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全国信用金庫大会における日本銀行総裁挨拶

2001年 6月22日
日本銀行

[目次]

本日は、全国信用金庫大会が、かくも盛大に開催されましたことを、心からお慶び申し上げます。

信用金庫の皆様におかれましては、地域に密着した活動により、地域経済の発展に貢献してこられました。また、日頃から、私ども日本銀行の政策ならびに業務に関しまして、ご理解、ご協力を賜わり、本席をお借りして厚く御礼申し上げます。

本日は、最近の金融経済情勢および金融システム面での課題などにつきまして、私どもの考え方を申し上げて、ご挨拶に代えさせて頂きます。

最近の金融経済情勢と金融政策運営

まず、最近の経済情勢と日本銀行の金融政策運営について申し上げます。

わが国の景気は、昨年中は緩やかな回復過程を辿りましたが、米国をはじめとする海外経済の急激な減速の影響を受けて、昨年末頃から回復テンポが鈍化しました。最近では、輸出の落ち込みを主因に生産の大幅な減少が続くなど、調整が深まりつつあるという厳しい状況となっています。

このような実体経済動向のもとで、物価面でも、需要・供給両面からの低下圧力を受け、弱含みで推移しております。

こうした情勢の展開を踏まえ、日本銀行は、本年に入り、相次いで金融緩和措置を講じてまいりました。特に3月には、「物価が継続的に下落することを防止し、持続的な経済成長のための基盤を整備する」という断固たる決意をもって、きわめて思い切った措置に踏み切りました。具体的には、日本銀行当座預金を操作目標とする新たな金融調節方式を導入し、この方式を消費者物価の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続することとしました。また、この方式の下で、当座預金残高をそれまでの4兆円程度から5兆円程度に増額することとしました。

現在は、こうした緩和措置の効果の浸透状況を見守っている段階ですが、金融市場には、強力な緩和効果が表れてきています。長期、短期の市場金利や銀行貸出金利は、ゼロ金利政策時代を下回る水準にまで低下しています。また、社債やCPなど市場を通じる企業の資金調達環境も一段と好転しているように窺われます。

ただし、このように金融市場に資金が潤沢に供給され、緩和効果が表れていても、そうした資金は必ずしも金融システムの外側にいる企業等に十分に行き渡っていないのが現状であります。こうした金融緩和の効果が、中小企業をはじめとする企業活動など実体経済にも十分浸透し、日本経済が持続的な成長軌道に復帰するためには、金融システム面や経済・産業面での広範な構造改革の進展が不可欠の条件です。

この点、私も参加しております「経済財政諮問会議」が、昨日、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」というかたちで、まさに聖域なき改革の目標を打ち出したことは、たいへん意義深いことであります。今回の「基本方針」が構造改革に対する国民や企業の理解を深め、民間主導で真の改革の実現につながることを強く期待しております。

また、さきほど申し述べたとおり、日本銀行は、3月に強力な金融緩和措置に踏み切り、構造改革に向けた動きを、率先して積極的にサポートしております。私どもとしては、改革に向けた政府の取り組みや企業・金融機関活動の面で、現在の金融緩和環境をうまく活用するような、前向きの動きが活発化することを願っております。

そのうえで、今後とも、世界経済の動向や構造改革の進展度合いやその影響などを見極めながら、適切な金融政策運営に努めていく方針です。

次に、金融システム面の問題に話題を転じますと、残念なことではありますが、わが国金融システムに対する内外の評価はこのところ再び厳しさを増しています。この背景としては、以下に申し述べるように、わが国金融機関が直面している経営上の問題について、その解決に向けた明確な道筋が見えてこないという懸念があるように思います。

第1の問題は、言うまでもないことですが、不良債権の残高が殆ど減少をみていないという点です。第2の問題は、大手銀行を中心に株価の変動に対して脆弱な財務構造がなお続いているという点です。そして第3の問題は、各金融機関の収益基盤の向上が捗々しい進展をみていないという点です。最近各金融機関から発表された12年度決算をみても、残念ながらこれらの問題は未だ大きく改善されるには至っていません。

こうした問題を克服していくことは、単に金融システム自体の安定化、健全化に止まらず、わが国経済の持続的な成長軌道への復帰を実現していくためにも、重要な課題と考えられます。

本年4月に政府決定された「緊急経済対策」や、昨日の「基本方針」も、こうした問題意識に基づくものであり、「基本方針」においては、不良債権問題の抜本的な解決を、経済再生の第1歩と位置づけています。その中では、不良債権の的確な把握と処理の促進、雇用面でのセーフティネットの拡充、直接金融の強化のための環境整備などの対応方針が盛り込まれています。今後、政府および民間の関係者において、それぞれ具体策が検討されていくことになりますが、本日は、不良債権問題への対応に絞って、私どもの考え方を申し述べてみたいと思います。

私どもとしてはかねてより、金融システムを強固なものとしていくには、不良債権のバランスシートからの切離しを進め、問題の早期克服を図ることが重要である旨を強調してきたところです。政府の「対策」等でも示されたように、先行き経営再建の目途が立たない債務者に対する債権については、速やかにバランスシートから切離すべきことは言うまでもありません。

ただ、こうした不良債権のバランスシートからの切離しだけでは、必ずしも十分な対応とは言えません。不良債権の残高が一向に減少しない背景には、不良債権の新規発生が相次いでいるという事情があります。新規発生を極力未然に防止するという意味でも、また、返済が危ぶまれる事態に至った場合の財務面への影響を極力緩和するという意味でも、早目早目に対応を講じておくことが重要です。

具体的には、まず、刻々と変化する金融経済情勢を踏まえながら、絶えず債務者の経営状態を的確に把握する必要があります。そのうえで、正確な自己査定を行い、それに応じた保全措置を講じることを含め、適正なリスク管理を行うことが肝要です。また、業況に変調を来した債務者に対しては、必要な経営改善のための努力を促していくことも必要です。そうした対応は、間接金融が本来持つ重要な機能とも言えるものです。

不良債権の新規発生の中味を見ますと、最近では構造調整の影響を受け始めている業種からの新規発生が増えてきています。そういう意味では、不良債権の問題は角度を変えて見れば、わが国の構造改革とも密接に関わっているように思います。わが国経済が直面している構造問題には、中小零細企業に関わるものも少なくないように思いますが、こうした問題を早期かつ円滑に克服していくうえで、信用金庫の皆様の果たすべき役割は非常に大きいと言えましょう。

わが国金融システム、延いては、日本経済に対する内外の信認を回復するためには、不良債権問題に対して金融機関が果断に取組んでいくことが不可欠です。本席におられます金融機関経営者の皆様方におかれては、問題の早期克服に向け、引続き最大限の努力を傾けて頂くようお願いしたいと思います。

 ご清聴有難うございました。

以上