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わが国経済の展望について

京都府金融経済懇談会における武藤副総裁挨拶要旨

2006年10月5日
日本銀行

目次

1.はじめに

 日本銀行の武藤です。京都府の経済界を代表する皆様方とお話する機会を頂き、大変うれしく存じます。また、平素より、私どもの支店が皆様に大変お世話になっておりますことを、この席を借りて厚くお礼申し上げます。

 本日は、初めに、経済・物価動向の現状と先行きに関する私どもの見方をお話し、次に、最近の日本銀行の金融政策運営およびその背景にある考え方や枠組みについて、お話したいと考えております。

2.最近の経済情勢と先行き見通し

 まず、景気の現状についてですが、日本銀行では、半年ごとに「経済・物価情勢の展望」と題するレポート——私どもでは「展望レポート」と呼んでいますが、——を公表しており、その中で、先行き1年半から2年程度の経済・物価情勢の見通しを示しています。4月に公表した直近の展望レポートでは、2007年度までの期間を対象に、日本経済が、物価安定のもと、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれた形で息の長い拡大を続けるとの見通しを示しましたが、これまでのところ、わが国の経済・物価情勢は、この見通しに概ね沿った動きをしています。そのメカニズムのポイントは、(1)好調な世界経済とこれを背景とする輸出の増加、(2)設備投資や収益の増加にみられる企業部門の好調、そして(3)企業部門の好調さの家計部門への波及です。先行きについても、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、この展望レポートの見通しに沿って、景気は、物価安定のもとで息の長い成長を続けていく可能性が高いとみています。

 今回の景気拡大は、2002年1月に始まって以来、今月で4年9か月となります。戦後のこれまでの最長の景気拡張局面は、1965年10月から1970年7月まで続いた「いざなぎ景気」でしたが、今回の景気拡張局面は、丁度、今月でこの「いざなぎ景気」に並ぶことになります。そして、来月、「いざなぎ景気」を抜いて、戦後、最長の拡張局面になる可能性が高いとみられます。

 以下では、現在の景気拡大の状況、それから、この拡大が緩やかながら長期間に及んでいる背景について、先日、発表致しました「短観」——これは私どもが四半期ごとに、全国の約1万社の企業にアンケートへご回答頂く形で実施している調査ですが、——その9月調査の結果も参照しながら、やや詳しくお話したいと思います。

3.景気拡大の背景

(1)外需の動向

 まず、前提となる外需の動きをみますと、このところ米国における景気拡大のペースダウンがはっきりとしてきていますが、世界経済は、全体としては、地域的な広がりを伴いつつ、拡大を続けています。先月、国際通貨基金が公表した「世界経済見通し」でも、世界経済の実質成長率は、4月時点の見通しから若干上方修正され、2006年に+5.1%、2007年に+4.9%の成長が見込まれています。また、シンガポールで行われた先月のG7では、原油価格上昇の可能性、一部の地域におけるインフレ予想の高まりなどのリスク要因はあるが、世界経済が引き続き堅調な拡大を続けていることが確認されたところです。

 地域別にみますと、米国では、設備投資や生産が増加傾向にあり、景気拡大が続いていますが、これまでに比べると、拡大のピッチは緩やかになってきています。住宅建設の面では、住宅着工戸数や新築一戸建て販売戸数が前年割れとなっているほか、住宅価格の伸び率は、鈍化傾向が続いています。住宅価格の下落は資産効果を通じて、家計の消費にマイナスの影響を与えるのではないか、という懸念がある一方で、原油価格が一頃に比べて落ち着きをみせていることが消費にプラスの影響を与える、との見方もあり、今後の個人消費の動向や消費者コンフィデンス指標が注目されます。物価面では、原油価格や高い稼働率を背景に、インフレ・リスクが引き続き存在します。先行きについて、FRBでは、景気減速やこれまでの利上げの累積的効果などから、インフレ圧力は次第に緩和する可能性が高いとしています。私どももこの点を注意深く見守っていきたいと考えています。

 一方、欧州では、輸出や生産が増加するなかで、このところ雇用、設備投資にも回復傾向が現れており、景気回復の動きが、より確かなものとなってきています。また、東アジアについては、中国が、設備投資と輸出に牽引されて、前年比+10%を超える実質経済成長を続けており、今後も高い成長を持続するとみられます。投資過熱を懸念する声もあり、中国人民銀行は、段階的に引き締め策を打ち出しています。設備投資の伸びは、7、8月に低下しましたが、今後とも上振れのリスクには注意が必要です。このほか、NIEs、ASEANでは、総じて緩やかな景気拡大が続いています。

 このような世界経済の拡大を背景に、わが国の輸出は、堅調な増加を続けています。

(2)内需の動向

 次に、国内民間需要の動きをみますと、民間設備投資が引き続き堅調です。企業の設備投資は、2003年度から連続して増加しており、短観の9月調査によると、今年度も、前年度から+8.3%増加する計画となっています。このように設備投資が好調である背景には、企業の過剰債務が解消されたこと、これまでの構造調整の過程で企業が設備投資を抑制してきた結果、既存設備が老朽化・陳腐化していること、そして、高水準の企業収益と内外需要の増加が続いていることなどを挙げることができます。今年度の企業の経常収益については、9月の短観調査によると、前年度を+1.8%上回り、2002年度から5年続けて増加する見通しです。

 このような企業部門の好調さは、家計部門にも緩やかに波及してきています。労働需給をみると、有効求人倍率は昨年12月以来、1倍を超える状態が続いており、完全失業率は、4.0%程度にまで下がってくるなど、引き締まり傾向にあります。また、雇用者数は、フルタイム労働者を中心に増加を続けています。賃金面では、今年の夏のボーナスは好調な企業収益に支えられて、まずまずの伸びとなりました。こうした中で、所定内給与は、前年並みの水準で推移しており、弱めの動きとなっていますが、これは、相対的に賃金の低い新卒を企業が積極的に採用していることが、全体の下押しに働いているほか、基本的には企業の人件費抑制スタンスが根強いことを反映したものであると考えられます。ただし、今後、労働需給の引き締まり傾向が続いていくならば、いずれは所定内給与にも影響を及ぼしていく可能性が高い、と考えられます。

 こうした雇用や賃金の状況を映じて、雇用者所得は緩やかな伸びを続けており、個人消費も増加基調にあります。一部の小売販売統計には、夏場にやや弱めの数字もみられましたが、これは夏の天候不順や、6月頃の株価下落による心理的影響などの一時的な要因が作用していたものと思われます。また、外食や旅行といったサービス支出は、増加を続けています。今後も雇用者所得の緩やかな伸びが期待できることから、個人消費は増加を続けていくとみられます。

 そして、生産面でも、このような好調な内外の需要に支えられて、増加傾向が続くという好循環が続いています。在庫については、出荷との対比でみて、全体としてはバランスのとれた水準にあります。IT関連財については、夏場から、在庫の伸びが出荷の伸びを上回る状況がみられますが、こうした動きは、新商品向けの意図的な積み増しなども影響しているとみられます。最近では輸出環境に改善の兆しが現れていることなどを踏まえると、大きな調整に発展する可能性は低いとみています。

(3)企業金融の動向

 こうした景気拡大の動きは、金融面にも現れています。企業の資金需要は、運転資金、設備資金やM&Aに向けた資金など、幅広い分野にわたり、増加に転じています。また、企業の資金需要の高まりを背景に、貸出債権の流動化や償却を調整したベースでみた民間銀行貸出の前年比は、昨年8月にプラスに転化して、最近では+2%台の伸びを続けています。

 貸出が2%以上増加している一方で、企業や個人の保有する現預金の総量であるマネーサプライの伸びは、最近では前年比+0.5%とやや弱めになっています。これは、家計や企業が、現預金からその他の金融資産へと選択の幅を広げていることによるものとみられます。景気拡大を背景に、株式や投信など、預金以外の金融資産の収益率は相対的に高まっています。また、金融不安が高まった時期には、預金保険の全額保護対象であった銀行預金への資金シフトが大規模に発生していましたが、金融システムが安定した現在、それとは逆に、銀行預金から株式や投信などに資金をシフトする動きが出てきたという面もあると思います。このように、マネーサプライの伸びが鈍化しているのは、日本経済や日本の金融システムが正常な状態に戻っていることを背景にしたものです。したがって、経済の持続的成長や緩やかな物価上昇と両立する動きだと考えています。マネーサプライは、金融環境などに関する情報を含む様々な指標の一つですが、必ずしも経済・物価の動向や金融の緩和度合いと同じ動きをするとは限らないことには、注意する必要があります。

(4)構造調整の進展

 今回の景気拡大が「いざなぎ景気」を超えんとするまでに長続きしている背景を、もう少し長期的な視点からみると、バブル崩壊以降続いていた企業や金融システムにおける構造調整圧力が、ほぼ払拭された、ということが挙げられます。

 多くの企業は、これまで10年以上に亘ってリストラに取り組んできた結果、過剰設備、過剰雇用、過剰債務の「3つの過剰」を解消するとともに、収益力を高めてきました。短観の生産・営業用設備判断DIをみると、企業の設備過剰感は、昨年12月調査の時点で解消し、今回の9月調査では、製造業で、幾分、不足感がみられるようになっています。また、企業の人手不足感を表す雇用人員判断DIをみると、昨年9月以来「不足超」が続いており、9月調査では、不足超幅が一段と拡大しました。また、有利子負債の対売上高比率は、下落傾向にあり、最近では極めて低い水準にあります。さらに、企業は、このようなリストラとあわせて、事業の選択・集中など経営面の取り組みを積極的に行い、付加価値の高い製品・サービスを生む力を強化してきました。こうした努力の結果として、収益力も、売上高経常利益率がバブル期のピークを上回るまでに高まっています。

 一方、わが国の金融システムについても、90年代以降、最大の懸案であった不良債権問題をほぼ克服し、安定と信認を取り戻しています。7月に公表しました「金融システムレポート」でもお示ししたように、不良債権残高減少による信用コストの減少あるいは引当金戻し入れなどによる収益増加、新規の資本調達などにより、銀行の自己資本は厚みを増し、自己資本に占める繰延税金資産のウエイトも減少しています。また、銀行には、98年以来、累計で12兆円に達する公的資金が注入されていましたが、昨年度までにはその約半分が返済され、今年度に入ってからも、大手行を含む先が完済するなどの動きがみられています。こうした自己資本の質・量両面での改善や自己資本制約の緩和を背景に、銀行のリスクテイク能力は全体として一段と回復しており、その融資姿勢も積極化しています。

 このように、企業部門、金融システム双方の構造調整が大きく進展したことが、今回の景気の底堅さを支えていると考えられます。

4.物価の動向等

(現状と見通し)

 このように景気が緩やかで息の長い拡大を続ける中で、物価情勢も着実に改善を続けています。需給ギャップ、すなわち経済全体の総需要と供給能力の差を推計してみますと、既に供給超過の状態を脱しており、今後も需要超過方向で推移していくとみられます。また、先ほど申し上げましたように、企業の設備や雇用人員に関する判断は、不足感を強めています。こうした状況を反映して、賃金は緩やかな上昇トレンドを続けており、製品1単位を作るのに必要な労働コスト、すなわち、ユニット・レーバー・コストの下落による物価への下押し圧力は、次第に緩和していると考えられます。

 個々の物価指標をみていくと、国内企業物価は、原油や非鉄金属などの国際商品市況が高値で推移していることなどから、上昇を続けています。また、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比も、プラス基調で推移しており、価格が上昇している品目は、原油高の影響を受けている石油製品ばかりではなく、様々な財・サービスに広がりをみせてきています。

 先行きについても、景気の拡大が続く中で、マクロ的な需給ギャップが需要超過で推移していくと考えられることから、物価のプラス基調が続いていくとみられます。ちなみに、短観や各種サーベイ調査の結果をみても、企業や家計が、先行き物価が上昇していくとの見通しを持っていることを示しています。

(消費者物価指数の基準改定)

 なお、消費者物価指数については、8月に基準改定が行われ、前年比の伸びが改定前よりも低めになっています。例えば、7月の消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比は、旧基準から0.4%ポイント下方修正されており、改訂幅は市場予想を上回るものでした。結論から申しますと、この基準改定は、私どもの物価を巡る基本的な判断に変更を迫るものではありません。幾分、技術的ですが、この点について補足しておきたいと思います。

 基準改定により伸び率が低下した要因としては、大きく次の3つを挙げることができます。1つ目は、指数算式上のリセット効果です。これは、パソコンなど価格下落幅の大きい品目については、それまで価格指数の水準が低くなって、消費者物価指数全体に対する下落寄与が小さくなっていたところ、基準改定で価格指数の水準が100にリセットされることにより、指数全体を押し下げる度合いが大きくなるというものです。2つ目は、薄型テレビなどの価格下落幅が大きい品目が新たに採用されたことです。そして、3つ目は、既存品目における指数算出方法の変更です。このうち、最初の2つの要因、すなわち、指数算式上のリセット効果と新規採用品目の影響は、概ね事前に予想されていたとおりでしたが、最後の要因、その中でも特に携帯電話通信料の指数算出方法が変更されたことの影響が大きかったとみられます。ただし、この最後の要因は、他の状況に変化がなければ、指数の変化から1年を経過すると剥落するものです。

 新基準でみても、消費者物価(全国、除く生鮮食品)は、本年入り後、持ち直しており、このところプラス基調で推移しています。先ほど、申し上げたように、マクロ的な需給ギャップが需要超過状態で推移していることを踏まえると、先行きも物価がプラス基調を続けるという判断に変わりはありません。

(先行きのリスク要因)

 このように、日本経済は、先行きも、物価安定のもとで、息の長い拡大を続ける可能性が高いとみられますが、いくつかのリスク要因も存在します。先ほども申し上げたとおり、米国経済の動向はアジア等他の地域の経済に影響を与える可能性があります。また、米国などのIT需要が下振れた場合、NIEs、ASEAN地域などのIT関連輸出に影響を与えると考えられます。原油価格についても、一頃に比べて落ち着きをみせていますが、地政学リスク等を背景とする供給懸念が完全に払拭された訳ではないため、その動向には引き続き注意が必要です。

 日本銀行では、次回の展望レポートを、今月末に発表する予定ですが、その中で、これらの点を含め、景気・物価情勢の現状と先行きのリスクについて、引き続き丹念に点検していきたいと考えています。

5.日本銀行の金融政策運営

(7月の政策変更)

 次に、金融政策運営について申し上げます。日本銀行は、今年3月に量的緩和政策を解除し、7月には、無担保コールレートのオーバーナイト物の誘導目標を概ねゼロ%から0.25%前後に変更しました。これにより、短期金融市場は、およそ5年ぶりに「金利のある世界」に戻ったことになります。その意味では、大きな環境変化があった訳ですが、市場参加者をはじめ各経済主体には、スムーズに受け入れられたように思います。コール市場では、7月の政策変更直後こそ、レートが強含む場面もみられましたが、その後は、金融機関の間の資金の融通が円滑に行われるようになり、安定的なレート・コントロールが実現しています。また、長期金利、株式、為替の動きをみても、市場が政策変更を落ち着いて受け止めたことを示しています。このように円滑に政策変更が行われた背景の一つとしては、私どもが3月の量的緩和政策解除の際に導入した「新たな金融政策運営の枠組み」が、市場参加者などとの対話のツールの一つとして有効に機能したことが挙げられると思います。

 この枠組みは、第1に、中長期的にみて物価が安定していると日本銀行の政策委員が理解する物価上昇率——これを「中長期的な物価安定の理解」と呼んでいますが—— を念頭において、第2に、この後ご説明します2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検を行い、第3に、その結果を踏まえて、先行きの金融政策運営の考え方を明らかにする、というものです。

 物価の安定とは、「家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」であると考えています。現在、私どもでは、消費者物価指数の前年比でみて0〜2%程度であれば、「中長期的な物価安定の理解」の範囲にあると考えています。「中長期的な物価安定の理解」は、経済構造の変化等に応じて徐々に変化し得るものですので、原則としてほぼ1年ごとに見直していくこととしています。

 次に、2つの「柱」による点検ですが、第1の「柱」は、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、もっとも蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路を辿っているか、という観点から点検するものです。第2の「柱」では、第1の「柱」が対象とする期間を超えるような、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な成長を実現するという観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検します。

 第1の「柱」については、日本経済が、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って、物価安定のもとでの持続的な成長を続けると判断しています。この見通しは、市場参加者などの経済主体が、先行きある程度の政策金利の変化を織り込んだ上で意思決定を行っていることを前提としています。したがって、経済・物価情勢が見通しどおりに展開している中で、それに応じて政策金利を変更することは、息の長い成長に繋がると考えています。そして、第2の「柱」による点検の結果としては、現在は設備投資などの過熱が生じている訳ではありませんが、金融政策面からの刺激効果が一段と強まっていく場合には、将来的に、投資活動が一段と積極的になる可能性があり、それを通じて経済・物価の振幅が大きくなるリスクに注意が必要である、とみています。7月の政策変更は、このような点検を踏まえた上で、わが国の経済が中長期的に、物価安定のもとで持続的な成長を続けていくためには、金利水準の調整を行うことが適当との結論に至り、実施したものです。

 この枠組みは、長い目でみてわが国経済が良好な成長を遂げることができるように、先行きの経済・物価動向を十分に見越して——「フォワード・ルッキングに」という表現がしばしば用いられますが、——金融政策運営を柔軟かつ機動的に行うという考え方に立って作られています。また、そうした政策運営を行う上で、市場参加者などの期待形成の重要性にも十分配慮し、日本銀行の経済・物価情勢についての認識や金融政策運営に関する考え方を発信し、金融政策運営の透明性を確保することとしています。

(先行きの政策運営)

 今後の金融政策運営についても、ただ今ご説明した枠組みに則って、経済・物価情勢を丹念に点検しながら判断していくことになります。具体的な政策変更の時期について予断を持っている訳ではありませんが、経済・物価情勢が4月の展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになります。この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面、維持される可能性が高いと考えられます。これまで繰り返し述べてきたように、金利水準の調整は、経済・物価情勢を良く見極めながら、ゆっくりと進めていくということです。

6.おわりに

 以上、日本経済の現状と先行き、および当面の日本銀行の金融政策運営についてお話してまいりましたが、最後に、京都経済についてお話しようと思います。

 京都の景気も、業種間、企業規模間での好不調のばらつきはあるものの、全体としてはこれまでお話した全国の動きと概ね同じテンポで、緩やかな拡大を続けています。先日、私どもの京都支店が公表した9月短観の結果からも、こうした景気拡大が続いていることを確認することができます。今年度の企業の売上は前年比+7.3%の増加、設備投資は前年比+8.2%の増加の計画となっていますし、雇用面でも人員不足感が続いています。また、業況判断DIは、このところ全国と同様にバブル崩壊以降最も高い水準で推移しておりますが、特に製造業は、当地でウエイトの高い電子部品等のIT関連企業を中心に、全国を上回って推移しております。

 京都は、長い歴史を誇るとともに多くの大学が集積するなど、有形・無形の知的・文化的資源に恵まれた地域です。産業面では、京都で育まれた伝統技術を時代のニーズを取り入れながら先端技術に進化させ、この技術を基に競争力の高い製品を産み出し、今や世界的に事業展開する多くの有力企業が本拠を構えておられます。また、引き続き繊維、食品を始めとした京都ならではの多様な伝統産業を擁しています。私どもの支店が、日頃皆様とお付き合いさせて頂いている中でも、大学と行政、産業界・金融界が連携したベンチャー企業育成などの産学公連携の動き、歴史・文化の豊富な観光都市としての魅力を生かした各種国際会議・国内会議の招致など、京都の特性を活用した様々な取り組みが行われていることを伺っています。来年5月には、この地で開催されるアジア開発銀行の年次総会で、私どもも京都の方々にお世話になります。このほか、歴史的な景観や街並みの保存を強化したり、観光客に対する「もてなしの心」を向上させるなど、いわゆる「京都ブランド」に磨きをかける取り組みがあることも伺っております。今後とも、こうした独自の優位性を有機的に結合させた様々な取り組みが、京都経済に一層の活力を与えるとともに、日本人の心の故郷として世界に誇れる街、京都に、一層の輝きを与えるものと期待しております。

 本日は、ご清聴頂き、有難うございました。

以上