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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成16年 3月23日、衆議院財務金融委員会における福井日本銀行総裁報告

2004年 3月23日
日本銀行

目次

はじめに

 日本銀行は昨年12月、平成15年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、国会に提出いたしました。今回、日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

日本経済の動向

 まず、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、緩やかに回復しています。輸出はこのところ大幅に増加しており、設備投資も回復を続けています。こうした動きを背景に、鉱工業生産も増加しています。また、雇用者所得は徐々に下げ止まってきており、個人消費も足もとはやや強めの動きとなっています。先行きについても、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続き、緩やかな景気回復の動きが継続するものとみています。

 わが国の景気が緩やかながらも回復を続ける背景として、大きく2つの要因が挙げられます。第1に、世界的な情報関連需要と中国の高成長が牽引する形で、世界経済が順調に回復していることです。世界経済の好転を受け、わが国の輸出は大幅に増加しています。こうした輸出の増加を起点に、生産、企業収益が拡大し、設備投資の回復に繋がるといった「前向きの循環メカニズム」が働き始めています。

 第2に、企業の過剰債務・過剰雇用などの構造問題への取り組みがようやく結実しつつあることです。非製造業や中小企業では、なお調整圧力が残存していますが、製造業大企業では、リストラや企業再編等を通じて、収益力が大きく向上しています。また、わが国の金融システムについても、全体としては依然厳しい状況にあるとは言え、大手行を中心に、健全化に向けたこれまでの取り組みの成果が現れ始めています。

 このような景気情勢のもとで、物価面をみますと、国内企業物価は、内外の商品市況高などを背景に、足もと上昇しており、当面、上昇を続けるとみられます。消費者物価(除く生鮮食品)は、米価格の上昇など一時的な要因も押し上げに働く中で、前年比ゼロ%近傍で推移しています。先行きについても、当面前年比ゼロ%前後で推移する可能性が高いとみられますが、経済の需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況にあるため、基調的には小幅のマイナスが続くものと予想されます。

 金融面では、まもなく3月期末を迎える中でも、日本銀行の潤沢な資金供給のもとで、金融資本市場は総じて落ち着いた状況が続いています。企業金融を巡る環境も、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にありますが、全体としてみれば、徐々に緩和される方向にあります。民間銀行の貸出姿勢は積極化しつつありますほか、CP、社債といった金融市場を通じた資金調達環境も良好な状況が続いています。

最近の金融政策運営

 次に、最近の金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 現在実施している金融緩和政策のポイントを改めて申し上げますと、第1に、日銀当座預金残高という「量」を操作目標として、金融市場に潤沢な資金供給を行うこと、第2に、この量的緩和政策を「消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」という約束を行っていること、第3に、緩和効果を経済に幅広く浸透させるため、金融緩和の波及メカニズム強化に努めること、の3点です。昨年秋以降も、この3点に即して、追加施策を講じてきたところです。

 まず、市場への資金供給については、昨年10月に、金融調節面で機動的に対応する余地を広げる観点から、日銀当座預金残高の目標値の上限を2兆円引き上げました。また、本年1月には、目標値を3兆円引き上げ、「30~35兆円程度」といたしました。デフレ克服に向けた日本銀行の政策姿勢を改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から実施したものです。

 次に、量的緩和政策継続の約束については、昨年10月に、その内容をさらに明確化いたしました。具体的には、「消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上」という条件について、第1に直近の消費者物価指数の前年比が数か月均してみてゼロ%以上であること、第2に先行きについても再びマイナスとなると見込まれないこと、さらにこれらが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられること、を明らかにしました。このような日本銀行の明確な約束は、金融市場の安定的な金利形成に大きく寄与していると考えています。

 また、金融緩和の波及メカニズムの強化については、長期的な観点から金融市場の発展に寄与することも念頭に置きながら、金融調節手段などの面で様々な工夫を行っています。その一環として、昨年7月より、資産担保証券の買入れを開始しています。本年1月には、市場関係者から寄せられた意見等も踏まえつつ、本措置の趣旨が一段と活かされるよう、買入れ基準の見直しを実施したところです。これまでの買入れ実績は、累計約5千億円に達しています。また、資産担保証券市場の発展を支援するため、市場関係者とともに「証券化市場フォーラム」を開催し、建設的な意見交換を続けています。

銀行保有株式の買入れ

 なお、日本銀行は、株価の変動が金融機関経営ひいては金融システム全般に及ぼすリスクを緩和する趣旨から、一昨年11月以降銀行保有株式の買入れを実施しております。昨年3月には買入れ総額の上限を2兆円から3兆円に引き上げ、また、同9月には本措置の実施期間を本年9月末まで延長しました。本年3月10日時点での買入れ額は、1兆9,288億円となっております。

おわりに

 わが国の経済は、1年前に比べ、明るい動きが着実に増えていると言えます。しかし、同時に、持続的成長の実現とデフレ克服のためにはまだまだ課題が多いことも事実です。また、大企業と中小企業、製造業と非製造業、都市圏と地方圏との間で景況感に格差があることも十分認識しております。景気の前向きの循環メカニズムが働き始めている今こそ、日本経済全体に景気回復の動きが行き渡るよう、企業、金融機関、そして政策当局といった幅広い主体が経済活性化に向けた取り組みを重ねていくことが重要であると考えています。

 日本銀行といたしましては、民間部門の前向きの経済活動を金融面からしっかりと支援し、持続的な成長軌道への復帰とデフレの克服に向けて、今後とも全力を挙げて取り組んで参る所存です。

 ありがとうございました。

以上