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決済システムと日本銀行

12月 3日金融情報システムセンター(FISC)講演会における武藤副総裁基調講演要旨

2004年12月 3日
日本銀行

[目次]

  1. 1.はじめに
  2. 2.決済と日本銀行
  3. 3.安全で効率的な決済システムを目指して
  4. 4.小口資金決済
  5. 5.大口資金決済
  6. 6.証券決済
  7. 7.BCPの強化
  8. 8.決済のオーバーサイトと民間の努力
  9. 9.おわりに

1.はじめに

 本日は、金融情報システムセンター(The Center for Financial Industry Information Systems、以下FISC)の設立20周年を記念する講演会にお招き頂き、誠に光栄に存じます。

 私がご紹介するまでもなく、FISCは金融機関等における金融情報システムの活用や安全性確保等に関する重要な諸問題について、設立以来、様々な調査・研究を行ってきておられます。また、システム監査の指針やコンピューターシステムの安全対策基準等に関しても、積極的に各種の提言をされています。金融サービス業がITシステムに依存する度合いが益々強まっている状況の下で、こうしたFISCの長年に亘る活動はわが国の金融システムを強化する上で、大きな貢献を果たされてきました。日本銀行を代表して、FISCの皆様のこれまでのご努力に対し、心より敬意を表したいと思います。

 本日は貴重な機会を頂きましたので、FISCの活動とも関係の深いテーマである「決済システム」についてお話ししたいと思います。

2.決済と日本銀行

 言うまでもありませんが、貨幣経済の下では、企業や家計の経済取引は、殆どの場合、取引の代金の決済、すなわち「お金」の支払が伴います。この場合、「お金」と言っても、実際に銀行券を手渡すのは対面で行う小口のものに限られ、振込などにより銀行の預金を移転することで支払を行うケースが非常に多い訳ですから、当然ながら決済において銀行が大きな役割を果たします。更に、支払人と受取人が別々の銀行に口座を持っていれば、そうした預金の移転を行うにあたり、銀行同士の決済も必要になりますが、これは通常、銀行が中央銀行に保有する当座預金を振替えることで行われます。こうした銀行間決済を安全かつ円滑に行うためには、「銀行の銀行」として日本銀行が提供する決済サービスが不可欠となるわけです。日本銀行はわが国の中央銀行として様々な仕事をしていますが、「銀行」という名前を冠していることに示されるように、最も基本的な仕事は銀行業務(banking)であるということを強調したいと思います。

 金融政策という仕事も、政策の方向性が決定された後は、結局の所、各種の金融資産を売買し資金を供給するという銀行業務を通じて実行に移されるものです。日本銀行は明治15年に設立されましたが、大蔵卿である松方正義が三条太政大臣に提出した「日本銀行創立の議」及びその付属資料である「日本銀行創立旨趣の説明」によれば、日本銀行設立の大きな狙いの一つは、「銀行のコルレス網を整備し、全国各地の金融の繁閑を調整・平準化する」ことにあるとされており、全国的な金融市場と効率的な決済システムを作り上げていくことが設立当時から大きな政策目的とされていたことがみてとれます。当時と現在とで言葉は違いますが、中央銀行の原点は — 現代風の言葉に置き換えてみると —、銀行券と日銀当座預金という安全・確実な決済手段を提供し、これを通じて安全で効率的な「決済サービス」を提供することであるといえます。

3.安全で効率的な決済システムを目指して

 ここで、FISCが設立された1984年以降現在に至るまでの決済システムを巡る環境変化を振り返ってみたいと思います。言うまでもなく、過去20年間の最も大きな変化は、金融の自由化、グローバル化を背景に金融取引が飛躍的に増大し、これを反映して、決済量が大きく増加したことでした。

 そのような環境変化の下で、決済システム関係者にとっての第1の、そして最大の課題は、決済に伴う事務処理コストの増加にどのように対処するかということでした。従来の紙ベースによる決済方式では、大量の決済を安いコストで効率的に処理することが困難となったので、そこを「合理化」していくことが求められたわけです。こうした決済量の急増に対して、決済システムの関係者は、情報通信技術の発達を背景としたオンライン化の推進によって決済の効率化を進め、コストの引き下げに取り組んできました。例えば、1988年には民間金融機関と日銀を結ぶオンラインの決済システムである日銀ネットが稼動しました。日銀ネットの稼動前の日銀当座預金の決済は — 今では殆ど信じられないことですが —、人手で日銀小切手を物理的に受け渡すことによって行われており、そのために、日銀の建物の周りには、日銀小切手を運ぶ「お使いさん」の自転車が行き交うという光景が見られました。決済のオンライン化は、日銀当座預金だけでなく、国債、株式、社債、コマーシャル・ペーパーといった証券の大口市場取引の面でも進みましたし、最近は、個人の銀行振込や株式のネット取引の面でも大きな進展が見られます。決済のオンライン化は、そうした決済に要する様々なコストを節約するものであり、これによって、他の生産的活動により多くの資源を振り向けることが可能になるという意味で、経済の効率化にも貢献しました。

 第2の課題は、決済量と共に増大する決済リスクを管理し削減するという課題でした。例えば、わが国の主要な資金決済システムの一日当りの決済金額をみると、日銀ネットでは約78兆円、外為円決済制度 — 外国為替の売買やユーロ円の取引などに伴う「円資金の受払」を集中決済するシステム — では約19兆円、全銀システム — 国内の銀行振込や送金等の内国為替取引の決済を行うシステム — では約9兆円という巨額の資金決済が日々行われています。こうした資金決済システムにおいて、仮に何らかの理由で参加者の一人が予定どおりに決済を行えなくなった場合、その影響はあたかも「ドミノ倒し」のように次々に他の参加者に波及していくことになります。それだけに、そうしたリスク、すなわちシステミック・リスクを削減することは極めて重要な課題です。

 こうした決済リスクに対する認識については、過去、「日本では銀行は潰れない」と長く信じられていた時代には、率直に言って希薄な面があったことは否定できません。しかしながら、90年代半ば以降、一連の金融機関の破綻を背景に高まった金融システム不安を経て、決済リスクの管理、そしてその更なる削減の重要性に対する認識は格段に向上してきています。そして、この間の関係者の地道かつ継続的な取り組みによって、日本の決済システムの安全性は近年大きく改善・向上してきたといえます。

 次に、そうした決済の効率性、安全性という概念を切り口に、わが国の決済システム関係者によるこれまでの取り組みや今後の課題といったことを説明したいと思います。決済システムの世界では、しばしば「小口資金決済」、「大口資金決済」、「証券決済」といった区分がなされます。「小口」とか「大口」と言っても相対的な概念であり、厳密な二分法は適切でもないのですが、一般に、大口資金決済とは、1件当たりの決済金額が大きく、金融機関間の短期資金取引や外国為替取引に代表されるような金融市場取引に関連した決済が多いのが特徴です。これに対し、小口資金決済は商品の購入や給与の受け取りに代表されるように、金額は相対的に小さいが取引件数が膨大な決済であることに特色があります。他方、証券決済とは、証券の売り手から買い手へ証券を引渡すことですが、反対方向の代金支払や、約定・決済照合といった決済の前段階の業務とも密接な関連があります。以下では、この分類法を用いて話をしたいと思います。わが国の決済システムの概観については、図表1を適宜ご参照頂ければと思います。

4.小口資金決済

現金

 まず、最初は「小口資金決済」です。国民にもっとも身近な小口決済手段と言えば、銀行券や硬貨といった現金であることは言うまでもありません。現金を利用した決済金額を捉えることは不可能ですが、近似的な指標として通貨流通高の対名目GDP比率をみると、わが国は、国際的にみても、図表2にみるように現金が際立って多く利用されています。図表3は過去1世紀にわたる銀行券発行高の対名目GDP比率を見たものですが、銀行券の利用は、そうした長い時系列でみても変わっていません。足許の動きを見ると、90年代後半以降の金融システム不安や低金利を背景に、いわゆる「タンス預金」が増えたことの影響もあって、銀行券発行高の対名目GDP比率は僅か10年程前の倍近い水準になっています。足許の水準はそうした特殊要因によって嵩上げされており、将来のいずれかの時点では長期的なトレンドに復帰すると考えられますが、そうした特殊要因は別にしても、銀行券は広く利用されています。随分昔から「キャッシュレス社会の到来」が言われてきたことを考えますと、不可解な動きに映るかもしれません。このようにわが国で現金の利用が多い背景としては、「日本人の現金好き」といった、言わば、文化論的な説明がなされることがありますが、それだけでなく、もう少し実体的な理由もあるように思われます。わが国で現金が使われるのは、使われるだけの利便性、安全性が備わっているからであり、その背後には、日々幅広い関係者がそのための努力を払っている側面も無視できないと思っています。例えば、CD・ATMの設置台数は国際的にみても非常に多く、ネットワークが充実しており、そのお陰で現金の入手が容易になっています。また、治安が良いために安心して現金を持ち歩ける、といった事情もあると思われます。

キャッシュレスの支払手段

 一方、キャッシュレスの支払手段としては、銀行振込やクレジットカード、小切手など、様々な種類があります。こうしたキャッシュレスの支払手段の利用状況について国際比較をしてみると、各国それぞれに特徴があります。例えば日本では、銀行振込や口座引落による決済が多くなっているのに対し、米国では小切手の使用が依然として多いほか、クレジットカードの利用が多いのが特徴です。また、欧州では、銀行振込や口座引落のほかに、デビットカードの利用も相対的に多い点が特徴として挙げられます。

 こうした利用される決済手段の国毎の違いには、各国の銀行制度の発展の違いという歴史的な事情をかなりの程度反映しているように思われます。例えば、米国で小切手の利用が盛んである反面、銀行振込等を取扱う決済システムがなかなか発達しなかった理由の一つとして、州際業務規制が比較的最近まで存在し、これによって全国規模の支店網の構築が妨げられたことの影響も指摘されています。

 他方、わが国においては、個人が小切手を利用しないため、米国と異なり、大量の小切手の物理的な処理に膨大なコストをかける必要がないという点で大変恵まれています。また、銀行振込等に利用される内国為替制度においては、わが国のほとんどすべての金融機関の店舗をカバーしているオンラインのネットワーク・システムである全銀システムが1973年に構築され、今日に至るまで、日本の小口決済システムにおいて中心的な役割を果たしてきました。このように小口の銀行振込等を、全国何処にでも当日中に実行できる効率的な決済システムは他国にあまり例はありません。わが国の消費者は、日頃はあまり意識することがないかも知れませんが、世界に冠たる決済システムとして誇ってよいと思います。

 こうした小口決済の分野は、民間の創意工夫の発揮が強く期待される分野です。実際、近年も絶え間ない技術革新を背景に、利用者にとって支払手段の選択の幅が広がるとともに、サービスの質も向上してきました。インターネット・バンキング、モバイル・バンキングなどのアクセス・チャネルも多様化しています。また、クレジットカードやデビットカードなどによる支払に加えて、最近では、カードをかざすだけでその情報を読み取れる、いわゆる「非接触型ICカード」技術を用いたプリペイドカード、あるいは電子マネーも、利用者・利用用途を拡大しつつあります。

国庫金事務の電子化

 小口決済に関連して、国庫金の取扱いについても、若干触れたいと思います。税金を納めたり年金を受け取るということは、典型的な小口決済ですが、この分野においても、近年関係者の努力で着実に進歩を遂げています。国税還付金振込、歳出金振込についての電子化に引続き、本年1月からは、金融機関のインターネット・バンキングやATMを通じて国庫金が電子的に支払えるようにもなりました。これにより、これまでのように金融機関の窓口の時間にとらわれず、「いつでもどこでも」国庫金が支払えることになり、納付者にとって大きな利便性の向上が図られるとともに、関係機関の事務という面でも合理化が図られることになりました。日本銀行は、政府における「電子政府」構想と歩調を合わせながら、民間の関係先とも協力しつつ、国庫金の電子的な受払を可能とするようなプロジェクトを推進することに努めてきました。

5.大口資金決済

 次に、決済の第2の範疇である大口資金決済について取り上げたいと思います。大口資金決済は1件当たりの決済金額が大きいために、先程述べたシステミック・リスクの問題が大きいという点が重要です。

RTGSへの移行

 そうしたシステミック・リスクが顕現化することを未然に防ぐために、決済システム自体の安全性向上への不断の努力が続けられてきています。安全な決済システムは安全である分だけコストが高くなる傾向がありますが、その結果、安全ではあっても使われなくなると、意味がありません。そのため、安全性の高いシステムについて、効率性・利便性を向上する努力も重要です。こうした決済インフラの改善・高度化の必要性は、言うまでもなく、民間の決済システムだけでなく、日本銀行自身の運営する決済システムにも当てはまります。この点で、最も重要な対応は、2001年1月に行った日銀ネットのRTGSへの全面的な移行であります。

 RTGSとは、ご承知の通り、「即時グロス決済」を意味する英語の"Real Time Gross Settlement"の頭文字です。この決済方法は、一言でいえば、「民間金融機関が中央銀行当座預金の資金振替を依頼した場合、中央銀行はこれを一つずつ即座に決済する」というものです。RTGSは、それまで主として行われていた「一定の時刻まで資金振替の指図を保留しておいて、受け・払いの差額のみを一括して決済する」という「時点ネット決済」に比べ、決済できない金融機関が1先でもある場合に顕現化するシステミック・リスクを大幅に削減する決済方法です。

 日銀ネットは、稼動当初から、このRTGSモードと時点ネット決済モードの両方の機能を持っていました。しかし、実際には、決済システムの参加金融機関の殆どが資金効率の良い時点ネット決済モードを利用し、RTGSモードの利用は極めて限定的でありました。日本銀行としては決済リスク削減の観点からRTGSへの全面移行が必要と判断し、関係者のご協力も得ながら、多大な経営資源を投入して全面移行の準備を進めました。この結果、2001年1月には、日銀ネットの当座預金・国債のいずれの決済についても、時点ネット決済を基本的に取りやめて、全面的なRTGSへ移行しました。これによって、わが国の大口資金決済システムの「安全性」の面では、大きな前進があったと評価しています。

 このようにRTGS化によって決済システムの安全性は大きく向上しましたが、新たな課題も発生しました。すなわち、時点ネット決済の場合、個別の金融機関は決済時点において資金の受け・払いの差額に相当する日中流動性だけを保有することで済みますが、RTGSの場合はそうした差額決済ができないため、日中に必要な流動性が格段に大きくなります。そこで日本銀行は、RTGS化の実施と同時に、担保の範囲内で決済に必要な流動性を機動的に供給する日中当座貸越の制度を整備しました。これにより、これまでわが国のRTGSは円滑に行われてきているものと評価しています。しかしながら、決済に必要な流動性を確保するためには担保というコストが発生しています。このコスト自体はRTGSが約束する安全性を得るための対価と言えますが、RTGSを更に高度化し、安全性を犠牲にすることなく流動性の使用効率を高める工夫があれば、事態は改善します。言い換えますとRTGSを円滑に回していくために必要な日中流動性の額を節約できるような工夫をすることによって、決済システムの「安全性」を維持しつつ、「効率性」も追求していくことが今後の大きな課題の一つとなってきているように思います。

大口資金決済システムの更なる改善に向けて

 こうした中、本年3月、全国銀行協会が「大口決済システムの構築等資金決済システムの再編について」と題する報告書を取り纏め、公表しました。その中で、決済に必要な日中流動性を節約できる機能を日銀ネットに導入することによって、日銀ネットのRTGSの仕組みを高度化した上で、現在一日一度の時点ネット決済で行われている外為円決済制度や、全銀システムの大口決済もRTGSの対象にすることが提言されています。RTGSの仕組みを高度化する具体的な方法としては、日銀ネットに日中流動性の節約を可能とするキュー機能とオフセッティング機能を導入することが提言されています。─ キュー機能とは、資金不足のため即座に決済できない支払指図を待機させておき、他からの入金により残高が増加した場合には自動的に決済する機能です。オフセッティング機能とは、キュー待機指図同士を組み合わせることで決済できるものがあれば、即座に決済する機能です。─ このような新機能は、情報技術の進歩やニーズの高度化などを反映し、欧州など海外のRTGSシステムでも広く採用されるようになってきています。

 効率性と安全性の両立をどのようにして図るかという問題意識は、日本銀行も共有しており、こうした検討を全国銀行協会が自主的に行っていることについて、これを高く評価しています。一方で、こうした提言内容を実現していくためには、新しい機能に相応しい市場慣行や、決済システム間の役割分担など、関係者間で真剣に検討すべき点も多いと思っております。日本銀行では、現在、こうした関係者の検討状況なども踏まえながら、本件への対応の是非や実現可能性について、鋭意検討しているところです。

外国為替取引における決済リスク削減

 先程も述べたように、大口資金決済は金融市場の決済と言い換えても良いかもしれませんが、代表的な大口資金決済の一つに、外国為替取引の資金決済があります。去る9月にBIS(国際決済銀行)が公表した調査の結果によれば、図表4にみるとおり、世界の外為市場では、今年の4月中の一営業日平均で、実に1兆9千億ドル近くの巨額の取引が行われています。この分野では、かねてから主要国の中央銀行が協力して、決済リスクの削減に取り組んできています。そうした取り組みの成果の一つが、2002年に稼動を開始した、クロスボーダーの多通貨決済メカニズムであるCLSシステムです。CLSというのは、外国為替取引の決済が個別取引毎に順次行われていくという意味のContinuousのC、2つの通貨の決済が一つのペアとして紐付けて行われるという意味でLinkedのL、それと決済つまりSettlementのSをとったものです。

 今申し上げた、「2つの通貨の決済をlinkさせること」が意味するところは、外為取引の決済リスクとはどういうものかをご説明することで、より明らかになると思います。例えば、円を売って米ドルを買う取引をした場合、これまでは、売買された円とドルは日米それぞれの決済システム等で別々に決済するほかありませんでした。こうした決済方法では、それぞれの決済システムがある国の間に時差があるために、一方の取引当事者が突然破綻すると、「自分は既に支払ったのに、受け取るべき通貨が受け取れない」という事態が生じるリスクが存在することになります。この点、例えば、わが国は米国のニューヨークよりも半日程度も早く朝がやって来るため、円とドルの取引では、円がドルに先立って決済されます。従って、円の売り手、すなわちドルの買い手はその後長時間に亘って円の先渡しによるドルの「取りはぐれリスク」、いわゆる「ヘルシュタット・リスク」、を負っていることになります。わが国は、極東という地理的な位置故に、こうした時差による取りはぐれリスクがもっとも大きな国のひとつであると言えます。

 こうした中、世界の大手金融機関は、こうした外為決済リスクの削減を目的に、国際的に「通貨の同時決済」を行う仕組みである、CLSシステムを2002年9月に本格的にスタートさせました。先程述べた例に則して言えば、CLSの下では、円とドルの支払が同時に行われるため、時差に起因する決済リスクを取り除くことができます。こうした決済方法のことをPVP(Payment versus Payment)方式と呼んでいます。CLSシステムは当初、円や米ドルのほか、ユーロ、英国ポンド等の主要7通貨を対象としてスタートし、その後、北欧の3通貨、シンガポール・ドルが加えられ、現在は11通貨を対象としております。本年中には、さらに香港ドル、韓国ウォン等4通貨が加わる予定です。

 日本銀行は、ニューヨークに設立されたCLS銀行に対し日銀当座預金口座の開設を認めることによって、CLS銀行と参加銀行との間における円のRTGS決済を可能としました。また、外為決済リスク削減に向けた市場関係者の対応を支援する観点から、他の中央銀行のRTGSシステムの稼働時間とオーバーラップする時間帯を拡大させるため、日銀ネットの当座預金系システムおよび外為円決済システムのグロス決済モードの稼動終了時刻を、従来の午後5時から7時まで延長しました。これにより、図表5のように日本時間の午後3時から6時の夕刻、欧州では午前7時から12時、北米では午前1時から6時の早朝にあたりますが、世界中で同じ時間帯に外為決済をPVP方式で行っています。

 以上のとおりCLSシステムは外為決済リスク削減のための有力な手段の一つでありますが、CLSを決済に利用しない取引も少なからずあり、各金融機関におかれては、経営幹部レベルの明確な責任において確立された外為決済リスク管理方針の下で、リスクを適切に測定し、取引相手に対する決済限度額の設定やそれらのモニタリングを適切に行うとともに、リスク管理方法の改善やリスクの更なる削減余地がないかを改めてご検討頂いたうえで、各種の方法の中から、自らの取引実態に照らして最も効果的なリスク削減策を採って頂きたいと思います。日本銀行では、今後も金融機関の外為決済リスク削減努力の進展を注視していきたいと考えています。

6.証券決済

 さて、ここまでは、資金の決済システムの最近の動向をお話ししてきましたが、証券の決済システムについても様々な取り組みが行われているので、その点についてもお話ししたいと思います。

 証券決済は証券の売り手から買い手へ証券を動かす訳ですが、その反対に、買い手から売り手への代金支払が伴います。このため、証券決済は資金決済と密接な関係にあり、証券決済システムの設計あるいは仕組みは、資金決済の安全性にも大きな影響を与えます。日本銀行が自ら国債の決済システムを運営すると共に、その他の証券決済システムのリスク管理策などに強い関心を有しているのは、こうした事情によるものです。

DVP決済の実現

 日本の証券決済については、ここ数年の間にさまざまな改革が進められています。その際のポイントの1つが資金・証券の同時決済、いわゆる「DVP(Delivery versus Payment)」の実現です。DVPは、先程ご紹介した外国為替取引の決済におけるPVPとよく似た仕組みです。要は「証券の振替をその代金の振替とワンセットにして、いずれか一方だけが行われることがないようにする」メカニズムで、これを導入すれば、証券を渡したのに代金が受取れないというような、時として巨額の損失につながる「取りはぐれリスク」を回避することができます。DVPによる決済方式は、まず国債について、日銀ネットの当預系のシステムと国債系のシステムをリンクすることで、1994年に実現されました。ついで、社債等の一般債、短期社債 ─ これは電子化されたコマーシャル・ペーパーのことですが ─、および株式について、証券決済システムの関係者と日本銀行が連携することで、DVP決済を実現させました。今後、後ほど述べますペーパーレス化された社債等の一般債についても、証券保管振替機構との連携によってDVP決済を実現させる予定であり、これにより、主要な証券についてDVP決済が揃うこととなります。このように、日本銀行は、DVP決済の実現を通じてわが国の証券決済システムの安全性向上に、大いに貢献していると言えると思います。

STPの実現へ向けて

 証券決済改革のポイントのもう1つは、取引の約定から決済までの一貫処理、いわゆる「STP(Straight Through Processing)」の実現です。証券決済におけるSTPとは、取引の約定から決済までの一連の事務を処理する各々のコンピュータを接続し、その間で直接データを受け渡しすることにより、こうした一連の処理を、人手を介することなく、効率的かつ安全に行う仕組みです。わが国では従来、この点がやや立ち遅れていましたが、決済の内容を照合する電子的なシステムなどの手当てが最近急速に進んできており、約定から決済までのシステムが接続されることでSTPが実現されつつあります。

証券決済におけるペーパーレス化

 ところで、DVPにしてもSTPにしても、決済する証券が「紙」として存在している場合には、なかなか上手く実現できないことは明らかです。例えば紙の証券を手渡しすることと日銀ネットでの資金決済をリンクすることは困難です。また、紙の受渡という煩瑣な事務が残っている限り、STPを実現することはできません。このため、証券決済改革においてはその基盤として証券をペーパーレス化しておくことが効果的です。この点、例えば国債では従来から99%以上が、紙ではなく帳簿上の記録の形で存在していましたが、それでも法律上は、紙の国債の存在が前提となっていました。しかしながら、2003年1月、統一的な証券決済法制である「社債等の振替に関する法律」が施行された結果、国債、社債あるいはコマーシャル・ペーパーといった証券を完全にペーパーレスにすることが可能になり、日本の証券決済の改革はしっかりとした法的基盤を持つことが出来ました。また、本年、「株式等決済合理化法」が成立し、株式についても完全にペーパーレス化するための法的基盤が整備され、2009年までに実現する予定です。

 以上に述べたDVP決済の実現、STP化の推進、証券の完全ペーパーレス化を可能とする法制度の整備は、ここ数年の間に急速に進化しつつあるものであり、これにより、わが国における証券決済の安全性・効率性は世界的にみても相当の程度に達しつつあると考えられます。

取引約定から決済までの期間の短縮

 証券決済の分野で、今後残された大きな課題としては、上で述べましたSTPの一層の推進により決済の効率化を図ることに加え、取引の約定から決済までの決済期間を短縮することによる更なる決済リスクの削減などが挙げられます。わが国では国債のアウトライト売買の場合、決済は約定当日から起算して3日後ですが、米国では翌日です。レポ取引は日本では2日後ですが、米国では即日です。国債は安全確実な流動性の高い金融資産ですが、日本の国債は国債の有する潜在的なメリットを十分活用しているとは言えません。上で述べたSTP化の推進を始めとする証券決済システムの改善は決済期間の短縮に向けた環境整備につながるものですが、今後、これを実現するために、更に何が必要かについて、市場関係者とともに、積極的に検討していく必要があると思います。

7.BCPの強化

 以上、わが国の決済システムを巡る最近の動向や、今後の課題・展望とともに、日本銀行がそれらにどのように関与しているかについても述べてまいりました。ところで、国際的に見ても、各国中銀は互いに競い合って、より良い決済システムの構築に向けて努力を重ねています。決済システムの安全性向上の面で、このところ、各国中銀が競って注力している重要な分野の一つに、災害、テロ等の緊急時における業務継続体制の整備・強化があります。この背景には、3年前の9月11日の米国同時多発テロ時の経験があります。テロ発生後、金融取引・決済の面でも、NYの3証券取引所が4営業日に亘って閉鎖されたほか、米国債市場においても2営業日に亘って取引が停止され取引再開後も1週間近くに亘り大量の未決済が発生するなどの影響があったからです。「業務継続体制」は英語で"Business Continuity Planning"という用語を当てることが多いので、以下BCPと略してお話します。

 日本銀行は、過去の非常時に、多大な困難を乗り越えて、なおその使命を果たしてきた経験が何回もあります。古くは、関東大震災の際に、大地震に無事に耐えて残った本店の堅牢な建物で、中央銀行としての機能を一日も停止することなく、非常事態に対処しました。また、約10年前の阪神・淡路大震災の際には、神戸手形交換所において5営業日に亘って全面交換停止を余儀なくされたほか、被災直後には被災地域の金融機関の半分程度の店舗で営業ができない状態にありましたが、私共の神戸支店では、現金の円滑な供給継続のほか、支店の建物の一部を、被災した民間金融機関の臨時窓口に提供することなどにより、被災地における金融機能の回復に努めました。日本銀行では、こうした過去の経験も踏まえながら、「非常時における金融面での最後の砦」との自覚の下で、BCPという言葉ができるずっと以前から、こうした緊急時の体制の整備に取り組んで来ています。

 特に近年では、自然災害だけでなく、テロ等を含めた様々な脅威の下でも、業務を継続・復旧するための体制整備に取り組んでいます。具体的には、複数の被災シナリオを選定したうえで、シナリオ毎に優先すべき業務を特定するとともに、必要な業務を継続し得るバックアップ施設を整備しています。また、対策本部や要員に関する制度を整備し、本支店ともに短時間で要員が参集し、必要な意思決定や業務を行える体制としています。さらに、緊急時にも輻輳が少ない手段を含めて様々な通信手段を確保するなどして、連絡体制の整備にも取り組んでいます。

 ところで、9.11以降、各国中央銀行が改めて取り組んでいるのが、広域被災を想定したBCPの整備・強化です。それまでのBCPは、どちらかというと、本店やコンピュータ・センターといった単独の拠点の被災を想定したものでした。これに対して、同時多発テロの教訓を踏まえると、被害が広域に及んだ場合の対応も考えておく必要が改めて確認されたからです。この点、日銀では、9.11以前から、大地震により関東が広域に被災し、東阪間の通信が2日間完全に途絶する、といった最悪の事態においても、なお、日本の中央銀行として最低限果たすべき業務を継続できるような体制を整備しています。具体的には、東京から500キロ離れた大阪にバック・アップ・センターを設け、いざという際には、大阪支店などの近隣支店のスタッフを活用することによって、日銀ネットの運行継続など、日本の決済システムの機能などを維持するために最低限必要な業務を続けられるよう、マニュアルの整備や訓練に加え、本店および大阪では近隣に要員を居住・宿泊させるなど、様々な手当てを行っています。

 災害発生時には、電気、水道、ガスなどの確保が非常に重要ですが、経済活動を支える上では、地震、テロ等の非常時においても、決済システムがその基本的な機能を維持することも、同様に極めて重要です。日本銀行では、「災害その他の緊急時に備え、日本銀行全体として、危機対応力の強化を図ること」を今年度の業務運営方針に掲げており、今後もBCPの強化に注力していく方針であります。しかしながら、わが国金融システム・金融市場全体の業務継続体制を強化していくためには、ひとり日本銀行だけではなく、民間金融機関、決済システム運営者、市場参加者などが相互に連携して体制整備を図っていくことが不可欠であると考えています。皆様の間でも、色々な場でBCPの強化についての議論や検討が進展していると聞いており、大変心強く感じております。今後とも、世の中を支える決済インフラを守っていくとの使命感をもって本件に取り組んで頂きたいと思います。私どもとしても、ご協力できることがあれば、積極的にお手伝いしたいと思っています。

8.決済システムのオーバーサイトと民間の努力

 本日これまでお話ししてきた話題は、主として、決済手段や決済サービスの提供者としての日本銀行の役割に関するものでした。日本銀行を含め各国の中央銀行は、決済手段や決済サービスの提供者としての役割以外の面でも幾つかの役割を果たしていますが、最も重要な役割は、民間主体が提供する決済システムについて、その安全性と効率性をモニター・分析し、必要があればその改善を働きかけていくという仕事です。英語では「オーバーサイト(oversight)」とよばれます。やや具体的に申し上げますと、日本銀行では、民間決済システムの運営者との議論や意見交換などを通じて、当該決済システムの運営や設計において、リスクの適切な管理・削減が図られるように促しています。これによって、参加者やシステムにトラブルが生じたとしても、わが国決済システム全体の安定的な運行に支障が生じないよう注意を払っているわけです。決済システムについては、その安全性・効率性の観点から満たすべきとされる国際的な基準が既に確立されてきており、日本銀行のオーバーサイトもそうした国際基準に基づいて行われています。

 また、決済システムのオーバーサイトは国内に限られるものではありません。金融市場や決済システムがグローバル化しているため、G10諸国の中央銀行間では、オーバーサイトにかかる協調体制が確立されてきています。日本銀行も、オーバーサイトにかかる海外中央銀行との間のこうした協調の枠組みに参加しています。例えば、先ほど述べましたクロスボーダーの決済システムであるCLSシステムについては、取扱通貨を発行する各国の中央銀行と協調してオーバーサイト活動を行っています。

 ただ、ここで申し上げないといけないのは、民間決済システムの安全性・効率性の向上の面で、中央銀行によるオーバーサイトは重要な役割を果たしていますが、より重要なのは、言うまでもなく、民間決済システムの運営主体とその参加者自身による自主的な規律や努力であるということです。このことの意味を説明するために、決済システムにおけるリスク管理について触れたいと思います。現在の民間の全銀システムや外為円決済制度等は時点ネット決済システムですが、時点ネット決済システムに関する国際的な基準の一つに、「ランファルシー基準」と呼ばれる基準があります。この基準においては、時点ネット決済システムでは、(1)信用リスクと流動性リスクに関する明確なリスク管理策が必要であり、それは当該システムの運営者や参加者の責任を特定し、リスクを管理・抑制するインセンティブを与えるものでなければならないこと、(2)参加者の仕向超過額、すなわち参加者の支払額から受取額を差し引いた額、には上限が設定されなければならないこと、また(3)最低条件として、最大のネット負債額を有する参加者が決済不能となった場合でも、日々の決済をタイムリーに完了させることができなければならないこと、などが定められています。全銀システムを例にとると、参加金融機関はその仕向超過限度額をカバーするために約11兆円に上る担保を差し入れていますが、実際に債務不履行が生じた時には、この担保を処分する約束となっています。わが国においても民間決済システムにおけるそうした自主規律に基づく決済リスク削減策は、決済債務の全額保護といった預金保険制度の枠組みが導入された下でも、そうした制度に依存することなく、引続き必要とされるべきものです。日本銀行としては、こうした民間の決済システム関係者の皆様の取り組みを、今後も支援していきたいと考えています。

9.おわりに

 本日は、わが国の決済システムの現状や当面する課題について話をさせて頂きました。最後に、決済システムの改善・改革ということについて、多少感想めいた話をしたいと思います。

 どの国でもそうですが、決済システムの改革は、具体的で切迫する事情が生じて初めて進むという性格を持っているように思います。例えば、米国において国債のブック・エントリー・システムが稼動したのは、60年代の米国において、国債が現物の証券のみで発行されていたことによって生じた「ペーパー・クライシス」や現物証券の搬送に係る保険拒否の動きが直接のきっかけでした。2001年初の日銀ネットのRTGS化は、90年代の一連の金融システム不安の発生を契機に、決済リスクに対する関係者の認識が高まることによって初めて実現しました。現状、決済システムの改善・改革の動きは、国により早かったり遅かったりという違いがあります。金融市場のグローバル化が進展する下で遅かれ早かれ各国の決済システムは収斂していくとも言えますが、同時に、変化の潮流を認識し必要な行動を早く取れるかどうかが、その国の金融システム、ひいては経済の競争力を左右するとも言えます。明治の初めに、大蔵卿の松方正義が「日本銀行創立の議」を提出したのもそうした思いからではなかったかと想像します。

 それでは、何故、時として決済システムの改善・改革が遅れるということが起こるかを考えてみますと、幾つかの理由が挙げられます。第1に、最も大きな理由としては、決済システムの改善・改革による利益は経済や社会全体に薄く広く共有されるものであり、直接的には見えにくいという性格が背景として挙げられます。しかし、決済システムが効率的でないと、金融機関は、そして最終的には国民が不便を蒙りますし、安全でないと、円滑な信用仲介機能も制約され経済活動に影響が生じます。第2に、決済システムの改善・改革に要する金銭的なコストの方は具体的に目に見えるものであるだけに、短期的に見ると、どうしても採算が合いにくい、という事情があります。更に第3の理由として、決済システムに関わる関係者が広範囲に及ぶため、改善・改革に必要な関係者の合意を取り付ける作業が膨大で、調整コストが飛躍的に増加するといった事情も指摘できるでしょう。しかし、決済の効率性も安全性も決してタダで実現するものではなく、資源 — 金銭的な支出と人的資源 — を投入して初めて実現するものです。

 わが国の決済システムを巡る先行きの環境を展望しますと、地震や台風といった自然災害のみならず、テロによる決済システムの被害を始めとして、決済システムを取り巻くリスクが益々増大し多様化していくと予想されます。それだけに、より安全かつ効率的で、わが国の金融・経済活動の競争力向上に貢献し、かつ緊急時にも機能する頑強な決済システムを構築していくために、本席にご出席の皆様を始め、幅広い関係者が協力して、今後も不断に努力を重ねていくことが重要です。

 その際にとりわけ強調したいのは、決済システムの安全性・効率性の向上には、幅広い関係者による、先行きを見越した、意識的な努力と強い決意が不可欠であるということです。この点、現在のように、短期金利がゼロで、流動性が潤沢に供給されている状況の下では、決済に必要な流動性の調達コストを意識することがないため、決済システムのインフラに対する投資のリターンを実感することが従来以上に難しくなっています。しかし、一方で、決済システムの整備・改善は一朝一夕に成し得るものではありません。先ほど、お話したRTGSへの全面移行の例でも、96年12月の構想発表から2001年1月の実現まで4年余りもの月日がかかっています。

 決済システムというのは時代と共に進化し続けるものです。わが国においては、金融機関の体力が長年の不良債権処理によって低下したことに加え、先程述べたように、現状は決済に必要な流動性が潤沢に供給されていることもあって、こうした進化のスピードが必ずしも十分ではなかったとの見方もあるかも知れません。この点、欧米主要国をみると、80年代後半から90年代の前半に大口決済システムのRTGS化が進展し、その後、2000年代に入ってからは、米国のCHIPSやドイツのRTGSplus等にみられるような決済リスクの削減と資金効率の良さを両立させる、所謂ハイブリッド決済へと進化する動きが相次いでいます。わが国においても、金融システムを巡る環境が漸く好転してきた今こそ、決済システムの整備・改善に向けて進化し続ける世界の潮流を見据え、これに遅れることなく、わが国金融・資本市場の国際競争力を維持・強化させていく時期であると思います。こうした整備・改善にはコストと時間がかかることを勘案すると、決済システムの更なる改善へのコミットメントを、経営トップのレベルで確かなものにして頂くことが何よりも重要です。日本銀行としても、決済システムの改善・改革に向けて今後とも最大限の努力をしていく決意であることを申し述べて、私の話を終わりたいと思います。

 ご清聴有難うございました。

以上