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全国信用金庫大会における武藤副総裁挨拶要旨

2007年6月21日
日本銀行

 本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠に有り難うございます。信用金庫業界の皆様方におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、緩やかに拡大しています。まず、輸出は、海外経済の拡大を背景に増加を続けています。また、企業収益が高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加しています。こうした企業部門の好調の影響は、家計部門にも波及しています。すなわち、企業の人手不足感が強まるもとで、雇用者数は堅調に増加しており、雇用者所得も緩やかな増加を続けています。そのもとで、個人消費は底堅く推移しています。このように内外需要の増加が続く中で、生産は増加基調にあり、在庫も、全体としてみれば、概ね出荷とバランスしている状態にあります。

 先行きについても、このように生産・所得・支出の好循環が作用するもとで、景気は息の長い拡大を続けていく可能性が高いと考えられます。ただし、米国経済など海外経済の動向や、原油価格の動きについては、今後とも、注意深くみていきたいと思います。

 物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇しており、目先、上昇を続けるとみられます。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の原油価格反落の影響などからゼロ%近傍で推移していますが、より長い目でみると、経済全体の需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想されます。

 金融面をみると、企業金融を巡る環境は、引き続き緩和的な状態にあります。CPや社債といった資本市場を通じた資金調達環境は良好な状況にあるほか、民間金融機関は緩和的な貸出姿勢を続けています。また、民間の資金需要は増加しており、こうしたもとで、貸出は増加しています。

 次に、金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 今後の金融政策運営については、4月末の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)において、経済・物価情勢の見通しとあわせて、基本的な考え方をお示ししたところです。すなわち、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えられます。日本銀行としては、今後とも金融政策を適切に運営し、物価安定のもとでの持続的成長の実現に貢献していく所存です。

 なお、日本銀行では、全国各地に所在する本支店や事務所を通じて、地域経済の現状把握に努めており、この面でも、皆様方には大変お世話になっております。今後とも、地域経済の状況を含め、きめ細かく金融経済情勢を点検しながら、日本経済の現状と先行きを的確に判断して参りたいと思います。

 次に、金融システム面について申し述べます。

 信用金庫業界を含め、わが国金融システムは、全体として安定した状態にあり、金融仲介における機能度も向上してきています。

 経済社会が変革期を迎えている今日、信用金庫業界の皆様方には、変貌し多様化する顧客の金融ニーズに的確に対応していかれることが、益々期待されています。

 こうした期待に適切に応えていくためには、今後予想される金融経済環境の変化を踏まえつつ、金融業務に係る様々なリスクを適切に管理していくことが一段と重要になっています。この点、日本銀行が行っている、考査・モニタリングや各種セミナーが、皆様方のリスク管理態勢の整備に些かなりとも貢献できれば幸いに存じます。

 また、各信用金庫が経営基盤を強化していくことは、期待される役割を十分に果たしていくために重要な課題です。近年、金融機関が提携や経営統合を図る動きがみられ、信用金庫業界においても合併が進んでいます。今後についても、提携や経営統合は経営基盤の強化のための重要な選択肢の一つと考えられます。

 信用金庫の皆様方は、これまでも、個人や中小企業向け金融の分野で、重要な役割を果たしてこられました。今後も各金融業務の実情に応じたリスク管理態勢の整備や、将来を見据えた経営基盤の強化を進めつつ、地域経済の活性化を引き続き適切に支えていかれることを祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴有り難うございました。

以上