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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2010年7月)

2010年7月8日
日本銀行

  1. (1)海外経済をみると、先進国経済の回復が緩やかなものに止まる一方、新興国・資源国経済は力強い成長を続けている。国際金融資本市場は、ソブリンリスクを懸念する動きなどから、一部に不安定な動きがみられている。
  2. (2)わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。輸出や生産は、増加を続けている。企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は、企業収益が回復してきているもとで、持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境をみると、引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そのような状況のもと、個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。
  3. (3)先行きについては、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくものの、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。また、国内民間需要は、持ち直しを続けると考えられる。このように、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。
  4. (4)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、高校授業料無償化の影響を除いた基調的な動きをみると、下落幅は縮小を続けている。先行きは、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、経済全体の需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価の前年比は下落幅が縮小していくと考えられる。
  5. (5)わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。ターム物金利が低水準で安定的に推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向を続けている。CP・社債市場では、総じてみれば、良好な発行環境が続いている。
     わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。金融機関の2009年度決算は、信用コストの減少や有価証券関係損益の改善により、黒字を確保した。もっとも、借入需要の低迷による貸出残高の減少や、貸出利鞘の縮小などから、基礎的な収益力は低下を続けている。最近の国際金融資本市場の不安定な動きも踏まえ、金融システムの動向については引き続き注意深くみていく必要がある。
  6. (6)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。さらに、今般導入した日本経済の成長基盤強化を支援するための資金供給を、本年8月末を目途に開始するとともに、今後も成長基盤強化に資する金融市場の整備などに向けて、中央銀行として貢献していく方針である。

以上