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全国信用金庫大会における福井総裁挨拶要旨

2005年 6月23日
日本銀行

 本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。信用金庫業界の皆様方におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けています。具体的には、輸出は伸び悩んでいますが、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、生産は緩やかに増加しています。設備投資も、高水準の企業収益を背景に増加を続けていますし、雇用面の改善や賃金の下げ止まりから、雇用者所得は緩やかながら増加しています。そうしたもとで、個人消費も底堅く推移しています。

 先行きについては、IT関連分野の調整の影響が弱まるにつれて、年央以降、回復の動きが次第に明確になり、緩やかながらも息の長い回復が続くとみられます。もっとも地域間格差がなお尾を引きずっている状況にありますし、経済全体についても、IT関連財の需要動向や原油価格の動向がもたらす影響など、引き続き注意してみていく必要があると考えています。

 物価面では、経済全体の需給バランスが基調として改善を続ける中で、国内企業物価は、原油価格上昇の影響などから、大幅に上昇しています。先行きについては、当面上昇を続ける可能性が高いものの、そのテンポは鈍化していくとみています。一方、消費者物価の前年比は、規制緩和等に伴う電気・電話料金引き下げの影響もあって、当面小幅のマイナスで推移すると予想されます。

 次に、最近の金融政策運営について申し上げます。5月の金融政策決定会合では、30~35兆円程度という当座預金残高目標を維持することを決定しましたが、その際、金融市場調節方針の「なお書き」に、「資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高目標を下回ることがありうる」旨を追加しました。また、先週の金融政策決定会合でも、この方針を維持することとしました。

 金融市場では、金融システム不安の後退を背景に、流動性需要が減少しており、資金余剰感が強まっています。「なお書き」の修正は、こうした情勢を踏まえ、当座預金残高目標は維持したうえで、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高が一時的に目標値を下回ることがありうるとしたものです。

 もとより、通常は、「30~35兆円程度」という当座預金残高目標は維持されます。金融市場に所要準備額を大幅に上回る潤沢な流動性を供給し、これを消費者物価に基づく「約束」に沿って続けていくという、量的緩和政策の枠組みにはいささかも変わりありません。

 次に金融システム面の動きについて申し述べます。本年3月期の信用金庫の決算は、多くの先で、さらなる不良債権比率の低下や収益の改善がみられています。これらは皆様方のこれまでの経営努力を反映したものと受け止めております。

 わが国の金融システム全体でみても、不良債権問題への対応が進捗し、自己資本の面での制約が大きく緩和された結果、最近では、より前向きな業務展開に向けて、経営資源の投入を積極化する金融機関が増えてきています。また、金融サービスに対する顧客のニーズが多様化・高度化しつつあることを踏まえ、預金以外の金融商品の提供チャネルを拡大する動き、さらには業務提携や組織統合など、幅広い金融サービスの担い手の間で連携を図る動きも広がってきています。他方で、こうした金融業務の多様化・複雑化を反映し、金融機関のリスク管理や経営管理を高度化していくことの重要性も一層高まってきています。海外では、協同組織金融機関においても、業態内の統合や一体的な経営戦略を推進し、協同組織全体として、商品・サービスの多様化やリスク管理・経営管理の高度化を図っている事例も見受けられます。信用金庫業界の皆様方におかれても、各金庫がそれぞれの地域の実情も踏まえた業務展開を図りつつ、金融仲介機能の効率性や頑健性をさらに高めていくことにより、地域経済の活性化に一層貢献していかれることを強く期待しております。

 最後になりましたが、日本銀行では、本年3月に公表しましたとおり、来月、信用機構局と考査局を統合した金融機構局を立ち上げ、同局内に金融高度化センターを設置するとともに、決済機構局を新設する予定です。こうした新しい組織体制の下で、信用金庫業界との情報交換や意見交換を一層密に行わせていただき、リスク管理や経営管理の高度化をはじめとする金融の高度化や、決済システムの安全性・効率性の更なる改善に向けて、皆様方とともに努力していきたいと考えております。

 ご清聴有難うございました。

以上