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最近の金融経済情勢について
青森県金融経済懇談会における春英彦審議委員挨拶要旨
2004年6月3日
日本銀行
目次
1.はじめに
本日は、ご多忙の中、青森県の行政および経済界を代表される皆様方にご出席頂き、ご懇談させて頂く機会を得ましたことを大変ありがたく、また光栄に存じます。
日頃は、清水支店長をはじめ日本銀行青森支店が、金融・経済の調査等々で大変お世話になっております。厚くお礼申し上げますとともに、今後ともよろしくご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。
本日は、まず私から最近の景気の現状や金融政策運営の状況などについてご報告し、その後、皆様方から地域の状況や金融政策についてのご意見等をお聞かせ頂ければと存じます。
2.景気の現状と見通し
(1)2003年度実績
先般、5月18日に発表されたGDP統計では、1~3月期の実質GDP成長率は年率+5.6%と10~12月期の年率+6.9%に続いて高い伸びとなりました。この結果、2003年度は実質+3.2%と2002年度の+1.1%に続いて2年連続のプラス、政府見通しの+2.0%をはじめ日銀が昨年10月に政策委員の大勢見通しとして公表した+2.3%~+2.6%を含め、大方の予測を上回る結果となりました。
この2003年度GDP統計の特長、あるいは留意点として以下の5点を挙げたいと思います。
まず第1は、大方の予想を上回る力強い成長です。特に、物価を調整していない名目成長率も+0.7%と3年振りにプラスとなっています。
第2は、この実質成長率+3.2%の成長を支えた要因を寄与度で見ると、大部分の+2.9%が国内民間需要であり、うち+1.9%を占める設備投資に次いで、個人消費が+0.9%と底固さを示しました。なお、これまでの回復を主導してきた輸出入の差額である純輸出も+0.9%、政府支出は-0.6%となっています。
第3は、この個人消費を支えるはずの雇用者所得は名目で前年比-1.0%とマイナス幅は縮小していますが、まだ減少を続けています。
第4は、所謂GDPデフレーターが前年比-2.4%となっています。年度後半以降、消費者物価等の下落幅は縮小していますが、依然としてデフレーターは大きなマイナスを続けています。
第5は、2003年度の後半の成長率が高かったことから、2004年度への実質GDP成長率の所謂「ゲタ」が+2.0%となり、2004年度の各四半期毎の前期比伸び率がゼロであったとしても、年度の成長率は+2.0%と政府見通しの+1.8%を上回ることとなりました。
(2)現状認識
日銀は、その後5月21日、5月の金融経済月報を公表し、その中で「わが国の景気は緩やかな回復を続けており、国内需要も底固さを増している。」としています。2003年度後半は瞬間風速としては高めの成長を示しましたが、雇用者所得が下げ止まりながらもマイナスとなっており、個人消費の見極めが難しいことなどもあって「緩やかな」という表現を残しています。
また、「先行きについては、景気は当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が次第に強まっていくとみられる。」としています。米国や中国など海外経済の高めの成長から、輸出、生産、企業収益、設備投資という企業サイドの前向きの循環が続くほか、企業収益から雇用・所得、そして個人消費へという家計サイドにおける前向きの循環も徐々に明らかになっていくことを想定しています。
物価については、国内企業物価が、特に中国の旺盛な需要の影響を受けて商品市況が上昇したため、素原材料を中心に4月は前年比+0.5%まで上昇しています。5月28日には4月の消費者物価(全国、除く生鮮食品)が公表されましたが、昨年のたばこ税引上げの影響や不作で上昇した米価など一時的な上昇要因のためゼロ%近傍となっています。
物価の先行きについては、国内企業物価は最近の原油価格の上昇もあり、当面上昇が続くと想定しています。また、消費者物価は一時的な要因による押し上げが解消する一方、消費の回復などにより基調としての前年比マイナス幅が縮小し、結果として当面小幅のマイナスで推移するものと想定しています。
(3)2004年度見通し
日銀は4月30日「経済・物価情勢の展望」、所謂展望レポートを公表し、その中で2004年度の政策委員の大勢見通しとして実質GDPは+3.0%~+3.2%、国内企業物価は+0.1%~+0.3%、消費者物価(除く生鮮食品)は-0.2%~-0.1%としています。
実質GDPについては、概ね2003年度並みの着実な成長を続け、国内企業物価についてはプラスに転じるが、日銀の量的緩和政策継続の基準としている消費者物価については小幅なマイナスが続くという内容です。
(4)今回回復の評価
2002年1月に始まった今回の景気回復は既に2年余りを経過しています。1990年代の過去2回の回復局面と異なり、私は今回の3度目の回復はある程度持続性を持った回復となり、デフレ克服につながる可能性があると考えています。
その理由は、
第1に、回復を主導している海外環境が、米国に加えて、中国を中心とする東アジアという大きな柱があること、
第2に、産業界の構造改革による企業収益の回復とともに不良債権処理の進展など金融機関の経営健全化も進んでいること、
第3に、内需が公共投資主導ではなく民間需要主導であること、
第4に、今回回復の代表商品であるデジタル家電を含む高付加価値・高機能の家電や乗用車は、日本のモノ造りの技術蓄積を活かせる製品であると同時に、海外も含め家庭における幅広い需要が期待できること、
但し、その回復のスピードは緩やかなものとなる可能性が大きいと思います。
その理由は、
第1に、内需の柱であり底固い動きをしている個人消費について、企業の人件費抑制指向は根強く、雇用者所得の回復がいまひとつの状況にあることに加え、諸アンケート調査を見ても、雇用不安、収入不安に加えて税や社会保障の負担増、年金や社会保険の給付縮小を懸念する意識が強いこと、
第2に、積極化している企業の投資姿勢についても、総じて設備投資はキャッシュフローの範囲内とし、出荷が増えても在庫は増やさない慎重さが続いていること、
第3に、製造業と非製造業、大企業と中小企業、都市部と地方といった較差を残しながらの回復であり、このため土地価格についても、都心部で一部に下げ止まりの兆しは見えるものの、地方も含めた全体としての地価の下落は続いていること、
第4に、このところ、原油をはじめとする内外商品市況が上昇しているが、厳しい競争環境等から最終財、サービス価格さらには消費者物価への波及は限定的であるため、好調に推移している企業収益に皺寄せがかかり易いこと、
総じて、回復のテンポが遅い分、回復の持続性が期待できる面もあるのではないかと思います。
こうした緩やかな、しかし持続性のある回復を通じてのデフレからの脱出という見通しに影響を与える可能性のある動きが、このところ特に海外経済において出てきています。
まず第1は、米国経済です。これまで米国経済において懸念材料の一つであった雇用について、5月7日に発表された4月雇用統計は非農業部門雇用者数が2ヵ月連続で前月差20万人増を超える大幅な改善となり、バランスの取れた順調な回復が確認されました。こうした中で、金融市場では米国の中央銀行であるFRBが早ければ今月29日、30日に予定されている連邦公開市場委員会で、現在1%というかつてない低水準となっている短期市場の目標金利を引き上げ、現在の超緩和的な金融政策を変更するのではないかとの予測が生じました。このため、米国の長期金利が上昇し、株価は下落しています。
第2は、中国経済です。2003年実質GDP前年比+9.1%という高い成長率となった後、中国政府は中央銀行である中国人民銀行貸出金利の上乗せ制度導入や銀行貸出に対する窓口指導強化など相次いで過熱抑制策を実施し、7%台の成長へのソフトランディングを図っていますが、5月17日に改訂された1~3月期のGDPは前年比+9.8%という高い伸びとなりました。中国政府が早めに打ち出した抑制策により適度な成長が持続することが期待されますが、一方で過度の減速のリスクや、逆に抑制策の効果が十分に発揮されないことによるバブルのリスクも懸念されています。
第3は、原油価格の動向です。これまで所謂、中国特需の影響等で上昇していた国際商品市況は、このところ一服状況にありますが、その中で原油先物価格は代表的な指標銘柄であるニューヨークのWTIで1バレル当たり40ドルを超えるなど既往ピークを上回る水準となっています。この急上昇はイラク情勢や産油国におけるテロ等による供給不安などが意識され、投機資金の流入もあって生じたものと見られています。今後、需給の実態を反映して価格の低下を予想する調査機関もありますが、一方でOPECはこれまで25ドルプラスマイナス3ドルとしていたOPECバスケット価格の目標価格を実質的に引き上げたとする見方もあり、不透明です。
本日6月3日ベイルートでのOPEC総会でも増産について議論が行われると見られています。日本の1次エネルギーのうち、原子力を国産とカウントしても海外依存度は約80%、その内、石油は約50%で、石油の中東依存度は85%という調達構造を考えると、十分な注意が必要と考えます。
3.金融政策運営の現状と見通し
(1)量的緩和政策採用以降の経緯
日本銀行は中央銀行として3つの主要な役割があります。第1は、銀行券を発行すること。第2は、金融政策により物価の安定を通じて経済の健全な発展に資すること。第3は、金融システムの安定を図ることです。
金融政策については3年余り前の2001年3月、それまでは他の先進諸国と同様、短期の市場金利を目標として金融調節を行っていましたが、バブル崩壊後の長く続いた景気低迷とその後生じたデフレの中で、短期の市場金利がほぼゼロまで低下した状況下、さらに金融緩和を進めるため、金融機関が日本銀行に持つ日銀当座預金残高の総額を目標とする、他の先進国にも例を見ない枠組みに変更しました。この枠組みを量的緩和政策と呼んでいます。
金融機関はもともとこの当座預金に一定の残高(現在は合計約6兆円)を準備預金として保有することを義務付けられていますが、その義務付けられた金額を超えて大量の資金が無利子の口座に積み上がるほど潤沢に金融機関に資金を供給して貸出などに資金が回り易くすることとしたのです。
また、この時、日本銀行はこの枠組みを「消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」とのコミットメントによって、デフレ克服に向けた強い意思を示しました。
その後、3年余りの間に海外では9.11をはじめとするテロやイラク戦争、SARSの流行、国内では都市銀行や大手地方銀行に対する公的資金の注入、さらには株式、為替市場の変動などが発生しました。この中で、金融市場の安定や景気下支えを図るため段階的に目標額を増額し、本年1月以降はその目標額を30~35兆円程度と、所要準備額の5~6倍まで拡大しています。
また、昨年10月には量的緩和政策の継続の条件を明らかにするため「消費者物価の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで」とのコミットメントについて以下の3条件を示しました。
第1に、消費者物価の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できること、
第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないこと(具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していること)、
第3に、こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる、ということです。
(2)量的緩和政策の評価
この3年余りの量的緩和政策の効果としては、まず第1に金融市場に潤沢な資金を供給することによって金融機関の資金繰りに不安が発生することを防ぎ、金融システムの安定を維持してきました。
第2には、金融市場において短期金利がほぼゼロ%に抑えられたことに加え、日本銀行による量的緩和のコミットメントの結果として、やや長めの金利も抑えられ、先行きの金利予想も安定したことにより、企業金融を緩和された状況に置くことを通じて経済を下支えしてきました。
一方で、金融市場への潤沢な資金供給の、マネーサプライやGDP、物価等への影響を見ると、2001年3月以来本年4月末までの3年余りの間に、日銀当座預金残高と流通している日銀券、貨幣とを併せた所謂マネタリーベースは約+63%増加しましたが、家計や企業の持つ預金等に日銀券等を加えた所謂マネーサプライの増加は約+8%に止まっています。この間の実質GDPの増加は+4.0%、名目GDPは-2.1%のマイナス、消費者物価指数は-1.5%のマイナスです。
この背景としては、企業が過剰債務、過剰雇用、過剰設備の中で債務の返済を優先させていたことに加え、金融機関が自己資本の制約や地価下落に伴う借手の担保不足等から貸出に慎重であったことなどが、結果として金融政策の効果を限定的なものにしてきたと考えます。
しかし、昨年後半頃から状況は若干変ってきました。
第1に、雇用者所得は漸く下げ止まりつつあり、消費にも強めの動きが見られています。
第2に、企業も、輸出・生産の増加や企業収益の回復に応じて、設備投資に積極化しています。
第3に、金融機関も大手金融機関を中心に合理化努力による不良債権処理の進展や株価の回復によって経営体力を回復し、貸出姿勢を積極化しています。シンジケートローン、中小企業向けスモールビジネスローンなど貸出の多様化や、金融機関の貸出債権や企業の売掛債権などを裏付けとする証券化を積極的に進めるとともに、企業再生ビジネスにも力を入れるようになっています。これらを背景に、銀行貸出の前年比は引き続き減少していますが、減少幅は縮小しています。また、増資、社債、CPなどの直接金融は増加しています。
こうしたことから、今後、既に名目GDPの約21%という規模に達しているマネタリーベースのストックが家計、企業、金融機関の前向きの活動によって活用され、デフレの克服や持続性のある景気回復に繋がっていくことを期待しています。
(3)今後の量的緩和政策
本年度想定した+3%程度の経済成長を達成しても消費者物価前年比は小幅のマイナスが続き、デフレ脱出の時期はできるだけ早く来ることを期待していますが、2005年度以降となる可能性が大きいと考えます。従って、現在の量的緩和政策は、昨年10月のコミットメント明確化で示した3条件を満足するまで、なおしっかりと堅持していきたいと考えます。
今後、金融市場では、景気が回復を続け、消費者物価のマイナス幅が小さくなっていることもあって、日本銀行が早期に量的緩和を解除するのではないかとの予測が広まると、3ヵ月、6ヵ月という長めの短期金利や長期金利が上昇する可能性があります。景気回復に伴って金利が上昇するのは自然なことですが、実体経済から離れた動きはせっかくの景気回復に水を差す可能性があります。
こうした金融市場における、実体経済から離れた動きが生じないよう今後日本銀行としては、その時々の状況に応じて日本銀行の金融政策に関する考え方などを明確にお示ししていくことが必要と考えています。
将来、3条件が満足したかどうかの判断に当っては、早すぎず、遅すぎずが大原則ですが、私としてはどちらかといえば早すぎるリスクを重視して判断したいと考えています。
また、第3の条件である総合判断に当っては、私としてはその時点での景気の状況、土地価格を含む資産価格の状況、金融システムの状況などが重要と考えています。
4.金融政策の波及メカニズム強化
(1)市場型間接金融の重要性
これまで日本において、家計はその金融資産の相当部分を金融機関における預金の形で保有し、金融機関はその資金をもとに、主として土地等を担保として企業に貸出を行ってきました。
その結果、2003年末の日本の企業の資金調達構成を見ると、借入37%に対し市場性調達である株式・出資金、債券42%と、近年貸出のウェイトが低下してきていますが、それでも米国のそれぞれ14%、64%と比べると貸出のウェイトが高い形となっています。
こうした日本型の借入を中心とした企業金融の枠組みは、所謂メインバンクによる株式持合いを通じての経営面の支援と相俟って、戦後の経済成長に大きな役割を果たしてきました。しかし、この仕組みはバブル崩壊後の長く続くデフレの期間において、巨額の不良債権の発生に加え、株価下落による含み損の発生、さらに担保不動産価格の下落といった形で、結果として金融機関にリスクが集中し、円滑な企業金融を妨げることとなりました。
今後も金融機関による貸出の重要性は変ることなく、不良債権処理の進展に伴って金融機関の貸出姿勢も積極化していますが、これからの企業金融のあり方としては、株式、社債、CPなど直接金融の拡大とともに金融機関の貸出債権や企業の売掛債権などを証券化する資産担保証券市場の育成を通じた所謂、市場型間接金融の拡大によりリスクを広く投資家層が負担する仕組みが重要と考えています。
(2)市場型間接金融拡大への努力
日本銀行はこれまで、こうした市場型間接金融の拡大に向けての努力を続けています。
まず第1に、まだ未発達の資産担保証券市場育成の呼び水として昨年6月に日銀が直接、資産担保証券を買取る措置を決定し、さらに市場関係者のご要望も踏まえつつ本年の1月に買入の基準を緩和しました。これらは、資産担保証券市場の活性化に寄与していると見ています。
また第2に、幅広い市場関係者の参加を得て「証券化市場フォーラム」を開催し、証券化市場の発展のための具体的な課題や解決の方向性について検討し、4月22日に報告書を取りまとめました。この方向に沿って、日本銀行では、今後市場拡大に向けた「触媒」機能を果たすため、個別の証券化商品の概要について情報の集約や開示を行なっていくこととしています。
このほか、昨年11月、複数の金融機関が幹事行の取りまとめにより同一の契約に基づいて貸付するシンジケートローンの債権を、日銀オペの担保として受け入れることとしました。
5.終わりに
(1)金融知識普及への努力
金融知識の普及を目的とし、全国各地で講演会や勉強会を開催している「金融広報中央委員会」には、青森県においても県庁に本部を置く「青森県金融広報委員会」がありますが、日本銀行はそれらの活動を支援させて頂いています。また、証券化も含む様々な金融技術を活用した資金調達手法に関するパンフレットの作成などもしています。
日本人の1,400兆円の個人金融資産は、その50%以上が預金となっていますが、このところかつてない低金利の中で外貨建投信や不動産投信など新しい金融商品が多く開発され利用されています。また、従来どちらかと言えば預金優遇型であった税制も大幅に見直されています。さらに来年4月にはペイオフの全面解禁が予定されています。
それぞれの家計が、より豊かな生活を実現していくためには、しっかりとした金融知識に基づいてリスクとリターンを判断し、生活設計に合致した資産運用をすることが重要です。しかし、日本ではこれまで学校において金融教育は殆ど行われておらず、金融広報中央委員会が昨年実施した「金融に関する消費者アンケート調査」でも、「金融商品について」とか「金融商品にかかる税金について」といった設問では「ほとんど知識がないと思う」という回答が6割程度も占めました。
「金融広報中央委員会」は今年度から「マネー情報 知るぽると」の愛称の下に、各都道府県に設けられた金融広報委員会と連携してその活動を積極化することとしています。その一環として「金融学習特別推進地区」として東京都中央区との共同事業で各種講座を開催することとしています。
(2)終わりに
日本経済は回復しつつあると言うものの、中央と地方、大企業と中小企業、製造業と非製造業という較差は依然として大きく、回復の実感に乏しいという声も多く聞かれます。日本経済の本格的回復には、まず地域が元気になるということが肝要で、地域の企業、特に中小企業やベンチャーの元気が欠かせません。
青森県では、昨年11月に策定した「財政改革プラン」に沿って、財政健全化の取組みを着実に進めるとともに、平成16年度予算において、「ふるさと再生・新生重点枠経費」を設定し、「産業・雇用」、「福祉」、「環境」の3分野に重点的に経費を配分しつつ、全庁あげて各種施策の実施に取組んでおられると伺っています。地域の企業、特に中小企業やベンチャーの活性化という点では、それぞれの産業、企業における構造改革や商品開発、技術開発などのご努力が重要ですが、行政もこれらを「重点分野」と位置づけ、その参画のもとで、各種のプロジェクトが進行しています。まず、「新たな地域産業づくり」を目指し、「21世紀型産業政策の新たな展開」という基本理念に沿って、フラットパネル・ディスプレイ関連産業の集積ゾーンを整備する計画が進んでいると伺っています。また、構造改革特区に関しても、「津軽・生命科学活用食糧特区」「環境・エネルギー産業創造特区」「青森企業立地促進特区」の認定を受けておられます。
本日はこれから皆様より青森県の状況についてお話をお聞かせ頂きたいと思います。また、日本銀行に対するご意見、ご質問なども是非お聞きしたいと思います。
また、今後とも日本銀行、特に青森支店を引き続きご支援頂くとともに、是非その能力をご活用頂くよう、お願いいたします。
以上