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労働金庫連合会50周年記念式典における総裁挨拶要旨

(稲葉理事代読)

2005年 5月27日
日本銀行

 本日は、労働金庫連合会の50周年記念式典にお招き頂き、誠に有難うございます。労働金庫連合会の皆様におかれては、「ろうきん」の中央金融機関として、会員の福利共済活動を支え、国民生活の充実に貢献しておられます。皆様方のご努力に対しまして、深く敬意を表したいと思います。

 また、皆様方には、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 わが国経済は、昨年夏以降、IT関連財の生産・在庫調整が深まったことなどから、景気の「踊り場」が続いています。もっとも、景気回復の基本的なメカニズムはしっかりと維持されており、最近では、生産も持ち直しつつあります。わが国経済は、遠からず「踊り場」を脱し、持続性のある成長軌道に向けて回復を続けていくものとみています。

 この間、企業部門の生産性の向上や人件費の抑制を背景に、景気回復に物価が反応しにくい状況が続いており、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスが続いています。先行きについては、2005年度は、規制緩和等に伴う電気・電話料金の引き下げの影響もあって、前年比ゼロ近傍での推移にとどまると予想されますが、2006年度は、これらの特殊要因の影響が剥落する中で、前年比プラスに転じる可能性が高いと予想されます。

 先週末の金融政策決定会合では、現在の当座預金残高目標(30~35兆円程度)を維持することを決定しました。その際、現在の金融市場調節方針の「なお書き」に、「資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高目標を下回ることがありうる」旨を追加しております。

 金融市場の状況をみますと、金融システム不安の後退を背景に、金融機関の流動性需要が減少しており、資金余剰感が強まってきています。「なお書き」の修正は、こうした情勢を踏まえ、「30~35兆円程度」という当座預金残高目標は維持したうえで、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高が一時的に目標値を下回ることがありうることとしたものです。

 日本銀行としては、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで」という約束に沿って、粘り強く量的緩和政策を続け、日本経済を金融面からしっかりと支援して参る所存です。

 次に金融システム面をみますと、全般に状況は改善しており、4月からのペイオフ全面解禁も円滑に実施できました。この10年余の間、わが国金融システムは不良債権問題に苦しんできましたが、そうした状況も大きく変化し、新たな時代を迎えつつあります。

 今後は、各金融機関が、顧客ニーズに応えて創造的な業務展開を図るとともに、リスク管理や経営管理の高度化など、金融の高度化に向けた取組みを強化していくことにより、金融システム全体の機能度や頑健性を向上させていくことが重要です。この点、皆様におかれては、半世紀の長きにわたり、勤労者への金融サービスの提供等に尽力されてきました。近年、こうした個人金融の分野では、金融機関の各業態とも取組みを強化しており、関連業界からの新規参入の動きも活発化しています。海外でも、同様の動きがみられる中で、いくつかの国の協同組織金融機関では、業態内の統合や一体的な経営戦略を推進する動きがあります。皆様におかれても、組織統合を推進しつつ、商品・サービスの多様化や事務の効率化など、労働金庫全体で個人金融サービスのさらなる充実を図ってこられました。今後も、こうした取組みを強化することにより、わが国金融システムの機能強化ひいては経済のさらなる活性化に大きく貢献されることを期待しております。私どもとしても、こうした金融の高度化に向けた金融機関の取組みを支援して参る所存です。

 最後に、労働金庫連合会の創立50周年という記念すべき年を機に、「ろうきん」ならびに労働金庫連合会がますますご発展されることを祈念しまして、お祝いの言葉といたします。

 ご清聴誠にありがとうございました。

以上