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デフレと金融政策(注)

大分大学における須田審議委員特別講義

  • 本稿は、2003年6月4日に東北大学経済学部および同7月2日に大分大学経済学部において実施した特別講義のために作成した資料です。ただし、本稿の内容や文中に示した意見は、執筆者個人に属し、日本銀行政策委員会の公式見解を示すものではありません。

2003年7月2日
日本銀行

目次

I.はじめに

 今日、「デフレ」という言葉を見聞きしない日はないといっても過言ではありません。そして、「デフレは貨幣的な現象であり、デフレを退治できるのは金融政策のみである」と断言して憚らない論者も少なくありません。実際に、日本銀行は、「デフレを克服したい」という強い気持ちを持って懸命に知恵を絞り、行動してきました。責任を逃れようなどという不届きなことを考えたこともありません。しかし、日本経済が直面している問題は、必ずしも金融政策だけで簡単に解決できるほど一筋縄では行きません。今回の講義では、デフレ克服に向けた金融政策の取組みを説明した後、今後の政策運営を巡る議論とその留意点について私の個人的な考え方をお話しします。今回の講義を通じて、日本経済の課題を直視し、デフレ克服のための選択肢を金融政策の範囲内に限定して考えず、そのベネフィットとコストを十分比較考量していくことの重要性を理解して頂けたら、と思います。

II.デフレとは何か

1.デフレの定義

 デフレとは、一般物価の持続的な下落を指していう言葉です。デフレの最大の原因は、基本的に、供給に比べて需要が弱いために、需要と供給のバランスが崩れていることです。その意味では、「不況が原因となってデフレが発生している」とみられない訳でもありません。このため、デフレという言葉は、「一般物価の持続的な下落」だけではなく、「経済停滞」や「不景気」という意味でもしばしば使われています。また、地価や株価などの資産価格の下落も含めて考えられているケースもみられます。

 しかし、今日の経済状況とは対照的に、供給に比べて需要が強い景気過熱気味の状態を指して「インフレ」と呼びません。インフレは、あくまでも、「一般物価の持続的な上昇」です。また、物価の下落が始まった90年代半ば以降、景気は短いながらも2つのサイクルを描いて上下を繰り返してきました1。問題は、その間も継続して物価が下がり続けてきたという事実です。これは、日本の需要不足には持続的・構造的な部分があることを示唆していると思います。やはり、短期的な景気の循環と一般物価の持続的な下落を分けることが必要です。

 日常会話であれば、デフレという言葉をどのような意味で用いようとも構いません。しかし、経済政策を議論するためには、言葉の意味を明確にすることが必要です。言葉の意味を混同したままでは、議論がすれ違います。そこで、政府も、2001年3月の「月例経済報告」で、デフレを「持続的な物価下落」と明確に定義しました。今回も、「デフレ」の意味は「一般物価の持続的な下落」であるという理解のもとでお話しさせて頂きます。

  1. 内閣府は、今年6月6日、戦後13回目の景気循環について、平成11年1月から平成12年10月までを拡張期間(21か月)、平成12年10月から平成14年1月までを後退期間(15か月)と暫定的に決定しました。

2.デフレが経済にもたらす悪影響

 デフレが経済に悪い影響を及ぼす経路としては、一般的に、名目賃金の下方硬直性、過去に契約した債務の実質負担の増大、および実質金利の上昇・高止まりが指摘されます。そこで、これらの基本的な考え方を整理したうえで、現在の日本経済にそれを当てはめてみることにしましょう。

(1)名目賃金の下方硬直性

 第1に、製品や商品の価格の低下に直面した企業では、名目賃金が長期の契約を前提にしているため製商品価格の低下に対して速やかに調整できず、企業収益が圧迫され、これを通じて企業の投資やその他の支出がさらに削減されるという経路が考えられます。

 ところが、90年代半ば以降、わが国の企業は、雇用や賃金の柔軟性を高めながら、雇用コスト全体を抑制しており、少なくとも最近は名目賃金が伸縮的に変動しているようにみられます2。もともと、わが国の場合には、特別給与のウエイトが大きく、それが伸縮的に動くため、賃金の伸縮性が比較的高いとされています。そして、90年代にほぼ一貫して特別給与を削減してきた結果、特別給与による調整余地が小さくなってきましたが、最近では、所定内賃金の伸縮性を高める動きが見受けられます。また雇用面では、90年代半ば以降、パートタイマー、派遣労働者などのウエイトが大幅に上昇しています。こうした中で、わが国の実質賃金も、緩やかな低下傾向を辿っています。

  1. 2大澤・神山・中村・野口・前田(2002)、黒田・山本(2003a、2003b)

(2)実質債務負担の増加

 第2に、過去に契約した債務は名目価値が固定されているため、物価が下落する局面では、実質の債務負担、および、利払い負担が増大するという問題点が指摘されています。

 過去の契約時点では予期しなかった物価の変動は、金利の固定された債務の負担を変動させます。この点は、物価の上昇・下落の双方向に影響する要因ですが、物価下落には特有の弊害があります。すなわち、物価が下落しますと、企業の将来キャッシュフローが悪化しますので、債務負担の大きい企業が倒産する可能性が高まります。債務者が倒産する懸念が広く認識されるようになりますと、金融機関の貸出姿勢が慎重化することなどを通じて、企業の資金調達コストが高まる可能性があります。この結果、企業価値との対比でみた債務が過剰になる可能性が高まります。そうなりますと、企業は、リスクテイク意欲を後退させ、設備投資を抑制するようになります。また家計も、将来所得に対する目線を切り下げ、消費を抑制するかも知れません。こうした動きが経済活動全体を縮小させます。

 実際に、1930年代前半の米国におけるデフレーションは、債務の返済負担を著しく高めたことから企業や家計を債務不履行に追い込み、それが不況を長引かせる原因となりました。「日本銀行はデフレを退治するために積極的に貨幣を供給するべきである」という主張も、こうした1930年代当時の米国の教訓を根拠としているケースも少なくないように思います。しかし、歴史的事象から教訓を引き出す場合には、過去と現在の共通点を見出す視座が求められるのは当然ですが、同時に相違点を十分に見極めることがそれにも増して重要です。米国の大恐慌は、1929年10月の株暴落に端を発し、1933年に漸く底を打つことになりますが、この4年間に、実質GDPは約3割減少し、消費者物価も約3割下落しました。これに対して、わが国の消費者物価(全国・除く生鮮食品<以下同じ>)は、99年10月以降下落し続けていますが、99年10月から直近2003年5月までの累計の下落率は2%強に止まっています。実質債務負担の問題を議論する場合には、物価下落率の大きさが重要な意味を持ちます。物価下落率が年率1%というマイルドなデフレと年率10%という恐慌的なデフレでは、実質債務負担に及ぼす影響が全く異なることをきちんと認識する必要があります。

 さらに付言すれば、米国では、1929年から1933年の間に、商業銀行の約4割が破綻するなど、金融システムが極度に不安定になりました。銀行取り付けが数次にわたり発生し、1933年3月には大統領布告により全国的な「銀行休日」が宣言されるに至っています。当時の米国は、金本位制(貨幣供給量が金保有量によって制約される制度)の下で、国内、国際の両面で流動性が枯渇し、金融政策の舵取りが極めて難しい状況にありました。これに対して、後ほど説明するとおり、現在、日本銀行は極めて豊富な資金を金融機関に供給し、金融機関の流動性不安を未然に抑え込んでいます。また、政府、日本銀行、預金保険機構による金融システムのセーフティー・ネットは、当時の米国とは比べものにならないほど格段に強化されています。

(3)実質金利の上昇

 また、「デフレによって実質金利が上昇・高止まりしているために設備投資が抑制されている」という意見がしばしば聞かれます。一般に、企業の設備投資や家計の住宅投資などに影響を及ぼすのは、名目金利ではなく、物価の予想変化率などを調整した実質金利です。したがって、名目金利が一定であっても、デフレにより一般物価水準が下落していけば、実質金利は上昇し、設備投資などを抑制する要因になると考えられます。また、資産価格の下落を誘発する可能性もあります。

 しかし、実際に政策を運営する場合、実質金利の問題は一筋縄では行きません。実質金利を把握するためには予想インフレ率が必要になるため、実質金利を直接推計することはできません。これが名目金利との大きな違いです。また、個々の経済活動に対して共通の実質金利が影響を及ぼす訳でもありません。例えば、家計の消費や貯蓄に影響を与える実質金利は、「預金金利—消費者物価予想の変化率」かも知れません。また、個々の企業の在庫投資を考えますと、借入れ金利と製品価格の予想変化率の関係が判断材料になるように思います。マクロ的には、「短期約定平均金利—企業物価指数の予想変化率」が影響すると考えられます。

 特に難しいのは設備投資です。設備投資の動向を考える場合には、実質金利というよりも、実質資本コストに着目します3。現在、資本財価格が下落し、資本財価格で測った実質金利は上昇しています。もっとも、最近の資本財価格の下落は、主に、表面的な価格の下落ではなく、品質の向上によるものです。一般に、物価指数の作成においては品質の変化分をなるべく反映させる努力が払われています。例えば、パソコン1台が同じ20万円であるとしても、記憶容量や計算速度などの機能が2倍に向上していれば、価格は2分の1の10万円に下落しているとみなそうという考え方です。これが「品質調整」です。資本財価格が一般物価との比較で下落することは、実質資本コストを引き下げる方向に作用します。したがって、実質金利が上昇しても、実質資本コストに与える影響は定かではありません。

 さらに、資本コストが設備投資に及ぼす影響を考える場合には、資本コストの水準自体というよりも、資本の限界生産性との関係で評価することが必要です。資本コストが表面上高い数字でも資本の限界生産性よりもそれが低ければ設備投資は増加する、逆に、資本コストが表面上いくら低い水準でも資本の限界生産性よりもそれが高ければ設備投資は減少すると考えられます。わが国の場合には、資本コストの水準それ自体よりも、むしろ資本ストックが蓄積する(資本係数が上昇する)中で、資本の限界生産性が低下していることが設備投資を抑制する要因として作用している可能性があります4。実際に、米国では、90年代に2桁近い設備投資の伸び率を記録しましたが、資本コストは日本と概ね近い水準にありました。それにもかかわらず、米国で設備投資が盛んであったのは、IT関連を中心に、資本の限界生産性が高かったためであると考えられます。

 以上、ここでは民間企業にとってのデフレのコストをとりあげました。デフレのコストは、家計にも、政府にも発生します。家計は、2002年度末現在、1,378兆円の金融資産を保有し、全体としてみれば資産超過ですが、同じく385兆円の負債を保有しています。さらに、政府の国債および借入金の残高は昨年末現在643兆円に達しています。政府からみますと、たとえ前年比1%弱の物価下落でも、その実質負担の増加および実質金利の高止まりによる影響は大きなものになります。

 いずれにしても、ここで申し上げたかったことは、今後、金融政策を含め経済政策を立案していくうえでは、米国の1930年代の大恐慌のデフレと今日の日本のデフレを単純に結び付けたり、あるいは、教科書的な世界でデフレが経済に悪影響を及ぼすと考えられるメカニズムが現実の経済でもそのまま働いていると決め付けるのではなく、「現在、わが国において、マイルドなデフレのコストはどの程度なのか」をしっかりと直視する必要があります。

  1. 3資本コストは、ある設備を購入し、一定期間使用したときに、この設備の使用に伴ってどの程度の費用がかかるのか、を表わしています。これは、(1)この間の金利負担(資本財価格 × 名目金利)、(2)資本の減耗(資本財価格 × 資本減耗率)、(3)設備を売却する際のキャピタル・ロス(資本財価格の変化幅に相当)からなります。これを一般物価で割ったのが実質資本コストです。これを数式で書きますと、実質資本コスト=資本財相対価格× (実質金利+資本減耗率)、ここで資本財相対価格=資本財価格÷一般物価、となります。詳しくは、日本銀行調査統計局(2003)の「BOX1.資本コストについて」を参照して下ださい。
  2. 4前田・吉田(1999)

III.現在の金融政策運営

1.基本的な枠組み

 日本銀行は、2001年3月に、金融調節の枠組みを抜本的に変更し、現在に至っています。この新しい金融緩和の枠組みは、いくつかの柱から成り立っていますが、最も重要な柱は次の2つです。

(1)操作対象は量

 一つは、金融市場調節の際の目標を「金利」(具体的には無担保コールの翌日物金利)から、流動性の「量」を表わす指標(具体的には金融機関が日本銀行に持つ当座預金の残高)に変更していることです。これは、金融政策の効果波及の起点となる短期金利がほぼゼロまで低下した状況において、それでもなお金融緩和を進める余地がないかという観点から導入したものです。

 現在、金融機関などが日本銀行に預けている当座預金(以下、「日銀当座預金」)の残高は、金融市場調節上の目標である27〜30兆円の範囲内で推移しています。といっても、この金額が大きいのかどうか、見当がつかないかも知れません。日本銀行の取引先である民間金融機関や郵政公社が法律や契約で保有することを求められている金額は約6兆円に過ぎません。したがって、金融機関などは、一切金利が付かない日銀当座預金に、20兆円以上もの余剰資金を抱え込んでいることになります。日銀当座預金に現金を加えた金額、すなわち、マネタリー・ベースも前年比1割台半ばの高い伸びを続けています。このように極めて豊富に資金を供給している結果、無担保コールの翌日物金利はまさにゼロ%近くで推移しています。

(2)コミットメント効果5

 もう一つの柱は、以上申し上げたような金融調節の枠組みを、消費者物価の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで続けると約束していることです。これは先行きの金融緩和の継続を明確なかたちで約束することによって、より長めの金利にまで緩和効果が及ぶことを期待しているものです。しばしば「コミットメント効果」とか「時間軸効果」と呼ばれています。

 この約束の意義を正しく理解して頂くために、期間の長い金利が市場でどのようにして決まるのかを説明します。入門的な教科書では一口に利子率といいますが、現実の経済では満期までの期間が様々な金利が存在します。そして、金融政策の波及経路を考えるうえでは、翌日物金利とより期間が長い金利との関係を整理する必要があります。

 金融政策の起点は、金融機関などの日銀当座預金残高の変化と、それに伴う無担保コールの翌日物金利の変化です。日本銀行は、日銀当座預金残高の総額を調節できる唯一の経済主体であるため、翌日物金利に対して極めて強力な影響力を持っています。とはいいましても、無担保コールの翌日物金利それ自体が企業や家計の支出行動に直接的な影響を与える訳ではありません。例えば、設備投資や、住宅ローンを借りて家を建てようという場合には長期金利の影響を受けます。また、企業が製品を増産して在庫を多く持とうという短期の生産活動については、3か月とか、6か月といった比較的短い期間の金利(ターム物金利と呼ばれています)が影響することが一般的です。こうしたターム物金利は、現在の翌日物金利、および、現時点から3か月後や6か月後までといった満期までの間に翌日物金利がどのように推移するか、という市場の予想に基づいて決まります。長期金利も、基本的に同じく考えることができます。将来の翌日物金利の予想には不確実性が伴いますから、そのリスクに見合うプレミアムが上乗せされます(こうした考え方は、「利子率の期間構造に関する期待理論」と呼ばれています)。そして、日本銀行は、将来の翌日物金利に関する市場参加者の予想に影響を与えることを通じて、期間がより長い金利に影響を与えています。

 ところで、将来の無担保コールの翌日物金利を予想すると申し上げましたが、それは、(1)経済・物価情勢の先行きをどのように予想するか、(2)その見通しに対して中央銀行がどのような政策対応を講じると予想するか、に分けてみることができます。経済情勢は刻々と変化します。いかなる中央銀行も、経済や物価の動きと無関係に一定の期間にわたって翌日物金利を変えませんと約束することはできません。こうした中で、日本銀行は、イールドカーブ全体に金融緩和効果を浸透させ、緩和効果を強めるために、具体的な期間ではなく、新しい金融緩和の枠組みを継続する条件を明らかにするという方法を採っています。それが、「現在の金融緩和措置を消費者物価の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで続ける」という約束です。実際に、只今申し上げたような金融政策運営の下で、市場関係者の間では、「翌日物金利は、今後とも暫くの間ゼロ%近くで推移し、かつ、日々大きく振れることもないだろう」という安心感が浸透しているようにみられます。

  1. 5翁・白塚(2003)

2.政策効果に関する暫定的な評価

(1)短期金融市場

 日本銀行の金融緩和措置に対して最も明確に反応したのは短期金融市場金利です。これは、日本銀行が、日銀当座預金残高の総額を調節することができる唯一の経済主体であり、短期金融市場の需給関係と価格(金利)に対して極めて大きな影響力を持っていることを考えれば当然の帰結です。

 それに加えて、日本銀行による豊富な資金供給は、一般的な意味における金融政策というだけではなく、金融システム安定化策の側面も合わせ持っていることも指摘したいと思います。通常、金融機関などが資金の過不足を調整する場である短期金融市場では、株価下落などを背景に金融システムに対する不安が高まりますと、資金の貸し手が資金の借り手を選別する傾向が強まり、金利に上昇圧力が掛かる可能性があります。時々、「今の日本経済はデフレ・スパイラルに陥るリスクがあるのか、ないのか」といった質問を受けることがありますが、それは金融システムにどういうことが起きていくのかという点と切っても切り離せない問題です。そこで、日本銀行は、デフレ・スパイラルを回避するために、短期金融市場に対して豊富に資金を供給し、金融機関の流動性不安を抑えるという方針を明らかにし、かつ、それを行動で示してきました。こうした金融市場調節の方針が市場に十分理解されていることから、短期金融市場において相応にストレスが掛かる局面においても金利の上昇は限定的でした。このように、日本銀行の豊富な資金供給は、翌日物金利を事実上ゼロ%に抑え込んでいるというだけに止まらず、金融機関などの流動性不安を解消することを通じて金融システムの安定化に貢献し、ひいては金融システム不安の高まりを起点とする景気悪化を未然に防止しているという側面も見逃せないと思います。

(2)債券市場

 次に、債券市場に目を転じます。タイムラグはありましたが、長期国債や社債などの債券市場にも金融緩和の効果が波及しているようにみられます。長期国債流通利回り(10年新発債)は、現在の政策運営の枠組みを採用した1年目は横這い圏内で推移しましたが、昨春以降、総じて低下傾向を辿りました。また、クレジット市場について、社債流通利回りの国債に対するスプレッドをみますと——CPや社債などの金利はリスクフリーの金利に応じて変動しますので、クレジット市場に固有の影響をみるためには、信用リスクのない国債の金利とCPや社債などの金利の格差をみる必要があります——、この約1年間、縮小傾向を辿っています。特に、今春以降、国債の流通利回りの絶対水準の低さを眺めて、金融機関や機関投資家などが社債投資を拡大させていることから、既往ボトム圏まで縮小して推移しています。

(3)株式市場、為替市場、金融機関貸出

 ところが、株式市場や外国為替市場では、今のところ、緩和効果は明確には観察されません。すなわち、株価は、このところ持ち直しの動きがみられますが、企業の収益力や将来性に対する期待が低下するもとで、バブル後最安値を更新するなど弱い地合いが続いていました。また、為替相場(円/ドル相場)は2002年初にかけて円安方向で推移しましたが、その後は米ドルの下落基調を反映して、円高基調で推移しています。さらに金融機関の貸出も、前年比2%台前半の減少が続いています。

(4)金融緩和措置の効果

 金融市場のこうした動きを括りますと、2001年3月以降の金融緩和措置は、金融市場の安定に貢献し、「金融が緩和されている状態」を確保するうえではかなり有効に機能していますが、その一方で、これまでのところ、金融機関などの信用仲介活動や、企業や家計などの資産選択行動を十分に積極化させ、実体経済活動を刺激するほどの明瞭な効果も窺われません。実際に、物価情勢をみますと、消費者物価前年比のマイナス幅は、最近やや縮小しているものの、1%弱の緩やかな下落が続いています。

3.デフレは貨幣的な要因によるものか

 過去2年余の金融緩和措置の現時点における波及効果は、「金融政策をフル回転してマネタリーベースを増やせば、マネーサプライが増え、名目GDPが増え、物価が上昇する」という単純な貨幣数量説に基づく政策提言の信憑性に大きな疑問を投げ掛けているように思います。この政策提言は、米国の著名な経済学者であるフリードマンが唱えた「インフレは貨幣的な現象である」という命題に基づいています。これは、「マネーサプライ(の変化率)は、長期的には、実体経済——実質GDP、雇用量、実質利子率、消費量、投資量など——に対して影響を与えず、単に物価の水準(変化率)を決める」という考え方です。

 一般に、教科書の中では、基本的な考え方を理解し易くするために、様々な前提条件が置かれています。ところが、政策運営は現実の経済と向き合っています。暗黙の前提を現実の経済の中で吟味する必要があります。「インフレは貨幣的な現象である」という命題にも重要な前提があります。一つは、中央銀行がマネーサプライをかなりの精度で操作できることです。もう一つは、マネーサプライと実体経済活動水準との関係が中長期的に安定していることです。これらの前提の背景として、「投資する機会、貸し出す機会が無数にあるにもかかわらず、流動性に対する制約があるために、投資機会をみすみす逃さなくてはならないような状況」が暗黙裡に想定されていると考えることができます。

(1)中央銀行はマネーサプライをどの程度操作できるのか6

 それでは、中央銀行はマネーサプライを明示的に「金融政策運営上のターゲット(中間目標)」として位置付けることができるのでしょうか。

 マネーサプライ(M2+CDs)は、いわば「経済全体に流通している通貨の総量」です。基本的に、支払手段としての利便性が高い、流動性が高い金融資産がマネーサプライを構成します。どのような取引であれ、あらゆる経済活動は何らかの「通貨」により決済される以上、マネーサプライは、経済活動全体の動きをその裏側にある資金取引のかたちで包括的に反映するという性格を持っています。それは、GDP統計に示されるような最終的な財・サービスの取引だけではなく、中間財的な製品やサービスの取引、株や土地などの資産取引など、あらゆる取引を含みます。マクロ経済学の入門的教科書では、IS−LM分析の記述にかなりのスペースが割かれており、マネーサプライが外生変数と位置付けられていますが、現実の経済では、マネーサプライを、まるで空からヘリコプターで撒き散らすかのようにして増やすことはできません。通貨は、企業や家計などが必要と感じているからこそ保有されています。一般的に、マネーサプライが増える背後に、所得が増えるとか、経済活動が活発化するとか、あるいは資産価格が上昇するという動きがあります。

 このため、現在、日々の金融調節を通じて、わが国以外の中央銀行は短期金利を誘導し、また、わが国は日銀当座預金残高を操作して、金融機関の信用創造活動や企業行動などに働きかける、という考え方に基づき金融政策を運営しています。平たくいえば、どの国の中央銀行も、こうした「遠隔操作」によって、実体経済活動やその裏側にあるマネーサプライに影響を及ぼしています。さらに、経済には常に金融政策以外の様々な力が加わります。一定の政策変更がどれだけのマネーサプライの変化に結びつくのかについては大きな不確実性が伴います。こうした状況の下で、一定の期間内に、一定のマネーサプライを実現するように厳密に操作することはできません。

  1. 6日本銀行企画室(2003)

(2)マネーサプライと実体経済活動水準との関係は安定的か

 マネーサプライと実体経済活動水準との関係も、90年代半ば以降、不安定であるようにみられます。マネーサプライの伸び率が均してみれば前年比+3%を挟んだ比較的狭い範囲で安定的に推移している一方、実質GDPの成長率は前年比+4%から前年比▲3%の範囲で大きく変動しています。より詳しくみますと、97年末から98年にかけては、企業の過剰債務調整と不良債権問題が金融システム不安として表面化する中で、企業や家計の間では、予備的な需要に基づいて現預金を高めに維持する一方、実物投資を抑制する動きがみられました。また、99年以降、日本銀行が大幅な金融緩和を続け、短期金利がほぼゼロまで低下している中で、マネーサプライを保有する機会費用が極端に低下し、預貯金など流動性が高い金融資産への資金流入が加速しています。今日も、こうした環境の下で、マネーサプライと実体経済活動の安定的な関係は崩れている可能性が高いと考えられます。

 なお、現在、マネーサプライと経済活動との間の長期均衡関係が確認できない背景には、(1)99年以降、短期金利が極端に低下している中で、マネーサプライ対象外の金融資産から対象金融資産に大幅な資金シフトが生じていること、(2)また、金融システム問題をはじめとする様々な要因が背景となって経済全体で安全資産志向が強まっていることがこうした傾向を助長している可能性が高いことが指摘されています。したがって、将来、金融仲介機能が十分に回復し、金利がゼロよりも明確に高くなれば、マネーサプライと経済活動の関係が再び安定するようになる可能性も考えられない訳ではありません。

(3)流動性がマネーサプライ増加の制約要因か

 既に述べてきたことからもある程度明らかであると思いますが、今日、わが国では、マネーサプライの伸びに対する大きな制約要因がマネタリーベースであるとは考え難いように思います。何よりも、過去2年余の金融緩和措置の現時点における波及効果がこれを裏付けています。なお、マネタリーベースが制約要因でないとしても、あえてマネタリーベースを拡張した場合に、思わぬメカニズムが働き、マネーサプライの高い伸びに繋がる可能性も否定できませんが、これまでの経験をみる限り、その可能性も非常に低いように思います。

4.金融緩和の波及効果を阻害している要因

 それでは、日本銀行が供給している極めて豊富な資金が世の中に回っていかないのは何故でしょうか。金融政策の効果が物価や実体経済活動に波及するまでの経路については様々な見方がありますが、いずれにしても、(1)金融調節の直接の対象である金融機関のリスクテイクが積極化するか、そして、(2)その結果として様々な資産価格が上昇したり、あるいは、景気回復期待が高まるなどして、金融機関以外の経済主体——企業、家計、機関投資家など——も投資行動を積極化するようになるか、という点が重要な鍵を握ると思います。言い換えますと、経済活動の活発化に結びつくかたちでマネーサプライが増加し、実体経済活動とマネーサプライとの対応関係が増すようになるには、経済主体が成長期待を高めてリスクテイクを積極化すること、これを金融面からみれば民間部門の資金調達行動が積極化することが必要であると考えられます。ところが、現在の日本経済では、マクロの流動性よりも、むしろリスクに挑むインセンティブが欠如しているようにみられます。これが、景気回復、ひいてはデフレ克服の足枷になっているように思います。

(1)企業部門の投資と貯蓄のバランス

 その象徴は、企業部門の投資と貯蓄のバランスです。通常、金融論の授業では、最初に、「一般に、企業部門は、事業の規模を拡大し、また新規の事業分野に進出するために、貯蓄を上回る投資を行う(本来、投資を専門的に行うために存在する)。他方、家計部門は、十分な貯蓄を持っている。金融とは、貯蓄が投資を上回る黒字主体(一般には家計部門)とその逆に投資が貯蓄を上回る赤字主体(同じく企業部門)との間の資金を融通する取引である」と学びます。

 世の中では、「金は天下の回り物」などといわれます。非常に単純化すれば、お金が余っている人からお金が足りない人に向かって流れると考えられています。お金が足りない人(例えば企業)がお金を借りてまで投資しようとするのは、その投資の期待収益率が他人からお金を融通してもらうために必要なコスト(利子率)を上回ると考えているためです。先ほども申し上げましたが、マクロ経済学の入門的な教科書では、企業は、有望な投資機会を抱えており、資金さえ手にできれば投資する意欲があることを暗黙の前提としています。だからこそ、一般的に、(1)マネタリーベースがマネーサプライの伸びに対する大きな制約要因である、(2)中央銀行がマネタリーベースの需給バランスを調整することにより、実体経済活動、ひいてはマネーサプライを遠隔操作できる、と考えられている訳です。

 ところが、今日、わが国の企業部門全体の貯蓄・投資バランスをみますと、企業収益が回復する中で設備投資が抑制されているため、大幅な貯蓄超過となっています。これは、日本の企業部門にとっては恐らく戦後初めてのことです。この背景として、企業部門が、全体として、(1)先行きの内外の需要について慎重にみていること、(2)財務体質の改善・強化の必要性を強く意識して、設備投資をキャッシュフローの範囲内に抑え、余ったキャッシュフローを有利子負債の返済に充てたり、自己資本の充実を図ろうとしていることが指摘できます。

 なお、企業部門が内外の需要を慎重にみていること——中長期的な期待成長率が低下していること——の一つの背景として、名目金利のゼロ制約の影響が指摘できます。すなわち、企業や家計などの民間経済主体は、「名目金利は下限であるゼロ%までほぼ低下しているので、財政面から景気を刺激する余力も乏しいとすれば、デフレが解消に向かうメカニズムは想定し難い」と考えている可能性があります。

(2)信用仲介機能の低下

 次に、資金提供者と資金調達者の間を取り次ぐ金融機関の立場を考えましょう。

 金融機関が保有している金融資産は、日銀当座預金や現金を除けば、何らかのリスクを抱えています。具体的には、信用リスク、価格変動リスク、流動性リスクなどがあります。信用リスクとは、借り手が債務を履行できず、貸し手が損する可能性のことです。また、債券、為替、株式などの市場価格は24時間変化します。金融商品の価格が変動することによって損益が発生します。そのリスクが価格変動リスクです。流動性リスクとは、資産を売却して換金したい場合に、どの程度速やかに、どの程度低いコストで現金を調達することができるか、を示します。金融機関は、様々なリスクを共通の見方で統合的に捉えたうえで、(1)リスク量を経営体力に見合うかたちにコントロールすることにより健全性を確保すること、かつ、(2)期待損失調整後の期待収益率に基づいて経営資源(ヒト、モノ、カネ)の配分を見直し、収益性や効率性を向上させることを目指して経営しています。

 こうした中で、日本銀行が、金融調節によって、金融機関が保有する金融資産、例えば長期国債の一部を安全資産である日銀当座預金と交換すると、金融機関の流動性リスクは小さくなります。その一方、資産の収益性は低下します。そこで、金融機関は、自らが必要であると判断した流動性(特に日銀当座預金)を確保したうえで、一旦受け取った日銀当座預金を取り崩し、リスク資産——例えば、長期国債、外貨資産、社債など——に対する投資や貸出を積極化すると考えられます。このようなリスクテイクの動きが活発化しますと、結果として、様々な資産価格——長期金利、為替レート、社債のクレジット・スプレッドなど——に好影響が及ぶと考えられます。

 ところが、今日、金融機関は、将来のありうべき損失を吸収するバッファーである自己資本が既に負っているリスク量に対して必ずしも十分ではないと、主観的に判断している可能性があります。この仮説が正しいとしますと、金融緩和措置は、金融機関のリスク量をある程度減少させるものの、新たなリスクテイクに向かわせるだけの効果を発揮するのは難しいということになります。実際に、最近、日本銀行のスタッフは、90年代以降における設備投資の長期低迷について、金融機関のバランスシートの悪化が、社債市場へのアクセスがなく借入れに代わる資金調達手段が乏しい企業の設備投資を制約した可能性が高いという興味深い分析結果を示しています7

 さらに、リスク許容度が全体としての制約要因になっている可能性に加えて、わが国では、リスクとリターンの比較考量に基づく投資行動が十分に根づいていないという問題点を指摘できます。

 例えば、国内銀行と商工ローン業者の貸出の分布をみますと、貸出金利が5%あたりから20%あたりまでは「空白地帯」のようにみえます。また、貸出ばかりではなく、社債についても同じ問題点が指摘できます。わが国では、格付機関からBBB以上の格付け(investment grade)を取得している企業が圧倒的であり、BBやBといった相対的に低い格付け(non-investment grade)を付されている企業の社債発行は極めて困難です。

 本来、貸出にしろ、社債にしろ、資金を融通する場合には、相手が返済できない可能性はどの程度か、万一倒産する場合にどの程度回収できるかなどを考慮して、金利を設定する筈です。こうした予想が外れて損失を被る可能性に備えるバッファーが自己資本です。そして、金融機関は、本来、個々の貸出債権の価格(金利)を適切に設定したうえで、多数の債権を集合的に捉えて分散効果を活かしつつ、収益を確保することを目指すことが期待されています。これが実現すれば、信用リスクが低いけれども金利も低いという相手にばかり貸出が集中したり、将来性のある新興企業が、信用リスクが高いという理由だけで、必要な資金を調達できないという状況は改善される筈です。

 現在、金融機関は、信用リスクを適切に見極め、それに見合う貸出金利を設定し、かつ、貸出債権のポートフォリオでリスクとリターンを管理する方向で努力を重ねつつあります。最近、中小・零細企業向けのいわゆる「ビジネス・ローン」(無担保小口定型融資)など多数の債権をまとめて管理することを基本とする商品の開発・取扱いを強化する動きがみられますが、これはその一例です。今後、こうした取組みが拡大し、企業などのリスクテイクを金融面からサポートする力が強まれば、金融緩和措置が所期の効果を発揮し易い環境が整っていくと思います。日本銀行では、こうした問題意識を持って、今年6月には資産担保証券の買入れを決定したほか、金融機関考査などを通じて貸出債権をポートフォリオとして適切に認識・管理するように促したり、民間市場関係者などと協力してインフラ整備に知恵を絞っているところです。

 以上お話ししてきたことを一旦整理します。現在、わが国では、貸し手、借り手双方の事情から「お金の巡り」が悪くなっています。そして、日本銀行が世の中のお金の量を増やそうとしてもなかなか効果が上がらないという状況が続いています。過去2年余りの金融緩和政策の経験は、(1)流動性の総量が実体経済活動の大きな制約要因ではないこと、(2)このため、「インフレやデフレは貨幣的現象である」というマネタリズムの考え方を単純に当てはめ、一般物価の動きを貨幣面の動きだけから説明することには無理があることを示唆しています。

  1. 7日本銀行調査統計局(2003)

IV.追加的な政策手段を巡る議論

1.量的緩和論のレジーム・シフト

 現在の金融緩和措置の基本的な考え方とその経験などについてお話ししてきたところで、最後に、今後の金融政策運営を巡る話題を取り上げることにします。

 内閣府が今年1月に実施した「平成14年度企業行動に関するアンケート調査」にはデフレとマクロ経済政策の関係に関する質問が設けられています。それをみますと、「デフレ対策として有効と考えるのは財政政策か金融政策か」という問いに対して、回答した企業の約5割が「両方」、約3割が「財政政策のみ」と答えています。そして、「デフレ対策には金融政策のみが有効である」という見方は全体の約1割に止まっています。

 さらに、「デフレ対策として効果があると考えられる金融政策は何か」という質問に対する回答は興味深いものでした。すなわち、「インフレーション・ターゲティングの導入」という回答が最も多く、全体の3割強を占めています。これに次いで、「日本銀行による長期国債、外債、社債、ETF、株式等有価証券の大量購入」が2割強、「当座預金残高目標の増額等の一層の量的緩和」が1割強となっています。この調査結果をみますと、(1)今後の金融政策運営について、インフレーション・ターゲティング採用の是非に関心が集まっていること、(2)日本銀行の資産に対する関心が高まっていること、の2点が特徴的です。これは、最近、金融政策のレジーム・シフト——「金利」から「量」へ——を主張していた「量的緩和論」の中で、新たなレジーム・シフトが起きていることを示唆しているように思います。すなわち、「物価の変動は貨幣的な現象であり、マネタリーベースを増やせば物価下落を止めることができる」といった、素朴な貨幣数量説は、日銀当座預金残高の「量」に注目する考え方です。これに対して、最近、一部の経済学者などは、「金融政策は、金融市場を安定化させるだけではなく、資産価格に働きかけるなど、景気刺激効果を積極的に狙っていくべきである」という立場から、日本銀行が、どのような資産を、どの程度買い入れるか、ということに焦点を移しつつあるように思います。

 そこで、今後の金融政策論議を理解するために必要となる基本的な論点を提供するという趣旨から、(1)現時点でインフレーション・ターゲティングを導入することが妥当か、そして、(2)日本銀行がデフレを解消するまで厭目もなく積極的に資産を買い続けることをどのように考えるか、という2点について、私の考え方をお話ししたいと思います。

2.インフレーション・ターゲティング

(1)インフレーション・ターゲティングの考え方

 今日、インフレーション・ターゲティングという言葉が人口に膾炙していますが、その定義は論者によってかなり異なっています。定義を明確にしない限り、インフレーション・ターゲティングの採用の是非について意味のある議論はできません。私は、インフレーション・ターゲティングとは、(1)中央銀行の目的である「物価の安定」を、具体的なインフレ率の数値で示す、(2)合わせて、先行きのインフレ率の「見通し」を公表する、(3)これらの物価の「目標」と「見通し」との関係を軸にして金融政策を運営し、これを対外的に説明していく、(4)そして実際に、物価の「目標」を繰り返し達成することにより、人々の期待インフレ率を安定化させ、金融政策の有効性を高めることを目指す、という政策運営の枠組みであると理解しています。なお、わが国では、透明性を高めるための枠組みというよりも、目標達成期限を明示し目標の達成を目指すことが当然であるという議論がしばしばみられますが、欧米主要国では達成時期を明示しているケースが多い訳ではありません。

 ここで、インフレ率の実績値ではなく、「見通し」と「目標」との関係に対応して政策運営を行うという考え方であることを注目して下さい。インフレーション・ターゲティングは、先行きのインフレ率が目標を達成することを目指しますので、現在の経済指標に反応するというよりも、インフレ予測に基づき、より先を見越して予防的に金融政策を運営することになります。その意味では、インフレーション・ターゲティングというよりも、インフレーション・フォーキャスト(予測)・ターゲティングと呼ぶ方が実態に近いように思います。

 なお、ターゲティングという言葉から、「厳格に目標の達成を目指す政策運営」をイメージするかも知れませんが、インフレーション・ターゲティングを採用している国々の政策運営の実態をみますと、大きな供給ショックなど——例えば原油価格などに影響する国際政治情勢の変化など——が生じた際には目標値の達成を目指さなくても構わないといった免責条項が設けられているなど、現実には柔軟な政策運営——「限定的な裁量」が働く余地のある金融政策の枠組み——となっています8

  1. 8Bernanke and Mishkin(1997)

(2)政策手段の重要性

 一般的に、十分な政策手段がなければ政策目標は達成できません。インフレーション・ターゲティングが有効に機能するためにも、中央銀行がインフレ目標を達成するための十分な手段を持っていることが不可欠です。

 実際に、インフレーション・ターゲティングを採用している国々では、主にインフレ率を引き下げ、これを安定させるという目的で採用していますが、その大きな理由の一つとして、中央銀行がインフレ抑制のために金利引き上げという対応を取ることができることが挙げられます。

 「デフレ対策としてのインフレーション・ターゲティング導入例」として、1930年代のスウェーデンの事例がしばしば言及されます。確かに、スウェーデンは、1930年代に、物価安定を基本に据えた金融政策を実施しました。しかし、当時の状況をみますと、金本位制離脱(自国通貨切り下げ)に伴うインフレ懸念の台頭を未然に防ぐことを主眼としていたことがわかります。また、物価下落が止まった背景として、金利引下げ余地が大きかった中で利下げが行われたこと(1931年にインフレーション・ターゲティングを導入した当時の公定歩合は8%でしたが、1934年にかけて2.5%まで引き下げられています)に加え、財政支出の拡大および為替の下落が指摘されており、政策対応余地という観点で現在の日本とは状況が異なります。

 なお、世の中には、「日本銀行が思い切ったことを行うことにより、経済主体の期待インフレ率が劇的に変化する」と考え、「思い切ったこと」の一つとしてインフレーション・ターゲティングの採用を強く主張する論者も見受けられます。しかし、中央銀行がインフレ目標を設定すれば、期待インフレ率が目標に吸い寄せられるように収束し、結果として実際のインフレ率が実現するものでしょうか。「自分ならどのように受け止めるだろうか」と考えて下さい。私は、現実の経済、そしてマーケットはそれほど単純でも、甘いものでもないと思います。

 要するに、インフレーション・ターゲティングは、金融政策の運営を国民の皆様に分かりやすく説明するための重要な道具立ての一つですが、その良さが発揮される前提として、「中央銀行が持つ政策手段が物価に効果を及ぼす経路やメカニズムが明確であること」が挙げられます。たとえ中央銀行がインフレ目標を宣言しても、その宣言を裏付けるような有効な政策手段がない限り、民間部門がインフレ目標の実現可能性を信認するとは限らず、したがってインフレ期待に影響を及ぼすことも難しいように思います。

3.日本銀行の資産の拡大・多様化

 インフレーション・ターゲティングを採用するか否かにかかわらず、金融政策運営に当たっては政策手段が極めて重要です。こうした中で、日本銀行の資産買入れの拡大を求める声が根強く聞かれます。日本銀行がデフレを解消するまで厭目なく資産を買い続けることについては様々な論点がありますが、ここでは、(1)期待インフレ率に与える影響、(2)日本銀行の自己資本との関係という2つを取り上げます。

(1)期待インフレ率に与える影響

期待インフレ率の分布

 一部の経済学者は、(1)日本銀行が長期国債を大量に買い続ければ、やがて期待インフレ率は上昇する、(2)これを反映して長期名目金利が上昇する、(3)しかし、完全雇用が達成されるまでは、長期名目金利は期待インフレ率ほどには上昇しないため、予想実質金利は低下する、(4)これが起点となって総需要は増大し、デフレが解消する、といった議論を展開しています。ここで重要になるのが、「長期名目金利が期待インフレ率ほどには上昇しない」という考え方が妥当であるか否か、という点です。

 確かに、日本銀行が、厭目なく、資産を買い続けますと、将来いずれかの時点では期待インフレ率が高まることを否定することは論理的にはできないでしょう。そして、期待インフレ率が一定の数値に収斂するのであれば、長期名目金利が期待インフレ率ほどには上昇しない可能性があります。詳しい説明は省きますが、長期名目金利を構成している短期名目金利の期待値のうち、特に期近のゾーンがゼロ金利制約によって均衡値(マイナスの値)まで低下していないため、期待インフレ率の上昇分がそのまま長期名目金利に反映されないと考えられるためです。

 しかし、このような思い切った政策運営を求める提言は、「いずれはデフレを克服できる、あるいはインフレ率を引き上げることができる」と主張しているだけであり、その波及経路は極めて不確実です。海外の著名な経済学者の間でも、「日本銀行は、長期国債や外債を対象にした公開市場操作により、長期金利の低下や為替円安化を図るべきである」といった意見がみられますが、どのくらいの規模の公開市場操作が必要かについては議論されていません。それだけに、仮に、これらの提言どおりに政策を運営しますと、インフレ見通しについての不確実性が増大し、これに伴いリスク・プレミアムが上昇するかも知れません。そうなりますと、先ほどご紹介したような一部の経済学者の政策提言の前提——期待インフレ率が一つの値あるいは非常に狭い範囲に収束する——が崩れ、実質金利が下がらない可能性がある、と考えられます。

物価水準ターゲティング

 こうした見解に対して予想される一つの反論は、「インフレ期待を安定化させるためにはインフレーション・ターゲティングを採用すれば良い」という意見です。実際に、インフレーション・ターゲティングと長期国債の大量購入を組み合わせるというアイディアが提言されています。

 しかし、「デフレが長引く現状で2%のインフレ実現を目指すのは、ゴルフならバンカーから直接ピンを狙うようなものだ」(ロゴフIMF経済担当顧問兼調査局長)という指摘もあります9。敢えてピンを狙うと、どのような政策運営になるでしょうか。仮に、2年後のインフレ率の目標を1〜3%程度に設定しているケースを考えましょう。長期国債であれ、外債であれ、何らかのリスク資産を思い切って買い入れ、結果として、期待インフレ率が上昇し、インフレーション・ターゲティングにおける目標の範囲に入るとします。そこで、日本銀行は、それまでのオペレーションの巻き戻しを行い、「思い切って」資金を吸収しなければなりません。喩えていえば、アクセルを全開にした後、かなりの急ブレーキを踏むことが必要になる訳です。政策運営の振れが非常に大きくなる惧れがあります。他方、目標を上回るインフレ率を放置すれば、インフレ期待は安定化せず、金融政策運営の透明性は大きく損なわれるかも知れません。したがって、私も、「厭目を付けず、アグレッシブに資産を買い続けること」と「インフレーション・ターゲティング」を組み合わせることには無理があるのではないか、と思っています。

 では、日本銀行がアグレッシブに資産を買い続けるという政策手段を駆使しようとする場合に、政策運営の透明性をいかにして確保するべきでしょうか。しばしば提起されるのは、物価水準ターゲティングという考え方です10。最近では、米国FRBのバーナンケ理事が、わが国の金融政策運営に関する最近の講演の中で、物価水準ターゲティングを提唱しています11。具体的には、(1)仮に、過去5年間、消費者物価(除く生鮮食品)前年比がマイナスではなくプラス1%で推移していたとした場合の物価水準と現実の物価水準のギャップを解消する、(2)この過程では、インフレ率は長期的に望ましいと考えられる範囲を上回る、(3)そして目標とする物価水準を達成した時点で、インフレーション・ターゲティングを採用するか、あるいは、目標とする物価水準を目標とするインフレ率と整合的なかたちで動かしていく、というアプローチです。ゴルフの喩えを再び使うならば、(1)まずはピンから離れることを厭わず、バンカーからボールを出すことに専念する、(2)そして、ボールをフェアウェイに戻したところから気を取り直してピンを目指す、ということになるでしょうか。

 こうした考え方は一理あると思います。しかし、いかなる中央銀行も、理論の中ではなく、現実の社会の中で政策を構築していかなければなりません。そこでは、民間部門のインフレ期待が金融政策の効果に対して決定的な役割を果たします。しかし、物価水準ターゲティングについては、どこを起点として物価水準のトレンド線を引くべきなのかについて全く決め手がありません。また、実際の政策運営を考えますと、国民の皆様が「物価水準の目標を達成する過程であればインフレ率は何%でも良い」などと寛大に構えることは想定し難いように思います。こうした中では、市場関係者などからみて、インフレ率がどのように変化していくか予想し難くなり、金融政策運営がかえって不透明になる可能性があります。仮にそのような受け止め方が広がりますと、期待インフレ率についての不確実性が増大し、ひいては長期金利に要求されるリスク・プレミアムが高まることになりかねません。要するに、インフレーション・ターゲティングと同様に、物価水準ターゲティングも「魔法の杖」ではないことは十分認識する必要があります。

 現在、日本銀行は、今の金融調節の枠組みを消費者物価の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで続ける、すなわちインフレ率がプラスの世界に戻るまでは変えない、と約束しています。確かに、その先にある最終のゴールについてはまだ明示しておらず、その点ではインフレーション・ターゲティングと異なります。私は、将来いずれかの時点で、それがインフレーション・ターゲティングというスタイルになるかどうかはともかくとして、最終的にどのようなインフレ率を目指すのか、という点を国民の皆様と共有することが望ましいと考えています。

  1. 9ロゴフ(2002)
  2. 10Svensson(2001)、Woodford(1999)、Eggertsson and Woodford(2003)
  3. 11Bernanke(2003)
金融政策と財政政策の協調

 ところで、バーナンケ理事は、先ほどご紹介した講演の中でも、物価水準ターゲティングと組み合わせる具体的な政策手段の一つとして、日本銀行による減税のファイナンス——政府が減税を国債発行によって賄い、日本銀行がその国債を買い入れること——を提案しています。これは、ヘリコプター・マネー政策と呼ばれる政策手段の一つとみることができます。

 確かに、一般論として、「金融政策と財政政策の協調」は、ゼロ金利制約の下での政策オプションの一つであると考えられます。しかし、現在の金融緩和の枠組みは、それ自体を意図したものではありませんが、国債が金融機関などによって円滑に消化される枠組みを提供しています。国債のファンディングという面では極めて緩和的な環境が既に実現しています。したがって、現在のわが国では、こうした政策手段が持つ効果は基本的に財政政策そのものに帰着します。言い換えますと、日本銀行による減税のファイナンスという政策提言は、緩和的な環境が維持される限り政策協調の必要性というよりも、現在のような財政事情のもとで財政政策の発動が必要か否か、そしてそれが有効か、という観点から考えるべきテーマであると思います。

(2)日本銀行の自己資本との関係

 追加的な政策手段の採用を巡るもう一つの重要な論点は、日本銀行の財務体質や自己資本との関係です。これまでのところ、世界的にも、中央銀行の自己資本の必要性が理論的に十分整理されている訳ではありませんが、最近の議論を鳥瞰しますと、自己資本の重要性はどちらかというと中央銀行やIMF関係者から主張されることが多いのに対して、学者は中央銀行にとって自己資本は重要でないという見方をとることが多いように思われます。

 こうした自己資本不要論の論拠として、(1)中央銀行は、銀行券や中央銀行当座預金を独占的に発行できるため、自国通貨建ての債務について、一般の企業や金融機関と同じ意味で債務不履行になる可能性がほとんどないこと、(2)政府と中央銀行を一体であると考えれば(いわゆる統合政府プローチ)、中央銀行がどれだけ債務超過になろうとも、徴税権を持つ政府が中央銀行の負債を事実上100%保証していることになると考えられるため、中央銀行の債務超過は問題ではないこと、の2点が指摘されています。実際に、海外の著名な経済学者の間では、「日本銀行は、長期金利が通常の水準に上昇した場合にキャピタル・ロスを被るとして、(例え、キャピタル・ロスが一対一で政府のキャピタル・ゲインになるとしても)長期国債買入れの提案に抵抗している。(中略)こうしたマイナーなバランスシートの問題(特に日本銀行と政府の間で相殺可能であるならば)が、なぜ一国の国民厚生向上を阻む理由となるのか、外部観察者には理解できないのは当然のことである」といった厳しい批判が示されています12

 こうした批判は受け止めますが、中央銀行の自己資本が必要か否かについては、中央銀行を金融政策やプルーデンス政策を担う抽象的な存在として議論されることが多く、中央銀行が実際に行っている業務やそれを取り巻く経済環境、さらには政府との関係を規定する制度などを考慮に入れて議論されることは少ないという印象は拭えません。

 現実の政治経済の世界はそう単純ではありません。例えば、旧日本銀行法には政府による損失補填制度が設けられていましたが、これは政府による広範な業務命令権と対をなしていたことは見逃せません。新日本銀行法では、政府の損失補填制度が廃止されましたが、その基本的な考え方は昭和35年の日本銀行法改正論議まで遡ることができます。すなわち、昭和35年の金融制度調査会「日本銀行制度に関する答申」説明書には、「現在暫定規定として残存している政府の損失補償制度(附則第9項)は、日本銀行が準備金を取り崩しても損失を補填するに足りないときは、政府はその不足額を補給することとしている。これは、日本銀行の利益は内部留保を除く外すべて政府に納付する納付金制度の建前や、政府が日本銀行に対して業務命令権を持っていることなどに照応するものであろう。しかし今後は業務命令権もなくなり、日本銀行の自主的判断による損失は当然自己の負担すべきものであり、日本銀行の経営態度が安易に流れるのを防ぐためにも、本制度はこの際廃止するのを適当と認めた」と説明されています。

 要するに、中央銀行にとって自己資本や財務の健全性は、それ自体が目標なのではなく、政策手段の独立性と同じく、政策や業務を円滑に運営するうえでの基盤を提供するものであると考えられます。そもそも、通貨発行益は本来国民一般に帰属するものですから、将来にわたる通貨発行益を日本銀行がどの程度まで自由に使うことが許されるのか、という論点があります。また、万一、中央銀行の自己資本が毀損し、財政資金による資本の補填が必要と判断された場合に、それが中央銀行と行政府ないし立法府との関係に影響を与え、中央銀行の政策運営を制約することにならないか、また、通貨の信認を損なうことはないのか、という点は非常に重要な論点です。他方、現在、日本銀行は、平時ではない、未曾有の金融経済情勢のもとで金融政策を運営しています。このため、現実には、「自己資本を毀損し、納付金を国庫に納められなくなるような業務は行うべきではない」、および、「中央銀行は自己資本を心配する必要は全くない」という2つの極論の間で、国民の皆様のご理解を得ながら、通貨の信認を引き続き確保しつつ、最適なバランスを求め、しっかりとした政策運営を続けていくということになります。具体的には、資産を保有することに伴う様々なリスクをある程度覚悟せざるを得ない一方、これらのリスクを適切に把握し、財務の健全性に十分目配りしていくことが必要であると思います。

  1. 12Svensson(2001)

V.おわりに

 米国FRBのグリーンスパン議長は、物価安定の定義について、「物価の変動が十分小さく、かつ、十分緩やかなため、家計や企業の意思決定において物価が事実上考慮されない状態」と述べています13。この定義に則れば、現在、わが国の物価は総じて安定しているとみることもできるかも知れません。このように申し上げたからといって、日本経済が現状のままでよいなどと考えている訳では全くありません。むしろ、金融システムの機能回復、財・サービス市場における規制緩和などを通じて、わが国の経営資源(ヒト、モノ、カネ)の効率的な再配分を進める取組みを政府と民間が一体となって地道に進めていくことが必要であり、この間、金融政策としては、「金融が十分に緩和された状態」を維持することを通じて、構造改革を進め易い良好な金融環境を維持していくという非常に重い責務を負うことになります。

 しかし、「デフレを退治できるのは金融政策のみである」という意見も根強くみられます。仮に、金融政策が、従来にも増して、野心的というか、冒険的な性格を強め、形振り構わず行動すれば、消費者物価前年比を現在のマイナス1%弱からプラスの世界に戻すことはできるかも知れません。ただし、この場合には、同時に、本日説明したように、通貨の信認を損なうこと、あるいは、インフレ期待が不安定化することなどのコストを覚悟しなければならない可能性が高いように思います。

 デフレ克服を戦争に喩えるのは不謹慎かも知れませんが、「戦術の失敗は戦闘では補うことはできず、戦略の失敗は戦術で補うことはできない。とすれば、状況に合致した最適の戦略を戦略オプションの中から選択することが最も重要な課題になる」という指摘もあります14。本日の講義を通じて幾度も強調しましたが、いかなる戦略であろうとも、デフレ克服のための魔法の杖はありません。「この政策を採用すれば全ての問題が解決する」といった類の主張は政策提言としては無責任であるように思います。要するに、現在の極めて緩和的な金融環境を確保し続けることによって民間の自律的な構造調整をサポートしていくとしても、野心的な政策手段に踏み込むことになるとしても、その戦略の帰結として考えられるコストとベネフィットの比較考量について国民の皆様のご理解を広く得ることが極めて重要な出発点であると思います。

 当然のことながら、いかなる中央銀行も、議会制民主主義の枠組みから離れ、勝手に金融政策を運営することは許されません。FRBの副議長を務めたことのあるブラインダー・プリンストン大学教授は、「説明責任を果たすことが、独立性を与えられた見返りとして中央銀行に課されたモラルである」と指摘していますが15、どのような考え方や議論に立って金融政策を運営しているのかという点をできるだけ明らかにしていくことが一段と求められていると思います。皆様が金融政策運営についての理解を深めたり、政策担当者の現場感覚を感じるうえで、今回の講義が少しでもお役に立つことになれば大変に嬉しく思います。

 ご清聴頂き、ありがとうございました。

  1. 13Greenspan(1996)
  2. 14戸部・寺本・鎌田・杉之尾・村井・野中(1991)、p.291
  3. 15ブラインダー(1999)、pp.120-130

以上


参考文献

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