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第78回信託大会における総裁挨拶要旨

2003年 4月17日
日本銀行

 本日は、第78回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。信託銀行の皆様におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、あつくお礼を申し上げます。

 また、私は、先月20日に日本銀行総裁に就任しました。現在、日本経済は、克服すべき様々な課題を抱えています。金融界、産業界も直面する課題の解決に向けて懸命に取り組まれていることと存じますが、私としても、中央銀行の立場からそうした努力をできるだけサポートすべく、微力ながら全力を投じて参る所存ですので、よろしくお願いいたします。

 わが国の景気は、昨年半ばに下げ止まり、その後はほぼ横這いの動きが続いていますが、イラク情勢の影響を含めた海外経済の行方や株式市場の動向など、先行き不透明な要素が多い状況にあります。今月初めに公表した短観では、企業収益の改善と設備投資の持ち直し傾向が確認されたところですが、こうした動きを何とか前向きの循環に繋げ、自律的な景気回復を実現していくことが大きな課題です。

 このような情勢のもとで、金融政策面では、金融市場の安定確保に万全を期すため、潤沢な資金供給を続けています。日本銀行の資金供給は、これまで、デフレ・スパイラルの防止に大きな役割を果たしてきました。ただ、経済活動の拡大に効果的に結び付いていくためには、金融緩和の波及メカニズムを強化することが不可欠であると認識しています。

 こうした考え方に基づき、先般の金融政策決定会合において、中堅・中小企業関連の資産担保証券を金融調節上の買入れ対象資産とすることについて、検討を進めることを決定しました。資産担保証券市場の発展をサポートすることを通じて企業金融の円滑化を図り、金融緩和効果を強化することが狙いです。

 また、今回の検討を進めるに当たっては、中堅・中小企業関連の資産担保証券市場がなお揺籃期にあることを踏まえ、広く市場参加者の方々のご意見を伺っていきたいと思います。資産担保証券市場に様々な形で携わっておられる信託銀行の皆様からも、ぜひ、お知恵を拝借できればと考えています。

 次に、金融システム面について申し上げます。わが国金融システムに対する市場の見方は、引続き厳しいと言わざるを得ません。

 しかしながら、昨年来、不良債権の経済価値の適切な把握やそれに基づく処理の促進、産業・金融一体となった対応の強化に向けて関係者が力を合わせて取り組んでいます。このことは、金融システムの健全化に向けた大きな前進と考えています。

 こうした努力が、今後、実を結んでいくことを強く期待していますが、そのためには金融機関自身が、経営効率化や新しい収益機会の創出などによる収益力の強化について一層成果を挙げていくことが求められています。

 私ども日本銀行といたしましても、今後とも、金融機関の皆様方と金融システムを巡る諸問題の克服に向け率直かつ建設的な対話を続けていきたいと考えております。また、引続き政府とも連携しつつ、金融システムの信認確保に向けて努力を傾注していく考えです。

 信託銀行を取巻く環境や、利用者等から求められる役割も、時代とともに大きく変化してきています。私どもとしては、皆様が、例えば、資産流動化を活用した企業金融の一層の円滑化に向けた取り組みの強化や、顧客の財産管理の効率化・高度化などの面で、その機能と特性を十分に発揮されるよう期待しているところです。こうしたことを通じて、今後信託銀行が益々発展されるとともに、わが国金融システムの効率性と安定性の向上に一層貢献されることを、強く祈念して私のご挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴有難うございました。

以上