくという方針に変わりはありません。

(問)今の深掘り、政策金利の引き下げに絡みまして、預金の金利が実質的にゼロ金利よりも下に下げられないと、これは下げれば下げられるのですけれども、なかなか今現実そうなっていない中で、一方で政策金利を下げると貸出の金利が更に下がって、利鞘が非常に縮小してくると、むしろ金融仲介機能を阻害しかねないということがあると思います。その場合、銀行として口座を維持管理する手数料を取ることで、そのマイナスを避けるというやり方もあると思うのですが、この妥当性について、かつて幹部の方が講演で正当な対価を取るべきだというような趣旨の発言をされていることがあったと思いますが、総裁として、預金の――法人、個人ありますが、――金利を実質的にマイナス化させる、金利をマイナスにするということについてのお考えを教えてください。

(答)欧州の場合は、ユーロ圏に限らず他の欧州の中央銀行も政策金利をかなり深掘りしているわけですが、個人の預金金利がマイナスになっているという話はあまり聞いていませんので、そのようになる可能性はないと思っています。口座維持手数料云々というのは、それぞれの金融機関が経営判断で決めることであり、私から何かコメントをするのは差し控えたいと思います。

(問)公表文の6.の話ですけれども、前回7月の会合に比べて金融緩和に前向きな姿勢を強めていると先程おっしゃられました。それはこの書き振りを見れば分かるのですが、後段の部分で、次回の金融政策決定会合で、というふうに、次回というところに特定されています。これは金融市場では、次回会合で金融政策の変更があるのではないかと、そういうメッセージにもなると思うのですが、この次回という時期を特定されている理由についてお願いできますか。

(答)年に8回金融政策決定会合を行っていますが、海外経済の下振れリスクが高まっており、足許では「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われているということではないですが、失われる惧れをより注意深くみていく必要があるということです。世界経済の減速が続いているという状況、そしてそれが「物価安定の目標」に向けたモメンタムを損なう惧れがあるのではないかという懸念が、前回よりも高まっているので、次回の金融政策決定会合では、その辺りを十分注視して検討しますと申し上げているわけで、特別なことを申し上げているのではありません。

(問)今回強調されている海外経済の下振れリスクについてですが、少し海外の中央銀行の金融政策との関連も含めてお聞きできればと思っています。表現をみると、下振れリスクは高まる一方というのでしょうか、深まりつつあるというふうに表現されていますが、米欧が金融緩和に踏み切りつつある中で、例えばアメリカなどでは住宅ローンの借り換え等を通じて、既に効果みたいなものがあらわれ始めているのではないかというような指摘もあるように思います。ただ、その効果を判断するのにはまだ時期尚早ということなのか、既に米欧が舵を切っている緩和政策の効果も含めて、現在の海外経済のリスクの現状について改めてお聞かせ頂けますでしょうか。

(答)この辺りは色々議論があるところだと思いますが、米国の経済は比較的堅調でありまして、特に消費がしっかりしていて、賃金も上がっていますし、雇用情勢も非常にタイトという中で、消費がかなりしっかり伸びているということであり、米国経済が景気後退にすぐ陥るような可能性はあまりないと私は思っています。ただ、FRBとしては、公表文にもあるように、世界経済やその他の不確実性があるので、予防的に今回政策金利を引き下げたということだと思います。

他方、欧州は、ご承知のように一部の国はマイナス成長になったりしており、全体としてやや減速の状況が続いているわけです。従って、ECBとしては、マイナス金利を更に深掘りするだけでなく、マイナス金利の適用についても階層化をするとか、資産買入れを再開するとか、フォワードガイダンスを変更するとか、様々な措置をとられたということだと思います。その効果はこれからだと思いますが、これから国際会議も控えており、IMFやその他の国際機関も見通しをそれぞれ提示してくると思います。ECBは、経済・物価情勢に応じた適切な措置をとったと思いますし、今後もとっていくと思います。

海外経済の減速の状況というのは、まだ回復する兆しはみえていませんが、例えばITサイクルは少し下げ止まって反発する動きもみられています。また、中国経済はずっと減速していますが、財政・金融政策その他でかなりの措置を既にとっています。そういった政策により、どういう効果が出てくるかについては、今後ともよくみていく必要があり、それぞれの経済・物価の状況に合わせてそれぞれの中央銀行が政策をとっているということだと思います。

わが国の場合は、海外の様々な中央銀行よりも相当思い切った「量的・質的金融緩和」と、ある意味でユニークなイールドカーブ・コントロールを行い、「物価安定の目標」に向けた努力を重ねています。そのうえで、海外経済のリスクが高まる状況にもありますので、次回の決定会合では、十分に経済・物価の状況を点検していきたいと考えています。

(問)先程とは違う意味でのグローバルな金融リスク、あるいはバブル経済のリスク等々についてのご見解をお聞かせください。色々と不透明感がありながら、アメリカの株価はほぼ史上最高値圏にあります。あるいは、資産価格の上昇、住宅等も続いています。それから、家計、企業、政府、色々な意味でこの10年、債務が積み上がっています。そのことで、色々な金融リスクがグローバルに積み上がっているのではないか、それは、例えば銀行規制ではみえないところ、ファンド等を通じて積み上がっている心配がないか、とこういう議論があると思います。この辺についての総裁のご見解をお聞かせください。

(答)こうした問題については、BISやIMF等の会議でよく議論されているわけですが、現状で民間債務が積み上がっている国、特に途上国における色々な状況について議論はありますし、先進国についても、リスク資産の価格が上昇しているところもあるということで、色々な議論がありますが、今の時点で非常に大きなバブルがあるとか、あるいは金融規制の網が十分にかかっておらず、大変なことになる懸念があるとする国際機関や中央銀行の人はいないと思います。ただ、リーマンショックの前もIMFの一部の方が指摘していましたが、あまり皆心配していなかったのに起きたではないかと言われると、そうした反省もありますので、国際機関も各国の中央銀行も金融規制当局も私どもも、そうした点は十分注意してみています。

日本銀行の場合は、半年に1回金融システムレポートでかなり詳細に分析しています。今後ともそういった点については十分注意していく必要があると思いますが、今の時点で何か非常に大きなリスクが、特に先進国の金融システムで溜まっているとは考えていません。

(問)先程、前回会合よりも金融緩和へ前向きになったということですが、本日の公表文の6.の声明は、特に何かするという約束まではしていないと思うのです。ですので、ここまで示唆されているかもしれませんが、次回会合で、マーケットも素早く変わりますし、ツイートで米中貿易摩擦というのもまた変わってくるわけです。その中で、来月またモメンタムがしっかりしていれば、何もしないということも十分可能性としてはあり得る、という理解でよろしいのでしょうか。

(答)おっしゃる通りなのですが、そのように言うのがよいのか、ここに書いてある通り、ということでご理解頂きたいと思っています。

(問)長期金利のターゲットについて、総裁はマーケットが機能的に動いているときに無理に止めていくのはいかがなものかというご発言をされて、その一方で、ただターゲットを持っている限り、それがどんどん落ちていっても何もしないわけではないということですが、ここは、例えば機能的に動いていたとしても、どんどん下がっていくようであれば、やはりそこは止めにいかなければいけないことになる、ということなのでしょうか。

(答)そういうことです。現に、毎月の国債買入れについても必要な調整をしており、他方で、海外の金利が下がったときに、それを反映してわが国の金利も下がるということを全部止めなくてはならないというのも、国債市場の機能が十分発揮されている面もありますので、少し変だと思います。ただ、10年物国債金利の操作目標としてゼロ%程度と申し上げているわけですから、それを外れる状況をいつまでも容認するということはなく、必要に応じて適宜国債買入れのプログラムをマーケットの状況に応じて修正していますし、今後とも必要に応じて修正していくということだと思います。

(問)先月、FRBの歴代議長4人がウォール・ストリート・ジャーナル紙に、中央銀行の独立性が脅かされていると、これを守れという、異例の提言を寄稿したわけですけれども、これについて総裁はどのようなご感想をお持ちでしょうか。

もう1つは、日銀は今そういう独立性というのは脅かされていないのかということについて、総裁のご見解を伺えますでしょうか。

(答)私は、たまたま4人の方と面識があります。4人の方が署名された今回の文章について何か話したことがあるわけではないのですが、それぞれ中央銀行総裁として立派な功績をあげた方ですし、皆さん中央銀行総裁としてあるいはエコノミストとして立派な方であるということは言えると思います。ただ、具体的に、今回、米国においてこういうことが出されたコンテクストや、そのもとでこの4人のおっしゃる通りであるとか、何か私から申し上げるのも僭越だと思いますので、その点について特に申し上げるのは避けたいと思います。

日本銀行について、今、独立性――日本銀行法できちんと書かれているわけですけれども、――に対して何か危惧があるとか、独立性が損なわれる惧れがあるとか、そういうことは全く考えておりませんし、感じておりません。

(問)2点ほどお伺いしたいと思います。1点は中東情勢です。ひとまず沈静化したとはいえ、サウジの石油施設に対して攻撃が加えられて、相当大きな被害が出たということがありました。今後、第二弾の攻撃がなされるリスクというのも関係者は相当意識していると思うのですが、日本銀行として、中東の原油リスクも含めて現状をどのように評価されているでしょうか。

2点目は、アメリカの短期金融市場についてです。今回FOMCで利下げをする直前の段階で、アメリカのレポの市場で相当緊張が走って、一時レポ金利翌日物で10%まで跳ね上がっていると思います。その背景というのはどういうところが一番大きいとお考えでしょうか。一つの要因としては、やはり7から9月期の財政のファイナンス額が非常に膨らんでいる、財政問題が短期金融市場に反映しているのではないかという指摘もあると思いますが、その辺りも含めてご所見を伺えればと思います。

(答)いずれもお答えしにくいご質問ですが、中東情勢につきましては、確かにサウジアラビアの石油施設が攻撃されて、一部停止するということで、地政学的なリスク・緊張が高まっているということはその通りだと思います。そうしたもとで、足許の原油価格は、いったん非常に上がり、今は少し落ち着いていますが、それでも一頃よりも高い水準になっています。日本銀行としては、こういった中東における地政学的リスクが、原油価格、あるいは世界経済や国際金融市場に与える影響については引き続き注視していきたいと思います。

2点目は、米国の短期金融市場の一種のヒッチのようなものだと思います。色々言われているのは、季節的な要因等がたまたま重なって起き、Fedが迅速に流動性を供給して安定した状況になったということです。何か財政や金融に大きな構造的な問題があって起きているとは思われません。Fedは迅速に適切に対応されたと思いますので、問題はなかったと思いますけれども、ご指摘のようなことも含めて、今後とも国際金融市場の動向には十分注意していきたいと思います。

以上