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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2011年10月)

2011年10月20日
日本銀行

(1)わが国の経済は、持ち直しの動きが続いている。すなわち、生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。

(2)先行きについては、海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。そうしたもとで輸出が緩やかな増加基調をたどることや、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。

(3)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっており、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。

(4)景気のリスク要因をみると、欧州のソブリン問題の帰趨や、バランスシート調整が米国経済に与える影響について、引き続き注意が必要である。また、新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、引き続き、丹念に点検していく必要がある。
  物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。

(5)わが国の金融市場は、全体として安定している。金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさがなお窺われるものの、緩和の動きが続いている。
  この間、わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。国際的な金融資本市場は神経質な展開が続いているが、わが国金融機関の資金調達に大きな影響は生じていない。もっとも、内外の金融資本市場の連関が強まるもとで、金融機関の有価証券運用にかかるリスクをはじめ、わが国金融システムを取り巻くリスク要因には、今後とも十分な注意が必要である。

(6)日本銀行は、現在、8月に一段と強化した金融緩和措置のもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」1に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。今後とも、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、適切に対応していく方針である。

  • 1 「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」