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第四回沖縄金融専門家会議における岩田副総裁挨拶要旨

2007年2月8日
日本銀行

 日本銀行の岩田でございます。第四回沖縄金融専門家会議の開催を心よりお慶び申し上げます。

「知の集積」の進展

 沖縄金融専門家会議は、2004年2月にスタートし、今回で4回目を迎えることになりました。この会議は、様々な分野の金融の専門家が沖縄に集い、イノベーティブな金融サービスについて議論を深め、日本の金融資本市場に新しい風を吹き込もうという、大変意欲的な取り組みかと思います。

 第1回、第2回の会議では、沖縄県、名護市主導による金融に関する事案の研究会活動の発表を契機に、金融特区関連のビジネス化について様々なアイディアが出されました。

 そして前回の第3回会議では、それまでの会議の提言が具体的なアクションとして実を結ぶよう、民間企業による金融機能を活用したビジネスの事業化提案がなされました。沖縄の特性を考慮した投資企画やビジネスなどのプロジェクトが関係民間企業から次第に認知されていき、具現化していくことは大変重要であると思います。

 これまでの具体的な取り組みを振り返りますと、まず、「ファミリービジネス」という新しい切り口から金融サービスを再定義する試みがありました。一昨年12月に国内で初めてとなるファミリービジネスフォーラムがここ沖縄で開催され、そして先月開催された2回目となるフォーラムでは、国内外から著名な講師を招き、「事業承継と後継者選定・育成」をテーマに非常に活発な議論がなされました。

 また、昨年11月から「金融・人材育成講座」が開始されており、この講座には私どもの同僚である金融市場局長のほか那覇支店長が講師として参加しております。こうした取り組みを契機に、金融に関するより深い関心が広がり、また沖縄に金融の専門的知識を身につけた人材が育成されることを期待しています。

 そのほか「沖縄版電子マネー」についても、昨年2月に十数社によるコンソーシアムが立ち上がり、新たなビジネスモデルの構築に向け調整中である旨、伺っています。沖縄では電子マネーが他の地方に比べ身近なものとして使われているということは大変興味深く、先進的な取り組みとして刮目に価します。また、こうした決済手段が地域全体の活性化策として利用されるようになれば、IT技術を活用した金融サービスの新たな動きとして全国から注目を浴びることになるでしょう。

沖縄における金融ビジネスの更なる発展

 そして今回の会議では、金融と情報技術の融合を目指す新たなプロジェクトとして、金融・情報関連産業の拠点としての名護市における「金融・情報未来都市」構想が発表されます。

 金融に関する「知の集積」を目指した当会議は、アイディアを披露する場から、沖縄における具体的な取り組みを紹介する場へと徐々に進化しているようです。

 しかしながら、全国で唯一の金融に関する特区として、これが「地域経済活性化のための沖縄モデル」として完結するためには、まだまだ乗り越えねばならぬ山があります。他にはない金融の新しいビジネスモデルを構築し、沖縄発の事業を全国あるいは世界を相手に行うことは大変な事業です。そのためには、オフィスビルや電力、通信等のインフラ整備を進め、金融人材の育成・確保といったことも欠かせません。さらに行政当局が力強いメッセージを発信し、高い専門性を有する金融という分野での政策ビジョンを県民全体で共有していくことで、はじめて金融を中核とした都市というものが成立するのではないでしょうか。この沖縄に金融知の集積を図り、それが地域活性化や日本経済・金融全体の発展に繋がっていくことを期待しています。

 「金融特区」沖縄への期待の背景には、バブル崩壊後、欧米に大きく差をつけられてしまったわが国の金融ビジネスを如何に復興させていくか、という大きな課題があります。ようやく金融機関が様々な調整に目途をつけるとともに、変化する企業および家計のニーズに応じて着実に新たなビジネスモデルを発展させる局面に入ってきました。今後、こうした取り組みを一層進め、グローバルな競争力をつけていくことが急務です。

 その意味で、沖縄金融専門家会議は、新しい金融サービスのあり方を巡って、金融サービスを供給する側と需要する側が一堂に会し、対話をする場です。沖縄を一つの実験場としてどんなことが出来るか、日本銀行としても沖縄におけるこのような取り組みについて、引き続きサポートしてまいりたいと考えております。

 最後に会議の成功をお祈りして、私の挨拶の言葉とさせて頂きます。

以上