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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2008年10月)

2008年10月20日
日本銀行

  1. (1)国際金融資本市場では、米欧の金融機関の破綻などを背景に、緊張感が強まっている。こうした状況の下、先日開催されたG7では、国際金融市場の安定性と金融システムに対する信認を確保するため、各国が強い決意をもって、必要な施策を迅速に推進していくことが確認された。これを受け、米欧では、金融機関に対する公的資本の注入などの対応がとられている。また、日本を含む各国の中央銀行は、協調体制のもと、ドル資金供給の枠組みを拡充している。こうした一連の措置が国際金融資本市場の安定化に繋がっていくことを強く期待している。
  2. (2)わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や海外経済の減速を背景に輸出の増勢鈍化が続いていることなどから、停滞している。企業収益は、交易条件の悪化等を背景に減少を続けており、企業の業況感もさらに慎重化している。そうしたもとで、設備投資は減少している。個人消費は、雇用者所得の伸び悩みやエネルギー・食料品価格の上昇などから、弱めの動きとなっている。こうした内外需要のもとで、生産は、弱めに推移している。先行きは、当面、海外経済の減速が明確化するもとで、景気は停滞を続ける可能性が高いとみられる。
  3. (3)物価面では、国内企業物価は、国際商品市況の反落を主因に、当面、上昇テンポが鈍化するとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品の価格動向などを反映し、当面現状程度の上昇率で推移したあと、徐々に低下していくと予想される。
  4. (4)リスク要因をみると、国際金融資本市場では緊張感が強まっており、また、世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については、最近のエネルギー価格の下落により交易条件はいずれ改善方向に向かっていくとみられるが、当面は、これまでの悪化を反映した所得形成の弱まりから、下振れるリスクがある。一方、物価面では、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。
  5. (5)日本銀行としては、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく。
  6. (6)わが国の短期金融市場は、国際金融資本市場の動揺の影響を受けてはいるが、米欧と比べると、全体として安定した状態を維持している。もっとも、国際金融資本市場の動揺が国内金融市況や内外の景気動向等を通じてわが国の金融システム面に及ぼす影響や、建設・不動産業を中心とした倒産増加等を背景に信用コストが増加傾向にある点については、注意深くみていく必要がある。日本銀行としては、国際金融資本市場の動向を注視しつつ、引き続き、金融市場の安定確保に努めていく方針である。

以上