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総裁記者会見要旨 2020年4月27日(月)
午後3時半から約70分

2020年4月28日
日本銀行

(問)本日の決定内容と、展望レポートについてご説明をお願いします。

(答)日本銀行は、本日の決定会合において、金融緩和を一段と強化することを決定しました。具体的には、第一に、CP・社債等買入れの増額です。CP等、社債等の追加買入枠をそれぞれ7.5兆円に大幅に増額し、合計約20兆円の残高を上限に買入れを実施することとします。あわせて、発行体毎の買入限度を大幅に緩和するほか、買入対象とする社債等の残存期間を5年まで延長します。第二に、新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充です。3月に導入・開始した特別オペについて、金融機関が、企業を中心に幅広く民間部門に対する金融仲介機能を一層発揮することをしっかりと支援するために、対象担保範囲と対象先金融機関を拡大したほか、本オペの利用残高に+0.1%付利することとしました。これに加えて、中小企業等の資金繰りを更に支援するため、政府の緊急経済対策等における資金繰り支援制度も踏まえた金融機関への新たな資金供給手段の検討を早急に行うこととしました。第三に、国債の更なる積極的な買入れです。債券市場の流動性が低下しているもとで、政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、当面、長期国債、短期国債ともに、更に積極的な買入れを行うこととしました。これに伴い、長期金利の金融市場調節方針について、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、買入れ上限を設けずに、必要な額の長期国債の買入れを実施することとしました。

なお、本日の決定会合では、短期金利についての金融市場調節方針、ETFおよびJ-REITの買入れ方針については、3月の方針を継続することも決定しました。

今回の決定の背景ですが、内外における新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、わが国経済は厳しさを増しており、金融環境も企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下しています。こうした情勢を踏まえ、金融機関や企業等の資金調達の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持する観点から、今回の措置を決定しました。

次に、展望レポートに沿って、経済・物価の先行きをご説明します。経済は、当面、内外における感染症拡大の影響から厳しい状態が続くとみられます。物価についても、当面、感染症の拡大や原油価格の下落などの影響を受けて弱含むとみられます。その後、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、ペントアップ需要の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくと考えられます。そうしたもとで、物価も、徐々に上昇率を高めていくとみられます。なお、今回の見通しにおいては、感染症拡大の影響が、世界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくことを想定しています。

もっとも、先行きは、感染症の拡大が収束する時期や内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感が極めて強いと考えています。また、今回の見通しは、感染症拡大の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としていますが、そうした前提には不確実性があります。

そのうえで、リスクバランスについては、経済・物価のいずれの見通しについても、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きいとみています。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しています。

日本銀行としては、本日の決定を含め、現在実施している強力な金融緩和措置が、新型コロナウイルス感染症拡大への政府の各種対策や各国・地域の政府・中央銀行による様々な対応と相俟って、金融経済活動の下支えに貢献するものと考えています。

(問)経済見通しについて、あらためてお願いします。政府が4月7日に7都府県を対象に発令した緊急事態宣言は、現在全国に広がって、感染症拡大阻止に向けて国内全体で経済活動が止まっている状況です。このため、需要面でも供給面でも落ち込みが大きく、外需の急速な回復は見込みにくくなっています。感染症収束の時期と大きく関わってくるとは思いますが、国内経済が今後、V字回復を遂げることが可能なのか、それとも、緩やかないわゆるU字型となるのか、あるいはL字型に陥るリスクはないのか、現時点での総裁のご所見をお願いします。

(答)内外における新型コロナウイルス感染症の拡大は、わが国経済に深刻な影響を与えており、景気は厳しさを増しています。世界経済が急速に落ち込むもとで、輸出・生産は減少しています。インバウンド需要や個人消費も大幅に悪化しています。

先行きも、感染症拡大が収束に向かうまで世界的に経済活動の抑制が続くと予想され、わが国経済は、当面、厳しい状態が続くとみられます。その後、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、わが国経済は改善していくと考えられます。今回の見通しでは、IMFの標準シナリオと概ね同様に、感染症拡大の影響が、世界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくとの想定のもとで、2020年度は大きく落ち込んだ後、2021年度は反動もあって高めの成長となるとの見方が多かったように思います。

もっとも、感染症拡大が収束する時期や収束後の改善ペースなど、先行きの不確実性は高く、下振れリスクは大きいと考えています。今後も、感染症拡大がわが国経済に与える影響について、最大限注視していく考えです。

(問)物価について、今回の展望レポートで22年度の物価見通しが初めて示されました。新型コロナウイルス感染症、原油安の影響が大きいとはいえ、総裁の二期目の任期中に、2%の物価目標が達成できない見通しです。この点の受止めをお願いします。

(答)グローバルな感染症拡大の影響と、原油価格の大幅な下落という、極めて大きな外的ショックが加わるもとで、わが国の物価は、当面、弱含むとみており、2%の「物価安定の目標」の実現も、見通し期間を越えて、相応に時間がかかると考えています。加えて、感染症拡大の収束時期やその影響の大きさは不確実であり、物価の先行き見通しは不透明感が極めて強いと予想しています。もっとも、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、経済が改善していくもとで、物価も徐々に上昇率を高めていくとみています。

時間がかかってはいますが、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の実現を目指していることには変わりがありません。日本銀行としては、緩和的な金融環境を維持することが、感染症拡大の影響が収束した後に、わが国経済が「物価安定の目標」の実現に向かっていくために重要と考えており、強力な金融緩和を粘り強く続けていく考えです。

(問)今回、国債の購入で80兆円のめどを外されたと思いますが、既に国債の購入ペースというのはかなり落ちていて、80兆円から乖離があったと思います。それを今回外したというのは、今後80兆円を超えるペースで買う局面が訪れるとみているからなのか、あるいは他の理由があるからなのか、その辺りの今回の狙いについて教えてください。

また、企業金融の支援策についてですが、今回かなり大幅な内容等の拡充をされたと思いますが、米欧の中銀などの動きを見ていますと更に踏み込んだ政策も打ってきているところかと思います。内外で色々と制度の違いや環境の違いはあることは存じておりますが、日銀として今後更に、今回の措置に加えて、新しい政策を打っていく可能性があるのかどうか、その辺りの考え方も教えてください。

(答)債券市場の流動性が低下していることは、色々な指標で明らかであり、他方、政府の緊急経済対策によって国債増発が見込まれています。こうした状況を踏まえ、本日の会合では、債券市場の安定を維持しイールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、当面、国債の更なる積極的な買入れを行うことが適当との認識が共有され、その旨を対外的に示すこととしました。その際、金融市場調節に当たっては、市場調節方針を実現するために必要な金額の国債買入れを行う、すなわち80兆円を超えても買い得ることも含めて上限を設けずに行っていくということであり、国債買入れの金額のめどを削除することとしたのはこの点をより明確にするためです。

次に、海外の中央銀行の政策との比較ですが、今回の各国の中央銀行の対応は、まず第一に資産買入れの増額などで大規模に流動性を供給して金融市場の安定を図る、第二に貸出を支援する資金供給やCP・社債の買入れなどにより、金融機関や企業等の資金調達の円滑を確保する、という二つの点で共通していると思います。もっとも、具体的な措置は、それぞれの国の金融情勢や金融制度・市場構造の違いなどによって様々であり、金融緩和措置の内容や規模を単純に比較することは難しいと思います。そもそも大事なことは実施する措置の効果であり、単純な規模の大小ではないと思いますが、そのうえであえて付け加えますと、日本銀行は、これまでも「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで大規模な金融緩和を継続しています。加えて、感染症拡大の影響を踏まえ、様々な手段により数十兆円の規模で資金供給を拡大しています。経済規模に応じた資金供給量として、バランスシートの名目GDPの比率、あるいはCPや社債市場の規模との相対的な比率等、様々な指標で比べても、日本銀行の金融緩和措置の規模は、各国の中央銀行並みと言いますか、更に大きいと言えると思います。

(問)国債の買入れについて、80兆円の上限に捉われず必要な額を買い入れるというお話がありました。これは必要があれば無制限に買い入れるという解釈をしても構わないのかということが一つです。

また、物価について、今回の展望レポートでは、先行きを下方修正しているわけですが、今回の公表文で物価の目標に向けたモメンタムという文言が消えています。現時点は非常時だとは思いますが、物価安定の目標に向けたモメンタムについて、総裁のお考えをお聞かせください。

(答)国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロールのもとで長期国債の金利をゼロ%程度で安定させるために必要なだけ、いくらでも買うということです。

また、物価については、今回の展望レポートに示した通り、今年度は消費者物価の上昇率はマイナスになるとみていますが、来年度からプラスに転じ、更に2022年度はもう少し上昇していくというのが委員方の見通しです。ただ、その幅をみると、2022年度でもまだ1%程度であり、2%の目標には、この見通し期間にはなかなか到達しないということが、多くの委員の見通しです。なお、政策金利のフォワードガイダンスについては、展望レポートで示したように、当面景気は厳しい状況が続き、物価も弱含むとみています。従って、物価のモメンタムはいったん損なわれた状態にあると判断しており、前回、今回と追加緩和を大幅に実施したところです。こうしたもとでは、物価のモメンタムが損なわれる惧れに紐付けたフォワードガイダンスでは、政策金利を維持ないし引き下げるとする期間が不明瞭になるため、これを見直し、感染症拡大の影響を注視したうえで、必要があれば躊躇なく追加緩和を講じる方針であり、政策金利のフォワードガイダンスも、こうした方針に紐付ける形にしたということです。

(問)今回の公表文をみますと、国債のところでは、「政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ」とありますし、新たな資金供給策の検討指示のところでも「政府の緊急経済対策等における資金繰り支援制度も踏まえ」とあります。今回の政策決定に当たって、現在政府が行っている緊急経済対策も含めた諸々の政府の動きとの連動についてはかなり意識されたとみてよろしいでしょうか。

また、「新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充」のところですが、前回、「企業金融」というようにかなり企業の資金繰り支援を意識されていたかと思うのですが、今回、家計債務を含めた民間債務全般へ担保を拡大するとあり、オペの名称からも「企業」というのが消えています。これは今、企業だけではなく個人もかなり資金繰りが厳しいという現状があるのですが、そういった現状を踏まえての措置、制度の拡充、強化なのでしょうか。ご所見をお願いします。

(答)当然、日本銀行法自体にもありますように、日本銀行は金融政策を独自の立場で決定していくわけですが、他方で経済政策全体とも協調が必要であり、常に政府とよく連絡を取って金融政策を決定するというように書かれており、従来からその通りです。特に今回、この状況では、各国も同様ですが、わが国においても様々な、しかも大規模な財政政策、経済政策が政府によって行われているもとで、日本銀行も金融政策をかなり大幅に強化したということです。その中で、国債市場についていえば、既にやや市場機能の低下がみられ、更に国債が増発されるということであれば、当然のことながらイールドカーブ・コントロールのもとで必要なだけ国債を購入していきます。これはあくまでもイールドカーブ・コントロールという形で、金融政策として行うものですが、そこに財政政策との協調といいますか、相乗効果も当然期待しています。また、中小企業に対する資金繰りの更なる支援については、政府が非常に大規模で、ある意味で画期的な民間金融機関を通じた無利子・無担保での中小企業向けの資金繰り支援を行うということですので、日本銀行としてもいわばバックファイナンスという形で、金融機関がそういった資金繰り支援を中小企業により行いやすくするために新たな資金供給手段を検討しています。政府による地方公共団体や信用保証協会、その他をインボルブした様々な中小企業資金繰り支援の具体的なスキームが、かっちりと明確になる段階でないと、日本銀行側のバックファイナンスの制度も仕組めませんので、金融庁や財務省などと十分協議しながら、内容を詰めていくということです。これもそれほど時間がかからずにできるのではないかと思っています。その場合の資金供給手段の骨子は公表文の別紙に付けていますが、単にマクロ加算残高の2倍加算だけでなく、貸付金利はゼロとしたうえで、当座預金部分については+0.1%の付利をするということで、金融機関が資金繰り支援をより行いやすくすることを考えています。

また、今回の「新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充」について、名前から「企業」を落として、民間全般を含めるようにしましたが、これは企業のみならず個人についても、ということもありますが、更にいえば、対象担保の範囲を従来のような企業に対する貸付だけでなく、家計債務を含めた民間債務全体に拡充することを通じて、特に地銀などを含めてより活用しやすくする面もあると思います。いずれにせよ、企業・家計ともに資金繰りに問題が生じないように、今回の拡充を図ったということです。

(問)国債の積極的な買入れですが、「政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ」ということで、財政ファイナンスという指摘が出てくる惧れもあると思うのですが、この点についてのご認識をお願いします。

また、二回連続で金融緩和を強化しているということですが、今回ETFの買入れについては維持されました。前回ステートメントでは、ドルオペについての言及などもあったと思うのですが、一か月前とこの間で何かフェーズが変わってきているということがあるのでしょうか。

(答)国債買入れについては、当然のことながら金融政策上の目的で行っているものであり、政府による財政資金の調達支援が目的の、いわゆる財政ファイナンスではありません。今回、国債の更なる積極的な買入れを行うこととしたのも、債券市場の流動性が低下しているもとで、債券市場の安定を維持するとともに、現在の金融市場調節方針に定める長短金利操作を実現する観点から、イールドカーブ全体を低位で安定させることを目的としたものであり、あくまでも金融政策運営上の必要に基づいて実施している措置です。もちろん、日本銀行としては、こうしたイールドカーブ・コントロールに基づく金融緩和措置が、緊急経済対策をはじめとする政府の積極的な財政措置と相俟って、いわゆるポリシー・ミックスの効果を高めていくものと期待しています。

また、今回二回連続で金融緩和を強化し、特に今回の金融緩和の強化の範囲、措置の規模は、非常に大きなものになっています。これについては、公表文にもありますように、一つには景気について厳しさを増しているという判断、もう一つは金融環境も、一時懸念されたよりも内外の金融資本市場が少し落ち着きを取り戻してはいますが、まだまだ警戒すべき点が非常に多いわけです。そうした中で、特にCPの発行が増加し、CPの金利も上昇しています。それから、社債についても、金利の上昇の程度は小幅ですが、それでもやはり上昇していますし、社債は期間が長いですから、金利の上昇をみて少し発行を手控えている企業もあります。このため、実際上はCPも社債も両方ともかなり逼迫してきている状況にあり、しっかり対応する必要があるということで、合わせて約20兆円という巨大な額を上限に買入れを実施することにしました。また、「新型コロナ対応金融支援特別オペ」も、従来は企業向けの融資だけが担保でしたが、対民間融資を幅広く担保にし、従来は対象担保が8兆円程度でしたが、23兆円程度と3倍程度にして、より広く使われるようにしました。また、その際に+0.1%の付利をして、よりインセンティブを付けて、幅広く対民間の金融支援を拡張するということです。それから、政府の中小企業の資金繰り支援の緊急経済対策等を踏まえ、更に中小企業向けの新たな資金支援の仕組みも早急に詰めて開始したいと考えています。

(問)企業の資金繰りについて今回支援策を拡充したわけですが、大企業・中小企業の資金繰りの現状は、リーマンの時と比べて相当厳しくなってきているというご認識でしょうか。

また、新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは、日銀は追加緩和の手段としてマイナス金利の引き下げを選択肢として挙げていましたが、こういう環境ではマイナス金利の引き下げは選択肢からなくなったとお考えでしょうか。

(答)今回の経済危機は、リーマンショックの時とだいぶ違っています。リーマンショックの場合は、米国でまずいわば金融バブルのようなものが弾けて、米国の金融システムが非常に大きなダメージを受け、それが金融チャネルを通じて他国に波及し、更に米国その他の経済が低迷するという形で、日本の経済にも非常に大きな影響を与えました。

今回は、感染症の拡大に対応して外出自粛や店舗の休業など経済活動が非常に抑制され、それによって企業活動がシュリンクし、企業の資金繰りが非常に厳しくなっています。それは、中小企業も大企業も同様で、特に大企業などはグローバル企業も金融機関から大規模なクレジットラインを得ようとしたり、あるいはCPや社債を増発することで、資金繰りから倒産やその他企業に対するダメージが起こらないようにしています。中小企業も、様々な努力をしておられますが、やはり政府や日本銀行による様々なサポートも必要になっています。大企業も中小企業も、今の時点で資金繰りで倒産するということになっているところは少ないと思いますが、そのようにならないよう、皆資金繰りを急いでいることは事実です。資金繰りの面だけからいえば、リーマンショックの時よりも厳しい面があると思います。そういう意味で、政府も日本銀行も資金繰りの点では、リーマンショックの時を上回る措置を講じています。

それから、追加的な手段ということですが、日本銀行としては、感染拡大の収束にめどがつくまでの間は、雇用・事業・国民生活を守ることが最も大事であり、金融面からは金融機関や企業などの資金調達の円滑を確保し、金融市場の安定を維持することが最も大事だと思っています。日本銀行としては、こうした観点から、本日の決定を含めて強力な金融緩和措置をしっかりと実施していく方針であり、また必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる考えです。その際の手段としては、量の拡大、あるいはオペ手段の拡充、金利の引き下げなど、様々な対応があり、その時々の最も適切な手段を選択する方針です。政策金利の引き下げについても、フォワードガイダンスが示している通り、事前に選択肢から排除することはありません。

(問)国債買入れ枠の無制限の買入れですが、これは時限措置なのでしょうか。社債の買入枠の増加などは、今年の9月末までと、時限措置とされていると思いますが、国債の買入れの方はそうした記載が見当たりません。もし、時限措置でなく恒久措置なのだとすれば、なぜそうする必要があるのかということも含めて教えてください。

(答)公表文の2.にもある通り、「こうした情勢を踏まえ」というのは、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によって厳しさを増しているとか、金融環境も、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下しているという状況を踏まえて、金融市場の安定を維持する観点から、国債の更なる積極的な買入れによって金融緩和を一段と強化することが適当ということです。ETFあるいはJ-REITの買入れについても、こうした状況を踏まえて、当面、従来の倍のペースで買い入れることにしています。当然のことながら、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束して経済も回復の軌道に乗っていくという状況のもとで、どの程度の買入れが必要かは、その時に判断すべきと思います。イールドカーブ・コントロールという観点から言いますと、現在のような、政策金利が-0.1%、10年物国債金利がゼロ%程度という状況は、新型コロナウイルス感染症が収束してすぐにやめるということにはならないと思います。やはり当分、10年物国債金利をゼロ%程度から上昇させないと思いますので、それを実現するために必要なだけ国債をいくらでも買い入れることは変わらないと思います。ただ、永遠に続くという話ではなく、そもそもイールドカーブ・コントロール自体が、公表文の5.にあるように、「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』を継続する」と言っているわけです。

(問)国債の買入れについて、80兆円の買入れのめどという一方で、実質的には、一年前と比べ足許の増加ペースは年10兆円台ぐらいのペースで、マーケット的には80兆円を超えてすぐに上回っていくというような事態ではないと思います。これで、なぜ今のタイミングで、80兆円のめどという目安を撤廃する必要があったのかという点について教えてください。

また、先程財政ファイナンスの話もありましたが、日銀は、政府の発行する債務の大体4割以上を既に今保有していて、これからまだどんどん無制限といいますか、際限なく買っていくとすると、財政規律の緩みも含めて副作用のリスクというのはどうみていらっしゃるのでしょうか。

(答)80兆円のめどを削除した趣旨は、債券市場の安定を維持してイールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、国債を更に積極的に買い入れるということで、金融市場調節に当たっては、市場調節方針を実現するために必要な金額の国債買入れを上限を設けずに行っていくことを明らかにしたということです。既に、従来よりもかなり速いペースで国債を買い入れていますが、政府も国債を増発するということでマーケットに対する影響もあり得ます。そういったことがイールドカーブ・コントロールという面で起こらないように、必要なだけいくらでも買う姿勢をはっきりさせたということで、非常に意味があると思っています。

財政ファイナンス云々の話ですが、今申し上げたことも全て金融政策上の目的であって、具体的にはイールドカーブ・コントロールという形で、イールドカーブ全体を低位に安定させることを目的に行っています。イールドカーブ・コントロールの仕組み自体が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、2%の目標が安定的に持続するために必要な時点まで「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するということです。そういった意味では、あくまでも金融政策上の必要に応じて行っており、財政ファイナンスではないということです。財政規律云々というのは、私どもの責任、問題ではなく、政府・国会の財政政策として、あくまでも政府・国会がお決めになることであって、それを私どもが何かコントロールしようということは僭越だと思っています。

(問)今、資金繰りに苦しむ企業、個人が非常に増えてきている状況です。経済はかつてない困難に直面していると思いますが、今回総裁はどのような思いでこの決定会合に臨まれたのでしょうか。また、今、日銀はどういう役割を果たすべきだと考えていらっしゃいますか。

(答)リーマンショックの時と比べる議論は色々ありますが、今回はリーマンショックの時と違った形の危機、非常に危機的な状況であり、その結果として経済にもリーマンショック時を上回るようなネガティブな影響が出る惧れがあります。既にIMFの世界経済見通しでは、リーマンショック時を上回る大幅な世界経済のマイナス成長が2020年に予想されている状況です。そういった意味で、非常に危機的な状況にあることを十分認識しながら、中央銀行としてできることは何でもやる、最大限やる、ということに尽きると思います。政府と中央銀行が協調することは、ある意味では当然のことであり、日本銀行法にも書いてあるわけですが、今回のようないわば危機的な状況にあっては、特に協調した行動が重要です。これは日本に限らず欧米でもそのような状況になっていると思います。

(問)今、世界的に公的債務が増えてきているような状況でもありますが、そうした中で、これまで物価の安定というのを重視していましたが、より今というのは、金利の安定というのを重視するような局面になったということなのでしょうか。

(答)物価の安定は、やはりどこの中央銀行でも最大の使命であることは間違いないわけですし、現時点でもそこは変わっていないと思いますが、足許の世界経済の状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、需要面でも供給面でも圧縮されているという、非常に異例の経済危機になっています。そうしたもとで、各国とも、物価が今すぐ上昇する状況にないことは事実ですが、あくまでも中央銀行が最大の使命としている物価の安定を放棄しているわけではありません。現状においては、インフレをもたらすことなく最大限の金融緩和を行うことが最も重要であり、将来物価がより上がってきた際に、その時点で金融の引き締めを行うことは十分できます。むしろ今は、あくまでも経済の落ち込みを防ぎ、金融、特に企業金融、民間の金融が十全に回っていくようにするとともに、金融市場の安定を図ることが、当面の中央銀行としての最大の課題になっていると思います。金利だけということではないと思いますが、様々な意味で民間の金融仲介機能が損なわれないようにするとともに、金融市場の安定を図ることが、この局面では中央銀行としてやはり最も重要なことだと思います。

(問)今回、必要なだけ無制限に上限を設けず国債を買うということで、そういうコミットメントは他の中銀もやってはいますが、これによって金利ターゲットを主眼としているYCCから市場の関心が少しぼやけてしまい、再び国債の買入れや中央銀行のバランスシートに市場が注目してしまうという可能性、惧れを、どれくらい意識されたのでしょうか。

また、以前総裁は、超長期金利の過度の低下は副作用もあって望ましくないと発言されていましたが、今回このように国債を無制限に買うことによって、その辺りはどう変わるのでしょうか。依然としてイールドカーブにある程度スティープ化の動きがある方が望ましいということなのか、あるいはそこは少し変わったということなのでしょうか。

(答)他の中央銀行も、例えばFRBのように限度を設けずに国債を買うことを始めたところがありますし、あるいは例えばオーストラリアの中央銀行のようにイールドカーブ・コントロールを明示的に入れているところもあります。イールドカーブ・コントロールのもとでイールドカーブを低位に安定させるために必要なだけ国債を買うというのは、ある意味当然のことであり、FRBにしてもオーストラリアの中央銀行にしても、基本的には同じような考え方でやっていると思います。むしろ金利から量にいくというのではなく、量の方はもう限度なくということだと思っており、あくまでもこういう状況のもとで金融が目詰まりしないように、そして長期金利が上昇しないように、ということがポイントだと思います。

超長期の金利については、イールドカーブがあまり寝てしまうと好ましくないということ自体は変わらないと思いますが、今の時点でそれを云々するよりも、イールドカーブ・コントロールのもとで、イールドカーブ全体を低位に安定させることが、最も重要と考えています。

(問)金融システムに関連してですが、新型コロナウイルスの感染が拡大する以前から、金融機関の収益環境は厳しい状況だったと思いますが、新型コロナウイルスによって信用コストの上昇懸念というのも出てきていると思います。個別の金融機関の体力も含めて、現状の認識ですとか、先行き、今後の見通しについてお伺いできればと思います。

(答)新型コロナウイルス感染症が拡大して世界経済が急速に落ち込み、国際金融市場も不安定化するというもとでも、現状、わが国の金融機関は、資本・流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えており、金融システム全体として安定性を維持していると考えています。そうしたもとで、金融機関の融資も2%台で引き続き拡大しています。ただ今後、仮に内外で感染症拡大が想定以上に長引いた場合には、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼす惧れもあることはその通りです。具体的には、景気悪化に伴って信用コストが増加するリスクには注意していく必要があるのはその通りだと思います。一方で、政府も財政的な措置も踏まえて大規模な資金繰り支援を行っていますし、日本銀行としても、その機能を最大限活用して金融面から企業、経済にマイナスが生じないように対処していくということに尽きると思っています。

(問)CP・社債買入れの増額についてですが、20兆円という数字は、日本のCP・社債市場の規模からするとかなり大きな数字になるかと思います。そういった中で日銀のプレゼンスがそれだけ拡大したことによって、市場機能などに与える影響というか副作用などについて、どのようにお考えでしょうか。

(答)CP・社債は、株式について色々言われるような問題はあまりないと思います。新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえて大企業などが資金手当てを前広に行おうということで、銀行からのクレジットラインの拡大やCPや社債の増発を行っています。企業の資金繰りを逼迫させないよう、政府が様々な資金繰りの支援を行う中で、日本銀行は金融機関に対する様々なオペを行い、また、日本銀行としてできる限りのことの一環としてCP・社債の買入れ額を大幅に増加させるということです。

確かに米国に比べるとCPや社債の市場はそれほど大きくありませんので、この程度の買入れでも相当な規模になり、逆に言えば、CPや社債市場の逼迫を防止できるということです。正にそういった市場の逼迫を避けるために必要なだけやろうということで、かなり思い切って3倍ぐらいにしたということです。

(問)国債の買入れ上限の撤廃についてですが、先程総裁は財政ファイナンスではないとおっしゃいましたが、今回日銀が国債の買入れ額を無制限にしたことで、今後政府は、金利の上昇リスクを気にせずに財政出動しやすくなるということになるのでしょうか。

(答)政府・国会が金利に応じて機械的に何かをされるということを前提にすればそういうことになりますが、政府・国会はあくまでも、この際必要な経済対策を行う、そのために必要な国債を発行する、一方で中長期的な財政規律を守るということは言っておられるわけです。あくまでも財政規律にどういう影響があるかというのは、財政政策を主体的に決める政府・国会の役割であり、それを私ども中央銀行がどうこうせよというような立場にはないということです。あくまでも私どもは金融政策の観点から、金利にせよアベイラビリティにせよ、あるいは企業の資金繰りにせよ家計の資金繰りにせよ、そういうものをサポートしているということです。

(問)新型コロナウイルスの影響は先行き不確実性が大きいということで、影響が長期化した場合なのですが、日本経済が再びデフレに陥るリスク、警戒感について総裁は今どの程度感じておられるのかについてお伺いします。

また、YCCのもとでの国債買入れの積極化ということで確認ですが、長期金利の低下局面ではこれまでと同様に国債の買入れは減額することもあり得るというように考えてよいのか、それとも当面は国債買入れは減額せずに、むしろ加速していくということで考えてよいのかをお願いします。

(答)現在の経済状況をみますと、展望レポートにもありますように、委員の見通しで2020年度の消費者物価上昇率はマイナスになります。ただ、今の見通しでは、2021年度にはゼロ%ないし若干プラス、そして2022年度には、幅がありますが、上の方のところで1%ぐらいという見通しになっています。その限りでは、デフレの再発、つまり物価の持続的な下落が再発するとはみていません。ただ、展望レポートにありますように、短期の予想物価上昇率がかなり低下していますし、長期の予想物価上昇率も少し低下していることには、やはり注意を要します。今デフレになる、デフレが再発するとは思っていませんが、一つには、感染症の拡大というのがどのぐらいの時間的な見通しで収束するかということが、日本だけでなく世界的にあります。また、原油価格が今大幅に下落していますが、これが今後どのように動くのか、それから予想物価上昇率が弱含んでいるといったことも含めて、十分注意していくつもりです。しかし、この委員の見通しにもありますように、今の時点でデフレが再発、再燃するとは思っていません。

また、国債買入れの点については、金利が下がっていくという局面はあまり想定しがたいので、仮にということでお答えするのも僭越だと思いますが、ゼロ%程度で若干の変動は容認するということですので、若干マイナスになってもどうこうするつもりはありません。

(問)足許、ドル円市場は落ち着いているかとは思いますが、内外の金利差が低い状況が継続したり、新型コロナウイルス感染症の拡大で投資家のリスク回避姿勢が強まっていくと、円高が進んでいく状況も考えられると思いますが、そうした円高リスクについてどのようにお考えでしょうか。また、対ドル以外では、ユーロなど他の通貨に対しては円高が進んでいる部分があろうかと思いますが、足許の為替相場についての認識を教えてください。

(答)為替については、先行きの見通しをいうのは適切ではないですし、日本銀行は為替政策を担当していませんので、何とも申し上げにくいです。内外金利差云々というのは一つの要素ですが、過去の状況をみても、為替の動きと内外金利差が常にパラレルに動いているわけではありませんので、何とも申し上げかねますし、また、日本の金利は十分低いということも続いています。今回の新型コロナウイルス感染症の拡大のもとで、実際の動きとしては、円はドルに対して一時非常に弱くなり、今少し戻して107円台半ばというところで比較的安定しているということだと思います。

新興国通貨などその他の通貨に対しては若干円高になっているかもしれませんが、現時点で円高リスクが大きいとか、今の為替レートで日本の金融や経済に大きなマイナスが生じているとは思っていません。

(問)総裁は先程、国債の更なる積極的な買入れについて、永遠に続くということではないとおっしゃったのですが、一方で、新型コロナウイルスの問題、感染拡大が収束してもすぐに閉じるということではないともおっしゃいました。総裁はこの7年間、引き締めというのを一度もやっていないわけですが、一体この国債の買入れ、積極的な買入れ政策についてはイグジットを考えて、本当に考えていらっしゃるのか、総裁の任期中に必ずこれを閉じるというような意欲をお持ちなのかどうかということを確認させてください。

(答)私の役割というか、中央銀行の役割は常にそうですが、物価の安定を実現し、そのもとで経済が健全に発展するということが、最大の目的、使命でありますので、そのために必要なことをこれまでも行ってきましたし、今後も行っていく、ということに尽きると思います。

(問)社債・CPですが、大幅買入れ増ですし、発行体毎の買入れ限度も緩和するわけですが、発行体の範囲は今回拡大されていないと思います。中小企業等々を考えると、あるいはアメリカの動きをみても、範囲という話があるような気がするのですが、これはどうしてなのか、あるいは日本市場の今の市場構造によるものなのでしょうか。

また、国債買入れは必要であれば無制限にという話なのですが、現実に今、国債の流通量が以前より非常に乏しくなっていて、ペースも落ちていて、そんなに買えないのではないかと思います。実際に今度新規国債が出てくるとしても、20兆円台の新たな増発ということだと理解しています。つまり、必要であればいくらでも買うとおっしゃいますが、そんなに買える国債が本当にあるのだろうかという辺りについて、どんなご所見をお持ちでしょうか。

(答)FRBは今回の措置で、3月22日時点でBBB格以上であったものに限って、BB格社債も買入れ対象としました。またECBも、4月7日時点でBBB格以上であった債券等については、その後格下げが行われても同行内部の信用判定基準でBB格相当と判定されれば、引き続き適格担保として認めるという扱いをしています。一方、わが国の社債市場で発行されている社債は、大半はA格以上でありまして、BB格以下の割合はごくわずかです。こうした状況を踏まえますと、BBB格以上の社債を買入れ対象としつつ、その買入れ規模を拡大することで、企業の信用調達の円滑確保という観点からは十分な効果を発揮できると思っています。

また、国債が買えないということは全くありません。日本銀行は、現在、発行残高の半分程度を保有していますが、まだ半分近く市場にあります。もちろん、どんどん買っていって金利が上がらないようにすることが、イールドカーブ・コントロールという面で重要でありますが、買えないということはないと思っています。なお、金融機関で担保のために必要ということであれば、国債の貸付も行っていますので、現状、そういったことで何か問題が生じているとか、あるいは買えなくなるということはないと思っています。

以上