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平成21年度入行式における白川総裁挨拶要旨

2009年4月1日
日本銀行

 皆さん、日本銀行への入行、誠におめでとうございます。本日、本支店あわせて149名の新入行員が私たちの仲間に加わりました。希望に満ち溢れた皆さんのお顔を拝見し、たいへん頼もしく、また嬉しく感じます。これから皆さんと一緒に仕事をする日本銀行の役職員を代表して、心より歓迎の言葉を申し上げます。

 皆さんは本日からわが国の中央銀行である日本銀行で仕事をされる訳ですが、中央銀行の最も根源的な仕事は、銀行券を発行し、それを国民の皆さんが安心して、かつ便利に使える環境を整えることです。普段はあまり意識されないことですが、銀行券が使われるのは、その価値が守られるという安心感、言い換えれば、通貨に対する信認があるからにほかなりません。そのためには、物価の安定と金融システムの安定が不可欠です。そうした通貨への信認は自然に生まれるものではありません。社会の中で誰かが通貨への信認を維持するという仕事に専念する必要がありますが、わが国では日本銀行がその仕事を担っています。通貨への信認を維持するためには、日本銀行という組織に対する信頼が不可欠であり、さらに、そうした信頼は日本銀行で仕事をするひとりひとりの努力を通じて築かれていくものです。皆さんを含めて私たち全員が、日々の業務を通じて、国民の皆さんからの信頼をひとつひとつ積み重ねることが、銀行券の価値を守ることにつながります。日本銀行の責任は誠に重大です。

 皆さんはこれから日本銀行員としての仕事の第一歩を踏み出すことになりますが、配属されるそれぞれの職場で、思う存分力を発揮し、日本銀行の仕事に大いに貢献されることを期待しています。本日の入行式に当たり、日本銀行を代表し、また社会人の先輩として、お願いを3つ申し上げたいと思います。

 第一にお願いしたいことは、責任感をもって仕事に取り組んで欲しいということです。皆さんが最初に任せられる仕事はそれほど大きなものではないかも知れませんが、職場ではあなた方がその仕事をきちんと遂行してくれるという信頼感を前提に仕事を行っています。与えられた役割をしっかりと果たしてください。そうした個々人の責任ある仕事の結果として、組織に対する信頼が生まれてきますし、ひいては先ほどお話した通貨に対する信認にもつながってきます。

 第二にお願いしたいことは、常に新しいことにチャレンジする気概を持ち続けて欲しいということです。プロの職業人として、自分の担当している仕事について誰にも負けない専門的知識をもつことは当然です。その上で、常に好奇心を持ちチャレンジ精神を持って、仕事の幅を広げ、内容を深めていってください。そうした努力の積み重ねは時間が経つと、大きな違いとなって表れます。私としては、皆さんひとりひとりが、任された仕事を核としつつ、常に新たな仕事にチャレンジし、そしてそれが組織としての成長につながり、また一人ひとりの人間の成長につながっていく、そのような前向きの循環を実現したいと考えています。

 第三にお願いしたいことは、良き社会人、良き市民であって欲しいということです。この点では、個人として、また組織として法律やルールをしっかり守ることが大前提となります。それと同時に、法律やルールの背後にある健全な常識に照らして、自らの行動を律することが求められます。

 日本銀行は、先週、先行き3年間の日本銀行の課題と施策を盛り込んだ、新たな「中期経営計画」を公表しました。そこで謳われている経営指針は、安定的かつ効率的な業務の遂行、学習とそれを踏まえた実践、開かれた組織の3点です。日本銀行は明治15年の開業以来今年で128年目を迎えますが、経済・金融のグローバル化をはじめ、日本銀行を取り巻く環境が大きく変化する中で、仕事の中身や組織を環境の変化に合わせて不断に見直していくことが求められています。その一方で、通貨の信認を守っていくという公的使命に対する情熱や、銀行業務を通じて社会に貢献する仕事への喜びなど、変わることなく、脈々と引き継がれている伝統もあります。皆さんは、日本銀行の一員として、今大きな希望を胸に抱いていると思いますが、これまで諸先輩が築いてきた伝統を皆さんが時代の変化に応じてさらに磨き上げていくことを大いに期待しています。

 最後になりましたが、環境が変わると、体調に変化をきたしやすくなります。健康管理に留意された上で、今日の初心を忘れることなく、明日から元気に仕事をされることを心より祈念して、私からの挨拶といたします。

以上