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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成18年 3月10日、衆議院財務金融委員会における福井日本銀行総裁報告

2006年 3月10日
日本銀行

目次

はじめに

 日本銀行は、昨年12月、平成17年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出いたしました。日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。日本銀行は、一昨日、昨日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、量的緩和政策の枠組みを変更し、短期金利を金融市場調節の操作目標とする金利政策に移行することを決定いたしました。本日は、こうした決定の背景にある経済・物価情勢や金融政策運営について、ご説明申し上げたいと思います。

日本経済の動向

 最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、着実に回復を続けています。

 この点をやや詳しくご説明しますと、輸出や生産は、増加を続けています。また、企業収益は高水準で推移しており、こうしたもとで、設備投資も引き続き増加しています。家計部門では、雇用者数の増加が続き、賃金も上昇に転じていることから、雇用者所得は緩やかに増加しています。雇用・所得環境が着実に改善しているもとで、個人消費は底堅さを増しています。

 先行きについてみると、海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられます。また、企業の過剰債務などの構造的な調整圧力が概ね払拭されたもとで、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を受けて、国内民間需要も引き続き増加していく可能性が高いと考えられます。このように、外需と内需、そして企業部門と家計部門がともに回復し、前向きの循環メカニズムが働く環境が整っていることから、息の長い景気回復が続いていくとみています。もとより、高騰を続ける原油価格やそのもとでの海外経済の動向など、景気に対するリスク要因については、引き続き十分注意を払っていく必要があると考えています。

 景気回復が続くもとで、物価を巡る環境も好転しています。消費者物価(全国、除く生鮮食品)は、昨年11月から小幅の前年比プラスとなり、本年1月の前年比は比較的はっきりとしたプラスになりました。経済全体の需給ギャップは緩やかな改善が続いており、ユニット・レーバー・コストの下押し圧力は基調として減少しています。さらに、企業や家計の物価見通しも上振れてきています。こうしたもとで、消費者物価指数の前年比は、先行きプラス基調が定着していくとみられます。この間、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に上昇しており、先行きも上昇を続けるとみられます。

 金融面では、企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にあります。民間銀行の貸出姿勢は積極化してきており、民間の資金需要は下げ止まりつつあります。こうしたもとで、民間銀行貸出は、貸出債権の流動化や償却を調整したベースでみますと、昨年8月に前年比プラスに転じた後、プラス幅が拡大してきています。

金融政策運営

 次に、金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 日本銀行は、2001年3月、物価の継続的な下落を防止し、持続的な成長のための基盤を整備する観点から、当座預金残高を主たる操作目標として潤沢な資金供給を行う量的緩和政策を導入し、この政策を消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するとの明確な「約束」を行いました。以後、約5年間に亘り、この「約束」に沿って粘り強く量的緩和政策を継続して参りました。

 こうしたもとで、日本経済は大きく改善し、着実に回復を続けています。物価面でも、消費者物価指数の前年比はプラスに転じ、先行きプラス基調が定着していくとみられます。

 こうした経済・物価情勢の好転を踏まえ、日本銀行は、一昨日、昨日と開催された政策委員会・金融政策決定会合において、量的緩和政策の枠組みを変更し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を金融市場調節の操作目標とする金利政策に移行することを決定いたしました。あわせて、金融政策の透明性を引き続きしっかりと確保する観点から、「物価の安定」についての明確化を含め、金融政策運営の新たな枠組みを導入いたしました。

 この点をやや詳しくご説明しますと、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、操作目標である無担保コールレートを概ねゼロ%で推移するように促すことを決定いたしました。量的緩和政策の経済・物価に対する効果は、既に短期金利がゼロであることによる効果が中心になっているため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではないと考えています。先行きの金融政策運営としては、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間を経た後、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に調整を行うことになります。この場合、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えています。

 また、日本銀行は、金融政策運営の新たな枠組みを導入しました。そのポイントを申し述べますと、第1に、日本銀行としての物価の安定についての基本的な考え方を整理するとともに、金融政策運営に当たり、現時点において、中長期的にみて物価が安定していると政策委員が理解する物価上昇率を示すこととしました。第2に、先行き1年から2年の経済・物価情勢の点検と、より長期的な視点を踏まえつつ金融政策運営に当たり重視すべきリスク要因の点検、という2つの「柱」に基づいて経済・物価情勢の点検を行うこととしました。第3に、こうした点検を行った上で、当面の金融政策運営の考え方を整理し、定期的に公表していくこととしました。

 日本銀行としては、こうした新たな枠組みのもとで、透明性の高い形で、適切な金融政策運営を行い、物価安定のもとでの持続的成長に貢献して参りたいと考えております。

 ありがとうございました。

以上