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【挨拶】全国信用金庫大会における挨拶
全国信用金庫大会における挨拶
日本銀行総裁 白川 方明
2009年6月24日
目次
はじめに
本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠に有り難うございます。皆様方には、日頃より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚く御礼を申し上げます。
最近の経済金融情勢
最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。
昨年秋以降、米欧の金融システムや国際金融資本市場の動揺が深刻化する中、世界経済は同時かつ急速に悪化しましたが、最近では、金融・実体経済の両面で悪化テンポの鈍化ないしは下げ止まりの動きがみられます。こうした下げ止まりの動きの背景としましては、世界的に昨年秋以降の大幅な減産とそれに伴う在庫調整が進捗してきていること、また、昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻を契機として金融市場に台頭した極端な不安心理が後退してきていることが挙げられます。さらに、世界的な景気後退を受けて、各国において積極的な財政・金融政策が展開されたことも挙げられます。
こうしたもとで、わが国の経済情勢についてみますと、輸出や生産は持ち直しに転じつつあります。輸出は、昨年度後半に大幅に落ち込んだ後、足もとでは自動車・電子部品等を中心に海外在庫の調整が進展していることなどを受けて持ち直しに転じつつあります。生産についても、内外の在庫調整圧力の減衰を背景に、このところ増加に転じています。また、公共投資も昨年度来の経済対策を受けて増加しています。一方、企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少しています。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で弱まっています。以上の動きを合わせてみますと、わが国の景気は、昨年秋以降、大幅に悪化した後、足もとは下げ止まりつつあり、当面はこうした下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高いとみています。
その先のわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存します。2010年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しないもとで、本年度後半以降、世界経済や国際金融資本市場の回復に加え、財政・金融政策や金融システム面での対策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定されます。もっとも、世界経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きいと考えています。
物価面の動きをみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、本年初までの石油製品価格の下落などを反映して、足もとゼロ%程度まで低下しています。先行きについては、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられます。特に、夏場にかけては、昨年同時期に石油製品価格が大幅に上昇したことの影響から、一旦マイナス幅が大きくなることが見込まれますが、その後、マイナス幅が縮小していく姿を想定しています。
金融システムの動向
次に、金融システム面について申し述べます。
わが国の金融システムを取り巻く環境をみますと、昨年秋以降の内外金融資本市場における緊張感が和らぎ、企業金融面での逼迫感も後退するなど、改善の動きがみられていますが、全体としては、なお厳しい状況にあると判断しています。
2008年度の金融機関決算は、コア業務純益の減少や有価証券損益の悪化などから、信用金庫業界を含め、全体として久方ぶりの最終赤字となり、金融機関間の経営体力面でのばらつきも拡大しました。こうした結果は、多くの金融機関にとって、収益力やリスク管理の面での中長期的な課題を改めて浮き彫りにするものでした。
信用金庫業界を取り巻く経営環境については、今後もしばらく厳しい状況が続くとみられますが、そうした中にあっても、地域経済の構造変化や中小企業の事業再構築などに伴って、多様な金融ニーズが発生してきます。皆様方にとっては、リスクを適切に管理しつつ、地域の顧客ニーズに的確に対応していくことが、ますます重要になっていくと思われます。このような役割を十分に果たしていくためにも、リスク管理の向上と資本基盤の充実が重要な課題であると考えています。
日本銀行の政策運営
続いて、日本銀行の政策運営について、申し述べさせて頂きます。
日本銀行では、昨年秋以降これまでの間、金融面からわが国経済を支えるため、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、中央銀行として異例の措置を含む、さまざまな措置を実施してきました。
また、金融システムの安定を図る目的から、これらも異例の措置ではありますが、本年2月に金融機関保有株式の買取りを再開したほか、3月には国際統一基準行を対象とする劣後ローンの供与を決定し、5月に初回の入札を実施しました。
日本銀行としては、当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として引き続き最大限の貢献を行っていく方針です。
おわりに
信用金庫業界は、昨年来、わが国の金融環境全般が厳しい状況にある中で、中小企業金融の円滑化に関し、大きな貢献を果たしてこられました。このことは、相互扶助という理念のもと、比較的長い時間軸の中で会員や地域に貢献できる信用金庫の存在が、今日のわが国経済のもとで極めて重要であることの表れであります。信用金庫業界におかれては、環境の変化に対応し、経営体制の整備を進めつつ、今後とも、適切な金融機能の発揮に貢献されることを、改めてお願いいたしまして、私からの挨拶とさせて頂きます。ご清聴有り難うございました。
以上