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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成15年 4月18日、衆議院財務金融委員会における福井日本銀行総裁報告

2003年 4月18日
日本銀行

目次

はじめに

 日本銀行は昨年12月、平成14年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、国会に提出いたしました。今回、日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、あつく御礼申し上げます。

 私は、約1か月前の3月20日に、日本銀行総裁に就任いたしました。日本銀行の知恵と力をフルに発揮し、日本経済の持続的成長軌道への復帰とデフレ克服のため、中央銀行として最大限の貢献を果たす決意です。

日本経済の動向

 まず、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、このところ設備投資に持ち直しの動きもみられますが、イラク情勢の影響を含めた海外経済の動向など、先行き不透明感が強い中で、全体として横這いの動きを続けています。

 先行きについては、海外経済が緩やかな回復傾向を辿るもとで、輸出や生産が再び増加に転じ、経済に前向きの循環が働き始めると考えられます。

 もっとも、米国をはじめとする海外経済の先行き自体、不確実性を抱えています。また、過剰雇用や過剰債務といった調整圧力が根強いことなどを踏まえますと、景気は暫くの間、自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高いと思います。

 この間、物価面をみますと、国内企業物価は、輸入物価の上昇や素材業種での需給改善を反映して、全体としてほぼ下げ止まっています。消費者物価は、引き続き緩やかに下落していますが、先行きについては、原油価格上昇の影響に加え、社会保障負担や間接税にかかる制度変更の影響も見込まれ、マイナス幅は幾分縮小するとみられます。

金融面の動向

 金融面の動きをみますと、日本銀行の潤沢な資金供給のもとで、金融市場は年度末を含め、全体として落ち着いた動きとなっています。

 もっとも、株価は、内外経済の先行き不透明感などを背景に、不安定な動きを続けています。とりわけ、わが国金融機関の収益性に対する厳しい見方などを背景に、銀行株価の弱い動きが目立っています。

 企業金融面では、全体としては緩和的な環境が維持されていますが、相対的に信用力の低い企業の資金調達環境は、なお厳しい状況にあると認識しています。

最近の金融政策運営

 次に、最近の金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 私は、この1か月近くの間、イラク情勢の展開を踏まえた当面の危機防止のための対応と、やや長い目でみた金融緩和効果の強化のための対応に、取り組んでまいりました。

 まず、イラク情勢の展開が、株式市場や為替市場などを通じて経済全体にどのような影響を及ぼしていくか注視するとともに、年度末を控えて、金融市場の安定確保に万全を期すため、市場に対し、多額の追加資金供給を実施しました。また、取引先金融機関が担保の範囲内でいつでも日本銀行から資金調達を行うことのできる補完貸付制度についても、当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とすることとしました。

 以上のような措置のもとで、金融市場では流動性を巡る懸念はほぼ払拭された状況が続き、年度末も概ね問題なく越えることができました。

 また、今後の金融政策運営に当たっては、潤沢な資金供給を、経済活動の活性化やデフレ克服に結び付けていくことが、重要な課題であると思います。このような問題意識を踏まえ、現在、金融政策の透明性向上や金融緩和の波及メカニズムの強化といった観点から、金融政策運営の基本的な枠組みについての検討を行っています。

 日本銀行が現在採っている量的緩和政策は、金融市場の安定を確保し、デフレ・スパイラルを防止する上で、大きな貢献を果たしてきたように思います。しかしながら、金融機関の信用仲介機能は万全ではない状況が続いており、民間の経済活動も、十分に刺激されるには至っていません。

 言うまでもなく、金融システムの信用仲介機能が十分に発揮されていない最大の要因としては、不良債権問題が挙げられます。この問題を解決するためには、民間および政策当局が一体となった取り組みが重要です。

 同時に日本銀行としても、信用仲介という、金融政策の重要な波及経路が十分には機能していない中で、金融緩和の波及メカニズムを強化するために、企業金融の円滑化や金融調節の面において改善を図っていくことが、大きなポイントであると思います。

 このような観点に立って、今般日本銀行は、中堅・中小企業関連資産を主たる裏付け資産とする資産担保証券を、時限的に買い入れることについて、検討を進めることを決定いたしました。

 資産担保証券は、企業が持っている売掛債権などをプールし、これを証券化して流通させるものです。資産担保証券市場は、日本ではまだ発展途上にありますが、この市場が活性化すれば、中堅・中小企業にとって、銀行借入に代わる資金調達ルートが拓かれるなど、企業金融面にさまざまなメリットをもたらすことが考えられます。

 日本銀行としては、新たな資金仲介のルートとなる市場の整備・発展をサポートすることを通じて、金融緩和の波及メカニズムが強化されることを期待しています。

 日本銀行は現在、具体的な買入れ方法についての検討を進めていますが、その際、広く市場関係者の意見もお聞きしながら、市場の発展に資するような方向での検討を行ってまいりたいと思います。

 もちろん、金融市場は、本来民間のイニシアチブの下で、自律的な発展を遂げていくことが期待されるものであり、中央銀行として、資産担保証券といった民間の債務を買い入れることは、異例の措置です。

 したがって日本銀行としては、波及効果の大きさや、市場の機能を歪めないかといった観点に加え、日本銀行の財務の健全性を維持し、将来にわたる金融政策の遂行能力を確保するといった点にも十分配慮しながら、具体的な買入れの方法を考えてまいります。

銀行保有株式の買入れ

 また、金融政策に直接該当する事項ではありませんが、日本銀行は、銀行による保有株式の価格変動リスク削減努力をさらに促す観点から、昨年11月から銀行保有株式の買入れを実施しております。本年4月10日時点の買入額は、1兆2,090億円となっております。

 当該措置は、金融システムの早期健全化に向けた、日本銀行としての一つの取り組みです。同時に、金融システムの健全化は、金融政策の波及メカニズムを強化する上で、不可欠な条件であると考えています。

おわりに

 現在、日本経済が抱えている課題は、たいへん大きいと言わざるを得ません。

 日本経済は、経済の成熟化やグローバル化の進展に加え、情報通信革命やエマージング諸国の急速な台頭といった、大きな環境変化に直面しています。

 このような大きな変化の中で、日本の戦後の成長を支えてきた経済モデルに代わる、技術や知識のイノベーションを原動力とした新しい経済モデルの構築が求められていると思います。日本経済がこうした新たな環境に果敢に適応していくためには、民間部門と政府、日銀が共通の目標に向かって力を結集していくことが、不可欠であると思います。

 日本銀行としても、今後とも、我々の使命である「物価の安定」と「信用秩序の維持」を達成するため、全力を挙げてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

以上