ホーム > 日本銀行について > 講演・記者会見・談話 > 講演・記者会見(2010年以前の過去資料) > 講演・挨拶等 1998年 > 栃木県金融経済懇談会(12月3日、於宇都宮グランドホテル)における三木審議委員挨拶要旨:日本銀行 Bank of Japan

栃木県金融経済懇談会(12月3日)における三木審議委員挨拶要旨

平成10年12月3日、於宇都宮グランドホテル

1998年12月 8日
日本銀行

(1)はじめに

 この4月から日本銀行の政策委員会審議委員を務めている三木です。本日は、お忙しいところご参集頂き有り難うございます。この金融経済懇談会は、政策委員会の政策決定権限を持つメンバーが、各地の金融経済界の方々に、日本銀行の考え方や行動のほか、日本経済に対する自分なりの考え方なども、直接説明申し上げると同時に、皆様の声を聞き、政策に活かしていけるようにとの趣旨で開催しているものであります。是非、皆様の忌憚のないご意見、ご要望を頂戴し、本日の栃木県金融経済懇談会を、有意義な意見交換の場にいたしたいと思います。

(2)新政策委員会の運営について

 さて、日本銀行も、本年4月1日に改正日銀法が施行されました。この改正は、独立性の強化と透明性の向上を図ることを理念としています。私は、新しい法律下での政策委員会メンバーとして、4月1日に審議委員に就任いたしました。

 日銀の意思決定が、「政策委員会」という組織でなされること自体は従来と変わりはありませんが、構成や運営の仕組み等は大きく変更されています。

 旧法の下では、法律上の権限を持った政策委員会というボードに加え、これとは別途、正副総裁、理事のボードが組織されており、このため、世間からは意思決定プロセスが二元化しているとの批判を受けました。新法の下では、こうした状態が改められ、政策委員会が名実ともに唯一のボードとなりました。新しいボードは、最高意思決定機関として、金融政策、信用秩序の維持、業務執行の基本方針などの日銀の全ての重要な事項をしっかりと掌握しています。

 議決権のあるメンバーは、従来の5人から9人に増員され、全員が国会の衆参両院の同意を得て、内閣により任命されます。構成も、私のような根っからの産業界育ちが2人、マスコミ経験者の副総裁が1人、我が国トップクラスの経済学者が2人——しかも1人は女性で労働経済の権威——が加わりました。平均年齢もかなり若返ったと申せましょう。なお、政策委員会のうち金融調節事項を審議する「金融政策決定会合」には、政府から、大蔵大臣、経済企画庁長官(ないしその代理者)が必要に応じて出席することができますが、議決権はありません。

 ここまでの点は、かなり広くご理解を頂いているようでありますが、審議委員就任以来、友人等からは、「ところで、審議委員とは、いったいどんな仕事振りなのか」という質問をよく受けます。私が、「月に十数回の会議(政策委員会)が開催され、その間に毎回2~3cmの分厚い資料が配布される。金融機関経営者等との懇談会も別途あり、さらに各種のレクチャーも入る。しばしば、深夜、自宅で資料に目を通すこともあり、まるで新入社員の時に戻ったような感じだ」と答えると、「それは大変だ。ご苦労さん」といって認識を改めてくれます。「審議委員」という言葉が、「政府の審議会委員」に近いイメージを与えるからかもしれません。

 とくに通常毎月2回の、金融調節事項を議論する「金融政策決定会合」では、徹底した金融経済情勢に関する分析と政策対応に関する意見交換がなされ、長い時は開催時間が8時間にもおよびます。そして、その内容を約1か月後に「議事要旨」として公表し、アカウンタビリティーの向上に努めています。そこからは、政策委員会のメンバーが、それぞれの立場から意見を十分に開陳し、論点を鋭くぶつけ合っていることが読み取れます。議決する際の反対意見についても、反対者の名前と反対事由を添えて掲載しています。日本銀行のインターネットのホームページで公表とほぼ同時にご覧頂けます。さらに、金融政策決定会合での発言は、10年後に「議事録」として逐語的に公表されます。このため、メンバーは自分の発言に強い責任感を持って臨んでいます。

 政策委員会は、過去に「スリーピングボード」と揶揄されたこともありましたが、こうした新法での委員会運営の工夫もあって、名実ともに日銀の最高意思決定機関として機能しています。私は、政策委員会を一般事業法人の経営会議、常務会、取締役会の3つが統合された会議に相当するものと実際に感じています。

(3)98年度上期経済を振り返って

 さて、今年も余すところあと1か月となりました。日本経済は、昨年10~12月以降3四半期連続のマイナス成長を続け、民間エコノミストからは、戦後最大規模の景気後退との見方が出ています。私がこれまで43年間に亘って勤務した鉄鋼業の分野からみても、98年度粗鋼生産高見通しは、何度も下方修正を余儀なくされ、9,200万トン前後と1971年度(8,844万トン)以来の低水準となることが、ほぼ確実です。

 振り返ってみますと、1)昨年4月の消費税率引上げ等の財政措置、2)昨秋の拓銀、山一の破綻、3)昨夏から昨年末にかけてのアジア新興国の混乱、さらに、4)昨年末以降の銀行の貸出姿勢の一段の慎重化と、次々に大波が日本経済に襲いかかってきたと申せましょう。

 今年4月には16兆円超規模の総合経済対策が出されましたが、政策効果が顕在化する前に、今年前半の生産の落ち込みは釣瓶落しのような状況となりました。とくに、当地においては、そうした動きに加え、異常気象の影響から8月末に那須町等で記録的な豪雨に見舞われ、その影響は農作物から観光にも広く及ぶなど、より一層、現況の厳しさを肌で感じておられることと思います。

 日本銀行の短観(9月調査)で、全国製造業の売上高の推移をみると、97年度下期から前年を下回りはじめ、98年度上期は前年比-7%の大幅な落ち込みが見込まれています。その結果、発表された上場企業の9月決算は惨澹たるもので、経常利益が前年比約25%のマイナスとなったほか、税引き後の最終利益は前年比約80%の大幅減益となるなど、赤字企業も数多く出ました。多くの企業が、深刻な景気の落込みと需給ギャップに直面し、さらなるリストラと不良債権処理による生産性と資本効率の向上に徹底的に取組まざるを得なくなっています。その中で、自らの本業の損益分岐点を確認し、不採算部門をもう一段削り込むなどの検討に着手している先は多いと思います。また、来年度決算から、会計原則の変更に伴い連結決算が主体になる大企業では、不良子会社の整理が喫緊の課題となっています。このため、不採算部門の撤退を検討しつつ、98年度通期決算をどの程度に収められることができるかについても、深刻な検討に追い込まれています。企業再編がこれまでにない大掛かりな組み合せで纏まる動きを見せているのも、そうした背景があるからだと思います。

 また、地価、株価低迷の中で、銀行だけでなく一般事業法人も、これまでの土地、株式の含み益が大きく目減りしています。まさに、企業家にとって「98年度は、含み益依存経営からの決別の年」といえましょう。

(4)足許の実体経済について

 そうした推移を辿った後、足許の実体経済は、財政・金融政策が打たれつつある中で、最近は、総じて見れば悪化テンポが幾分緩和し、厳しい低水準のままではあるが底ばいの状況に入りつつあるようにも窺われます。

 すなわち、需要項目をみると、公共投資は、国、地方とも当初予算分の発注が急増しており、下期から効果が出ると考えていた1次補正予算分も、2か月ほど出だしは遅れたものの、見込みどおり出てきています(公共工事請負金額、前年比、8月3.5%、9月23.8%、10月22.6%)。

 個人消費は、ボーナス低調(日経連調べ、98年冬季賞与中間集計、前年比-1.5%)の中で、生活防衛色が強まりつつあるといった指摘もみられ、回復の見通しはなかなか見出せない状況にあります。しかし、耐久消費財の一部には堅調な動きも引続きみられ、例えば、家電販売額は白物、パソコン等を中心に依然前年比プラスを維持しています(日本電気専門大型店協会、前年比、8月6.3%、9月10.6%、10月13.6%)。また自動車の国内販売は、新車発表の有無により月々振れており予断は許しませんが、自動車メーカーは、前年比を下回る水準ながらも、下期にかけて生産を徐々に引上げていく見通しにあり、資材、部品メーカーへの発注も、その線に沿って行われています。車齢の高まりから潜在的な更新需要はマグマのように蓄積されている状況にあると思われます。

 住宅投資は、7月以降年率110万戸台の着工ペースに落込み、10月も116万戸と22か月連続して前年水準を下回りました。住宅価格が下落し、住宅金融公庫の借入金利水準が年2.0%まで低下したことで、住宅取得環境は大幅に改善しています。需要回復にはなかなか結びついてはいませんが、プレハブメーカーの一部では、住宅展示場への来客等の動きから見てこれ以上の下げはなく、この辺で下げ止まると見込んでおり、私も同様の見方をしています。

 輸出については、貿易摩擦への懸念から、鉄鋼、自動車等では伸び悩む惧れがありますが、総じてみれば、米国の個人消費が引続き堅調で今年のクリスマス需要も期待できることなどから、年度内は横這い程度で推移するとみられます。

 問題は設備投資の動きにあるといえましょう。このところ大企業でも一段の計画の延期ないし中止を決める先が出てきており、今後発表される10月、11月の投資関連統計はかなり悪化しているのではないかと思います。もうしばらく設備投資関連の需要が減少を続ける可能性は高いと見ざるを得ません。

 ただ、こうした設備投資を中心とした民需の落ち込みを、公共投資がかなりカバーしてきているということはできるのではないかと思います。さらに11月になって、日本経済を取り巻く環境が小康状態となり、対策も次々に打たれてきている点も、注目すべきでありましょう。具体的には、1)ニューヨーク株価の4か月振りの最高値更新で、欧州、アジア株も上昇に転じ、日本株も大底を脱し15,000円前後を回復しています。また、為替相場もこのところ120円/ドル近辺で安定しています。2)財政政策面では、11月16日に政府の緊急経済対策が表明され、今般の臨時国会で第3次補正予算が審議される運びとなりました。また、金融2法が成立し、運用ルールも決まりつつあり、大手行の多くが公的資金による資本増強方針を表明しました。3)金融政策の面でも、日本銀行が11月13日の金融政策決定会合で、企業金融に関する3つの措置の実施(後述)を決定したことなどが、それです。 こうしたことを踏まえると、日本経済は、底ばいの領域にようやく入りつつあると言うことができるように思います。もっとも、未だ景気回復の芽が見出せない状況にあることには、変わりはありません。

(5)金融市場の流動性不足と貸し渋り問題について

 次に、この間の金融市場の動きとして、まず、市場の流動性不足、貸し渋りの問題について触れてみたいと思います。昨秋の拓銀、山一破綻から今秋の長銀問題の終息まで、金融システム問題が混乱を極めたことは、皆様の記憶にも新しいことと思います。その間、金融機関が相互に資金を融通する短期金融市場に対し、日本銀行は潤沢に資金を供給しました。しかし、不良債権に対して個別行の自己資本充実度が必ずしも万全なものではないといった認識の広まり等により、資金の必要な銀行に通常レートで十分な資金が回りにくくなるという現象が、とくに3月末、9月末の期末越えの資金を巡り起こりました。そうした中で、金融機関の金融仲介機能が低下し、その先の不健全でない企業へも十分な資金供給が果たせない状況が発生しました。

 そして夏場以降は、銀行の貸し渋りや企業間の信用収縮の問題そのものが、民間経済活動の大きな圧迫になってきました。事実、9月短観でみた「金融機関の貸出態度判断D.I.」は、過去の金融引き締め期のピークにほぼ匹敵する水準となりました(「緩い」-「厳しい」、主要企業:6月-32、9月-33、12月見込み-38、中小企業:6月-19、9月-20、12月見込み-30)。

 日本銀行は、景気がそうした状況の中でさらに悪化することを回避し、デフレ懸念を払拭するため、9月9日に、無担保O/Nレートを公定歩合をやや下回る水準から0.25%前後まで引下げるとともに、金融市場へ資金をさらに潤沢に供給することに努めることを決定しました。また、金融市場の安定を維持するうえで必要と判断される場合には、この誘導目標の金利水準に拘らず、市場に対して一時的に大量の資金供給ができることとしました。

 その後、9月末は比較的無難に乗り切ることができました。しかし、10月に入ると、1)短期金融市場では年末越えのやや長めの資金は出合いが少なくなり、日銀が意識して多めに資金を供給しても年末越えのターム物レートが少し高目に跳ねる傾向が再び現れてきました。また、2)中堅企業や格付けがBBB格以下に下がった大企業にとっては、銀行の融資姿勢が一段と慎重化するなかで、資本市場調達も容易でない状況が続きました。さらに、3)邦銀の海外での年末越え外貨資金調達も、秋口から11月央にかけて世界的な「安全資産への資金シフト」の動きがみられる中で、苦しい状態となり、ジャパン・プレミアム(邦銀がドル資金を調達する際に、欧米銀行のドル調達金利に比べ上乗せされる金利幅)は上昇し、海外現地企業が邦銀海外店からうまく借入れできないケースもみられました。金融システム問題により、邦銀の過少資本が問題視され、海外からの信認が低下するといった状況が続いた訳です。

 日本銀行は、企業金融が年内のピークを迎える12月前に、そうした状況に風穴を開けるべく、11月13日に、CPオペ拡大、臨時貸出制度、社債等担保オペの3つの企業金融を円滑化するための措置を採ることを決めました。CPオペの積極的活用が、年末、年度末にかけて、企業の海外CPから国内CPへのシフト、社債発行からCPへの資金調達切替えといった動きと噛み合えばよいと思います。企業金融支援の臨時貸出制度は、9月末から年末にかけて増加した貸出の50%を上限とする資金を日本銀行が0.5%で金融機関に融通するというものです。社債等を担保とするオペレーションは、目下、詳細を検討中ですが、根担保形式をとった新しいオペレーションとなる予定です。日本銀行にとって、バランスシートの健全性を維持しつつ、企業の年末、年度末金融の円滑化にできるだけの手を打ったと思っています。

 このほか、10月から受付の開始された政府の信用保証制度の保証枠拡大は、この2か月間で、中小企業の資金繰り対策に、大きな成果を挙げています(10月1日~11月30日、全国、保証申込み:件数40.0万件、金額9.8兆円、保証承諾:件数31.5万件、金額7.2兆円)。

 そうした対応に明け暮れるうちに、金融機関の年末の短期資金調達は進み、当面の懸念材料であった銀行の年末越えのドル資金調達も、11月下旬には大方の手当を終えたと申せましょう。これにより年末越えについては峠を越すところまで先が見えてきました。企業の関心も次第に年末から年度末に向かいつつあるように思います。

(6)金融システム問題について

 金融システム問題については、10月23日に金融再生関連法と金融機能早期健全化法が施行されました。金融システム問題の解決のために60兆円の公的資金が準備されたことは大きな成果でありました。この措置はG7でも金融システム強化のプロセスにおける重要な前進として受け止められています。その金額はGDPの9分の1に匹敵するもので世界的にみて、例えば過去の米国や北欧で最も大規模に財政資金が投入された対応策も上回るなど、前例のない大規模な対応であると申せましょう。11月下旬になって、中間決算発表と併せて、不良債権処理の見通しを立てつつ、大手銀行が相次いで公的資金の受入れや、第三者割当増資による資本増強を発表したこと等により金融市場を覆っていた不安心理がようやく後退しつつあるように窺われます。

 このように、金融面でも、秋口から様々な手が打たれてきているという状況に現在はあるといえます。今なすべき事は、その効果がきちんと浸透するように肌目細かく配慮していくことであります。

 そして、これまでにないスケールの金融機関同士の提携等が登場してきていますが、銀行が自主的な改善努力をより強く打出すことが、内外での金融機関への信頼を回復するうえで、極めて重要な局面にあると思います。そのためには、1)不良資産の状況や引当、償却等その処理の道筋を、市場の理解が得られるよう十分説明すると共に、公的資本増強の申請を含め十分な規模の資本増強策を講ずること、またその一方で、2)思い切ったリストラを実行して収益性と資本効率を高めること、そして3)将来の経営の方向性を明確に打出すことが、重要です。是非、できることを惜しまず全力でスピードを重視して取組んで欲しいと思います。

(7)企業に求められるさらなるリストラ

 今、私共に必要なことは、皆が力を合わせて日本経済回復への再始動を確実なものとすることです。多くの企業は、今なお大幅な需給ギャップに直面し、価格の低迷と収益悪化に喘いでいます。この需給ギャップの問題は国全体でみても、大きな問題です。国内卸売物価の下落傾向が続いていること(季節調整済み、前月比、8月-0.1%、9月0.0%、10月-0.6%)や、商品市況の低迷がそのことを如実に物語っています。しかし、このギャップの解消を政府・日銀の政策にだけ依存することは、私は適当でないと考えています。日本の企業は、1)技術開発、新商品開発により新たな需要を呼び起こすことを考え、2)収益性のない生産部門を整理し、生産性と資本効率性を構築するリストラに、再度、真剣に取組む必要があります。そして収益基盤をより強固にし、さらに強い国際競争力を身に付ける必要があります。企業が自己責任でそれができるかどうかを、世界のマーケットがみているとも申せましょう。財政・金融政策と民間企業努力の「合わせ技」で、この難局を早期に乗り越えることが大事です。

 確かに、これまでの海外投資の拡大やアジア経済との競合により、国内の減産効果は低下しており、日本の企業は、これまでよりも需給ギャップから抜け出しにくい状況にあると思います。国内需給だけでなく、アジアの需給も合わせてみる必要が出てきています。しかも、各企業が、生き残りをかけ「スピード」を重視してこの難局に取組むことが、何よりも大事だと思います。そうした動きが、21世紀に向けての経済構造改革の流れをつくることにもなると思います。

 また、私個人の見解としては、政策面で、もう一歩、需要喚起の「合わせ技」を使っていくことも必要だと思います。落ち込みの激しい設備投資の誘発や、波及効果の大きい住宅、自動車の取得絡みの政策減税を指向することも、1つの方策ではないでしょうか。企業の更新投資の先送りは過去にないところまできている可能性があり、そうした潜在的な投資需要は累積しつつあると思います。低調な設備投資は資本のビンテージ(平均年齢)を急速に高め、日本の製造業の国際競争力を阻害することにもなりかねません。

(8)終わりに

 このように、「景気の回復」と「金融機関の不良債権処理」が、日本経済の喫緊の課題です。

 景気の後退と、金融システム問題が深刻になる過程で、これまで述べてきたように財政、金融政策でも次々と手が打たれてきたのは事実ですが、この2つの問題は共に根が深く、相互に絡み合っている面もあり、問題からの短期での脱却が難しく、企業経営者、消費者のマインドに多くの心理的不安を招く結果となりました。この間に雇用問題がずるずると悪化する事態となっていますが、この動きが最も端的にこうした状況の深刻さを現していると言えましょう。

 私は、今回の景気回復の鍵は、やはり個人消費・住宅投資が握っているような気がしています。恒久的減税をタイミング良く実施し、社会保障に対する先行きの個人の不安を取り除き、マインドを回復することが大事だと思います。そして、個人消費・住宅投資が回復に向かうまでの時間を、公共投資で稼ぐ必要があります。その後でようやく設備投資の回復に結びついていく、そんなイメージで先行きの日本の景気回復を考えています。そのためには、1)政府・日銀が、これまでに決めた対策について効果をきちんと発揮するよう努めることと、2)今後の恒久的減税、政策減税の決定過程で、国民が21世紀に展望がもてるようなビジョンを政府が提示することが大事です。そして、3)銀行、企業が共に、自ら構造改革に取組み、さらなる国際競争力を身に付けることだと思います。

以上


(参考)

第3回栃木県金融経済懇談会出席者

(五十音順)

板橋 敏雄
足利商工会議所会頭
市川 秀夫
株式会社栃木銀行頭取
魚住 昭義
仙波糖化工業株式会社社長
亀田 好二
東邦建株式会社社長
川崎 和郎
栃木県商工会連合会会長
栗原 義彦
栃木県産業協議会会長
小島 由三
株式会社コジマ副社長(代理出席)
瀧澤 貞夫
滝沢ハム株式会社社長
束原 民範
栃木県信用金庫協会会長
長井 隆夫
株式会社宮副社長(代理出席)
野中  孝
栃木県農業協同組合中央会副会長(代理出席)
橋本 吉夫
栃木県中小企業団体中央会会長
早川 仁朗
株式会社下野新聞社社長
八木澤 一郎
栃木県観光協会会長
簗 郁夫
栃木県商工会議所連合会会長
柳田 美夫
株式会社足利銀行頭取
和田 恭三
日本関税協会栃木地区理事

(以上17名)