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第79回信託大会における総裁挨拶要旨

2004年 4月19日
日本銀行

 本日は、第79回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。また、信託銀行の皆様におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 日本銀行では、本日、支店長会議を開催し、内外の経済・金融情勢について点検をしているところです。わが国経済は、世界経済の回復を背景とする輸出の増加や、企業収益の改善に伴う設備投資の持ち直しから、緩やかな回復を続けています。すなわち、輸出の増加を起点に、生産、企業収益が拡大し、設備投資の回復につながる前向きの循環が働いています。先般公表された短観や本日の支店長会議でも、企業の景況感の改善が非製造業や中小企業にも広がりつつあることが確認できたところです。また、最近では、個人消費もやや強めの動きとなるなど、国内需要も底固さを増しています。

 この間、消費者物価はなお小幅の下落を続けていますが、景気が緩やかに回復し、経済の需給バランスが改善する下で、基調的なマイナス幅は徐々に縮小してきています。

 このような情勢のもとで、日本銀行は、民間部門の前向きの経済活動を金融政策面からしっかりと支援していくため、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」という約束に基づいて潤沢な資金供給を行うとともに、金融緩和の波及メカニズムの強化に努めています。今後とも、持続的な成長軌道への復帰とデフレの克服に向けて、全力を挙げて取り組んで参る所存です。

 次に、金融システム面について申し上げます。わが国金融システムは、なお克服すべき課題が少なくない状況にありますが、大手行を中心に経営は健全化の方向にあり、金融システム全体としても、安定感が徐々に回復しつつあります。

 金融システムを巡るこうした状況変化は、経済情勢の改善だけではなく、不良債権処理の促進など、金融機関の皆様のこれまでのご努力によるところが大きいことは言うまでもありません。

 ただ、金融機関の皆様にとって、経営の自立という重要な意味を有する、ペイオフ全面解禁が1年後に迫っており、経営健全化がさらに強く求められています。また、ペイオフ全面解禁後も展望し、回復しつつある日本経済をしっかりと支える新しい金融システムを構築していくことが、わが国の大きな課題となっています。特に、様々な投資家の資力を活用する多様な信用供与チャネルを創造していくことが、従来にもまして重要になってきています。この点、貸付債権などの流動化において、信託機能が重要な役割を果たしてきていることは、意義深いと考えています。今後とも、皆様の創意工夫によって日本経済の発展に一層貢献されることを強く祈念して私のご挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴有難うございました。

以上