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信用金庫法制定50周年記念全国大会における総裁挨拶要旨

2001年11月 1日
日本銀行

 信用金庫法制定50周年を迎えられ、本日、記念の全国大会が盛大に開催されましたことを、心よりお慶び申し上げます。このような盛大な大会が催されるのも、「協同組織理念の下、中小企業をはじめとした国民大衆のための専門金融機関として、社会的使命を果たす」という信用金庫法の精神に則り、日々経営に邁進してこられた、皆様のご努力の賜物と存じます。

 さて、私からは、まず日本経済の現状と金融政策運営について簡単にお話したいと思います。

 わが国の景気・物価情勢をみますと、米国におけるテロ事件発生を契機として、先行きに対する不透明感が一段と高まっています。しかし、テロ事件が発生する前から、生産の大幅な減少の影響が雇用・所得面に拡がるなど、景気の調整は厳しさを増していました。こうしたなかで、物価は緩やかな下落傾向を辿っており、需要の弱さに起因する物価低下圧力がさらに強まる可能性にも留意が必要な状況となっています。

 日本銀行は、このような厳しい経済情勢を踏まえ、内外中央銀行の歴史に類例のない、思い切った金融緩和を継続しています。今後も、物価の継続的な下落を防止し、持続的な経済成長の基盤を整備する観点から、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針です。

 ただし、このような金融緩和措置が効果を十分に発揮し、景気の本格的な回復を実現していくためには、不良債権問題の解決をはじめ、金融システム面や経済・産業面での構造改革の進展が不可欠です。

 私どもとしては、構造改革に伴う様々な痛みを乗り越えて、各方面における改革への取り組みが、たゆまず進められていくことを、強く期待しています。

 そこで二番目に申し上げたいことは、構造改革を進めていく中で、地域経済において、皆様、信用金庫に期待される役割についてであります。

 結論を先取りして申し上げると、現局面で最も重要なことは、自らの経営課題をしっかりと見つめ、その解決を通じて自らの信用仲介機能を強化していくことです。こうした対応が、信用金庫法の理念である「国民大衆のための専門金融機関として社会的使命を果たす」ことに繋がるものと考えます。

 信用金庫業界の当面の最大の経営課題は、やはり不良債権問題です。最近の厳しい地域経済の情勢や資産価格の下落等を背景に、新規の不良債権の発生や、既存の不良債権の劣化が進行しています。皆様にとりましても、取引先企業の不良債権を如何に解消していくかは、最も頭を悩ませておられる難しい問題であろうと存じます。

 不良債権への対応については、まずもって、刻々と変化する金融経済情勢を踏まえつつ、自己査定や引当等を適切に見直していくことが基本であることは言うまでもありません。それと同時に、不良債権の解消の一環として、そうした債権のオフバランス化とともに、債務者である企業の再生が求められています。

 この中で、とりわけ中小企業の再生と、これを通じた地域経済・産業の活性化を図っていくことが極めて重要であります。もちろん、企業の再生を図っていく上で、まずは借り手企業自身の経営再構築に向けた自助努力が大前提となりますが、貸し手金融機関としても、資金供給機能を適切に果たしていかれるとともに、良き経営の指南役として、地域における企業再生をリードして頂きたいと思います。こうした企業再生の可能性を見極め、企業および地域経済・産業の再生に向けての知恵とリーダーシップを発揮できるのは、地域経済にしっかりと根を下ろしておられる信用金庫の皆様であると思います。

 全国の信用金庫の個人預金は80兆円にのぼります。皆様が健全経営に努められる中で、適切に信用仲介機能を発揮されることは、預金者、国民からの信認の向上に繋がるはずです。そして、それはわが国の競争力の源泉である個人資産が、構造改革の中で、十二分に活かされていくことに結びついていくものと思います。

 ここにお集まりの信用金庫の経営者の皆様方におかれては、信用金庫法の理念の下で、自らの経営問題の克服と、地域経済の構造改革の推進に向けて、引続き最大限のご努力をお願いしたいと思います。私どもも、こうした皆様のご努力を最大限サポートして参る所存でございます。

 ご清聴有難うございました。

以上