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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2009年10月16日

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目次

はじめに

 本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠に有難うございます。

 信用組合の皆様方におかれましては、地域における中小企業や家計向け金融サービスの担い手として、それぞれのコミュニティに密着した活動を展開し、地域経済の発展をしっかりと支えておられます。このことに、まず敬意を表したいと思います。

 また、皆様方には、日本銀行の政策や業務運営に多大な協力を頂いております。本席をお借りして、厚く御礼を申し上げます。

 私からは、最近の経済金融情勢、金融システムの動向と日本銀行の政策運営について、お話させて頂きます。

最近の経済金融情勢

 最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 昨年のリーマン・ブラザーズの破綻以降、国際金融資本市場は大きく動揺し、世界経済は同時かつ急激に落ち込みましたが、最近では、金融・実体経済の両面において改善の動きが見られています。先進国では、中央銀行による潤沢な資金供給や米欧金融機関に対する積極的な公的資本注入などが効を奏し、金融市場は一頃の混乱した状況を脱しています。実体経済も、在庫調整の進捗や各種の政策対応の効果などを背景に、下げ止まっています。昨年秋以降の世界的な流動性危機と、これに伴う金融・経済活動のパニック的な収縮はほぼ終息してきたと思います。この間、中国経済は、本年春先にかけて一旦減速しましたが、最近では、積極的な財政・金融政策の効果などから再び伸びを高めており、それが波及するかたちで、他の東アジア新興国の経済も予想を上回るペースで回復してきています。

 こうした中、わが国の景気も持ち直しつつあります。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産が3月以降増加しています。そうしたもとで、今月初に発表した短観の結果にも示されているように、企業の景況感には、製造業大企業を中心に改善の動きがみられます。設備投資についても、厳しい収益状況などを背景に減少を続けていますが、減少ペースは緩やかになってきています。一方、個人消費は、各種対策の効果などから自動車や家電といった耐久消費財が持ち直しているものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きとなっています。この間、企業金融の動向をみると、大企業の資金調達手段であるCP・社債の発行環境は、低格付社債を除き、良好なものとなっています。一方、中小企業については、資金繰りの改善度合いが大企業に比べて小さいものにとどまるなど、なお厳しい状況が続いていると認識しています。

 先行きについて、日本銀行では、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していくと考えています。もっとも、こうした見通しを巡る不確実性が大きいことも、急いで付け加えなければなりません。最近では、新興国経済の予想以上の力強い回復という上振れ要因も生じてきていますが、今回の世界的な景気後退の根本的な要因、すなわち、米欧を中心とする企業や家計、金融機関のバランスシート調整という問題は引き続き根強く残っています。その帰趨次第では、米欧経済が想定以上に下振れて、わが国の輸出にマイナスの影響を及ぼしたり、わが国企業の中長期的な成長期待を低下させ、設備投資などを下押す可能性があります。このため、先行きのリスクを全体としてみれば、引き続き、下振れリスクの方が高い状況が続いていると考えています。

 物価の動きに目を転じますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、経済全体の需給バランスが緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、このところ、下落幅が拡大しています。先行きについては、当面、現状程度の前年比で推移したあと、石油製品価格などの影響が薄れていくにつれて、下落幅は縮小していくと考えています。

金融システムの動向

 次に、金融システム面について申し述べます。

 わが国の金融システムは、昨年秋以降、金融資本市場の機能低下、株価の下落、実体経済の悪化など、様々なルートを通じて、国際金融危機の影響を受けてきたことはご承知のとおりですが、それでも米欧との比較でみれば、総じて安定性を維持してきました。この間、経済環境が急変するもとで、信用組合を含め金融機関では、緊急保証制度なども利用しながら、企業を資金繰り面から支えてこられました。もっとも、先ほど申し上げたとおり、中小企業の資金繰りは、なお厳しい状況にあります。今後、わが国の景気回復を確かなものとするためには、中小企業向けを含め、金融機関の金融仲介機能が円滑に働いていくことが重要な要素の一つとなります。こうした観点から、皆様方に期待される役割は、引き続き大きいと考えています。

 それぞれの地域が個性を活かしつつ発展していくための知恵と工夫が求められる中で、これからも地域経済の構造変化や中小企業の事業再構築などに伴って、様々な金融ニーズが発生してきます。信用組合の皆様方にとっては、有益な情報やノウハウの提供、親身になった経営相談などを通じて、地域のニーズに対応した良質な金融サービスを提供していくことが、ますます重要になっていくと思われます。今後とも、みずからの経営体力の強化とリスク管理の充実を図りながら、そうした役割をしっかりと果たしていかれることを期待しています。

日本銀行の政策運営

 最後に、日本銀行の政策運営について、ご説明申し上げます。

 日本銀行では、昨年秋以降の金融・経済活動の急激な収縮に対応するため、CP・社債の買入れといった異例の措置を含め、様々な時限措置を実施しています。その効果もあって、例えば、CP・社債市場では、低格付社債を除いて良好な発行環境となっており、ここ2回のCP買入れの入札実績はゼロとなっています。CP・社債の買入れのみならず、現在実施している各種の時限措置の取り扱いについては、それぞれの効果や必要性をできるだけ包括的に点検した上で、次回の金融政策決定会合以降、適切なタイミングでとりまとめて判断したいと考えています。

 このように、わが国の金融環境には改善の動きが拡がっていますが、一方で、中小企業の資金繰りなど、厳しさも残っています。また、わが国経済の先行きを巡る不確実性も依然として大きい状況にあります。こうした中、景気回復の動きをしっかりと支えるため、現在の極めて緩和的な金融環境を粘り強く維持することが重要だと考えています。

 日本銀行としては、当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針です。

おわりに

 以上、皆様方のますますの発展を祈念しまして、私からの挨拶とさせて頂きます。ご清聴有難うございました。

以上