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平成22年度入行式における白川総裁挨拶

2010年4月1日
日本銀行

皆さん、日本銀行への入行、誠におめでとうございます。この場に出席されている113名に加えて、支店で入行式を迎える25名の合計138名の新入行員が本日から、私たちの仲間に加わりました。希望に満ち溢れた皆さんのお顔を拝見し、たいへん頼もしく、また嬉しく感じます。私も38年前の今日、皆さんと同じようにこの部屋で入行式に臨みましたが、これから皆さんと一緒に仕事をする日本銀行の役職員を代表して、心より歓迎の言葉を申し上げます。

今日から皆さんは日本でただひとつの中央銀行である日本銀行で働くことになります。中央銀行の本源的な目的は、「銀行券や中央銀行当座預金という通貨を発行し、人々が通貨を安心して使えるようにすることを通じて、経済の発展に貢献すること」です。皆さんが普段使っているお札、すなわち銀行券は、素材としての価値はわずかなものです。しかし、それにもかかわらず、銀行券が額面通りの価値を持つものとして人々から使われているのは、銀行券に対する信認があるからです。金融市場では毎日膨大な取引が行われており、その決済には中央銀行の当座預金が使われていますが、これも中央銀行の当座預金への信認があるからこそ可能になっているものです。通貨が信認を維持するためには、物価が安定していること、金融システムが安定していることが重要な前提条件となります。こうした仕事を行っているのが中央銀行です。したがって、通貨の信認を得るためには、中央銀行という組織に対する信頼が必要不可欠になります。皆さんを含めて私たち全員が日々の努力を通じて、国民の皆さんからの信頼を一つひとつ積み重ねていくことが通貨に対する信認を高めていくことになります。その意味で、日本銀行の責任は大変重大です。

皆さんはこれから日本銀行員としての仕事の第一歩を踏み出すことになりますが、配属されるそれぞれの職場で、思う存分力を発揮し、日本銀行の仕事に大いに貢献されることを期待しています。本日の入行式に当たり、いくつかのお願いを申し上げたいと思います。

第一にお願いしたいことは、責任感をもって仕事に取り組んで欲しいということです。皆さんが最初に任せられる仕事はそれほど大きなものではないかも知れませんが、職場では皆さんがその仕事をきちんと遂行してくれるという信頼感を前提に仕事を行っています。与えられた役割をしっかりと果たしてください。日本銀行の仕事は、文字通り銀行として、数多くの銀行業務から成り立っています。責任ある中央銀行として、業務を日々安定的かつ確実に遂行していくことが求められています。そうした個々人の責任ある仕事の結果として、組織に対する信頼が生まれてきますし、ひいては先ほどお話した通貨に対する信認にもつながっていきます。

第二にお願いしたいことは、常に新しいことにチャレンジし、仕事の幅を広げていく情熱を持ち続けて欲しいということです。この点では、自分が担当している仕事について専門知識を持つことは当然ですが、その上で、常に好奇心を持ちチャレンジ精神を持って、内容を深め、仕事の幅を広げていってください。皆さん一人ひとりが、任された仕事を核としつつ、常に新たな仕事にチャレンジし、そしてそれが組織としての成長につながり、また一人ひとりの成長につながっていく、そのような前向きの循環を実現したいと考えています。

第三にお願いしたいことは、チームワークを大切にして欲しいということです。中央銀行の目的である通貨の信認を維持するためには、膨大な知識や経験とそれに裏付けられた多くの人たちの間での共同作業が必要になってきます。政策を立案するうえでは、内外経済や金融市場、金融システム面でのマクロ・ミクロの様々な情報が必要ですし、政策を具体的に実行するうえでは、民間銀行業務や決済システムなど幅広い知識が不可欠です。日本銀行が日々の業務を行ううえでも、相互チェック体制をはじめとして、チームワークは欠かせません。異なる経験や専門性を持った人々の力を合わせることで組織としての力が生まれてきます。どの組織でもチームワークは大切ですが、この点では、中央銀行も全く同様です。

以上、日本銀行に入行されるに当たってお願いしたいことを3点申し上げましたが、最後に、そして最も基本的なこととして、皆さんは良き社会人、良き市民であって欲しいということを申し上げます。この点では、個人として、また組織として法律やルールをしっかり守ることが大前提となります。それと同時に、法律やルールの背後にある健全な常識に照らして、自らの行動を律することが求められます。

私自身、約36年間の日本銀行での様々な仕事を通じて、公的な目的を持つ組織で働くことの意義や面白さを感じてきました。中央銀行の目的自体は、いつの時代にも変わりませんが、中央銀行を取り巻く環境は常に大きく変化しています。私が入行してからに限ってみても、二度の石油ショック、バブルの発生と崩壊、そして今回の世界的な金融危機をはじめ、数多くの出来事がありました。その度に、日本銀行は、通貨の信認を守るために、懸命の努力を行ってきました。今回の世界的な金融危機に際しても、日本銀行も含め各国の中央銀行は、様々な取り組みを行いましたが、中央銀行の責任の大きさ、果たしている役割の大きさを改めて再認識させられました。将来どのような変化が皆さんを待ち受けているのかは想像もつきませんが、間違いなく言えることは、時代の変化を的確に捉えながら、通貨の信認をしっかりと守っていく、という日本銀行の仕事は、非常に挑戦のしがいのある仕事であるということです。皆さんは、日本銀行の一員となり、大きな希望を胸に抱いていると思いますが、今日の思いをいつまでも忘れずに努力され、これまで諸先輩が築いてきた伝統を時代の変化に応じてさらに発展させていくことを大いに期待しています。

最後になりましたが、環境が変わると、体調に変化をきたしやすくなります。健康管理には十分留意された上で、明日から元気に仕事をされることを心より祈念して、私からの挨拶といたします。

以上