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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2010年10月15日

目次

はじめに

本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠に有難うございます。

信用組合業界の皆様におかれましては、地域・業域・職域における中小零細企業や家計に対する金融サービスの提供を通じて、わが国経済の発展に貢献さ れています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して、心より敬意を表したいと思います。また、皆様方には、日頃から、日本銀行の政策や業務の運営に多 大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚く御礼を申し上げます。

私からは、最近の経済金融情勢、日本銀行の金融政策運営と金融システムの動向について、お話させて頂きます。

最近の経済金融情勢

わが国の景気は、緩やかに回復しつつありますが、海外経済の減速や為替円高のマインド面への影響などから、改善の動きが弱まっています。輸出や生産は、このところ増加ペースの鈍化がはっきりしてきました。

先行きについてみますと、米国経済を中心とする不確実性が強い状況が続いているもとで、景気の下振れリスクには、なお注意が必要です。先日、私ども が公表致しました短観の調査結果をみましても、企業の最近の業況感は、市場予想を上回って改善した一方、先行きの業況感は悪化しましたが、こうした調査結 果は、企業の慎重な見方を示すものと受け止めています。また、猛暑効果の剥落や自動車などの耐久消費財の駆け込み需要の反動がどの程度の大きさとなるか、 注意深くみていく必要があります。

この間、物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比の下落幅は、縮小傾向を維持していますが、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要と考えています。

景気の先行きについては、海外経済の改善などを背景に、緩やかな回復経路に復していくという大きな判断は変わっていませんが、当面需要刺激策の効果 の減衰などから、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続くこともあり、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、後ずれする可能 性が強まっていると考えられます。

日本銀行の金融政策運営

このような情勢判断を踏まえ、日本銀行は、金融緩和を一段と強力に推進することが必要と判断し、先週の金融政策決定会合において、次の3つの措置からなる「包括的な金融緩和政策」を実施することとしました。

第1に、実質ゼロ金利政策を採用していることを明確化しました。すなわち、日本銀行では、無担保コールレート・オーバーナイト物を、これまで「0.1%前後」で推移するよう促すこととしていましたが、これを「0〜0.1%程度」で推移するよう促すこととしました。

第2に、ただいま申し上げました実質ゼロ金利政策を継続する期間、いわゆる「時間軸」に関する考え方を、改めて明らかにしました。日本銀行は、政策 委員の「中長期的な物価安定の理解」として、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」という ことを公表しています。今般の決定において、日本銀行は、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続するとともに、その 際の判断基準が、先程申し上げました「中長期的な物価安定の理解」であることを確認しました。ただし、今回の世界的な信用バブルの生成・崩壊において、金 融面での不均衡の蓄積といった重大なリスクが見過ごされた結果、長い目でみた経済・物価の安定が損なわれた経験に鑑み、金融面での不均衡の蓄積を含めた物 価以外のリスク要因を点検し、問題が生じていないことが、実質ゼロ金利政策を継続する条件となります。

第3に、資産買入等の基金の創設です。具体的には、国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)など多様 な金融資産の買入れといわゆる「固定金利オペ」を行うために、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討することとしました。基金の 規模は、新たに買入れる5兆円程度の資産と、既に実施することを決めている30兆円程度の「固定金利オペ」とを合わせ、35兆円程度とすることを軸に検討 します。本措置は、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プ レミアムの縮小を促していくものです。こうした措置は、中央銀行にとって異例の措置であり、特に、リスク・プレミアムの縮小を促すための金融資産の買入れ は、異例性が強い措置です。この点を明確にしたうえで、市場金利やリスク・プレミアムに幅広く働きかけるために、バランスシート上に基金を創設し、多様な 金融資産の買入れ、およびこれと同じ目的を有する「固定金利オペ」を行うことが適当と判断しました。

日本銀行としては、只今ご説明しました包括的な金融緩和政策の下で、金融緩和を一段と強力に推進していくとともに、金融市場の安定確保、成長基盤強 化の支援も合わせた3つを柱とする政策運営を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けてまいりたいと考えています。金融政策運営にあたっては、今後と も、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、中央銀行として、適切に政策対応を行っていく方針です。

金融システムの動向

次に、金融システム面についてお話します。

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。金融機関の収益は改善傾向にあり、信用組合の2009年度決算についても、3年振りの 黒字となりました。もっとも、先ほど申し上げたとおり、景気の下振れリスクに対する注意が必要な状況のもとで、金融システムの動向については、引き続き注 視していきたいと考えています。

この間、企業の資金繰り面をみますと、全体として改善傾向にありますが、信用組合の主な取引先である中小零細企業については、厳しい経営環境のもと で、なお苦しいとする先が少なくないものと認識しています。こうした中、信用組合の皆様方におかれては、組合組織としての相互扶助の理念も踏まえつつ、中 小零細企業の経営を金融面から支えてこられています。

今後、わが国経済が持続的成長経路に復していくためには、円滑な金融仲介機能の発揮が重要な前提となります。この点、皆様方に期待される役割は大変 大きなものがあります。地域密着という特性を活かしつつ、企業に対する資金提供や経営改善の支援、家計に対するライフプランの策定など、顧客ニーズに応じ たきめ細やかなサービスの提供が求められています。また、そのためにも、皆様方自身の経営基盤の確保が不可欠です。今後とも、収益力の向上やリスク管理の 充実を通じて、経営体力を一層強化していかれることを期待しています。

おわりに

最後になりましたが、信用組合業界のますますのご発展を祈念いたしまして、私からの挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。