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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2008年10月17日

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目次

はじめに

 本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠に有難うございます。信用組合の皆様におかれましては、地域や顧客に密着した金融機関として、地域経済の発展に貢献してこられました。また、皆様には日頃から、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚く御礼を申し上げます。

 私からは、最近の国際金融資本市場の動向と金融システム面の課題、ならびに経済・物価情勢と金融政策運営について、私どもの考えをお話しし、ご挨拶に代えさせて頂きます。

国際金融資本市場の動向と金融システム面の課題

 始めに、最近の国際金融資本市場の動向及び金融システム面の課題について、ご説明します。

 米国サブプライム・ローン問題が発端となった国際金融資本市場の動揺は1年以上を経てもなお収束せず、米欧金融機関の相次ぐ破綻などを背景に、むしろ先週末にかけて緊張が著しく高まりました。各国の市場では、取引相手にかかるリスク、すなわちカウンターパーティ・リスクが強く意識される状況にあり、また、米国・欧州では、証券化商品の更なる価格下落や、不動産市場の停滞を映じた商業用不動産ローンや住宅ローン等の延滞率の上昇が、金融機関の資産内容の一段の悪化をもたらしました。株価の世界的な急落も続きました。

 こうした状況を踏まえ、先週末に開催されたG7では、国際金融市場の安定性と金融システムに対する信認を確保するため、G7各国が強い決意をもって、必要な施策を迅速に推進していくことが確認されました。これを受け、米欧各国では、金融機関に対する公的資本の注入、預金保険の保護対象の拡充、金融機関の債務に対する政府保証の付与など、踏み込んだ対応がなされました。また、日本を含む各国中央銀行は、協調体制のもと、ドル資金供給の枠組みを拡充しています。私としては、こうした一連の措置が国際金融資本市場の安定化に繋がっていくことを強く期待しています。

 こうした中にあって、わが国の金融システムは、全体としては安定した状態を維持しております。ただ、建設・不動産業を中心とした倒産の増加等を背景に、信用コストは増加傾向に転じています。また、最近の国際金融資本市場の動揺が世界経済の悪化を通じてわが国経済に及ぼす影響にも、注意が必要です。

 日本銀行としては、引き続き、金融システムの動向を注意深くみていくとともに、流動性供給等の面で適切な対応を図り、金融市場の安定確保に全力を挙げていく方針です。

経済・物価情勢と金融政策運営

 次に、経済・物価情勢と金融政策運営についてご説明します。まず、日本経済の現状ですが、わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから、停滞しています。先行きについては、海外経済の減速が明確化するもとで、当面、停滞が続く可能性が高いとみています。

 また、物価面では、消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品の価格上昇などから、7、8月と2か月連続+2.4%と1992年以来の高い伸びとなっています。物価の先行きについては、当面現状程度の上昇率で推移した後、徐々に低下していくと予想されます。

 その先については、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するに連れて、次第に緩やかな成長経路に復していくという姿が想定されますが、こうした見通しを巡る不確実性は増大しています。

 そこで、次に、経済・物価の先行きに関する様々なリスク要因についてご説明します。先ほど申し述べたとおり、国際金融市場の緊張が高まっており、これが米国経済をはじめとして世界経済にも大きな影響を及ぼしています。米国では、実体経済の停滞が金融機関の資産内容の一段の悪化と更なる信用収縮をもたらし、これがまた景気に悪影響を与えるといった、金融と実体経済の負の相乗作用が生じています。この影響が拡がり、世界経済全体が大きく下振れる場合には、日本にも大きなマイナスの影響をもたらすことが懸念されます。また、交易条件については、最近のエネルギー価格の下落により、いずれ改善方向に向かっていくと見込まれますが、当面は、これまでの悪化が、国内民間需要を更に下押すリスクがあります。このように、わが国経済は、設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクが高まっていることに注意する必要があります。

 一方、物価面では、エネルギー・原材料価格の動向に加え、わが国では暫く経験してこなかった物価上昇率となっているだけに、今後、家計のインフレ予想や企業の価格設定行動が変化し、二次的効果が発生するリスクにも注意する必要があります。

 このように、日本経済は、物価の上振れリスクが存在する中で、景気の下振れリスクが高まっており、引き続き、上下双方向のリスクに注意すべき局面にあります。日本銀行としては、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく方針です。

おわりに

 最後になりましたが、皆様方の益々のご発展を祈念して、私からのご挨拶といたします。ご清聴有難うございました。

以上