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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成16年10月28日、参議院財政金融委員会における福井日本銀行総裁報告

2004年10月28日
日本銀行

[目次]

はじめに

 日本銀行は去る6月、平成15年度下期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、国会に提出いたしました。本日、日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

日本経済の動向

 最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、回復を続けています。その背景についてご説明しますと、世界経済は、これまでの高めの成長から幾分速度を落としつつも、拡大を続けています。米国では、原油価格上昇の影響などから、個人消費が減速しているほか、雇用拡大のテンポも春先に比べれば鈍化しています。しかしながら、企業収益や設備投資は増加を続けており、景気拡大のモメンタムは維持されているとみられます。また、東アジア経済も、中国を中心に高めの成長を続けています。

 こうした世界経済のもとで、わが国の輸出や生産は伸びがやや鈍化しつつも増加傾向を続け、これが企業収益の好転をもたらし、設備投資の拡大を促しています。こうした「前向きの循環」が働いていることが、今回の景気回復の一つの背景です。

 また、企業の過剰投資・過剰債務・過剰雇用や金融システムの脆弱性といった、これまでわが国経済の回復を遅らせてきた構造的な要因の調整がかなり進んできていることが、景気回復の二つ目の背景として挙げられます。そうした調整が進展している成果として、企業収益は大きく増加していますし、雇用面の改善傾向も続いています。

 先行きについては、原油価格の高騰が内外経済に与える影響や世界的なIT関連需要の動向等に留意していく必要はありますが、世界経済が拡大を続け、わが国でも構造的な調整圧力が和らいでいくもとで、景気は回復を続けるとみております。

 次に、物価面についてみますと、国内企業物価は、原油を始めとする内外の商品市況高や需給バランスの改善を反映して上昇しています。一方、消費者物価(全国、除く生鮮食品)は、企業部門における生産性の向上や人件費の抑制等が商品市況等の上昇の影響を吸収する効果もあって、小幅の下落を続けています。

 金融面では、日本銀行の潤沢な資金供給のもとで、金融市場は総じて落ち着いた状況が続いています。資本市場では、長期金利は、年央にかけて幾分上昇しましたが、このところは1%台半ばで推移しています。また株価は、景気が回復を続けるもとで、総じて底固く推移しています。

 企業金融を巡る環境も、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にありますが、全体としてみれば、緩和される方向にあります。民間銀行の貸出姿勢は緩和してきており、企業からみた民間銀行の貸出態度も引き続き改善しています。また、民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきています。こうしたもとで、民間銀行の貸出は減少幅の縮小が基調として続いています。さらに、CP、社債といった資本市場を通じた資金調達環境も良好な状況が続いており、CP、社債の発行残高は前年を上回って推移しています。

最近の金融政策運営

 次に、最近の金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 日本銀行は、現在、日銀当座預金残高という「量」を操作目標として金融緩和政策を実施しています。具体的には「30〜35兆円程度」の目標値のもとで、金融市場に潤沢な資金供給を行っています。また、この金融緩和政策を「消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」という「約束」をしています。

 以上のような「約束」は、先行きの金利予想、ひいては市場金利を安定させる効果があり、そのもとで、企業にとっては引き続き低利での資金調達が可能となる環境が整えられています。このような金利を通じた景気支援効果は、景気が回復し企業収益が改善する状況において、より強まっていくと考えられます。

 こうした政策の効果を念頭において、日本銀行は、消費者物価指数に基づく「約束」にしたがって、量的緩和政策を堅持しております。

 加えて、日本銀行は、金融緩和の効果を経済に幅広く浸透させるため、市場を通じる資金仲介の多様化・効率化にも取り組んでいます。このことは、長期的には、金融資本市場の整備に繋がっていくと期待されます。その一環として、昨年夏場から、資産担保証券の買入れを開始し、これまでに累計で約1兆5千億円の買入れを実施しております。

 さらに、本年5月より、国債市場の流動性向上という観点から、市場で不足する銘柄について、日本銀行が保有する国債を補完的に市場に供給する制度を実施しております。このように、日本銀行は、幅広く金融資本市場の整備に資する取り組みを進めており、今後ともそうした努力を続けていきたいと考えております。

銀行保有株式の買入れ

 なお、日本銀行は、株価の変動が金融機関経営ひいては金融システム全般に及ぼすリスクを緩和する趣旨から、銀行保有株式の買入れを行っていましたが、本措置については、本年9月末をもって終了しました。この間の買入れ額は、2兆180億円となりました。

おわりに

 日本経済は、世界経済が拡大を続けるもとで、今後も回復を続けていくと予想されます。これを持続的な成長とデフレ克服の実現に繋げていくためには、引き続き、幅広い経済主体の経済活性化に向けた取り組みが重要だと考えております。

 日本銀行といたしましては、景気が回復を続ける中にあっても、消費者物価指数を基準とする「約束」に沿って粘り強く金融緩和を続けることで、日本経済を金融面からしっかりと支援して参る所存です。

 ありがとうございました。

以上