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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成13年3月30日、衆議院財務金融委員会における速水日本銀行総裁報告

2001年 3月30日
日本銀行

[目次]

はじめに

 日本銀行は昨年12月、平成12年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、国会に提出いたしました。この機に、日本銀行の金融政策運営について、総括的にご説明する場を頂いたことに、あつく御礼申し上げます。

 昨年の報告書提出後、日本経済の情勢は大きく変化し、本年2月以降、日本銀行は、金融政策運営面で、機動的・弾力的にいくつかの措置を講じてきました。

 そこで本席では、まず私から、最近の日本経済の動向についての認識や、金融政策運営の考え方を、申し述べさせていただきます。

日本経済の現状

 昨年中の日本経済を振り返りますと、景気は企業部門を中心に持ち直しの動きが次第に明確化し、生産や収益、設備投資も増加を続けるなど、緩やかな回復過程を辿りました。しかしながら、その後の経済の足取りは、順調というわけにはまいりませんでした。

 その背景としては、まず、米国経済が、昨年半ば頃までの5%前後といった高い成長から、昨年秋以降は、大方の予想を上回るテンポで急激に減速したことが挙げられます。さらに、米国経済との結びつきが強い、韓国や台湾など一部の東アジア諸国でも、景気のスローダウンが明確になっています。

 こうした海外経済の急激な減速を受け、日本経済も、昨年末以降、景気回復のテンポが鈍化し、このところ足踏み状態になっていると判断されます。先行きについても、当面は停滞色の強い展開が続く可能性が高いと考えられます。

 この間、物価も弱含みを続けており、只今申し述べたような実体経済の動きを踏まえますと、今後、需要の弱さを反映した物価低下圧力が強まる懸念があると考えられます。

金融資本市場の動向

 また、金融資本市場の動きをみますと、IT関連を中心とする世界的な株価調整の動きに加え、日本経済の先行きに対する不透明感の強まりもあって、わが国の株価も、昨年秋以降、下落傾向が目立ってまいりました。為替市場や債券市場でも、円安や長期金利の低下といった動きが進みました。

 こうした市場動向の背景には、只今申し述べた、海外経済の減速やこれを受けた国内経済情勢の変化に加え、不良債権問題の解決をはじめとする、日本経済の構造改革の遅れに対する内外の懸念も影響しているように思います。

最近の金融政策運営

 このような経済情勢の変化や金融市場の動向を踏まえ、日本銀行は本年2月以降、金融政策面で、いくつかの措置を講じてまいりました。

 まず、2月9日の金融政策決定会合では、公定歩合により受動的に貸出を行う、いわゆる「ロンバート型貸出制度」の新設など、いくつかの流動性供給方法の改善策を講じました。そのうえで、新たにこの貸出の適用金利となる公定歩合について、0.15%ポイントの引き下げを実施しました。

 次いで、2月28日の決定会合では、生産の減少といった経済情勢の変化を踏まえ、コールレ−トの誘導水準および公定歩合を、それぞれ0.1%ポイント引き下げるという、金融緩和措置を決定いたしました。

 さらに、先週3月19日の決定会合において、日本銀行は、通常では行われないような、思い切った金融緩和に踏み切ることを決定いたしました。この措置は、日本銀行として、物価が継続的に下落することを防止し、持続的な経済成長のための基盤を整備する観点から、断固たる決意をもって実施に踏み切ったものです。

 金融緩和措置の具体的な内容を説明しますと、まず、金融市場調節の主たる操作目標を、これまでの翌日物コールレートという「金利」から、日本銀行当座預金残高という資金の「量」に変更しました。

 同時に、この新しい金融調節方式を、消費者物価の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで続けることを決定いたしました。これは、こうした思い切った政策を継続する条件について明確なコミットメントを行うことを通じて、より長めの金利に働きかけるとともに、日本銀行として、物価の継続的な上昇と同様、継続的な下落も許容しないという、強い決意を示すものであります。

 こうした新しい金融調節方式のもとで、それまで4兆円前後であった日本銀行当座預金残高を、当面、5兆円程度に増額することとしました。この結果、翌日物のコールレートは、通常はゼロ%近辺で推移するものと考えられます。実際、その後のコールレートの動きも、こうした推移を辿っております。

 なお、資金供給のためのオペレーションに未達──いわゆる「札割れ」──が多発するケースなど、資金を円滑に供給する上で必要と判断される場合には、現在月4千億円のペースで行っている長期国債の買い入れを増額することも、併せて決定しました。ただし、言うまでもありませんが、これは、国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではありません。今回、こうした趣旨を明らかにするため、日本銀行が保有する長期国債の残高は銀行券の発行残高を上限とするという、明確な歯止めを設けました。

おわりに

 以上、今回の思い切った金融緩和措置の内容をご説明しましたが、こうした措置がその効果を十分に発揮し、日本経済の持続的な成長軌道への復帰が実現されるためには、不良債権問題の解決をはじめ、金融システム面や経済・産業の面での構造改革の進展が、不可欠の条件であると考えられます。

 実際、過去10年間、日本経済は、景気循環という観点からみて、何度か回復の動きがみられましたが、結局、力強い回復を迎えることなく、景気後退に直面するという事態を繰り返してまいりました。今回、景気が再び足踏み状態となっているのは、先ほど申し述べた通り、短期的には、米国を中心とする海外経済の予想以上の急激な減速が主因とみられます。しかし、より根本的な問題は、さまざまな構造的課題が、依然未解決のまま残っているということにあると考えられます。

 もとより、構造改革は痛みを伴うプロセスでありますが、こうした痛みを乗り越えて改革を進めない限り、日本経済の持続的な成長を確保していくことは、期待し難いように思います。

 日本銀行としては、今後とも適切な金融政策運営に努めていく所存でありますが、同時に、構造改革に向けた各方面における抜本的な取り組みが、速やかに進展することを、強く期待しております。

 ありがとうございました。

以上