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千葉県金融経済懇談会における植田審議委員スピーチ要旨

「金融経済情勢と金融政策の枠組みを巡る議論」

2000年 2月25日
日本銀行

目次

  1. 1.インフレーション・ターゲティングの周辺について
  2. 2.足許の経済情勢

1.インフレーション・ターゲティングの周辺について

要約

 最近インフレーション・ターゲティングに関する議論が活発である。私自身既に、この点についてはくり返し意見を述べており、目新しい論点は無いが、インフレーション・ターゲティングに関する考え方の整理を今日の話の出発点としたい。

 結論を先に言えば、インフレーション・ターゲティングは海外でもかなりの数の中央銀行が採用している金融政策に関する有力な枠組みの一つである。しかし、これまではインフレを抑えたり、未然に防止するための仕組みとして活用されてきた。その他に、政策の枠組みを明らかにすることによって、市場との対話がうまくいくというメリットも指摘されている。このような意図でのインフレーション・ターゲティングの採用は、日銀としても当然、中長期的な選択肢の一つとして検討を続けることになろう。

 一般論とは別に、現在の日本でのインフレーション・ターゲティング採用の議論は、インフレ率を上げて、景気を良くするための仕組みとして考慮すべきではないかという考え方に根差しているものが多い。その一部は、最低4−5%のような高率のインフレを目指すべきだという主張だし、また、1−2%前後のマイルドなインフレ率を目指すのが良いと言う説もある。これらに対する私のとりあえずの判断は、次のとおりである。高い率のインフレを目指すインフレーション・ターゲティングは、いわゆる調整インフレ論である。このためには、なりふり構わず副作用も大きい手段を使っていくということになろう。それでも目標が達成可能かどうか疑わしいが、いずれにせよ国民の受け入れるところとならないだろう。また、マイルドなインフレ目標についても、(ゼロ金利になってしまった今)中央銀行が通常用いるような手段をもってしては、それを高い確率で達成できるような見通しは立たない。出来そうにないことを約束するならば中央銀行としてのcredibilityの低下につながる恐れが多い。また、やはり、手段を選ばず目標を達成しようとするならば、調整インフレの試みと同じような批判に直面することになろう。

 他方、現在の政策スタンスには既に、インフレーション・ターゲティングに含まれる良い面の一部、すなわち、将来の政策についてある程度の方向感を打ち出すことによって、使用されている政策手段の有効性を高めようという配慮が含まれている面も強調しておきたい。

インフレーション・ターゲティングの考え方

 さて、もう少し詳しくインフレーション・ターゲティングについて検討してみよう。インフレーション・ターゲティングはあくまで金融政策の枠組みの一つであって、別途インフレーション・ターゲティングに含まれている目標インフレ率を達成する手段が必要である。逆にいえば、金融緩和・引締の手段をどこまで用いるかという上限・下限を規定するのがインフレーション・ターゲティングだとも言える。ただし、インフレーション・ターゲティングの採用自身が将来のインフレ率や金融政策の予想に影響を与えることによって、実体経済に影響を与える、すなわち政策手段としての側面も持っていることに注意が必要である。

 現実にはほとんどの国がインフレに悩んだ結果、インフレ抑制スタンスに対する国民等の信認を獲得し、低インフレを実現するためにインフレーション・ターゲティングを導入した。一つの経済理論的解釈としては、次のようなものがある。すなわち、中央銀行は外部からの圧力等のため、どうしても必要以上に景気刺激策を採用してしまう傾向がある。すると、景気刺激ではなく、結局恒常的に高いインフレ率というマイナスの結果だけをもたらす。これを避けるために、本来ふさわしいインフレ率よりもやや低めのインフレ率を目標として提示し、プラスのバイアスがかかってもそこそこのインフレ率に落ち着くだろうというものである。1

  1. 1インフレーション・ターゲティングの理論的解釈は多岐にわたり、ここで述べたものが唯一絶対ではない。

デフレ懸念克服のためのインフレーション・ターゲティング

 ところが最近では、同じ枠組みを、現在の日本のようにデフレ懸念が残っている際に、それを克服するための仕組みとして導入すべきという議論が盛んである。現実には、デフレ期に、これを防ぐ工夫として導入した例は残念ながら無いようである。2

 デフレが懸念されるときには、金融緩和策を発動すれば良いわけだが、わざわざインフレーション・ターゲティングという枠組みを使おうというのはなぜだろうか。先に述べたように、二つの理由がある。一つは、目標インフレ率を提示することによって、金融緩和はそこまでだという縛りをかけること。いま一つは、現実のインフレ率よりも高いインフレ率の提示が、予想インフレ率を高め、これが景気拡張効果を持つかもしれないという点である。

  1. 21930年代のスウエーデンの例がよく引き合いに出されるが、当初はインフレを防ぐことが主目的であったというのが事実である。

量的緩和

 それでは、現在の日本でこうした効果を期待できるインフレーション・ターゲティングが導入可能だろうか?これは結局、有力な金融緩和措置がどの程度残されているか次第である。次にこの点を検討してみよう。

 現在の日本に有力な緩和政策が残されているかといえば、答は微妙である。理由は短期金利がほぼゼロになってしまったからである。金利がゼロなら量を増やせば良いという主張もあるので、いわゆる「量的緩和論」について検討しておこう。3

 「量的緩和」には少なくとも三つのタイプが存在する。第一のタイプは、金利を下げる手段として量を増やすという考え方である。金利を直接引き下げても同じように思えるが、政策を決めた後、予想以上の景気の悪化があれば、資金の供給量に目標を設定していれば、資金需要の低迷から金利が自動的に下がるという利点がある。4 第二のタイプは、貨幣供給量が増えること自体が、金利とは独立に経済を刺激するという見方だ。例えば、貨幣が無いと物が買えない。従って、経済に出回っている貨幣の量が多いと、支出が刺激されるかもしれない。第三のタイプは、通常中央銀行があまりオペの対象にしないような資産を購入し、対象資産の価格に影響を与えることによって緩和効果をもたらそうというもの。対象資産としては、長期国債・株式・不動産・外国為替等が考えられる。

 ゼロ金利の現在、各タイプの有効性はどうだろうか。金利はゼロでこれ以下にはならないのだから「量を出して金利を下げる」第一のタイプは、既に意味が無いことは言うまでもない。第二のタイプについても、これだけ資金が市場にジャブジャブにあふれているときには、ほとんど期待出来ないという声が大半である。より難しくいえば、人々は貨幣から得られる流動性のもつメリットと、短期金融資産から得られる短期金利というリターンを比較して、それぞれの保有量を決めているはずである。金利がゼロということは、追加的に貨幣を保有することから得られる流動性の価値もゼロになっているということである。これを反映して、日銀の資金供給オペにも最近札割れが目立っている。

 すると、残るのは第三のタイプである。しかし、ここに挙がっているものの多くは、日銀法で買い切りオペ対象とすることを禁じられている。例外は長期国債であるし、現在でも定量毎月購入を続けている。さて、これをさらに買い増したとしてどの程度の緩和効果があるだろうか?長期金利の決定に関する標準理論は、それが現在から将来への予想短期金利の平均値だというものである。すると、短期金利操作以上に(特に後で述べるように短期金利について出来る限りのコミットメントをしてしまった後では)、日本銀行のオペが長期金利に強い影響を与えるかどうかは疑問である。もし、与えるとすると、上の標準理論以外の金利決定要因(通常、リスクプレミアムと呼ぶ)が存在し、これがオペで影響を受けるケースである。ただ、これはどちらにも動きうる。国債を買うのだから金利が下がるという場合と、財政赤字の国債買いオペによるファイナンスを連想させ、場合によっては、国債の一層の格下げなどといった事態を招いて、金利が上昇することも考えうる。従って、残った手段がゼロではないが、効果のほどが不確実だし、悪影響をもたらしてしまうリスクも無視できない。

 さらには、日銀法を改正して、例えば銀行の不良債権や土地を購入できるようにすれば、景気や物価にプラスの影響を与えることはより容易になろう。しかし、日本銀行のバランスシートは、大規模な信用・価格リスクを抱えることになる。また、銀行貸出や土地売買市場の価格機能を著しく阻害することになる。そもそもこうした政策は、金融政策というよりは、財政政策としての色彩が濃い。5

  1. 3ここでは量的緩和を手段として考えているが、フリードマンの貨幣供給増加率k%ルールのように、政策の枠組みとして考えたほうが良いケースもある。
  2. 4第一のタイプでは、対象オペ資産として伝統的な短期金融資産を念頭に置いている。
  3. 5同様のポイントが国債買いオペの大幅な増額にもあてはまる。

Krugmanの緩和策

 念のため、インフレーション・ターゲティングに関連したもう一つの緩和手段を見ておこう。これはKrugmanによるものである。彼の提案は、第一のタイプの量的緩和とインフレーション・ターゲティングを組み合わせるというものである。もちろん、既に述べたように、この量的緩和はそれ自体では有効でない。金利がゼロになってしまっている。あるいは経済が「流動性の罠」の状態にあるからである。しかし、未来永劫に「流動性の罠」に陥ったままであるわけではないと彼は考える。「金融政策以外の理由、例えば、財政政策、技術進歩による設備投資の好転等によって、将来『流動性の罠』から抜け出すかもしれない。すると、量的緩和が有効である。その時点での貨幣供給増加は景気やインフレ率の上昇につながるだろう。こうした外的要因の好転の可能性が現時点で否定できないとすれば、将来のインフレ率がある値を越えるまで、将来マネーを増やすことを、現在約束すれば、たとえそれが第一のタイプのものであっても、現在から将来へかけての期待インフレ率の上昇につながるだろう。」

 これは首尾一貫した提案である。しかし、その弱みは、この提案では、金融政策のみでは「流動性の罠」から抜けることは出来ないこと。また、Krugmanが政策の効果を強いものにするために、将来の目標インフレ率を4%ないしそれ以上というような高めのものに設定していることである。実際、この政策の有効性は人々が中央銀行の極端な政策約束を信じるところから生まれる。信じてもらうためには、目標インフレ率は高い程よいというのがKrugmanの立場である。しかし、景気も好くなり、現実のインフレ率が4%に近づいてくれば、ほとんどの中央銀行が引き締めに走るだろう。従って、当初からこの政策は信用されない可能性が高い。

インフレーション・ターゲティングの評価

 以上見てきたように、現在様々な形で議論されている追加緩和策は、その効果が疑わしかったり、副作用についても十分な配慮が必要なものである。いずれにせよ、インフレーション・ターゲティングの中に組み込み、約束された目標インフレ率を達成する手段として使用するのは躊躇される。

 全く別の点を付け加えれば、ここ数年先行きのインフレ率見通しが以前よりも困難になっている点も、明示的なインフレーション・ターゲティングの採用を難しくしている一つの理由である。6

 また、結果としてのインフレ率を見る限り、日本は過去20年近くにわたって、CPIではほぼ0−3%の範囲に収まっており、おおむねマイルドなインフレ率目標を主張する人たちの要求を満たしている。だからといって、日本の金融政策に何の問題も無かったと主張する人たちは少数だろう。つまり、決してインフレーション・ターゲティングは万能薬ではないのである。

 しかし、一方で、経済がより正常な状態に戻って、金融緩和・引き締め、双方向の手段が十分に確保された場合には、物価を安定的に保つ工夫としてのインフレーション・ターゲティングは、一つのオプションになりえるといえよう。

  1. 6例えば、早川・前田「97年秋以降の金融経済動向についての考察」日本銀行調査統計局 参照。

現行政策スタンスとインフレーション・ターゲティングの類似点

 最後に、現在の政策スタンスとインフレーション・ターゲティングとの類似点について触れておこう。現行スタンスは、「ゼロ金利をデフレ懸念払拭が展望できるような情勢になるまで維持する」というものである。ここには現在だけでなく、将来の金融政策に関するコミットメントが明らかに含まれている。仮にこれを言い換えて「しばらく先のインフレ率の予想がx%をある確度をもって上回ってくるまでゼロ金利を維持する」と言い直したとしよう。両者に大きな違いはないし、xはゼロ近辺と見るべきだろう。7 すると、これはインフレーション・ターゲティングにきわめて近い。違いはxが明示的でないこと、xの達成(デフレ懸念の払拭)を約束はしていないことである。約束しない理由は、先に述べたように、緩和方向の手段が標準的なものの中では、残り少なくなっていること、それ以外は強い副作用を覚悟しなくてはならないからである。

 このように現行スタンスはインフレーション・ターゲティングそのものではないが、それに似ている。従って、インフレーション・ターゲティングが持っているメリットも一部共有している。その最大のものは、政策枠組みが将来の政策動向について情報を発信しており、そのことが好ましい経済効果をもたらすという点だ。具体的に見てみよう。景気が今よりも悪化してきたとする。すると、「デフレ懸念の払拭の展望」は先に延びるわけだから、ゼロ金利はより長く続くと予想される。この結果、長期金利には低下圧力がかかり、景気を下支えする効果を持つ。もちろん、この効果は単にO/Nレートをゼロにするという政策の下でも発生しようが、将来の政策についての不確実性が大きいため、長期金利を低下させる圧力は小さい。8

 逆に、景気が良くなってきたとしよう。次の決定会合までのゼロ金利のみを約束している政策スタンスでは、いつ金利が上がるかわからず、ちょっとした景気指標で長期金利が乱高下しよう。また、実際にゼロ金利が解除されるタイミングでは、大きな混乱が発生するリスクが高い。これに対して、現行スタンスでは「デフレ懸念の払拭の展望」が必要であると条件をつけている。「払拭」というからには、一時的な指標の好転のみでは政策変更はないということになろう。しかし、「展望」という言葉に込められている、政策が先見的であるべきという気持ちからすると、「デフレ懸念の払拭」が見通せる情勢になれば良い訳で、事後的なデータでそれを100%確認する必要はないということになる。こうした点を理解した市場参加者は、日本銀行とほぼ同じような分析を重ねつつ、ゼロ金利政策の解除時期を探ることになる。分析の結果は、徐々に長期金利に反映されよう。実際にゼロ金利が解除されるタイミングが、市場予想と大差無ければ、解除に伴う市場の混乱は最小限で済もう。

 このように、現行政策スタンスはインフレーション・ターゲティングのもつ利点を可能な限り取り込み、景気の悪化・好転の双方に対して、自動的な市場の調節作用を促すという性格を有している。もちろん、現行スタンスのaccountabilityを一段と高めるような工夫があるかどうか引き続き検討は続けたい。

  1. 7金融政策の効果が発現するまでにはラグがあるために、「現在のインフレ率がx%をこえるまで」という約束は出来ないのである。この点、インフレーション・ターゲティングの採用によって、金融政策変更のタイミングが明快になり、政策のaccountabilityが増すという見方は短絡的である。確かにインフレーション・ターゲティングによって将来の政策のあり方は、それが無い場合よりも読みやすくなるが、変更のタイミングは予想インフレ率に依存する以上、依然として大きな不確実性が伴うものである。例えば、目標インフレ率が2.5%の国では、現実のインフレ率が2.0%で引き締めを始めるかもしれないし、強いインフレ圧力を感じる場合は1.8%から始めるかもしれない。
  2. 8別の表現をすれば、政策の不確実性によるリスクプレミアムが長期金利に含まれてしまう。

2.足許の経済情勢

 多くの民間金融機関・シンクタンクの見通しでは、1999年第4四半期の実質GDP成長率は、第3四半期に続いてマイナスが予想されており、海外からは再び不況入りではないかとの声も聞こえる。この点について、足許までのデータを基に分析してみよう。

今回の景気回復の特徴

 今回の景気回復局面の特徴は、金融緩和、あるいは財政や輸出のような外生需要の増大に対する国内民需(特に消費、設備投資)の反応が遅かったり、弱かったりということである。その理由は、金融機関、非金融事業法人とも厳しいリストラの時期を通過しつつあるという点にある。金融緩和は短期金融・債券・株式市場へは強い影響を持ったものの、金融機関貸出への影響はこれまでのところ弱いし、外生需要が増大しても設備投資・消費の反応は遅い。リストラの一つのポイントが企業部門による利潤引き上げ努力である。この下では、民需の回復過程は、賃金や利払い費の抑制による利潤の回復→設備投資の回復→マクロ経済の回復→消費の回復、というステップを踏むと見るのが常識的だろう。

昨年後半の状況

 以上のような見方から昨年後半の日本経済の状況を振り返ると、一時的な足踏み状態にあったという評価が下せる。すなわち、去年前半に経済を支えていた公共投資が第3四半期以降、マイナスに転じた。また、昨年半ばから好調だった純輸出が第4四半期には、日本国内での対東アジア比旺盛であった2000年対応の情報機器需要のため、輸入が急増し、マイナス方向に振れた。

 一方、国内民需は、先に述べた今回の回復パターンに照らしてみると、ようやく1999年度の増益基調が見えはじめ、設備投資は下げ止まりつつあるという段階で、外生需要の落ち込みを相殺する力はなかったといえる。もちろん、消費はボーナスを中心とする雇用者所得の下落に合わせて低迷した。9 これらが99年後半のGDP低迷の原因と判断される。

  1. 9こうした見方に立つと、99年前半、特に第1四半期の消費・設備投資の好調さの説明が難しい。とりあえずは、98年10月からの信用保証協会の特別枠設定、銀行部門への公的資金注入によって、流動性制約、極端な不安心理等から抑圧されていた需要のリバウンドが見られたというところであろう。

今後

 上記の分析からは、99年後半の景気足踏みが一時的なものである可能性が高いことがわかる。すなわち、足踏みの要因である外生需要については、公共投資は99年度第2次補正予算に伴う支出が2000年前半にも予定されている。実際、公共工事請負金額は本年1月には99年度予算にあらかじめ計上されていた予備費関連と見られる発注から12月比増加している。実質輸出入の1月の統計を季調済み対前月比で見ると、輸出は+3%、輸入は−5.6%と、純輸出は増大基調に戻っている。さらに、中身では情報関連・資本財の輸出増と輸入減が大きく、昨年末の動きがY2K関連の一時的なものだったことを裏付けている。

 また、設備投資については2月10日に発表された99年12月の機械受注に代表されるように、このところ下げ止まりから2000年中の上昇への転換を示唆するような先行指標が相次いで発表されている。従って、国内民需についても、緩やかに上昇の経路に乗る可能性が高い。すなわち、昨年後半の落ち込みを再度の不況期入りと判断すべき材料は乏しい。

不確実性

 以上の判断は2000年前半から半ばにかけて、経済はそこそこ明るい道筋をたどりそうだというものである。しかしながら、その後については、いまのところ不確実性が高い。財政からの刺激が低下の局面に入ることが予想される中で、設備投資がどの程度力強い回復を見せるか。雇用者所得の伸びがそれほど期待できない中で、上昇した株価等がどの程度消費を支えるか、今後のデータ次第という側面が強い。

 ゼロ金利政策と2000年度前半にかけての財政支出の追加が、今度こそ民需の本格的な点火に成功するかどうか、明るい兆しはあるものの、いましばらく事態の推移を見守るしかないというところである。

以上