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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書

参議院財政金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 白川 方明
2010年4月13日

目次

はじめに

日本銀行は、昨年6月と12月に、平成20年度下期と平成21年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、それぞれ国会に提出いたしました。今回、最近の日本経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

日本経済の動向

まず、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けており、その持続傾向がより明確になっています。輸出や生産は、新興国経済が力強い成長を続けていることなどを背景に、増加を続けています。4月初に公表された3月短観をみますと、企業の業況感は、製造業大企業に加え、非製造業や中小企業にも拡がりを伴いながら、引き続き改善しています。また、設備投資が下げ止まっているほか、個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直しています。

先行きについては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いと見ていますが、一頃市場等で懸念されたような、景気が再び大きく落ち込む、いわゆる「二番底」に陥る惧れは、かなり後退したと判断しています。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及するにつれて、わが国の成長率も徐々に高まってくると予想しています。

金融環境をみますと、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっています。企業の銀行からの借入れ金利は、日本銀行による金融緩和に加え、金融機関の融資姿勢の積極化もあって、低下傾向が続いています。CP市場では、リーマン・ショック以前を上回る良好な発行環境となっています。また、社債市場も良好な発行環境が続き、低格付社債にも改善の動きがみられています。この間、企業の資金繰りは、中小企業ではなお厳しいとする先が多いものの、これらも含め、全体として緩和方向の動きが続いています。

物価面では、生鮮食品を除くベースでみた消費者物価の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落していますが、その幅は昨年8月をピークに縮小傾向を続けています。先行きの物価の基調的な動きは、マクロ的な需給バランスと中長期的な予想物価上昇率に規定されます。この点、今年度から実施される高校授業料の実質無償化等によって、統計上、消費者物価指数の前年比は1年間に亘って低下しますが、物価の基調的な動きを判断する際には、このような制度変更に伴う変動要因を取り除くことが必要となります。そうした物価の基調という点では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移すると見込まれるなかで、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、今後も、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えています。

以上、経済・物価に関する中心的な見通しを申し上げましたが、日本銀行では、このような見通しを巡るリスク要因についても十分意識しています。

まず、上振れ方向のリスクとしては、新興国や資源国の経済が挙げられます。新興国・資源国経済の力強い成長は、わが国経済のこれまでの持ち直しを牽引してきました。これがさらに強まる場合には、わが国の景気が上振れる可能性があります。一方、下振れ方向のリスクとしては、一頃より低下しましたが、米欧のバランスシート調整の帰趨や、企業の中長期的な成長期待の動向などがあります。また、最近の国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意が必要です。

物価面については、新興国や資源国の高成長を背景に資源価格が上昇する場合には、物価上昇率が上振れるリスクがあります。一方で、中長期的な予想物価上昇率が低下することなどによって、物価上昇率が下振れるリスクもあります。

金融政策運営

以上を踏まえ、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識しています。そのため、物価の基調的な動きを規定する2つの要因に即して、様々な施策を講じています。

まず、マクロ的な需給バランスの改善に働きかける施策として、金利面では、政策金利を実質的にゼロ水準に据え置いています。また、長めの短期金利のさらなる低下を促すため、0.1%という極めて低い金利で期間3か月の資金を供給する手段を昨年12月に10兆円規模で導入し、先月にはこれを20兆円に増額しました。資金供給面では、この手段も含め、各種の資金供給手段を活用しながら、潤沢な資金供給を続けています。さらに、以上のような極めて緩和的な金融環境を粘り強く維持していく姿勢を明らかにしています。

物価を規定するもう1つの要因である予想物価上昇率に関しては、人々の物価に対する見方が下振れないように、「中長期的な物価安定の理解」という形で、消費者物価の前年比がプラスの状態を実現することが大事であるという姿勢をはっきりと示しています。

日本銀行としては、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現するため、今後とも、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針です。

ありがとうございました。