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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書

参議院財政金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 白川 方明
2011年4月12日

目次

はじめに

日本銀行は、昨年6月と12月に、平成21年度下期と平成22年度上期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、それぞれ国会に提出い たしました。今回、最近の日本経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

東日本大震災の発生からほぼ1か月が経ちましたが、多くの尊い命が奪われたうえ、今なお多くの行方不明の方がいらっしゃいます。今回の地震で犠牲となられた方々に対して心よりお悔やみ申し上げます。また、現在も多くの方が、厳しい生活を余儀なくされています。被災者の皆様に対して、心よりお見舞いを申し上げます。

震災を受けた日本銀行の対応

まず、今回の震災を受けた日本銀行の対応についてご説明申し上げます。

日本銀行は、震災後、被災地における現金需要への対応を始め、わが国の金融機能の維持と資金決済の円滑を確保するため、民間金融機 関とも協力しながら、万全の措置を講じてきています。また、金融市場の安定確保のため、市場における需要を十分満たすよう、きわめて 潤沢な資金供給を行いました。地震発生の翌営業日には金融緩和を一段と強化しました。具体的には、リスク性資産を中心に資産買入を5兆円程度増額して10兆円程度とし、固定金利での資金供給オペレーションと合わせた基金の規模を40兆円程度としました。さらに、先週開催した金融政策決定会合では、被災地の金融機関を対象に、今後予想 される復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を支援するため、長めの資金供給オペレーションを実施することが必要と判断し、また、今後の被災地の金融機関の資金調達余力確保の観点から、担保適格要件の緩和を図ることが適当と判断しました。これら2つの措置については、現在具体案を検討しており、今月末の金融政策決定会合で細目を決定する予定です。

わが国の経済・金融の動向

次に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にあります。震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいます。

震災後の金融動向をみますと、関係者の懸命の努力を通じて、わが国の金融・決済機能はしっかりと維持されています。日本銀行金融ネットワークシステムを始め、わが国の主要な決済システムは正常な稼働を維持し、円滑な決済が確保されています。金融市場も、全体として安定しています。今回のような大震災の後においては、決済システムや金融市場の安定の意義はきわめて大きいと思っています。この間、金融環境は、総じて緩和の動きが続いていますが、震災後、中小企業を中心に、一部企業の資金繰りに厳しさが窺われています。

先行きについては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続くとみられます。しかし、新興国経済の拡大に支えられた世界経済の高い成長率という、震災前までの日本経済の回復の動きを支えていた基本的な条件は維持されています。このため、その後、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれて、海外経済の改善を背景に輸出が増加するほか、資本ストックの復元に向けた動きが顕現化することなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えています。このように申し上げた上で、今回の震災がわが国経済に及ぼす影響については不確実性が大きいことは十分認識しており、注意深く経済の動きを点検していく必要があると考えています。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、下落幅が縮小を続けており、先行きは、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられます。ただし、本年8月に予定されている消費者物価指数の基準改定に伴い、前年比が下方に改定される可能性が高いことも意識しています。

続いて、以上の見通しを巡るリスク要因についてご説明します。

まず、景気の上振れ要因としては、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがあります。一方、下振れリスクとしては、国際金融市場の動向や、一頃に比べて低下しているとはいえ、米欧経済の先行きを巡る不確実性があります。さらに、先程も述べましたように、今回の震災がわが国経済に及ぼす影響については不確実性が大きいと考えています。この間、国際商品市況の上昇も、リスク要因として注意しています。国際商品市況の上昇は、その背景にある新興国・資源国の高成長がわが国の輸出の増加に繋がる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下は、国内民間需要を下押しする面もあります。

物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性があります。一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもあります。

金融政策運営

最後に、日本銀行の金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けています。

日本銀行としては、引き続き、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針です。

ありがとうございました。