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全国証券大会における総裁挨拶要旨

2004年 9月16日
日本銀行

 本日は、全国証券大会にお招きいただき、誠にありがとうございます。証券業界の皆様には、日頃から、私ども日本銀行の政策や業務運営について多大なる協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

 私からは、最近の金融経済情勢や金融政策運営、ならびに金融資本市場におけるインフラ整備の動きなどに関しまして、私どもの考えを申し述べ、ご挨拶に代えたいと存じます。

 わが国の景気は、世界経済が拡大を続けるもとで、昨年夏頃から回復を続けています。輸出の増加が生産活動の活発化や企業収益の増加につながり、さらに設備投資の拡大を促すという前向きの循環が作用しています。また、雇用者数の改善傾向が続いているほか、個人消費もこのところやや強めの動きとなっています。

 一方、これまで高めの成長を続けてきた米国経済については、エネルギー価格の上昇などを背景に、幾分減速感がみられています。もっとも、ひところ弱めの指標がみられた個人消費や雇用に持ち直しの動きがみられるほか、企業活動が引き続き好調であることなどを踏まえると、景気拡大のモメンタムは維持されていると考えられます。

 このように、米国経済をはじめとする海外経済の拡大がより持続的なペースに移行しつつあるもとで、わが国の輸出や生産の伸びも足許やや鈍化しています。また、企業収益から雇用者所得への波及も、これまでのところ緩やかなものにとどまっています。もっとも、海外経済が拡大を続けていることや、設備投資や個人消費といった国内需要も引き続き増加していることなどを踏まえると、わが国景気の回復基調に変化はないと考えられます。今後、企業収益増加の好影響が雇用者所得に波及していくことなどを通じて、景気回復の前向きの循環が明確化していくものとみています。

 この間、物価面では、景気の回復を反映した需給バランスの改善に加え、原油高の影響もあって、国内企業物価は素材や中間財などを中心に上昇しています。一方、消費者物価の前年比は小幅のマイナスとなっています。これは、基本的には、生産性の向上や人件費の抑制を通じて、最終的な製品やサービスを生み出すためのコストが低下しているため、原材料価格の上昇が企業部門において吸収されていることによるものです。秋口以降は昨年の反動で米価格の低下が見込まれることも考慮すると、消費者物価は引き続き小幅の下落基調で推移するとみています。

 経済情勢に関する当面の注目点としては、原油価格の上昇が挙げられます。原油価格は、世界需要の拡大や地政学的リスクに対する懸念等を背景に引き続き高値圏で推移しています。原油価格の上昇は、物価面で上昇要因となるほか、企業収益や家計の支出行動に悪影響を及ぼすことを通じて、国内外の景気回復にとってマイナス要因となり得ます。このため、原油価格上昇の影響については、経済および物価の両面で注意してみていく必要があると考えています。

 次に、金融政策運営に対する考え方について申し上げます。日本銀行は、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」という「約束」のもとで、潤沢な資金供給を続けています。こうした「約束」によって、先行きの金利予想の安定が維持され、企業は引き続き低利での資金調達が可能となるため、これに伴う景気支援効果は、景気が回復を続け企業収益が改善するもとで、より強まっていくと考えられます。日本銀行としては、このような政策効果を踏まえつつ、「約束」に沿って量的緩和政策をしっかりと継続していく所存です。

 ところで、わが国経済を活性化していくうえで、金融資本市場を通じた金融仲介機能の一層の向上を図っていくことが従来にも増して期待されています。こうした観点からは、まずは、多様な利用者のニーズに的確に応えた商品・サービスの提供が重要です。この点、市場の主要な担い手である証券業界の皆様方が、近年、様々な証券化関連商品等への取組みを強化されていることは、大変心強く感じています。そうした中で、多彩な商品の提供を通じて、証券取引が多様な投資家の間で活発に行われ、市場における価格発見機能が高まれば、取引の効率性が向上するだけでなく、日本経済の活力を高めることにも大きく貢献すると考えています。今後とも、証券業界の皆様方の更なる創意工夫により、市場取引の一層の充実と活性化が図られることを期待しています。

 こうした市場を通じた金融仲介機能の向上のためには、市場インフラの整備も重要です。この面でも、近年、決済の効率性や安全性向上に資する様々な取組みに関して、着実な進捗がみられています。例えば、有価証券のペーパーレス化を可能とする法制が整備され、振替決済の仕組みが構築されつつあります。また、国債や株式の取引の清算機関が設立されたほか、国債等に加え株式の取引についても証券と資金を同時に決済する仕組みが整えられました。今後は、一般債や株式のペーパーレス化への対応、取引の約定から決済までの一連の事務を人手を介することなくオンラインで処理する仕組み(所謂「STP化」)の構築、約定から決済までの期間の短縮化に向けた取組みなどが、市場インフラ面での重要な課題と考えられます。証券業界の皆様方には、こうした課題に対しても引き続き積極的な取組みをお願いしたいと思います。

 日本銀行としても、私どもが振替機関となっている国債の決済の分野や各種証券取引に係る資金決済を中心として、皆様方とともに、一層効率的で安全な証券決済システムの構築に向け、努力してまいりたいと考えています。

 最後になりましたが、皆様方の一層のご発展を祈念して、ご挨拶と致します。

 ご清聴有難うございました。

以上