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全国信用金庫大会における武藤副総裁挨拶要旨

2004年 6月25日
日本銀行

 本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。信用金庫業界の皆様方におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 わが国の景気は、昨年後半以降、輸出の増加が生産活動の活発化や企業収益の増加につながり、設備投資の拡大を促すという前向きの循環が働くもとで、回復を続けています。最近は、雇用面でも改善の動きがみられるなど、企業部門における回復の好影響が家計部門にも波及しつつあります。

 先行きについても、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくと予想されます。その背景としては、第一に、中国や米国を中心に世界経済全体が高めの成長を続けるもとで、わが国の輸出や生産、設備投資も引き続き増加すると見込まれること、第二に、これまでわが国経済の回復を遅らせてきた要因である企業の過剰雇用・過剰債務などへの取り組みが進捗してきており、輸出や生産の増加ともあいまって、企業収益が改善していることがあげられます。企業は、なお人件費抑制姿勢を維持していますが、今後、生産活動や企業収益がさらに強まっていく中で、雇用者所得への波及も次第に明確化していくものと考えられます。

 物価面では、景気の回復を反映した需給バランスの改善に加え、内外の商品市況高や原油価格の影響から、国内企業物価は当面、上昇を続けるものとみられます。こうした国内企業物価の上昇は、現在までのところ、川上ないし川中段階に限られており、川下段階への波及は、企業部門における生産性の向上などによって原材料コストの上昇が吸収されていることから、なお限定的です。このような状況のもとで、消費者物価は、基調的には小幅の下落が続くと予想しています。今後の物価情勢については、原油価格上昇が川下段階に与える影響も含め、丹念に点検していきたいと考えています。

 こうした経済・金融情勢のもとで、日本銀行は、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」という「約束」を行っています。こうした「約束」によって、先行きの金利予想の安定が維持され、企業が引き続き低利での資金調達が可能となる環境が整えられていますが、これに伴う景気支援効果は、景気が回復を続ける中で、より強まっていくと考えられます。日本銀行としては、このような政策効果を踏まえつつ、「約束」に沿って量的緩和を継続し、経済の持続的成長とデフレ克服の実現に貢献してまいりたいと考えております。

 次に金融システムの現状について申し述べます。わが国の金融システムは、取り組むべき課題がなお少なくありませんが、不良債権処理の進捗などを背景に、全体として健全性、安定性を徐々に取り戻しつつあります。

 本年3月期の銀行の決算をみますと、大方の先で、不良債権処理額の減少等から黒字を確保し、不良債権比率も大きく低下しました。信用金庫の皆様の決算は時期的に未だ出揃っていませんが、これまでのところ、銀行と同様に改善をみた先が少なくないと承知しております。こうした財務状況の改善は景気情勢の好転などによるところもありますが、皆様のこれまでの経営努力が実り始めた面もあると評価しています。

 こうした中で、地域経済の活性化に向け、企業再生への取り組みが、多くの地域金融機関にとって非常に重要な課題となっています。近年、この分野では、様々な枠組みが整備・拡充されてきているほか、専門家の育成も進んできているように思います。地域経済や地元中小企業の経営動向に精通した信用金庫の皆様が、外部のノウハウなどの活用も視野に入れつつ、成果をあげていかれることを期待しております。

 また、顧客ニーズ等の変化に応じた商品やサービスの提供が、信用金庫の皆様の収益力強化の観点からも、ますます重要になってきています。その際、そうした各種業務に付随するリスクに十分目配りしてくことも必要かと思います。

 来年4月にはペイオフ全面解禁が控えていますが、皆様のご努力により、余裕をもってこれをクリアーされ、信用金庫業界が、今後とも益々、発展されていくことを祈念して、ご挨拶に代えさせて頂きます。

 ご清聴有難うございました。

以上