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【挨拶】第84回信託大会における挨拶

第84回信託大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2009年4月20日

目次

はじめに

 本日は、第84回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。また、信託銀行の皆様におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。この席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

経済・物価情勢と金融政策運営

 まず、日本経済の現状ですが、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっています。金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、資金繰りや金融機関の貸出姿勢が厳しいとする先が増加しているなど、全体としては厳しい状態が続いています。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しています。

 物価面では、生鮮食品を除くベースでみた消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落などを反映して足もと低下しており、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられます。

 景気・物価の先行きについては、2010年度までの中心的な見通しとして、今年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれて、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿を想定しています。実際、このところ、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出と生産の減少テンポが緩やかになる兆しがみられ始めています。もっとも、景気面では、世界的な金融情勢や海外経済の動向、企業の中長期的な期待成長率の低下や金融環境の厳しさなど、下振れリスクがあります。また、物価面でも、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要があります。

 日本銀行は、昨年秋以降、政策金利の引き下げ、潤沢な資金供給による金融市場の安定確保、CPや社債の買入れなどを含む企業金融円滑化の支援という、3つの柱に基づく政策対応を行ってきました。今後とも、経済・物価の見通しとその蓋然性、リスク要因を丹念に点検しながら、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針です。

金融システム面での課題と日本銀行の対応

 次に、わが国の金融システムは、全体として安定した状態を維持してきましたが、国際金融資本市場の緊張の持続や内外経済環境の悪化が、有価証券関係損失の拡大や信用コストの高まり等を通じて、金融仲介機能・金融システムの頑健性の両面に影響を及ぼしてきています。

 こうした状況に対し、私どもでは、2月に金融機関保有株式の買入れを再開しました。また、3月には国際統一基準行に対する劣後特約付貸付の供与を決定し、先般その具体的なスキームを公表しました。この措置は、中央銀行としては極めて異例ではありますが、厳しい経済金融情勢のもとでもわが国金融機関が十分な自己資本基盤を維持し得る手段を整えることによって、円滑な金融仲介機能を確保し、これを通じて金融システムの安定を図ろうとするものです。信託銀行の皆様におかれましては、私どもの考え方をご理解頂き、資本基盤の強化に一層努めることにより、金融仲介機能の維持に確りと取り組んで頂くようお願いします。

おわりに

 最後になりましたが、皆様方の益々のご発展を祈念して、私からのご挨拶といたします。ご清聴ありがとうございました。

以上